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2007年08月10日(金曜日)付 西日本聞社説
半島非核化へ実質進展を 南北首脳会談
韓国の盧武鉉(ノムヒョン)大統領が28日から北朝鮮の平壌を訪問し、金正日(キムジョンイル)総書記と会談することになった。2000年6月の金大中(キムデジュン)前大統領の訪朝以来、7年ぶりの南北首脳会談である。
2度目なので、衝撃性は弱い。韓国内の受け止めも冷静である。しかし、めったにない北朝鮮の最高指導者の外交舞台登場は注目してよい。核問題や東アジア情勢についての発言は無論、日本にとってもよそ事ではない。
会談では北朝鮮の非核化、朝鮮半島の平和体制構築、南北の経済協力拡大などを話し合うことになるようである。このなかで最大のテーマは、言うまでもなく非核化問題だ。
6カ国協議の合意により、北朝鮮は寧辺の核施設の稼働停止と監視・検証に応じ、「初期段階の措置」は完了した。次は核施設の完全な無能力化と核計画の申告である。その見返りに、関係国はエネルギー・経済支援を行う約束だ。
この問題で、金総書記の口から非核化の確約を取り付けることが、盧大統領の最大の仕事である。総書記の言葉は、北朝鮮では格別の重みがある。確約は今後の6カ国協議の弾みともなる。
注意が必要なのは、経済協力の在り方である。6カ国協議の枠外で、韓国が支援を拡大すれば、核放棄の見返りとしての支援の効果は減殺される。それは6カ国協議の混乱のもとともなる。
このタイミングの首脳会談について、韓国内では、年末の大統領選をにらみ、野党候補優勢の現状を覆したいという盧大統領の計算があるとの見方がある。低迷する大統領支持率を、退任前に回復したいとの思いもあるかもしれない。
大統領選については、北朝鮮の立場からも、金大中政権以降の対北融和政策を今後も継続してもらううえで、北朝鮮に厳しい姿勢を示す野党ハンナラ党の政権誕生は望ましくなかろう。
南北双方の政権の思惑が一致した面は確かにありそうだ。ただし、両首脳の顔合わせが単なる政治ショーに終わるようなら、むしろ、失望を招くだけだ。実質的な成果が不可欠である。
日本としては、盧大統領に日本の拉致問題も会談で持ち出してくれることを要望したい。そのため、事前に大統領にメッセージを託すことも考えていい。
北朝鮮は拉致問題について、解決済みとの姿勢を変えず、膠着(こうちゃく)状態が続いている。金総書記に直接働き掛けることで、打開のきっかけになるかもしれない。
2000年の首脳会談では、南北対話と東アジアの緊張緩和が急展開することに期待感があったが、その後、北朝鮮は期待を裏切り、核開発を進め、核実験を実施した。
そうした態度を取る限り、国際社会は北朝鮮に対し懐疑的であり続ける。北朝鮮は信頼と成果を得る場として、首脳会談に真剣に向き合う必要がある。
=2007/08/10付 西日本新聞朝刊=
2007年08月10日00時23分