goo blog サービス終了のお知らせ 

blog TAKAO-SP

ホームページ「たかお・サンパウロ」の速報版

2007-08-10 金 「社説--比べて読めば面白い」 南北首脳会談(西日本)

2007-08-10 07:30:33 | 「保存している記事」から

「社説--比べて読めば面白い」 朝日 毎日 読売 日経 産経 東京 西日本
2007年08月10日(金曜日)付 西日本聞社説

半島非核化へ実質進展を 南北首脳会談

 韓国の盧武鉉(ノムヒョン)大統領が28日から北朝鮮の平壌を訪問し、金正日(キムジョンイル)総書記と会談することになった。2000年6月の金大中(キムデジュン)前大統領の訪朝以来、7年ぶりの南北首脳会談である。

 2度目なので、衝撃性は弱い。韓国内の受け止めも冷静である。しかし、めったにない北朝鮮の最高指導者の外交舞台登場は注目してよい。核問題や東アジア情勢についての発言は無論、日本にとってもよそ事ではない。

 会談では北朝鮮の非核化、朝鮮半島の平和体制構築、南北の経済協力拡大などを話し合うことになるようである。このなかで最大のテーマは、言うまでもなく非核化問題だ。

 6カ国協議の合意により、北朝鮮は寧辺の核施設の稼働停止と監視・検証に応じ、「初期段階の措置」は完了した。次は核施設の完全な無能力化と核計画の申告である。その見返りに、関係国はエネルギー・経済支援を行う約束だ。

 この問題で、金総書記の口から非核化の確約を取り付けることが、盧大統領の最大の仕事である。総書記の言葉は、北朝鮮では格別の重みがある。確約は今後の6カ国協議の弾みともなる。

 注意が必要なのは、経済協力の在り方である。6カ国協議の枠外で、韓国が支援を拡大すれば、核放棄の見返りとしての支援の効果は減殺される。それは6カ国協議の混乱のもとともなる。

 このタイミングの首脳会談について、韓国内では、年末の大統領選をにらみ、野党候補優勢の現状を覆したいという盧大統領の計算があるとの見方がある。低迷する大統領支持率を、退任前に回復したいとの思いもあるかもしれない。

 大統領選については、北朝鮮の立場からも、金大中政権以降の対北融和政策を今後も継続してもらううえで、北朝鮮に厳しい姿勢を示す野党ハンナラ党の政権誕生は望ましくなかろう。

 南北双方の政権の思惑が一致した面は確かにありそうだ。ただし、両首脳の顔合わせが単なる政治ショーに終わるようなら、むしろ、失望を招くだけだ。実質的な成果が不可欠である。

 日本としては、盧大統領に日本の拉致問題も会談で持ち出してくれることを要望したい。そのため、事前に大統領にメッセージを託すことも考えていい。

 北朝鮮は拉致問題について、解決済みとの姿勢を変えず、膠着(こうちゃく)状態が続いている。金総書記に直接働き掛けることで、打開のきっかけになるかもしれない。

 2000年の首脳会談では、南北対話と東アジアの緊張緩和が急展開することに期待感があったが、その後、北朝鮮は期待を裏切り、核開発を進め、核実験を実施した。

 そうした態度を取る限り、国際社会は北朝鮮に対し懐疑的であり続ける。北朝鮮は信頼と成果を得る場として、首脳会談に真剣に向き合う必要がある。

=2007/08/10付 西日本新聞朝刊=
2007年08月10日00時23分


2007-08-10 金 「社説--比べて読めば面白い」 民主党と外交(日経)

2007-08-10 07:20:12 | 「保存している記事」から

「社説--比べて読めば面白い」 朝日 読売 日経
2007年08月10日(金曜日)付 日本経済新聞社説

国際社会は絶頂の小沢氏をどう見るか

 参院選で勝利し、絶頂にある小沢一郎民主党代表らしい対応だった。テロ対策特別措置法の延長に理解を求めたシーファー駐日米大使との会談である。論理で説く大使に、いささか感情論的な国連中心主義で応じ、それがすべて報道陣に公開される形で進む異例の展開だった。

 民主党はこれまでテロ特措法に反対してきたのだから、参院選で勝利したとはいえ、米大使と1度会談しただけで態度を変えるのはかえって不自然だろう。理由は何であれ、小沢氏が大使の説得に応じなかったのは予想されたし、当然だろう。

 私たちメディアは、会談が公開で行われたのを歓迎する。が、小沢氏はこれまでも、この種の会談をすべて公開してきたのだろうか。あるいはこれからも公開するのだろうか。私たちはそう希望する。

 しかし、もしそうではなく、米大使との会談だけが例外だとすれば、米側がそれを外交的に非礼と受け止めるのもまた自然だろう。こうした扱いをする小沢氏に対し、日本に大使を派遣している諸国の政府はどんな印象を持つだろう。

 「平成13年9月11日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」。国連中心主義者の小沢氏が延長に反対するテロ特措法の正式名称である。

 「国際連合」が2度も使われている点が極めて珍しい。シーファー大使はことし3月に採択された安保理決議1746にも言及したが、アフガニスタンでのテロとの戦いは安保理決議の明確な裏付けを持っている点がイラク戦争とは違う。それは国際的な常識であり、小沢氏の解釈は国際的には少数派に属する。

 テロ特措法に基づく海上自衛隊のインド洋での給油対象にはパキスタンが含まれる。日本の給油がなければパキスタンはインド洋での警備活動に参加する余裕はないとされる。イスラム国パキスタンの参加によって、この戦いがイスラム対その他の構図になるのを防いでいる点で日本の給油活動は重要とされる。

 私たちはインド洋での活動の継続を必要と考えるが、民主党が延長反対を貫く場合には、参院で延長法案を早期に否決し、衆院が3分の2で再可決する時間を確保すべきだろう。そうでなければ、第1院に示された民意よりも第2院のそれが優先する結果になる。


2007-08-10 金 「社説--比べて読めば面白い」 民主党と外交(朝日)

2007-08-10 07:10:05 | 「保存している記事」から

「社説--比べて読めば面白い」 朝日 読売 日経
2007年08月10日(金曜日)付 朝日新聞社説

民主党と外交―大きな構えで論戦を挑め

 米国の駐日大使が野党の民主党本部を訪ね、対テロ活動での協力を要請する。代表は大使に向かって米国の政策を公然と批判する。その模様はすべてメディアに公開される――

 これまでなら想像もできなかったことである。焦点は、11月1日に期限が切れるテロ対策特措法の延長問題だ。政府・与党は延長が既定路線だったが、参院で過半数を失った結果、民主党の協力を仰がざるを得なくなった。

