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2007-08-24 金 「社説--比べて読めば面白い」 安倍外交(読売)

2007-08-24 23:14:40 | 「たかお・サンパウロ」

読売新聞 社説 2007年08月24日(金曜日)付

日印首脳会談 重層的な「新次元」の関係を築け

 日本とインドが昨年12月の首脳会談で合意した「戦略的グローバルパートナーシップ」をどう実質化するか。今回の首脳会談は、そのための具体的行程を示した。その重層的な合意内容を着実に実施していかねばならない。

 安倍首相が、グローバルパートナーシップの象徴的なテーマとして重視したのが地球温暖化対策だ。温室効果ガスの排出量を2050年までに現状から半減するという構想を説明し協力を求めた。

 シン印首相は、安倍構想について「国際的議論への重要な貢献だ」と評価し、2012年までの温室効果ガス削減目標を定めた「京都議定書」後の、新たな枠組み作りに参加する意向を表明した。

 「ポスト京都」の温暖化対策は、米国や中国、そしてインドも含めた主要排出国の参加なしには実効があがらない。安倍首相が、インドからも一定の協力を取り付けたことは、成果といってよい。

 ただ、シン首相は、「環境保全と経済発展を両立させることが重要だ」として新興国としての立場も強調した。経済成長を第一とする新興諸国を、どのように新たな枠組みに取り込んでいくか。今後の大きな課題だ。

 シン首相は、民生用原子力で米国から支援を受ける米印原子力協定について、日本の支持を求めた。安倍首相は、明確な態度表明を避けた。

 記者会見で安倍首相は、「日本は唯一の被爆国として、核不拡散体制への影響を十分見極めていく。注意深く検討していく必要がある」と述べた。

 米印原子力協定は、核拡散防止条約(NPT)の枠外で核を保有した国への原子力協力であり、NPT体制を空洞化させかねない。日本として慎重に対応していくのは当然だろう。

 戦略的なパートナーとしての日印協力を具体化する上で重要な課題の一つが、安全保障分野での取り組みだ。

 共同声明は「シーレーンの保全と安全」確保のため、2国間協力の方向性について検討していくことを明記した。

 シーレーンの安全確保は、原油などエネルギー資源を海上輸送に頼る両国にとって共通の利益だ。両国の関係当局で検討を進め、安保協力を向上させたい。

 経済協力分野では、経済連携協定(EPA)の早期締結をめざすとともに、2010年までに、両国間の貿易額を現在の年間約100億ドルから200億ドルへと拡大することでも合意した。

 日印両首脳は、両国関係を「新しい次元」に引き上げることで一致したという。そのための作業を加速させていかねばならない。

(2007年8月24日1時23分  読売新聞)


2006-11-30 木 防衛「省」 改めて昇格に反対する

2006-11-30 06:05:38 | 「たかお・サンパウロ」

朝日 毎日 読売 産経 東京 北海道 神戸 中国 沖縄タイムス 琉球新報

今日の朝日新聞社説

防衛「省」 改めて昇格に反対する

 戦争が終わって60年が過ぎた昨年、詩人の長田弘さんはそのころ盛んに語られた「戦後60年」という表現に疑問を投げかけた。「不戦60年」と言うべきではないのか。

 「昭和の戦争に敗れて戦争はしないと決めてからの、戦争をすることを選ばなかった『不戦60年』という数え方のほうが、この国に戦争のなかったこの60年の数え方としては、むしろ当を得ています」(長田弘「知恵の悲しみの時代」みすず書房)

 60年もたてば、多くのものは古くなって時代に合わなくなる。手直しするのは当然だ。憲法しかり、戦後民主主義しかり――。そんな風潮がある。

 だが、日々続けてきたものは古くなるのではなく、日々新たな到達点がある。そこを前向きに評価したい、というのが長田さんの言いたいことだろう。

 防衛庁を「省」に昇格しようという法案の審議が衆院で大詰めを迎えている。きょうにも本会議で可決される見通しだ。「庁」という形は時代に合わないから、直したいということのようだ。

 防衛庁が生まれて52年がたつ。自衛隊は国土防衛だけでなく、カンボジアへの派遣をはじめ海外でもさまざまな経験を積んだ。かつてと比べ、国民は自衛隊や防衛庁をより肯定的に評価するようになったのは事実だ。

 だがこの間の歩みには、戦前とは違う国のありようを求めてきた私たち自身の決意が投影されていることを忘れてはならない。

 戦後日本は、侵略と植民地支配の歴史を反省し、軍が政治をゆがめた戦前の過ちを決して繰り返さないと誓った。だからこそ、戦後再び持った武力組織を軍隊にはせず、自衛隊としてきた。普通の軍隊とは違う存在であることを内外に明らかにする効果も持った。

 軍事に重い価値を置かない、新しい日本のあり方の象徴でもあった。国防省や防衛省ではなく「防衛庁」という位置づけにしたのも、同じメッセージである。

 省になってもこれまでと実質的な違いはないと、政府・与党は言う。自衛隊員が誇りを持てる。諸外国も省の位置づけだ。名前が変わったからといって、戦前のような軍国主義が復活するわけではない。それはそうだろう。

 だが、問われているのは私たちの決意であり、そうありたいと願う戦後日本の姿である。古びたり、時代に合わなくなったりする問題ではないはずだ。

 長田さんが「不戦60年」の表現を薦めるように、私たちは「庁」にこだわりたい。省になることで、軍事的なものがぐっと前に出てくることはないのか。そんな心配もある。

 日本は、惨憺(さんたん)たる敗戦に至った歴史を反省し、新しい平和の道を選んだ。それは多くの国民が賛成し、いまも支持している選択だ。その重みを考えると、あたかも古い上着を取り換えるようなわけにはいかない。

 


2006-10-06 金 今日の朝日新聞社説

2006-10-06 04:03:07 | 「たかお・サンパウロ」

朝日社説】 2006年10月06日(金曜日)付

安倍首相へ 歴史を語ることの意味

 1940年6月。欧州に暗雲がたれこめていた。ナチス・ドイツが破竹の勢いで進撃し、フランスもあっけなく軍門に下った。イギリスの命運も風前のともしびかと思われた。

 そのとき、首相チャーチルはこう述べた。「イギリスの戦いが今や始まろうとしている。もしイギリス帝国と連邦が千年続いたならば、人々が『これこそ彼らのもっとも輝かしい時であった』というように振る舞おう」

 第2次世界大戦の最も厳しい時に、英国民を鼓舞した演説の一節である。後世の人々が私たちを見ているという言い回しには、人の心を揺さぶるものがある。

 彼の覚悟の背後には、歴史を経ても通用する価値への強い信念がある。20世紀を代表する名演説のひとつだ。

 ところが、そのチャーチル首相を尊敬するという安倍首相の、歴史をめぐる発言には疑問を持つことが多い。首相は保守とは何かを聞かれて、こう答えた。

 「歴史を、その時代に生きた人々の視点で見つめ直そうという姿勢だ」。言いたいことは、侵略や植民地支配について、今の基準で批判するのではなく、当時の目線で見よということなのだろう。