 6年前の9・11テロから1カ月後、米国はアフガニスタンを攻撃した。国際社会は支持し、日本も海上自衛隊をインド洋に送り、対テロ行動に参加する各国艦船に給油する活動を始めた。

 米国としても、日本を戦列にとどめおく意味は大きい。小沢代表に対し、シーファー駐日大使は「機密情報でもどのような情報であれ、提供する準備がある」とまで述べて、協力を求めた。

 与党側はすでに、自衛隊の活動についての情報開示や、特措法の一部修正にも前向きの構えを示している。

 日米関係や安全保障で、これほど政府・与党が野党に歩み寄る姿勢を見せることが、かつてあっただろうか。

 政府・与党には、参院で否決されても衆院で3分の2の多数で再可決する道は残されているが、あくまで最後の手段だろう。必要な情報が開示され、真剣な論戦が交わされる。修正もある。そんな緊張感のある国会審議になれば、対米関係をめぐる日本の政治の風景は大きく変わるに違いない。

 民主党は以前からテロ特措法に反対してきた。参院選の大勝を考えると、この立場を維持するのは当然だろう。しかし、一法案の是非にとどめず、イラク戦争への評価を含めて、対米外交を根本から検証する機会にすべきだ。

 イラク戦争は、大義だった大量破壊兵器が存在しなかったばかりか、戦後のイラクはずたずたの状況だ。中東全域が不安定になっている。日本もこの戦争を全面的に支持した。この失敗について、まともな総括も反省も行われていない。

 インド洋とイラクでの自衛隊活動の詳細も明らかにしてもらいたい。イラクで活動する航空自衛隊は、何を運んでいるのか、どのくらい危険な業務なのか。文民統制の主体である国会がないがしろにされてきたのを、ただす必要がある。

 そうした検証の上で、日本の行動がテロをなくし犠牲を防ぐことに本当に役立っているのか、日本がやるべきことは何かをしっかり議論すべきだ。

 民主党には、米国にもの申す姿勢を世論に印象づけようとの狙いがあるのは間違いない。特措法をてこに安倍政権を追い詰める思惑もあるだろう。

 そうした要素は政治につきものだが、それだけが外交をかき回すことは好ましくない。民主党は政局の思惑を超えた外交の選択肢を示さねばならない。大きな構えの外交論議をしかけていくべきだ。


2007-08-09 木 「社説--比べて読めば面白い」 民主党と外交(読売)

2007-08-09 22:00:21 | 「保存している記事」から

「社説--比べて読めば面白い」 朝日 読売 日経
2007年08月09日(木曜日)付 読売新聞社説

小沢VS米大使 政権担当能力に疑問符がついた

 これでは民主党に政権担当能力はない、と判断されても仕方がないだろう。

 民主党の小沢代表とトーマス・シーファー駐日米大使が、テロ対策特別措置法の延長問題をめぐって党本部で会談した。

 シーファー大使は、海上自衛隊が多国籍軍への洋上給油活動を継続することに、民主党の協力を要請した。

 しかし、小沢代表は「ブッシュ大統領は『これは米国の戦争だ』と、国際社会のコンセンサスを待たずに戦争を始めた」と強調した。「日本は米国中心の活動には参加できないが、国連に承認された活動には参加したい」とも語った。

 国連安全保障理事会決議の承認を得ていない現在の海自の活動には反対する、という理屈のようだ。

 この主張は明らかにおかしい。

 海自の活動は、多国籍軍のテロ掃討作戦の一環である。2001年9月の米同時テロ後に採択された安保理決議1368に基づいている。アフガン国内で米英仏加韓など約20か国が、インド洋では日米英仏独パキスタンなど8か国の17隻がそれぞれ活動している。

 テロ掃討作戦は、小沢代表が言うような「米国の戦争」ではない。国際社会による対テロ共同行動である。

 小沢代表は、国連安保理決議1386に基づくアフガニスタン国際治安支援部隊(ISAF)への参加は可能だ、との考えを示した。

 しかし、それは、日本にとって、現実的な選択肢ではあるまい。

 米政府は再三、陸上自衛隊の輸送ヘリコプターのISAF派遣を打診しているが、日本側は「危険だ」と断っている。現在の海自の給油活動は、はるかに危険が小さい。国際的な評価も高く、国益に合致した人的貢献策と言える。

 アフガンでは、旧支配勢力タリバンが勢いを盛り返している。国際社会の対テロ活動は、今が正念場だ。

 シーファー大使は会談で、「日本の貢献は、日本と世界の治安にとって重要だ」とも指摘した。小沢代表は、日本自身が国際テロの標的とされている当事者であることを忘れたのではないか。

 民主党は参院選公約で、「相互信頼に基づいた、強固で対等な日米関係」の構築を訴えた。小沢代表と大使の会談は、民主党の要請で、報道機関に全面公開された。「米国に言うべきことは言う」という姿勢を示し、民主党の存在感をアピールする狙いなのだろう。

 だが、小沢代表から、日本が「国益」を踏まえてどう行動するか、という発言はなかった。極めて残念である。

(2007年8月9日1時35分  読売新聞)


2007-08-09 木 「社説--比べて読めば面白い」 南北首脳会談(東京)

2007-08-09 00:06:00 | 「保存している記事」から

「社説--比べて読めば面白い」 朝日 毎日 読売 日経 産経 東京 西日本
2007年08月09日(木曜日)付 東京新聞社説

南北首脳会談 非核化を進められるか

 七年ぶりに南北朝鮮の首脳会談が開かれる。六カ国協議による北朝鮮の非核化はこれから困難な段階に入るところだ。盧武鉉大統領は、北朝鮮が核放棄を確実に実行するよう説得できるか。

 南北首脳会談は、二十八日から三十日まで、盧大統領が平壌を訪問して、金正日総書記との間で行われる。二〇〇〇年六月に当時の金大中大統領が訪朝して、史上初めて首脳会談を行ってから七年ぶり、二回目となる。

 今回の会談は「南北関係の拡大発展、朝鮮半島の平和と民族共同の繁栄、祖国統一」に向け、「新たな局面を開くうえで重大な意義を持つ」(南北合意書)と強調している。

 当然、北朝鮮の核問題は主要議題になるはずだ。六カ国協議によって核施設の稼働停止が実施され、「次の段階」の措置であるすべての核計画の申告、既存の核施設の無能力化に向けて動き始めたばかりだ。

 北朝鮮の核は、北東アジア地域の最大の不安定要因である。盧大統領は核問題の解決に弾みをつけるよう最大限の努力をしてほしい。

 首脳会談は、盧大統領が就任時から呼びかけてきたものだ。第一回首脳会談では金総書記が早々に訪韓する約束だった。七年が経過したが、いまだに実現していない。

 しかも、北朝鮮はその間も核・ミサイル開発を進め、昨年十月には核実験の実施を発表するなど、地域の緊張を高めている。

 それでも、任期半年を残す盧大統領が訪朝するのは、対北融和策の有効性を強調し、成果を残すためだ。野党ハンナラ党が優勢な年末の大統領選で融和路線を継承する与党候補に肩入れする思惑もある。