 この考えは、歴史について半分しか語っていない。過去の文書を読み、歴史上の人物の行動を理解するとき、時代の文脈を踏まえることは言うまでもない。だが、それは出発点にすぎない。

 さらに一歩進んで、歴史を評価するとき、その時代の視線を尺度にしたらどうなるだろうか。歴史には様々な暗黒面がある。人間が人間を動物のように扱う奴隷制や人種差別、ホロコーストなどの大量虐殺。それぞれはその体制の下では問題にされなかった。

 私たちは時代の制約から離れて、民主主義や人権という今の価値を踏まえるからこそ、歴史上の恐怖や抑圧の悲劇から教訓を学べるのである。ナチズムやスターリニズムの非人間性を語るのと同じ視線で、日本の植民地支配や侵略のおぞましい側面を見つめることもできるのだ。

 安倍氏の言う歴史観は、歴史の持つ大切な後半部分が欠けている。

 安倍氏の歴史観にはもうひとつ奇妙な点がある。肝心なことになると、歴史家に評価をゆだねてしまうことだ。

 5日の衆院予算委員会では、村山談話などを個人として受け入れる考えを示し、従来の姿勢を改めつつあるものの、民主党の菅代表代行に満州事変の評価を問われると「政治家は謙虚であるのが当然であろう」と答えを避けた。

 安倍氏は民主主義や平和を重んじてきた戦後日本の歩みは誇るべきだと語っている。ならばその対比としての戦前にきちんと向き合ってこそ説得力を持つ。

 政治家が歴史の前に謙虚であるべきなのは、チャーチルに見られるように、現代の行動の評価を後世がするという緊張感からなのだ。単に歴史を語らないのは、謙虚ではなく、政治家として無責任、あるいは怠慢と言うしかない。

 


2006-10-02 月 日中首脳会談 毎日新聞の記事

2006-10-02 19:43:21 | 「たかお・サンパウロ」

1.安倍首相訪中:最悪の対日関係改善に強い希望 胡指導部
2.安倍首相訪中:アジア外交立て直しへ強い意欲 補選前に
3.安倍首相:「変化」期待の中韓両国側と思惑が一致
4.安倍首相訪中:胡錦濤国家主席と会談固まる 韓国訪問も
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毎日新聞 政治 > 行政  2006年10月2日 3時00分

安倍首相訪中:最悪の対日関係改善に強い希望 胡指導部

 【北京・飯田和郎】中国の胡ム濤指導部が、安倍晋三首相と胡国家主席の首脳会談に応じる決断をしたのは、小泉純一郎前首相の靖国神社参拝で「国交正常化以来最悪」(日中筋)の対日関係を、安倍政権誕生を機に改善したいという強い希望からだ。事前折衝ではすでに、安倍首相の今後の靖国参拝について、中国国民を一定程度、納得させる「合意」がなされた可能性がある。

 胡指導部は小泉政権末期から「安倍首相誕生」を想定したうえで、日本側にサインを送り続けてきた。胡主席ら首脳・高官はこのところ、日中関係に言及する際、「共に努力する」との言葉を繰り返した。

 中国側は「中日関係は重要な歴史的時期にある」(温家宝首相)との認識を持つ。日本を一方的に批判するだけではなく、日中双方による打開策の模索や譲歩の必要性を強調したものだ。実務的な対日関係を目指そうという胡指導部の姿勢が表れており、それが安倍首相受け入れの最終判断の根拠になったとみられる。

 中国共産党は8日から4日間、北京で第16期中央委員会第6回総会(6中全会)を開く。国慶節(建国記念日)からの連休中の現在も6中全会の準備が続いており、党の重要会議開催という多忙な時期に外国首脳を迎えるのは極めて異例だ。これも中国側の関係改善への意欲の強さを示している。

 一方で、中国は靖国参拝への態度を明確にしない安倍首相に警戒感も抱いてきた。また、反日機運が根強い現在、安倍首相の受け入れは、指導部にとって勇気を伴う決断でもある。安倍首相が首相就任後も靖国参拝を続ければ、指導部批判につながりかねないからだ。

 このため、首脳会談では、安倍首相が靖国問題で中国側にとって前向きと受け取れる発言が約束されているとみられる。ただ、冷え切った日中関係が一気に改善される可能性は低く、胡指導部は初の首脳会談を通じて、安倍首相との信頼関係構築から手をつけることになる。

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毎日新聞 政治 > 行政  2006年10月2日 3時00分

安倍首相訪中:アジア外交立て直しへ強い意欲 補選前に

 安倍晋三首相の早期訪中・訪韓がZットで実現する方向となった背景には、今月22日投開票の衆院統一補選前にアジア外交立て直しへの足がかりを得たいという、首相の強い意向があった。ただ、中国は首相に靖国神社参拝の自粛を求める姿勢を変えていない。首相は参拝問題について「行くか行かないかも含め言わない」ことを総裁選で強調していただけに、中国の胡錦濤国家主席や韓国の盧武鉉(ノムヒョン)大統領にどういう見解を示すかが焦点となる。

 「中国としては安倍首相は任期中、靖国神社を参拝しないと理解している」。中国筋は1日夜、安倍首相の訪中が実現する方向になったことを明かしたうえで、安倍首相が胡主席との会談で参拝自粛を表明することに期待感を示した。安倍首相サイドと中国の間で参拝自粛の密約が交わされた可能性を指摘する声も出始めている。

 安倍政権誕生を織り込む形で、外務省は新政権発足以前から中国、韓国との首脳会談実現を模索してきた。ただ、「靖国」問題がやはりネックとなった。先月23~26日に東京で開かれた日中次官級の総合政策対話で外務省の谷内正太郎事務次官が首相の早期訪中を打診したのに、中国の戴秉国外務次官は「政治的障害を取り除く必要がある」と首相の参拝自粛を求めて合意できなかった。

 「訪韓だけではインパクトが薄い。訪中と訪韓はセットだ」(日本政府筋)。次官対話が不調に終わった後も日本側は中国との水面下の折衝を続けるとともに、韓国にも訪中を前提とした首相訪韓の受け入れを働きかけてきた。11月にアジア太平洋経済協力会議(APEC)の開かれるベトナムでの日中・日韓首脳会談は実現する見通しが強まっていたが、安倍首相にとっては衆院統一補選前の「訪中・訪韓サプライズ」が欲しいところだった。

 ただ、訪中・訪韓が実現しても、靖国参拝など歴史認識問題で小泉純一郎前首相と同様、首脳同士の溝の深さが際立ってしまえば、かえって日中・日韓関係の改善が遠のきかねない。中国側が首相訪中を受け入れたこと自体は関係改善の意欲の表れだが、対中強硬派を支持基盤とする安倍政権だけに、靖国問題などでの譲歩を危ぶむ見方も出ている。【平田崇浩】

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http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20061002k0000m010141000c.html
毎日新聞 政治 > 行政