 この点は金総書記の利害とも一致する。食糧などの大型支援獲得に融和政策は欠かせないからだ。

 金総書記はこの時期の首脳会談について「南北関係および周辺の情勢が好転した」と説明したという。とくに米朝関係が改善の兆しを見せる中、朝鮮戦争による休戦協定を平和協定に移行させる環境整備として南北関係改善は必要な材料だ。

 また、拉致や核問題で強硬姿勢を続ける日本に対するけん制という狙いもあるのではないか。

 しかし、北朝鮮の核問題は、六カ国協議の中で、確実な枠組みをつくりつつ進める以外に、核開発を断念させることは至難のことだ。

 盧大統領は、周辺国の連携が必須条件であることを念頭に首脳会談に臨んでほしい。核放棄をあいまいにしたり、過剰に妥協すれば、北朝鮮の時間稼ぎに利用されるだけだ。


2007-08-09 木 「社説--比べて読めば面白い」 南北首脳会談(産経)

2007-08-09 00:05:00 | 「保存している記事」から

「社説--比べて読めば面白い」 朝日 毎日 読売 日経 産経 東京 西日本
2007年08月09日(木曜日)付 産経新聞主張

南北首脳会談 対北説得に期待をしよう

 韓国の盧武鉉大統領と北朝鮮の金正日総書記との南北首脳会談が28~30日、平壌で行われることになった。金大中大統領時代の2000年6月、初めて実現して以来、2度目である。あらためて確認すれば、この間、あれだけ南北和解や交流・協力が言われ、あれだけ韓国からモノ、カネの支援が行われながら、首脳同士の接触は7年間、1回もなかったということだ。

 この事実は、韓国が自画自賛してきたような南北和解は、実際は必ずしも進んでいなかったことを意味する。新たな首脳会談を機に南北首脳の接触が増え、その結果、北朝鮮の金正日体制の透明性が高まり、南北が予測可能な関係になることを期待したい。

 韓国では以前から南北首脳会談推進説が流れていた。盧武鉉大統領はそれほど金正日総書記との首脳会談を希望していたというわけだ。韓国の歴代大統領には“首脳会談病”のようなものがある。北朝鮮首脳との会談を政権の業績として歴史に残したいからだ。そのため、たとえば前回の金大中大統領は首脳会談開催の“代価”として、4億5000万ドルもの外貨を北朝鮮にひそかに提供している。

 今回の“代価”は明らかでないが、自主外交が看板の盧武鉉大統領としては、合意文書にあるように「わが民族だけで」問題の解決を目指したいとの意欲があるようだ。ぜひそう願いたいものだ。

 その際、忘れてならないことは、2000年の南北首脳会談の後、国際社会にもたらされたものが北朝鮮の核兵器開発や弾道ミサイル発射だったという事実だ。軍事優先を国是にしている「先軍政治」の金正日総書記は、韓国からの経済支援を受けながら公然と軍備強化に励んできた。

 盧武鉉大統領は南北首脳会談では金正日総書記を説得してほしい。核兵器の放棄や軍事優先政策の手直し、民生優先経済への転換、開放・改革政策の選択、同じ民族として同胞の自由や権利の拡大、そして外国人拉致など過去の対外的不祥事に対する誠意ある対応など、問題は十分すぎるほどある。

 討論が大好きで民主化闘士だった盧武鉉大統領にとっては絶好の機会である。国際世論の期待を担って、ぜひ金正日総書記を動かしてほしい。

(2007/08/09 05:40)


2007-08-09 木 「社説--比べて読めば面白い」 南北首脳会談(日経)

2007-08-09 00:04:00 | 「保存している記事」から

「社説--比べて読めば面白い」 朝日 毎日 読売 日経 産経 東京 西日本
2007年08月09日(木曜日)付 日本経済新聞社説

北朝鮮に過度の融和は禁物だ

 韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領と北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)労働党総書記が今月28―30日、平壌で会談することになった。南北首脳会談は2000年6月以来、7年ぶりだ。朝鮮半島の平和体制構築が主要議題とされるが、北朝鮮の全面的な核廃棄や拉致問題解決にもつながるよう期待する。

 当時の金大中(キム・デジュン)大統領が訪朝した7年前は朝鮮半島分断から55年ぶりの南北首脳会談という歴史的意義があった。今回はそれほど高揚感はない。政権浮揚策にもしたい盧大統領と、国際社会からの各種援助を求めたい金総書記の利害が一致したという双方の事情が透けて見えるからだろう。

 8日に発表した南北合意書(5日付)には「朝鮮半島の平和と民族の繁栄、祖国統一の新たな局面を開くうえで重大な意義を持つ」と明記しながら、北朝鮮の核問題には直接触れていない。今回の首脳会談では南北の融和路線が先行し、拉致問題など日本にとっての懸案事項はあいまいになる可能性がある。

 韓国では12月に大統領選挙を控え、盧大統領が政権党への求心力を確保するために首脳会談を急いだとの見方も浮上している。実際、最大野党ハンナラ党は8日、「選挙用イベントで、かえって国民的な反感を呼ぶ」などと批判した。

 韓国内が一致団結して臨めないような首脳会談では、北朝鮮に足元を見られかねない。昨年のミサイル連射や核実験で国際的に孤立した北朝鮮としては、首脳会談で南北の融和ムードを演出し、対米関係の改善にもつなげたい考えとみられる。

 米政府当局者は首脳会談の開催を歓迎する意向を示し、韓国側から事前に通告があったとしている。

 だが、北朝鮮は6カ国協議で合意した核施設の停止など「初期段階の措置」に着手したにすぎない。全核施設の無能力化など「次の段階」のメドさえ立っていないのが現状だ。

 盧武鉉政権は北朝鮮に融和政策をとってきたが、首脳会談でも過度な融和姿勢を見せれば核問題や拉致問題の解決は遠のく。国際社会には韓国の過剰な妥協を懸念する声もあることを踏まえ、日本や米国など関係国と事前によく相談してほしい。


2007-08-09 木 「社説--比べて読めば面白い」 南北首脳会談(読売)

2007-08-09 00:03:00 | 「保存している記事」から

「社説--比べて読めば面白い」 朝日 毎日 読売 日経 産経 東京 西日本
2007年08月09日(木曜日)付 読売新聞社説

南北首脳会談 「北」の核廃棄へ前進できるのか

 北朝鮮の核廃棄を目指す6か国協議の進展につながるのかどうかが、核心の問題だろう。

 韓国の盧武鉉大統領が8月28日から北朝鮮を訪れ、金正日総書記と会談することになった。南北首脳会談の開催は7年ぶりだ。

 6か国協議は、北朝鮮の核廃棄に向けた核施設の運転停止など「初期段階の措置」履行がほぼ終わり、「次の段階」に入ろうとしている。

 こうした時期での南北首脳会談は、当然、6か国協議の実質的な進展に資するものでなければならない。盧大統領は、金総書記に核廃棄の早期実現をどう働きかけ、いかなる言質を引き出すのか。筋を通した姿勢で臨むべきである。

 2月の合意では、北朝鮮は「核施設の無能力化」と「核計画についての完全な申告」を実施し、その見返りに「重油95万トン分に相当する経済、エネルギー、人道支援」を得る。この「次の段階」実施のための行程表を、9月初めの6か国協議全体会合で作る予定だ。

 盧政権は任期切れまであと半年だ。首脳会談で成果を急ぐあまり、足元を見られ、北朝鮮のペースにのせられる危険がある。6か国協議の枠組みの外で、韓国が独自に対「北」支援の増大を約束するならば、核問題の解決はかえって長引く恐れもある。

 首脳会談が12月の韓国大統領選挙へ及ぼす影響も無視できない。

 圧倒的に優勢が伝えられる野党のハンナラ党は8月20日に大統領公認候補を決定する。与党側には、首脳会談で一気に形勢挽回(ばんかい)を図るという計算があろう。

 北朝鮮が、このタイミングで首脳会談に応じたのも、北朝鮮に厳しい態度をとるハンナラ党の政権より、左派政権の継続を願っているからだろう。

 韓国側は、首脳会談で朝鮮半島の平和について、軍事的な信頼醸成措置(CBM)や、「平和体制の構築」のための土台作りを目指すという。

 韓国には、6か国協議の合意にも明記された「朝鮮半島における恒久的な平和体制」協議へ発展させる狙いがある。南北朝鮮と米国、中国の4か国の協議で、朝鮮戦争の終結を宣言し、南北の平和共存を確実にしようというものだ。

 朝鮮戦争の休戦以来、半世紀以上も南北の軍事的対峙(たいじ)状況は変わっていない。だが、東西冷戦時代と異なり、今日、「北」の核が地域全体、とりわけ日本の安全を脅かすという深刻な状況にある。

 日本にとっても、自らの安全保障に直結する重要な問題だ。日本の安全が損なわれることがないよう、日本の立場をしっかり主張していくことが大事だ。

(2007年8月9日1時35分  読売新聞)


2007-08-09 木 「社説--比べて読めば面白い」 南北首脳会談(毎日)

2007-08-09 00:02:00 | 「保存している記事」から

「社説--比べて読めば面白い」 朝日 毎日 読売 日経 産経 東京 西日本
2007年08月09日(木曜日)付 毎日新聞社説

南北首脳会談 北に核廃棄を確約させよ

 すべては結果次第である。南北朝鮮の首脳会談が7年ぶりに開かれることが決まった。北朝鮮の核廃棄という東アジア最大の問題にとってプラスになるのか、マイナスに作用するのか。それによって韓国の盧武鉉(ノムヒョン)大統領の評価がはっきり分かれる。

 「首脳会談に失敗なし」と言われるが、北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記との首脳会談は、あらかじめ成功が約束されていないことを肝に銘じておかなくてはならない。

 初めての南北首脳会談は2000年6月だった。金大中(キムデジュン)・韓国大統領(当時)が平壌を訪問し、金総書記と平和的自主的民族統一などをうたった「南北共同宣言」に署名した。

 金大統領の太陽政策が、北朝鮮の柔軟化を導いたものとして高く評価され、金大統領はノーベル平和賞を受賞した。だが、その後、北朝鮮は着々と核兵器の開発を進め、昨年10月、核実験をした。最初の南北首脳会談は、期待外れの会談に終わった。

 では、第2回の首脳会談に、なにが期待できるのか。韓国は12月に大統領選挙が行われ、任期の切れる盧大統領は新しい大統領に政権の座を譲ることになっている。対北融和論を主張してきた盧大統領にとって南北首脳会談は最大の花道である。

 だが、盧大統領は退陣が近い。これまでの外交の仕上げはできても、新しい決定は次の政権に委ねるのが筋だろう。しかも、与党は分裂し、議会で多数を失っている。首脳会談の場所が「南北共同宣言」ですでに決められていたソウルではなく、また平壌になったのも、力関係において北が優勢であることを暗示している。

 首脳会談で盧大統領に期待されているのは、核廃棄に向けて北の背中を押すことである。6カ国協議を側面から支えて、核関連施設の無能力化を実現し、高濃縮ウラン計画を断念させ、金総書記に核廃棄の具体的スケジュールを約束させることである。

 それができれば第2のノーベル平和賞に値する。もし失敗すれば、北朝鮮の時間稼ぎに協力しただけに終わるだろう。

 このところ、日本が入った6カ国協議とは別に、米中韓朝の4カ国による朝鮮戦争終結の枠組みが当事国の間でささやかれている。その狙いが、米朝正常化交渉の切り離し先行や、拉致問題を抱える日朝交渉の棚上げであるなら、事実上の日本外しとして警戒しなければならない。

 南北首脳会談で4カ国協議への布石を打つのが北朝鮮の戦略ではないのか。朝鮮半島問題は、あくまで6カ国協議での核解決を最優先すべきである。かりに4カ国の枠組みを作るにしても、6カ国の合意を前提にすべきである。

 今回の南北首脳会談について、米国政府は韓国政府から事前通告を受けていたというが、日本政府には、韓国や米国からどのような連絡があったのだろうか。これから日朝部会も始まる。米国、韓国とは、呼吸を十分に合わせておく努力がますます必要だろう。

毎日新聞 2007年8月9日 0時05分


2007-08-09 木 「社説--比べて読めば面白い」 南北首脳会談(朝日)

2007-08-09 00:01:00 | 「保存している記事」から

「社説--比べて読めば面白い」 朝日 毎日 読売 日経 産経 東京 西日本
2007年08月09日(木曜日)付 朝日新聞社説

南北首脳会談―大統領は世界を代弁せよ

 韓国の盧武鉉大統領が今月末に平壌を訪れ、金正日総書記と会談することになった。双方がきのう、電撃的に発表した。南北朝鮮の首脳会談は、7年ぶり2回目である。

 分断国家の最高指導者がじかに会って意見を交わすのは、両国間だけでなくこの地域全体にとって好ましいことだ。核問題をはじめ北朝鮮を取り巻く緊張が和らぎ、安定する。その流れを確かなものにし、国際社会が希望を持てるような会談にするよう強く望む。