安倍首相:「変化」期待の中韓両国側と思惑が一致

毎日新聞 2006年10月2日 3時00分

 途絶えていた日中、日韓首脳会談が再開されることになった。小泉純一郎前首相が退場、安倍晋三首相に代わったのを機に、日本の「変化」を期待する中韓両国側と、アジア外交立て直しに強い意欲を示す安倍新政権との思惑が一致した結果だ。ただ、中国は安倍首相に対しても、靖国神社参拝の自粛を求める姿勢を変えていない。中国の胡錦濤国家主席や韓国の盧武鉉(ノムヒョン)大統領に首相がどういう見解を示すかが大きな焦点となる。

 「中国としては安倍首相は任期中、靖国神社を参拝しないと理解している」。中国筋は1日夜、安倍首相の訪中が実現する方向になったことを明かしたうえで、安倍首相が胡主席との会談で参拝自粛を表明することに期待感を示した。首相は参拝問題について「行くか行かないかも含め言わない」ことを総裁選で強調していたが、具体的な対応は明らかでない。安倍首相サイドと中国の間で参拝自粛の密約が交わされた可能性を指摘する声も出始めている。


 ◇靖国問題などで譲歩危ぶむ見方も

 安倍政権誕生を織り込む形で、外務省は新政権発足以前から中国、韓国との首脳会談実現を模索してきた。ただ、靖国問題がやはりネックとなった。9月23~26日に東京で開かれた日中次官級の総合政策対話で外務省の谷内正太郎事務次官が首相の早期訪中を打診したのに、中国の戴秉国外務次官は「政治的障害を取り除く必要がある」と首相の参拝自粛を求めて合意できなかった。

 「訪韓だけではインパクトが薄い。訪中と訪韓はセットだ」(日本政府筋)。次官対話が不調に終わった後も日本側は中国との水面下の折衝を続けるとともに、韓国にも訪中を前提とした首相訪韓の受け入れを働きかけてきた。11月にアジア太平洋経済協力会議(APEC)の開かれるベトナムでの日中・日韓首脳会談は実現する見通しが強まっていたが、首相にとっては10月22日投開票の衆院統一補選前の「訪中・訪韓サプライズ」は欲しいところでもあった。

 ただ、訪中・訪韓が実現しても、靖国参拝など歴史認識問題で小泉前首相と同様、首脳同士の溝の深さが際立ってしまえば、かえって日中・日韓関係の改善が遠のきかねない。中国側が首相訪中を受け入れたこと自体は関係改善の意欲の表れではあるが、対中強硬派を支持基盤とする安倍政権だけに、靖国問題などでの譲歩を危ぶむ見方も出ている。【平田崇浩】


 ◇首相の靖国参拝問題で「合意」の可能性も

 中国の胡錦濤指導部が安倍首相との首脳会談に応じる決断をしたのは、小泉前首相の靖国神社参拝で「国交正常化以来最悪」とされた対日関係を、安倍政権誕生を機に改善したいという強い希望からだ。事前折衝で安倍首相の今後の靖国参拝について、中国国民を一定程度、納得させる「合意」がなされた可能性も考えられる。

 胡指導部は小泉政権末期から「安倍首相誕生」を想定し、強硬姿勢から転換。「中日関係は重要な歴史的時期にある」(温家宝首相)と位置づけ、首脳・高官は最近、日中関係に言及する際は必ず「共に努力しよう」と繰り返した。

 これは日本を一方的に批判するのではなく、日中双方による打開策の模索や譲歩の必要性を強調したもので、実務的な対日関係を目指す胡指導部の姿勢が表れた。それが安倍首相の受け入れという最終判断につながったようだ。

 中国共産党は8日から中央委員会総会を開く。重要会議開催という時期に外国首脳を迎えるのは極めて異例。中国側の関係改善への熱意を日本側に伝える効果も期待しているようだ。

 ただ、安倍首相の訪中同意は「勇気」を伴う決断でもある。反日機運が根強い中、首相が訪中後、靖国参拝をすれば、指導部批判につながりかねない。このため、首脳会談では首相が靖国問題で、中国側が前向きと受け取れる発言をすることが約束されているとの見方も強い。

 歴史認識に関し、安倍首相が北京でどのように言及するかが最大の注目点になるが、一気に関係が改善するとは期待していない。胡指導部は初の首脳会談を通じ、安倍氏との信頼関係構築から手をつけたい考えだ。【北京・飯田和郎】


 ◇日中が動き始める中で現実的な選択 韓国

 韓国政府は「安倍政権になっても靖国問題に関する従来の立場は変らない」(外交通商省高官)との対日強硬姿勢を堅持し、歴史問題で日本が「誠意ある行動」を示すことを促してきた。靖国参拝問題への安倍首相の対応はなお不透明な部分が多いが、韓国としては、日中が動き始める中で現実的な選択をしたと言えそうだ。

 韓国政府内には「日本の友好国として、中国より先に(安倍首相と)首脳会談すべきだ」(外交通商省筋)との主張もあったが、結局は中国が先行するのを認めた。元々は中国に先立って日韓首脳会談を開催する提案を日本から受けていたが、5~8日が秋夕(旧盆)の連休のため、日程が合わなかった。

 安倍首相が中韓を連続して訪問する形なら、日中韓の3カ国連携を重視するという盧武鉉(ノムヒョン)政権の持論を「壊さない」と国内向けに説明できる利点もある。【ソウル堀山明子】

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毎日新聞 政治 > 行政

安倍首相訪中:胡錦濤国家主席と会談固まる 韓国訪問も

2006年10月2日 3時00分

 安倍晋三首相が8日に中国・北京を訪問オ、胡錦濤国家主席と会談することが1日、固まった。中国側が会談に応じる方針を既に日本側に伝えている。日中関係筋が明らかにした。首相は訪中後、9日に韓国も訪問し、盧武鉉(ノムヒョン)大統領と会談する方向で最終調整している。日本の首相が訪中して首脳会談に臨むのは01年10月の小泉純一郎前首相以来5年ぶりで、首脳会談は昨年4月のジャカルタ以来。小泉政権で冷え込んだ中国、韓国との関係は、安倍首相の中韓セット訪問で改善に向け一歩踏み出すことになる。

 首相は中韓両国との関係改善を日米同盟強化と並ぶ外交の最優先課題としている。首相には両国を初外遊先にすることで、アジア重視の姿勢を内外に示す狙いもあり、中国とは自民党の中川秀直幹事長らが水面下で交渉を続けてきた。

 これまでの調整で、韓国とは8、9両日の訪問が検討されてきた。ただ、韓国は竹島問題などをめぐり反日感情が根強いため、韓国単独訪問には難色を示し日中間の調整を見守っていた。中国側が首脳会談に応じる方針を日本側に伝えてきたことで、中韓両国のセット訪問実現が確実となった。日中外交当局は2日に首脳会談に向けた詰めの協議を行うが、安倍首相は温家宝首相とも会談する見通しだ。

 中国政府は安倍首相就任後の9月26日、温家宝首相が就任を祝い「日中関係は重要な歴史的時期にある」とするメッセージを安倍首相に送った。これに応える形で、安倍首相も同月29日の所信表明演説で「中韓両国との信頼関係の強化は、アジア地域や国際社会全体にとって極めて大切であり、未来志向で率直に話し合えるようお互いに努めていくことが重要」と表明した経緯がある。