 それにしても、金大中大統領と金総書記との、分断後初の首脳会談が開かれた7年前のような高揚感は、いまソウルの街にはない。

 その後、北朝鮮は核開発の道を突き進み、核兵器の保有を宣言し、核実験まで行った。国連安保理では全会一致で制裁決議が採択された。北朝鮮を支援する太陽政策を推し進めた韓国にとっては、はしごをはずされたも同然だった。

 そんな吹っ切れない思いがあるのだろう。加えて、あの時に総書記が約束したソウル訪問は結局果たされないまま、南の大統領がまた北に出向くという。

 野党はさっそく「時期や場所、手続きのすべてが不適切だ」として、反対する論評を出した。

 この時期に首脳会談を開くことにした南北双方に、年末に迫った韓国大統領選への思惑があるのは間違いない。

 再選のない盧大統領は、あと半年の任期を残すばかりになった。支持率が低迷する盧氏にとっては、歴史に残る業績をつくる最後の機会であり、世論の風を起こすことで大統領派の選挙を有利に進める狙いがあるのだろう。

 そんな盧氏は、北朝鮮には御しやすい相手と映ったのではないか。盧氏と会って融和政策への言質を取る。次に誰が大統領になろうと、基本的な路線の転換はやりにくくしておく。対米関係をさらに進展させるため、和解ムードづくりへの計算もしているかもしれない。

 思惑はさまざまだが、貴重な首脳会談の機会は最大限に生かさねばならない。私たちが最も期待するのは、核の放棄という6者協議の目標を、金総書記の口から直接に確認させることだ。

 7年前の共同宣言に欠けていた軍事面での緊張緩和も、今度はしっかりと協議しなければなるまい。

 双方は開催合意の発表文で「『わが民族同士』の精神」で平和と繁栄、統一への新たな局面を開くとした。

 それは結構なことだが、あまり「民族」ばかりにこだわられては困る。核兵器や弾道ミサイルの開発を見るまでもなく、すでに北朝鮮問題は「民族」の枠だけで解決できない深刻な国際問題なのだ。拉致という人権問題もある。

 盧大統領は米国や日本、中国、ロシアといった関係国とも事前に調整し、いわば国際社会の声を代弁する形で金総書記と話し合ってもらいたい。


2007-08-09 木 「社説--比べて読めば面白い」 ナガサキ原爆の日(西日本新聞)

2007-08-09 00:00:00 | 「保存している記事」から

「社説--比べて読めば面白い」 朝日 毎日 読売 日経 東京 産経 中国 西日本 琉球新報 産経-2 西日本-2
2007年08月09日(木曜日)付 西日本新聞社説

怒りと理念共有する決意を 長崎原爆の日

 長崎は今年、2つの「事件」に揺れた。1つは4月、行動派の平和市長として内外に存在感を示した伊藤一長前長崎市長が、市長選の最中に凶弾に倒れたことである。もう1つは、言うまでもなく久間章生前防衛相による「原爆投下しょうがない」発言だ。

 62回目の「長崎原爆の日」を迎えた被爆地は、例年以上に怒りが渦巻いているように思える。

 とくに、6月末の久間発言は被爆者らの心を揺さぶった。「長崎に(原爆が)落とされ悲惨な目に遭ったが、あれで戦争が終わったんだという頭の整理で、しょうがないなと思っている」。当時の国際情勢などにも言及し「(原爆投下も)選択としてあり得るのかな」という認識も述べている。

 被爆者の心情を理解せず、逆なでする発言が、いとも軽く飛び出す現実がある。発言者は一国の防衛政策をつかさどる現職閣僚であり、地元選出の国会議員である。私たちは、これをどう受け止めたらいいのだろうか。


■「しょうがない」ではない

 長崎原爆被災者協議会(被災協)の結成に尽力した杉本亀吉初代会長(故人)は、自著に書いている。

 「若(も)し広島市、長崎市に新型爆弾(原爆)が投下されないで、あのような凄惨(せいさん)な虐殺が起こっておらなければ、戦争はもっと続いていたと思う。(略)広島市民、長崎市民の犠牲によって戦争が終結し、平和がもたらされたのである」(「原子雲の下に」)

 原爆投下によって戦争が終結した。こうした素朴な感情を抱く被爆者もいる。だが、そこには、きのこ雲の下で起きた地獄をくぐってきたからこその悲痛な思いがあり、亡くなった7万人余を含め被爆者自らを犠牲者と位置付けることで「原爆許すまじ」の固い意志がにじみ出る。決して「しょうがない」と片付けられるものではない。

 まして「長崎を最後の被爆地に」と祈る彼らにとって、いかなる理由があろうとも核兵器を使う「選択」は過去も未来も受け入れられないのだ。久間発言の第1の罪深さはそこにある。

 「問題は、それだけではない」と語るのは、長崎県被爆二世教職員の会の平野伸人会長(60)だ。

 平野さんが初めて韓国に渡ったのは1987年だった。日韓の被爆二世交流が目的だ。しかし、予期せぬ反応に戸惑う。「侵略された上に(父母は)被爆した。どこが同じ仲間か」。アジア諸国は「原爆によって日本の過酷な侵略や植民地支配が終わった」との思いが強い。それは「だから原爆投下は当然ではないか」(平野さん)という認識につながる。被害のみを訴えても核兵器の非人間性、廃絶の願いは理解されない、と気付かされたという。

 以後、平野さんらは在韓被爆者の発掘調査や渡日治療支援、ブラジルを含む在外被爆者の健康管理手当支給訴訟支援と、アジアを中心に在外被爆者の救済に動く。原爆投下を容認はできないが、アジアの歴史観を意識しながら相互理解を広げる活動だった。

 長崎市の平和宣言が「アジア太平洋諸国への侵略と加害の歴史を直視し、反省をしなければ(略)核兵器廃絶の訴えも世界の人の心に届かない」と明確に加害の側面に踏み込んだのは、被爆50年の95年である。

 「しょうがない」発言では、核廃絶を希求する日本の信念が疑われかねない。なぜか‐。「被害への深い洞察も、加害に対する自省もすっぽり抜け落ちているからだ」と平野さんは指摘する。被爆者の心に寄り添うこともなく、一方で、ナガサキが積み上げてきた平和を訴える取り組みをも結果的に踏みにじったということだろう。


■ナガサキの心を語り継ぐ

 久間発言への反発は大きく、被爆者だけでなく瞬く間に全国に広がった。原爆から核兵器へと表現は変われど、無差別大量殺(さつ)戮(りく)兵器は要らない。そんな国民の気持ちが期せずして表れたのではないか。平野さんは「被爆地の、日本の健全さを感じた」と言う。