 10月8日は中国共産党第16期中央委員会第6回総会(6中全会)の開幕日に当たる。国内で重要な政治日程がある中での訪問受け入れは、安倍政権誕生を機に対日関係改善を目指す中国側の意欲の表れとみられる。

 ただ、これまで中国は首脳会談の条件として、首相の靖国神社参拝自粛を明言するよう要求してきた。日本側は参拝をあいまいにする安倍首相の戦略を説明、理解を求めており、両国政府間で何らかの折り合いがついた可能性もある。首脳会談でこの問題がどう扱われるかが最大の焦点だ。

 首相の訪中について外務省幹部は「これですぐに未来志向というわけではないが、成功すれば安倍外交の大きな一歩になる」と話している。

毎日新聞 2006年10月2日 3時00分

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2006-08-19 土 ■この夏、メディアは競って戦争責任を問うた―今朝の朝日新聞社説から

2006-08-19 11:44:52 | 「たかお・サンパウロ」
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2006/08/19 1152号                    (転送紹介歓迎)
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      ┃Y・記・者・の・「・ニ・ュ・ー・ス・の・検・証・」┃
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□■この夏、メディアは競って戦争責任を問うた―今朝の朝日新聞社説から

 この夏、メディアは首相の靖国参拝問題をベースにしながら、日本の侵略戦争を振
り返り、戦争責任を掘り下げた。放送もNHKスペシャルを軸に深く過去と現在を掘
り下げた。

 朝日新聞は19日付社説「戦争とメディア 競って責任を問うた夏」で、「中国へ
の侵略から始まった日本の戦争をめぐる論議が、この夏、活字メディアやテレビで盛
り上がった。きっかけは、この5年間、小泉首相が靖国神社に参拝し続けてきたこと
だ。 」と書き起こした。

 そのなかで、読売新聞が昨夏から1年かけて戦争責任を検証したことや、NHKの
「日中戦争――なぜ戦争は拡大したのか」「硫黄島玉砕戦」「満蒙開拓団はこうして
送られた」などの番組を評価した。毎日新聞の連日の靖国問題を考える連載や特集、
A級戦犯合祀(ごうし)に昭和天皇が不快感を持っていたことを裏付ける元宮内庁長
官のメモをスクープした日経新聞のことにもふれた。

 社説の締めくくりで、読売新聞が戦争責任検証の総括として書いた、「軍の力がそ
れほど強くなかった満州事変の時点で、メディアが結束して批判していれば、その後
の暴走を押しとどめる可能性はあった」とする部分を紹介した。そして次のように言
い添えた。

***
 全く同感だ。メディアが権力を監視し批判する使命を放棄したらどうなるか。この
重い教訓を忘れないようにしたい。
***
 と。たしかにそのとおりである。

 朝日新聞社説は、読売新聞が発表した戦争責任検証記事について、「結論はおおむ
ね私たちの考え方と一致していた」としつつ、気になる点として(1)昭和天皇の責
任を問わなかったのは東京裁判と同じだが、法的にはともかく、全く責任なしと言い
切るには論拠が弱かった、(2)15日の社説には、「犠牲者は、日本国民だけでは
ないが……」とあるが、おびただしい犠牲を出したアジアの人々への責任には踏み込
まなかった、の2点を挙げている。

 私は読売新聞の同記事を読んで、この検証をもって読売は「いまの日本は違う。自
民党は軍国主義には走らないとしている」ということへとつなげようとしているのだ
ろうか、あるいは戦争責任の検証を通じて、手を引くべきところで引かなかった「責
任者」たちを明確にしてみせることを通じて、「今度の対テロ戦争では、一定の貢献
をはたさねばならないが、先の教訓に従い深みにはまり込むような誤った戦争指導は
しない」とでも言い出すのだろうか、と感じたが、さてどうなるだろか。

 19日の読売新聞社説は、[アフガン支援]「テロ特措法は延長が必要だ」として、
「国際平和活動」の恒久法制定へ前進すべきではないかと提言している。

 読売新聞の件、それからNHKの好番組については、朝日新聞が挙げたほか、7月
23日(日)放送の「ワーキングプア ~働いても働いても豊かになれない~」にも
ふれて、紹介しようと考えていた。いい機会なのでこの稿でかえさせていただく。

朝日新聞19日付社説 戦争とメディア 競って責任を問うた夏
http://www.asahi.com/paper/editorial20060819.html
読売新聞 15日付社説 [終戦の日]「『昭和戦争』の責任を問う」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060814ig90.htm
硫黄島 玉砕戦 ~生還者 61年目の証言~
http://www.nhk.or.jp/special/onair/060807.html
NHKスペシャル再放送予定表
http://www.nhk.or.jp/special/rerun/index.html
NHKふれあいミーティング」参加者募集
テーマ:NHKスペシャル「ワーキングプア~働いても働いても豊かになれない~」
実施日時:9月9日(土) 14:00~16:00 下記からエントリーを
http://www.nhk.or.jp/css/comunication/boshu/


◆戦後の平和主義日本という床板を踊るように踏み抜いた小泉政権

 前世紀半ばに日本が指導部が突進させた侵略戦争は、日本人の精神の奥深くまで軍
国主義をもって侵略した。いかなる状況になろうとも敵兵に白旗をみせてはならない
と神の国の戦闘を強要し、竹槍で人心を結束させて犠牲を膨れ上がらせた。

 いま米国の戦争への加担姿勢を強める自民党が、靖国神社の侵略戦争正当化の試み
を援護し、A級戦犯を裁いた東京裁判を否定する論陣を張る。侵略戦争を裁いた列強
の侵略体質を批判しながら、侵略戦争を正当化する。この道は、自ずと対米追従の道
を選択させ、好戦的な教育を復活させ、市民の言論統制と服従を求めるものとなり、
その結果もたらされるであろう統制国家の団結の姿を、誇ろうとするだろう。

 しかしながらポスト小泉の筆頭とされる安倍官房長官は、自身の考えを語れと求め
るメディアに答えようとしない。語らないまま自民党内の派閥の合従連衡で自民党総
裁につき、そのまま多数を占める国会の勢力を背景に内閣総理大臣に就任すれば、い
ったいどのようなことになるのだろうか。

 それは政府・与党として積み上げてきた失政を市民の目から遠ざけ、覆い隠し、市
民の国政への参加を促すのではなく、市民の国政への忠誠心と無関心とを期待する政
治手法としてさらに磨きがかけられることになるのだろうか。メディアは「夏」の時
期だけに限られた風物詩として過去の戦争を語り、秋を迎えればそれをすっかり忘れ
去って御用報道に奔走するようになるのだろうか。

 昨年の総選挙で投票した選挙民の意思は、他国への侵略を是とし、権力への国民の
絶対服従を強いた靖国史観を抱いたままの人に、小泉首相が崩壊させた近隣外交の建
て直しを付託しようとはしていない。結局はただのカラオケ好きのお祭男でしかなか
った変人首相は、戦後の平和主義日本の積み上げた種々の資産という床板を踊るよう
に踏み抜いてきた。