 核廃絶の訴えは被爆者の「怒り」を背にして、連綿と続いてきた。この間、運動は試行錯誤を経ながら、平和宣言に象徴される「理念」も築いてきたのだ。この怒りと理念を共有することの大切さをあらためて痛感する。

 平和運動を被爆者に任せる時代は、とうに過ぎている。

 被爆者の平均年齢は10年前からでも7.4歳上がり、今年74歳に達した。被爆者が消える日は必ず来るのだ。平野さんらのような二世はもちろん、孫世代の3世も巻き込む。何より被爆者以外の若い世代に、被爆の惨禍と平和の尊さを伝える役割を担ってもらわないといけないときにきている。

 国連に核廃絶の声を届ける高校生平和大使の運動が長崎市で始まって、10年目を迎えた。これまで計26人が派遣され、賛同する若者が集めた署名は計約28万人に上る。この17日には6人の大使が約5万人の署名を携えて出発する。市民運動としてこの活動も支えてきた平野さんは話す。

 「被爆地の最終の目標は、核兵器を許さないという思いを人類が共通して持つことだ。その願いと訴えを語り継ぐ無数の種をまき、育てたい」

 私たちも、ナガサキの心を伝える決意を新たにしなければならない。

=2007/08/09付 西日本新聞朝刊=
2007年08月09日11時00分


2007-08-07 火 「社説--比べて読めば面白い」 ヒロシマ原爆の日(産経新聞)

2007-08-07 09:18:18 | 「保存している記事」から

「社説--比べて読めば面白い」 朝日 毎日 読売 日経 産経 東京 中国 西日本 琉球新報 産経-2 西日本-2
2007年08月07日(火曜日)付 産経新聞主張

広島平和宣言 なぜ北の核には触れない

 広島が62回目の原爆の日を迎えた。秋葉忠利市長は平和宣言で、「日本国政府は世界に誇るべき平和憲法をあるがままに遵守し、米国の時代遅れで誤った政策にははっきり『ノー』と言うべきです」と訴えた。だが、今年も昨年と同様、北朝鮮の核には言及がなかった。

 北朝鮮は昨年7月、計7発の弾道ミサイル発射実験を行い、10月には核実験まで強行した。日本にとって当面の最大の核脅威は北朝鮮であろう。秋葉市長の平和宣言はなぜ、北朝鮮の核の脅威には言及しないのだろうか。

 6カ国協議で、北は寧辺の核施設の稼働停止に応じ、非核化へ向けて第一歩を踏み出したかに見える。だが、核計画の完全申告や核施設無能力化などの問題は先送りされ、実施のメドすら立っていない。北は軽水炉をはじめとする要求を拡大することで、時間稼ぎを図る可能性も残る。

 そうした時期だけに、北朝鮮に対して完全に核廃棄を求める強いメッセージが必要だった。国際社会も日本国民もそれを期待していたはずだ。

 今年の広島の平和宣言は、4月に凶弾に倒れた伊藤一長前長崎市長にも哀悼の意を表した。伊藤前市長が昨年8月9日の長崎原爆の日に読み上げた平和宣言は、「核兵器保有を宣言した北朝鮮は、我が国をはじめ世界の平和と安全を脅かしています」と北の核の脅威にも触れていた。秋葉市長は伊藤前長崎市長から、現実を踏まえた平和宣言のあり方を学ぶべきである。

 6月末、久間章生前防衛相は千葉県内での講演で、米国の原爆投下について「しょうがない」と発言し、大臣を引責辞任した。日本は侵略したのだから原爆を投下されてもやむを得ないという考え方は、今も日本の一部の教育現場に残っている。

 だが、広島や長崎で原爆の犠牲になった人々のほとんどは、非戦闘員だった。米国でも戦後、アイゼンハワー氏やリーヒ氏ら元将校が原爆投下を疑問視する発言をしている。「原爆はソ連との政治戦争に使用された」(米の女性歴史家、ヘレン・ミアーズ氏)といった見方もある。

 現在も多くの被爆者が後遺症に苦しみながら亡くなっている。原爆の悲劇を繰り返さないためにも、バランスのとれた平和教育が必要である。

(2007/08/07 05:05)


2007-08-06 月 「社説--比べて読めば面白い」 ヒロシマ原爆の日(琉球新報)

2007-08-06 14:00:07 | 「保存している記事」から

「社説--比べて読めば面白い」 朝日 毎日 読売 日経 産経 東京 中国 西日本 琉球新報 産経-2 西日本-2
2007年08月06日(月曜日)付 社説

原爆の日 核廃絶こそが人類の使命

 広島、長崎は原爆被爆から62年の夏を迎えた。広島は6日、長崎は9日の「原爆の日」にそれぞれ平和式典を催し、核廃絶への誓いを新たにする。未曾有の惨禍で、おびただしい犠牲を払ったにもかかわらず、今日なお核兵器保有国が存在し、被爆者たちの声を受け止めようとしない。

 そんなエゴがいつまで許されるのだろうか。少なくとも日本は、唯一の被爆国としてこれ以上、核保有国のエゴを許すわけにいかない。核廃絶が絶対に譲れない一線であることを、核保有国を含む世界各国に対し、一段と強く訴えねばなるまい。


続く被爆者の苦痛

 原子爆弾は第二次大戦末期の1945年8月6日、広島市の上空で米国のB29爆撃機から投下された。爆心地の地表温度は4000度に達し、大量の放射線が発生。市内の建物の9割以上が焼失または全半壊し、その年だけで推定約14万人が死亡した。

 3日後の9日、今度は長崎市に原爆が投下され、市の上空で爆発した。爆風と放射線で、同年末までに約7万4千人が死亡した。翌年以降に亡くなった被爆者も数万人規模に上り、生存被爆者の多くは、がんなど放射線が原因の健康障害に苦しんでいる。被爆は決して過去の出来事ではない。極めて今日的問題である。

 中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」は、原爆のすさまじさを描き出す。全身にやけどを負い、皮膚が垂れ下がったまま苦しむ人たち。倒壊した家屋に圧死した家族ら。どれも“地獄絵”だ。激しい地上戦に巻き込まれた沖縄県民にも通じる光景であり、こうした体験・教訓を風化させることなく、次世代に継承していく必要性をあらためて痛感する。

 ところが世界に目を向けると、未曾有の惨禍を教訓とするどころか、格段に威力を増した核兵器が開発され続けている。米国、ロシア、英国、フランス、中国の五カ国に加え、インド、パキスタン、イスラエルが事実上の核保有国とされ、北朝鮮も「核保有」を宣言した。

 確かに、米ソ冷戦時代は「抑止力」としての核の役割が強調された。いわば、使うことを基本的に想定しない核であった。しかし、冷戦後も核は“居座り”続ける。イランや北朝鮮が大国に対抗する政治カードとして核開発をちらつかせてきたこともあり、米国などは従来の抑止力から用途を広げ、核を「ならず者国家やテロ組織」に対して使うことも辞さない兵器と位置付け始めた。

 実際、ブッシュ米政権が核テロ対策の一環として、広島と長崎の原爆被爆者やビキニ水爆実験被ばく者の調査を続ける邦人研究者らの技術協力を受けていたことが分かっている。


「抑止力」の変質

 これは看過できない。危うい事態である。1970年発効の核拡散防止条約(NPT)は核兵器の保有を米国、ロシアなど五カ国に限り、他の国の保有を禁じているが、一方で「核軍縮交渉の義務」を課した。その義務をないがしろにしてはいないか。五カ国以外の核保有を禁じるのは当然だが、保有国が核軍縮への取り組みを怠っていいはずがない。肝心な部分を忘れてもらっては困る。

 翻って日本はどうか。長崎出身の久間章生前防衛相が、米国の原爆投下を「しょうがない」と発言し、当初、安倍晋三首相も擁護した。原爆投下は多くの市民の命を奪い、今なお被爆者を苦しめる残虐行為だ。発言は被爆国の閣僚として非常識で、被爆者の気持ちを踏みにじる暴言と言わざるを得ないが、これを首相が擁護してしまったのでは、被爆国の意識が薄れたと言われても仕方がない。

 久間発言を念頭に置いてか、広島市の秋葉忠利市長は6日の平和記念式典で、日本政府が「被爆の実相と被爆者の哲学」を謙虚に学ぶよう訴える。長崎市の田上富久市長も9日の式典で、核兵器使用が正当化されないことを政府が世界に訴えるよう求めるという。

 被爆地の訴えを日本政府、そして各国は真剣に受け止めてもらいたい。国際社会が結束して非核運動のうねりをつくり出せば、核保有国のエゴをただせるし、道も開けよう。核廃絶は人類に与えられた使命であり、喫緊のテーマである。核の恐怖から脱するために、日本が果たす役割は大きい。各国をリードし、ことしの原爆忌を平和構築への再出発点としたい。

(8/6 9:42)


2007-08-06 月 「社説--比べて読めば面白い」 ヒロシマ原爆の日(西日本新聞)

2007-08-06 13:56:44 | 「保存している記事」から

「社説--比べて読めば面白い」 朝日 毎日 読売 日経 東京 産経 中国 西日本 琉球新報 産経-2 西日本-2
2007年08月06日(月曜日)付 西日本新聞社説

被爆体験が平和国家の礎だ 広島原爆の日 

 奇抜なファッションの若者たちが行き交う東京・渋谷。「1945年8月6日に何があったか知っていますか」。返ってくる答えは「知らない」「分かんない」。

 日系米国人のスティーブン・オカザキ監督の記録映画「ヒロシマナガサキ」はこんなシーンから始まる。

 62年前のきょう、広島に原子爆弾が落とされた。人々は、白い光に包まれ、黒い雨に打たれ、その年のうちに14万人が亡くなった。広島から3日後には長崎も核の劫火(ごうか)に焼かれ、7万人が命を奪われた。

 映画は、被爆者14人が語る壮絶な体験を中心に、原爆開発や投下にかかわった米国側関係者へのインタビューも交え、原爆の悲劇を証言でつづる。

 米国では「原爆投下は戦争の早期終結のためにやむを得なかった」との考え方が一般的だ。原爆を使用しなければ戦争は長引き、米兵100万人、日本側はそれ以上の犠牲者が出たという主張を多くの人が信じている。

 オカザキ監督は、原爆投下の正当性論争に陥ることなく、核兵器の非人道性と、それによって家族を失い、体と心を傷つけられた人たちの人生をあるがままに描こうとした。米国映画としては画期的な試みだ。6日にはケーブルテレビで全米に放映される。

 監督は「原爆被害に対する認識と関心を世界中に呼び起こしたかった」という。最大の核保有国である米国の市民に、核の真実を知ってほしいという思いがうかがえる。イラク戦争などで示された米国の「力による正義」への警鐘なのかもしれない。

 同時に、唯一の被爆国の日本ですら原爆の記憶が薄れつつあるという危機感が、スクリーンからひしひしと伝わる。冒頭の渋谷の場面は、今を生きる日本人への痛烈なメッセージだ。

■「何てことしてしまった」

 若者の無関心ばかりが問題ではない。原爆投下を「しょうがない」と言った防衛相が引責辞任したのは先月のことだ。昨年は、北朝鮮の核実験をきっかけに外相や自民党幹部が核保有論議の必要性を主張し、物議を醸した。

 北朝鮮の核開発は、日本にとって深刻な脅威だ。対抗策や抑止力が必要という声が高まるのも分からないではない。だが「目には目を」と、安直に防衛力の拡大均衡に走るのは愚かなことだ。道は険しくとも、核廃絶へ、一歩一歩、愚直に努力を重ねることが、被爆国である日本がこれからも進むべき道ではないか。

 映画の中で、原爆を投下した爆撃機の乗組員が「何てことしてしまったんだと思った」と、胸の内を明かす。

 どんな理屈を並べても、大量殺りくに正当性などない。人類は「何てことしてしまったんだ」という、人としての率直な思いを、若い世代に語り継ぐことこそが本当に必要なことだ。

    ×   ×   ×   

 この夏、広島を訪ねた。平和記念公園の「原爆の子の像」には、ことしもたくさんの折り鶴が届いていた。外国の子供たちが折った、不格好だけど心のこもった鶴も翼を広げていた。

 2歳で被爆し、12歳の時に白血病で亡くなった佐々木禎子さんの死をきっかけに、像は建立された。禎子さんが回復を願って病床で折った千羽鶴にちなみ、原爆の犠牲となった子どもたちを悼み、平和を祈念する無数の鶴たちが、像を取り巻いている。

 折り鶴をシンボルに、ヒロシマ・ナガサキの核廃絶の運動は世界に広がった。だが、核の現実はどうだろう。

■揺らぐ「核の安全保障」

 世界には今も約3万個の核兵器がある。国際社会は核拡散防止条約(NPT)を結び、核保有国は核兵器削減を約束した。しかし核軍縮は停滞し、米国は新型核兵器の開発を進めている。

 一方で、NPTに参加していないインドとパキスタンは核保有を宣言し、イスラエルも核保有国とみなされている。さらに北朝鮮が昨年核実験を行い、イランも核開発を続けている。

 国際ルールに縛られない核保有国の出現で、核の安全保障体制は大きく揺らいでいる。イランが核武装すればサウジアラビアやエジプトなども核を持とうとするだろう。北朝鮮の脅威には、韓国や台湾でも核保有論が台頭しかねない。「核のドミノ倒し」が起こる可能性は否定できない。