◆この夏、少しだけ語られた私たちの行き先

 短いものとなるのか長いものとなるのか、それはとりあえず措くとして、議会制民
主主義のルールに従って、コクピットに座る新たな機長は、本来向かうべき方向へと
機首を戻せるのだろうか。機長としての資格の有無が問われているのに答えを拒否し、
行き先も上空の天候も伝えようとせずに滑走し始めるのだとすれば、飛行中に大きな
揺れが生じたとしても、事実を報告するのではなく、その理由を告げるのに最もふさ
わしい言い訳をあれこれ編み出しては、乗客の失笑を買い続けながら、しだいに乗客
を不安の暗闇に投げ込む方法を考えるようになるのではないか。

 日本国憲法という従来にない優れたエンジンと機体は、それにふさわしい高みと行
き先へと乗客を誘う可能性を秘めている。だが、いま機長の予定表には、双発機レベ
ルの免許しか有しない人物の名前が上がっている。その機長が、勝手に乗客は「普通」
の航行を求めていると決め付け、乗客の了解も得ずに航路を変更し、海底の砂を巻き
上げてはそれを排除してまわるのを得意技とするブッシュ号の後ろについて飛行する
のだとすれば、どうなるか。

 わかっている乗客は最初から乗らないか、パラシュートを持参して乗り込むか、途
中で飛び降りるか、あるいは機長の交代を要求するかなど、限られた選択肢しかない。
飛び立ったあとであればなおさら選択肢は狭まることになる。実はショッキングなこ
とに、私たちのほとんどはこの機体から降りることはできない。いまの機長もひどい
ものだが、今度の機長候補もその機長らのグループから推薦された人だけだ。

 より望ましい機長に変わってもらうには、機長らの所属するグループのほうを乗客
が選びなおさねばならない。それはそう難しいことではないはずなのだが、この機体
に秘められたパッセージを堪能したことのある旅行者はごく少数にとどまっているこ
と、そのためまだその旅行の質が十分掘り下げられておらず、魅力を語り尽くせない
でいること、そしてチケットは存在するのに航空会社が提示する行き先にはほとんど
その名は表示されない。

 その結果、乗客は飛びぬけた性能の機体に乗りながら、またその機体を共同で所有
しながら、行き先はいつもながらの場所を選択するにとどまっている。いったい私た
ちのパッセージのありようの、どこに問題があるのか。この夏、それが少しだけ語ら
れたのかもしれない。機体にこびりついた泥を落とす必要があることが、少しだけ語
られたのかもしれない。

 それでもまだこの機体は泥だらけのまま放置されている。過去5年間に、その泥は
べったりと層をなして機体を覆い隠し始めている。新しい機長候補は、この機体のす
ばらしさを知らないのか、知っていても偏見をもっているのか、もっと泥だらけにし
て見えなくするか、完全に塗り替えるか、それとも機関銃付の双発機に乗り換えるこ
とを提唱しているように思える。

 彼らは知らないのだ、この機体を操縦するのは機長やクルーばかりではないことを。
乗客全員が操縦に参加してようやく飛んでいるのだということを。そして乗客はその
ことをとうに知ってはいるが、その力をためすべきかどうか本気で迷い始めているこ
とを。

…  …  …  …  …  …  …  …  …  …  …  …  … 
【訂正】08/18 1151号「Y記者のニュース検証」
×操作→〇捜査

──────────────────────────────────────

2006-08-18 金 ■18日 各紙が「言論封殺テロは許さない」

2006-08-19 00:00:22 | 「たかお・サンパウロ」
2006-08-18


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      ┃Y・記・者・の・「・ニ・ュ・ー・ス・の・検・証・」┃
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□■18日 各紙が「言論封殺テロは許さない」

 昨日の号で加藤氏宅全焼に対する朝日新聞、東京新聞、産経新聞の社説をご紹介し
た。きょう18日も、続いて各紙が「言論封殺テロは許さない」とする社説を掲げた。

 事件は小泉首相が靖国参拝を強行した8・15に起きた。都内の右翼団体所属の男
が現場で割腹自殺を図った。鶴岡市内の病院に入院、治療中で事情聴取はできない状
態が続いているもようだが、複数の部屋の焼け跡から灯油とみられる油性反応が確認
されており、男による放火の疑いが強まっている。

 また18日午後、山形県警の捜査員が、男が所属する右翼団体の事務所を捜索した。
 これまで声明文などは見つかっていないが、加藤議員は小泉純一郎首相の靖国神社
参拝を批判しており、県警は押収した資料を分析して、男の思想的背景と放火の関連
性を調べるものと思われる。

 15日の段階では加藤氏宅の焼失と、現場で発見された男との関係を特定できなか
ったが、16日以降には男が右翼団体の構成メンバーであること、油性反応が確認さ
れたこと、事前に現場を確認していたことなどが判明したため、17日朝刊の段階で
社説で素早く取り上げた新聞が出、18日朝刊でさらに各紙が続くという動きが出て
いる。

 小泉氏の靖国参拝強行は、個人としてであろうと公人としてであろうと、その名目
にかかわらず、日本の首相が憲法の掲げる政教分離原則に反する行為である。靖国神
社は日本の侵略戦争を美化し、正当化する主張を打ち出しており、戦争を戦った者を
英霊として祀り上げ、戦争を鼓舞する施設ではあっても、戦争被害者を追悼する施設
ではない。

 首相はそれを「心の問題」として、また「公約」と称して内外の批判を振り切り、
参拝を強行して自身の政権の最後を飾り立てるパフォーマンスに走ったわけだが、そ
の日に小泉首相の行動に反対を唱える同じ自民党の議員であり、元幹事長で首相とは
盟友の時代もあった加藤氏宅が全焼するという事態が起きた。

 にもかかわらずこの事態に対するコメントが聞こえてこない。県警が動き、操作が
始まっており、事実関係がはっきりしてから声を出すというのが政府筋の考えだとし
たら、それは民主主義を破壊する「言論封殺テロ」に対する初動の有り方としては誤
っているのではないか。

 読売新聞もこの件について社説でまだ声を挙げていない。新聞を複数購読している
読者は少ない。各紙が素早く「言論封殺テロ」を許さないとする毅然とした態度を表
明することが大切である。政府やメディアで沈黙する理由がほかにあるのならば、そ
れを早く公表することが肝要であるはずだ。首相自身が騒然とした空気を盛り上げよ
うとする態度を示しているなかである。いやな空気を払いのけるための行動こそが、
求められている。

北海道新聞社説 加藤氏宅全焼*許されぬ言論への暴力(8月18日)
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?j=0032
琉球新報社説 加藤議員宅放火・許せない言論封じるテロ
http://ryukyushimpo.jp/news/storytopic-11.html
毎日新聞 社説:加藤議員宅放火 言論封じる風潮を憂う
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060818k0000m070132000c.html
日本経済新聞 社説1 政治・言論活動の封殺狙うテロを許すな(8/18)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20060817MS3M1700317082006.html
しんぶん赤旗 主張 政治家宅放火 言論へのテロは許されない
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-08-18/2006081802_01_0.html