 核拡散の「負の連鎖」は何としても断ち切らなければならない。

 日本は10年以上、国連総会に核廃絶決議を提出してきた。毎回採択されているが、米国などの反対で実効は上がっていない。「非核三原則」を国是とする日本として何ができるのか。戦略を練り直す時ではないか。

 「(北朝鮮の核放棄に向けた)6カ国協議は広島で開くべきだ」。広島で開かれた国際平和シンポジウムで、姜(カン)尚中(サンジュン)・東大大学院教授が提案した。

 ヒロシマ・ナガサキで始まった核の物語に終止符を打つためには、原点に立ち返ることも大切だ。恨みや憎しみを、平和への願いに昇華させてきた被爆地の人々の強さは、世界を揺り動かす力があるはずだ。

 被爆体験を非核・平和国家の礎とした私たちの戦後の歩みを振り返り、その重みをかみしめる。きょうはそんな日にしたい。

=2007/08/06付 西日本新聞朝刊=
2007年08月06日10時53分


2007-08-06 月 「社説--比べて読めば面白い」 ヒロシマ原爆の日(中国新聞)

2007-08-06 13:54:07 | 「保存している記事」から

「社説--比べて読めば面白い」 朝日 毎日 読売 日経 産経 東京 中国 西日本 琉球新報 産経-2 西日本-2
2007年08月06日(月曜日)付 中国新聞社説

ヒロシマ62年 体験は風化していない
 
 仏事でいう五十回忌をとうに済ませ、半世紀の節目も去った。還暦の六十年も過ぎている。一九四五年八月六日、広島市への原爆投下で始まった核時代。犠牲者を悼む大小のつどいがきょうをピークに、ことしも市内外で繰り広げられる。一方「いつまで原爆、原爆と言わんといけんのかのう」と疑問のつぶやきも漏れてくる。

 市内で建物疎開中に被爆死した旧制高等女学校の同級生二百二十三人をしのぶ初めての追悼集が今月、発行された。編集に奔走した七十五歳の女性は「向こうで、おかっぱ頭のままの友だちに会った時に『あんたら、長生きしながら何しとったん』と言われたくない。その思いからでした」と明かす。

 被爆者の無念が晴らされているのなら、いつまでも原爆にこだわる必要はあるまい。熱線、爆風、そして放射線。通常爆弾をはるかに上回る威力で人体を極限までさいなみ、一気にあるいは後障害で苦しめた末に生命を奪う。「水をください」「死にとうない」という叫びは「核兵器はもう決して使わないで」との願いに昇華したのではないか。被爆者の悲願がかなうどころか、遠のくばかりの状況が続く限り、私たちは原爆についていつまでも「言わんといけん」のである。

 核保有論議再び

 北朝鮮が昨年十月九日に強行した初めての核実験が、「核の脅威にさらされている」と日本国民の不安を増幅させたのは間違いない。政府与党内に以前からくすぶっていた核保有論議が不安に乗じて再び頭をもたげてきた。

 「一つの考えとしていろいろな議論をしておく」とか「やられたらやり返すという論理はありうる」との物言いは巧妙だ。一九九九年十月、小渕恵三内閣の防衛政務次官が品位のない文言も交えて核武装の必要性に言及して批判を浴び、事実上更迭されたのは記憶に新しい。今回発言した政治家らは「論議そのものを否定するのか」と逆襲。安倍晋三首相は自身もかつて「小型なら憲法上問題ない」と述べたとされており、発言すること自体は容認する姿勢を示している。

 この種の主張にたいしては論議を封じるのではなく、立論を徹底して検証することが大切だ。その前提となるのが被爆体験である。核保有論者はヒロシマの訴えをしばしば「あまりに情緒的」と切り捨てる。誤解しないでほしい。私たちは被爆の事実を直視するよう求めているのである。惨状を再び繰り返さない。この命題から出発すれば、核保有論が成り立つ余地はほとんど見いだせないのではないか。

 揺るがぬ非核を

 核保有論にはいわゆる保守陣営内部からも反論が出された。米国の核抑止力に頼る「核の傘」から外れると、核拡散防止条約(NPT)体制からも離脱して核燃料などをめぐる国際協力が得られず、原発も稼働できなくなる―。日米安保条約を存続させる現状維持の立場からの指摘である。米国とも一致しており、現実政治ではこれが大勢かもしれない。

 現実論といえば、国是としてきた非核三原則の「持たず」「つくらず」「持ち込ませず」のうち、第三項は在日米軍の存在で現実に空洞化しているとの解釈もある。この際、公然と受け入れ、米国の核搭載艦船が常時寄港した方が抑止効果が高まるとの主張につながりかねない。

 日米同盟堅持と非核三原則見直しという二つの議論に対しては、安全保障を米国任せにする無責任な路線だとの批判がある。そればかりでなく、現状を固定化して容認する見方ともいえる。日米安保体制は永続的な枠組みなのか、自国内にいつまでも他国の軍隊を配備するのか。日米関係も含め、現時点での国際関係は将来変わり得るし、変える必要も起こり得る。そう考えないと、核廃絶の訴えは貫けまい。

 現状を少しでも打開しようと、九七年の平和宣言で平岡敬前広島市長は「核の傘」に頼らない安全保障体制構築への努力を求めた。自治体として精いっぱいの表現だったろう。当時の橋本龍太郎首相は米国の意向に気兼ねして否定的だったと聞く。日本政府の姿勢が残念でならない。

 NPT体制はインド、パキスタンに続く北朝鮮の核実験で、ますます不安定になった。米国は北朝鮮の核放棄に向けて六カ国協議を生かしながら対話重視の姿勢を強め、イランの核問題でもイラク情勢安定化につながる方策を模索している。日本は非核保有国として、核軍縮の促進を軸にしたNPT体制再強化に尽力すべきだろう。

 語っておかねば

 被爆体験の風化がいわれて久しいが、ことしは少し違う。被爆者の間で「今、語っておかなければ」との思いが強まっているように感じられる。数々の証言を盛り込んだ映画やドラマ、書籍が新たに登場するのもそのためだろう。しっかり学びたい。

 原爆症の認定基準をめぐる訴訟では原告の被爆者側勝訴、被告の国側敗訴の判決が相次ぐ。いったん決めた行政の基準を改めるには、もはや政治判断しかないとも目されている。安倍首相はきのう、広島市内で被爆者団体代表らと面会。首相としては六年ぶりの直接対話の席で、認定基準見直しについて検討する意向を初めて明らかにした。解決につながるよう期待したい。

 できるだけ多くの人がきょう一日、平和記念公園をはじめ広島の街をわずかでも巡ってほしい。ここかしこで六十二年前の痕跡と出合えるだろう。核問題を考えるよすがになれば幸いである。結論は急がなくていいから。