<昨日掲載分>
朝日新聞 加藤氏宅放火 政治テロを許さない
http://www.asahi.com/paper/editorial20060817.html
東京新聞 許されない『言論封じ』 加藤邸放火
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20060817/col_____sha_____003.shtml
産経新聞 加藤氏実家全焼 許されない言論へのテロ
http://www.sankei.co.jp/news/editoria.htm

2006-08-17 木 ■首相の靖国参拝と加藤氏宅の放火――16日、17日の各紙社説を読む

2006-08-18 00:00:00 | 「たかお・サンパウロ」
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2006/08/17 1150号                    (転送紹介歓迎)
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□■首相の靖国参拝と加藤氏宅の放火――16日、17日の各紙社説を読む

 15日の小泉首相の靖国神社参拝と加藤紘一自民党元幹事長の実家などが全焼した
火災の件を、大手各紙は社説でどう扱ったか。16日、17日の社説から見ておきた
い。

 靖国神社は兵士を追悼する場所ではない。敗戦後、旧天皇制の終焉とともに性格を
変えるか、あるいは店じまいすべきだった。にもかかわらず、日本の侵略戦争を正当
化し、戦後の平和国家日本が積み上げてきた歩みを否定する、偏頗なイデオロギーの
標榜を強めてきた。

 第二次世界大戦等でアジア諸国は2000万人(うち中国が半数以上を占める)も
の戦争犠牲者を出した。日本人戦没者も300万人を超える。小泉氏の渾身のパフォ
ーマンスは、小泉支持層大半の支持を得たようだが、それは小泉氏に限った反応のよ
うだ。同じ人々が次期総裁の靖国神社参拝には反対の意思表示をしている(→毎日新
聞)。

 毎日新聞の世論調査で、複雑な国民感情があぶりだされたが、15日朝のNHKニ
ュース、夜の討論番組はともにおそまつだった。小泉氏の靖国参拝を伝えるNHKニ
ュースの姿勢は、先の北朝鮮のミサイル発射報道と同様、大事なことを何も伝えず、
同氏が「公約」に沿って靖国参拝を行ったことをただただ強調する内容だった。

 夜の討論番組もひどかった。アンケートでは、小泉氏の靖国参拝を是とする割合が
6割を超えた。NHKはこの番組でいったい何を伝えたのだろう。論点をどこまで掘
り下げ、視聴者と共有したのだろう。日本の現在と将来を形成していくのに不可欠の
歴史認識の問題である。ゲームではないのだ。たとえ井戸端会議方式を売り物にしよ
うとした討論番組でも、NHKとして最低限発揮すべき矜持を読み取ることはできな
かった。

 さらには同番組で最も損をしたのは麻生外相だろう。強面を露出し、結果的に小泉
氏及び安部氏を利する結果となった。その場では自分を前面に押し出したつもりかも
知れないが、メディアの果たす効果をまったく考慮に入れずに外相としての保身と自
民党としての枠を超えられず、強い姿勢での代弁に終始した。それがもたらしたもの
を、ご当人は十分わかっておいでだろう。

 NHK内部での番組検証能力の確保・向上を強く要望しておきたい。

 一方で民放は、小泉氏の靖国参拝を批判し、国際社会での日本のありようを説く加
藤紘一自民党元幹事長を各局が起用するなど、首相・閣僚のの靖国参拝に懐疑的な世
論をバックに靖国神社と戦後の歴史観についての議論を深めようとする姿勢をとった。
加藤氏は、自民、公明、民主3党の議員でつくる「国立追悼施設を考える会」のメン
バーでもある。その加藤氏の実家兼事務所が全焼した。

 出火は15日午後5時50分ごろだった。家人は出かけていて無事だったが、木造
2階建て約338平方メートルが全焼した。現場には腹を切り、その後火から逃れた
と思われる男が倒れていたが、その男は東京の右翼団体関係者と判明したという。火
災前日と当日、現場周辺で加藤氏事務所の所在地を聞き回っていたこともわかった。
県警は、男が事前に下見をした上で放火したものとみており、男の回復を待って事情
を聞くことにしている。

 小泉首相の8・15靖国神社参拝に対し、16日、産経新聞以外の各紙が批判、警
鐘の社説を掲げた。

朝日新聞 靖国参拝 耳をふさぎ、目を閉ざし
http://www.asahi.com/paper/editorial20060816.html
毎日新聞 8・15首相参拝 こんな騒ぎはもうたくさん
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060816ddm005070151000c.html
日本経済新聞 ひとりよがりの小泉首相靖国参拝
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20060815MS3M1500415082006.html
東京新聞 これで終わりにしたい 首相 終戦の日に靖国参拝
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20060816/col_____sha_____001.shtml
読売新聞 [首相靖国参拝]「『心の問題』だけではすまない」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060815ig90.htm

 毎日新聞社説は、「次の首相を争う自民党総裁選の候補者たちは、この置きみやげ
から逃げられない。国内でも、国際社会でも通用するきちんとした回答を用意してお
くべきだ。来年もまたこんな騒ぎを繰り返すのは、もううんざりだ。」と、言い放っ
て論を締めたが、小泉氏の行動は首相にあるまじきものである。

 それがわからないのか、わかっていてやっているのか知らないが、自分の人気の維
持や自民党の改革のためにやっているのだとしたら、まさに「うんざり」である。次
期自民党総裁選に出馬する人は、東京新聞社説の言うとおり、「正式な出馬表明を目
前にしてなお、首相参拝の論評を避けるようでは資質が疑われよう。」というもので
ある。

 また加藤氏宅放火に対しては、男が東京の右翼団体関係者と判明したのをうけて、
17日、朝日新聞、東京新聞、産経新聞が政治テロ、言論テロは許さないとする論陣
を張った。「いかなる理由があるにせよ、民主主義社会でテロは絶対に許されない」
(産経新聞)。今回の加藤氏宅・事務所の放火の目的が金にあるのか言論封じにある
のか、はたまた自身の売名や政治の混乱を目的としたものなのか、今後の解明を待ち
たい。

 毎日新聞社説がこの放火にふれなかったのは残念だが、論説委員・近藤憲明氏の
「小泉時代考」は読み応えがあった。以下にその一部を紹介する。

 私には、小泉政治のもたらしているもののなかに、加藤氏宅放火のような行為を招
き寄せる要因がふくまれているように思えた。「民主主義社会でテロは絶対に許され
ない」と書いた産経新聞に他紙と同様、敬意を表しつつ、ぜひ、この社説が標榜する
<「普通の人々」がそれぞれの価値観を認められる社会の実現>について考えてみて
ほしいと思う次第である。

***
 はっきり言えることがある。小泉時代の5年間は「勝ち組」と「負け組」に分けた
がる社会風潮が強まった。下流社会という耳障りな言葉も流行した。それゆえ、格差
社会を助長したというより、格差社会「感」をまん延させたと言うほうが正しいかも
しれない。
***

 みんなが中流になれる社会を目指した戦後日本は、格差を縮める社会を築こうとし
てきた。それを小泉時代は、市場原理主義と規制緩和に身をゆだね、結果として社会
の二極分化に目をつむってきた。無軌道にホリエモンや村上ファンドのような「勝ち
組」を跋扈させ、ニートやフリーターはいよいよ貧困とあきらめの道を歩まねばなら
なくなった。

 社説は「それを国策として認知してきたと言えまいか。」と問い掛ける。そして
「国家の品格を左右するのは一握りの勝ち組ではなく普通の人々なのだ。」と国家の
品格の源泉に言及しておわっている。

 小泉氏は調子乗ってのなのか、意固地になってなのかは知らないが、日本が封印し
後の世に解決を託した「パンドラの匣」をコントロールする力もないくせに不用意に
開けてしまった。小泉氏はもちろん安部氏や麻生氏はじめ、自民党の面々に、それを
超克する力など見出せない。日本だけでなく世界が、さまざまな重要課題に直面して
いる。その中で「戦争」というきな臭い風に人心を引きずり込み、自分たちの無力・
無策をごまかそうとしてきたそのツケが、新たな課題となって私たちにのしかかって
きている。

 それを余計なこととして忌み嫌うまい。いつか本気で取り組むべきときがやってく
ることは確かだったのだから。ただ「パンドラの匣」を開けた小泉氏およびその御一
行さまは、それによって重大な問題提起をしたわけでも、改革を推進したわけでもな
い。それだけははっきりしている。


朝日新聞 加藤氏宅放火 政治テロを許さない
http://www.asahi.com/paper/editorial20060817.html
東京新聞 許されない『言論封じ』 加藤邸放火
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20060817/col_____sha_____003.shtml
産経新聞 加藤氏実家全焼 許されない言論へのテロ
http://www.sankei.co.jp/news/editoria.htm

毎日新聞 社説:視点=小泉時代考 論説委員・近藤憲明
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060817k0000m070125000c.html

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2006-08-09 水 ▽中韓が安倍氏の靖国参拝に批判 日中の世論調査では分祀でも容認せず

2006-08-09 23:35:26 | 「たかお・サンパウロ」
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  ◆◇◆◇┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐◆◇◆◇
      │Z│記│者│の│「│報│道│の│現│場│か│ら│」│
      └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘

▽中韓が安倍氏の靖国参拝に批判
 日中の世論調査では分祀でも容認せず

 安倍官房長官は4月に靖国神社に参拝したという報道は中国、韓国に大きな打撃を
与えたようだ。特にポスト小泉の最有力候補と目されてきている人物だけに、今後の
動きを見ながらの警戒も出てきている。冷え切ったアジア外交がこのままでは悪い方
へつながりかねない状態だ。

 まず、中国関係では、中国外務省が4日「日本側の報道に強い関心を抱いている」
との見解を発表した。その中では「A級戦犯が合祀されている靖国神社の参拝を中止
することが両国民の願い」と指摘し「中日関係を正常な軌道に乗せるため、日本が中
国とともに一つの方向に向かって努力することを期待する」と今後への対応を見守る
内容になっている。

 また、中国紙北京晩報は「安倍氏は今後の参拝について明確な態度を示していない
が、小泉首相の参拝を一貫して支持してきた」として、不快感を示す記事を掲載し、
反日ウェブサイトでは「安倍氏は軍国主義思想の継承者」との書き込みもある。経済
関係では中華全国青年連合会は4日、8月の民間訪中団の受け入れを「何も決まって
いない」として、8月15日の小泉首相の参拝するかどうかを見極めたいとの意向か
ら、先送りする可能性を示唆した。

 さらに、中国の王毅駐日大使が10日に一時帰国するという。「会議と休暇」とい
う理由だが、小泉首相の15日の参拝を警戒しており、その対応への協議ではないか
とみられる。

 一方、韓国の聨合ニュースは6日、7日に訪中したバン・キムン外交通商相が9日
に安倍官房長官と会談し、靖国参拝中止を要請すると報道した。バン交通商相は新た
な日韓関係に向けての韓国側の考えを示すとともに靖国参拝に強く反対する姿勢を示
す予定だという。

 日中の国民は靖国参拝にどのような考えを持っているのか、日本の非営利団体「言
論NPO」と北京大が同時に行い2日発表した世論調査を見てみよう。

 中国では靖国参拝について「戦犯を外せば政治家が参拝してもよい」が30.4%、
「どんな条件でも参拝してはいけない」が51.1%で、A級戦犯が分祀されても容
認しないという考えが多かった。これに対し「日本の政治家が参拝してもよい」は
3.3%、「内政問題なので中国が口だすべきではない」が4.2%と少なかった。

 また、小泉政権5年間の成果について「関係が悪化した」と答えたのは中国が
62.7%、日本は55.5%。両国とも高い数字を示し、日中関係の問題点として
は日中双方の人の7割以上がやはり歴史問題を挙げている。

 さらに日本人に「軍事的脅威を感じる国は?」と聞いたところ、北朝鮮が72.4
%でトップ、中国は2番目で42.8%だった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

       ◇ 熱き激励とご支援に、心からお礼申し上げます。◇

・JCJふらっしゅ06年夏季応援カンパ
06年6月末~

◇ 6月26日 桂  敬一
◇   28日 岡田 良子
◇ 7月 4日 利元 克巳 いつものご奮闘に感謝します。貴重な情報、活動に役
              立っています。
◇    4日 加藤  剛
◇    6日 二田水弘平
◇   10日 土井 弘高
◇   19日 荻野 高敏
◇   21日 岩切  信
◇   21日 郡島 恒昭
◇ 8月 1日 岩崎 貞明
◇    3日 水島 朝穂

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

      ◎◎ JCJふらっしゅ06年夏季応援カンパのお願い ◎◎

■「JCJふらっしゅ」は創刊から4年、さらにチャレンジを続けています。
■発行継続とさらなる充実・拡大のために精力的な取り組みをお願いします。
 1口1000円:(個人の場合)1口以上、(団体)3口以上をお寄せください。

▽銀行ご利用の場合▽
 みずほ銀行・九段支店・普通口座1005417
 口座名義 JCJふらっしゅ 代表 小鷲順造

▽郵便局ご利用の場合▽
 郵便振替
 00130-5-612601 口座名 JCJふらっしゅ
*各郵便局に据付の郵便振替用紙をご利用ください。
*用紙の通信欄に応援メッセージを頂ければ幸いです。

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□■元大統領と元首相への取材を読んで考える レバノンの戦火と靖国神社の問題

 4日、大統領在職中に中東和平のキャンプデービッド合意を達成したカーター元米
大統領は、新聞の取材に対して、ブッシュ米大統領の中東政策が誤っており、現地情
勢を悪化させているとの認識を示したという(→CNN/AP、元大統領の取材は米
紙グランド・ラピッズ・プレスによる)。

 カーター氏は、イスラエル軍とヒズボラの即時停戦は、世界の世論が高まり、米当
局の誤った政策を転換させることができるかにかかっていると語った。イスラエル軍
によるレバノン無差別攻撃に対して、欧州各地で即時停戦を求める市民の動きが広が
っている。

 また同氏は、「ブッシュ米政権はこれまでに、イスラエルの恒久和平に向けて動い
ていない。イスラエルが同盟相手としてきた米政権の中で、おそらく最悪だ」(同)
と述べ米国の政策が、イスラエルとヒズボラの交戦を長引かせていると指摘した。 イ
ラク駐留米軍は年内に撤退を開始するべきだとの考えも明らかにしたという。

 一方日本では9日、中曽根康弘元首相がNHKの討論番組の収録で、首相の参拝に
反対することが高まる靖国神社の問題について、自身の参拝にこだわる小泉純一郎首
相の姿勢を批判したという。

 「天皇陛下が(靖国に)参拝できるようにすることが首相の仕事だ。それを自分が
参拝するということだけで行ったり来たりしているのは思慮が足りない」(毎日新聞)
と指摘し、問題の解決策については「分祀(ぶんし)でなければ解決できない。神主
が決心すれば決まることだ」(同)と語って、靖国神社が自主的にA級戦犯の分祀を
決断するよう促したという。

 ひとつにはメディアが、何かに行くづまると、米国では元大統領カーター氏など、
日本では元首相中曽根康弘氏など、かつてのトップにインタビューする機会が目立つ。
これはメディアにとって、国の機能や役割の歴史的連続性を問い、検証する上では比
較的効率的で確実な方法といえるのかもしれない。

 だが二つ目に、扱うテーマと探求しようとする姿勢に注目すると、だいぶ視点もテ
ーマの深さにも違いがあるように思える。

 かたや同盟するイスラエル軍の戦闘と自国の政策の是非を問い、レバノンの状況と
イラク戦争の泥沼化のつながりにきちんとふれているように感じられる。

 かたや靖国神社に天皇が参拝できるようにすべきとする元首相と、自分の心の問題
として自身の参拝にこだわる現職の首相の考え方の違いにとどまり、日本の戦時体制
と旧天皇制、靖国神社の関係を問い直し、平和外交、平和政策、平和教育のありよう
を探索しようとする内容とはいえないように感じられる。

 さらに三つ目に、人物の制定方法についてみると、かたや現在のブッシュ政権
(43代、共和党)の「対テロ戦争」推進路線に対置させるかたちで、中東和平や中
国との国交樹立などの功績を残し、同政権の政策に反対を唱えている元大統領(39
代、民主党)。かたや首相の立場での靖国参拝推進を言い続ける現在の首相(87―
89代、自民党)に対して、首相の立場での靖国参拝をしたがそれを中止した元首相
(71―73代、自民党)。

 もちろんこの二つの報道が、たまたま同じような時期に共通性を感じさせるものだ
ったために取り上げているに過ぎない。比較・対比させる方法も、両極を対峙させる
方法だけでなく、同じ系譜に属し、似ているが少し異なる違いを対比することで浮か
び上がってくることもあるだろう。もとよりカーター元大統領が立派で、中曽根元首
相はそうではないと主張することが本稿の目的ではない。

 自民党政権の歩みは日本全体を右に旋回させ、弱肉強食の生存競争や、それに伴う
復讐や排除の論理を蔓延させているように思う。そうしたなかで小泉政権の外交政策
の明確な失敗が歴史に記録されようとしている。首相の靖国参拝問題は、その失敗を
もたらす大きな要因の一つであった。メディアが小泉、中曽根の対比にズームインし
ただけでこの問題の検証を止めてしまえば、まるで中曽根元首相がニュートラルな立
場、中道、中庸を保っているかのような印象を与えてしまうことになる。

 結果、メディアの報道や論調と民意との乖離として弾け出ることもあれば、限定さ
れ狭く閉ざされた視野が世間一般の常識と化してしまい、その過ちから抜け出て本来
の日本社会のコモンセンスを取り戻すのに、膨大な時間や労力を必要とする事態に陥
ることになる。

 高度情報化社会だからこそ、情報社会が個々人に提供し接種され、形成される擬似
環境としての情報環境もまた、そのような歪な、偏ったものがそうと認識されないま
ま個々の内部に、またそれを基礎として形成される社会に定着していく。メディアは
それを汲み取り再発信する。そうした歪んだ擬似環境は、メディアがお墨付きを与え
ることで、さらに、あたかも真正の環境へと化してしまう。

 メディアは誤った情報環境が形成されることによるその悪循環を発生させないよう
チェックする機能を内部にもたねばならない。それが倫理綱領の具体化や検証、種々
のガイドラインの不断の積上げと見直し、再構成などに結びつき、ひいてはメディア
人個々の才能開花を下支えするジャーナリスト精神やモラルとして積み上がっていく。
それは政党の主張のバランスをとったり、公権力の批判から逃れようとする対応だけ
では実現できない。

 自らが発信している情報内容が日々形成している情報環境のチェックは、メディア
企業としての誇りや使命感とも関係が深い。またそれは企業内にとどまるべきもので
もなく、また企業間の調整にとどまっていてすむものでない。現代社会の課題や進む
道を実質的に方向付けていく公共空間としての情報環境の問題であり、メディア企業
が担い、かつ果たすべき社会的責任の問題なのだと思う。

CNN/AP カーター元米大統領、ブッシュ米大統領の中東政策を批判
http://www.cnn.co.jp/usa/CNN200608060020.html
しんぶん赤旗 欧州各地 平和の集い レバノン停戦求める
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-08-09/2006080906_02_0.html
毎日新聞 <靖国参拝>中曽根元首相、小泉首相の姿勢を批判
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060809-00000061-mai-pol

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2006-08-07 月 asahi.com 靖国問題

2006-08-08 01:53:16 | 「たかお・サンパウロ」

asahi.com (政治>国政)2006年08月08日09時17分 から
http://www.asahi.com/politics/update/0808/003.html
参拝是非から「あり方」論へ 「靖国」新展開

 靖国神社をめぐる自民党総裁選の論争が新たな展開を見せつつある。小泉首相や次の首相が参拝することの是非に加え、靖国神社のあり方をどう考えるかが焦点になってきた。麻生外相は非宗教法人化のうえで国会の場で慰霊対象を見直すことを提案し、谷垣財務相もA級戦犯分祀(ぶんし)に賛意を示す。政治がどこまで宗教にかかわるか、「靖国」とは何か。実現までの道のりは険しいが、先の戦争をどう総括するかという問いに広がる可能性がある。

■非宗教法人化焦点に

 麻生氏は8日付の朝日新聞の「私の視点」に投稿し、靖国神社に宗教法人としての任意解散を促したうえで立法措置により国立追悼施設とする段階移行論を提案した。現状では首相や閣僚が「無理に参ると、その行為自体が靖国を政治化し、再び本旨を損ねる悪循環を招く」とも指摘。この考えに基づく私案をすでに7月末までに同神社側と日本遺族会側に渡し、検討を提案したという。

 麻生氏はこうした見直しが実現するまでは参拝しない考えだ。谷垣財務相も当面は参拝を見送る考えを明言。同時に「A級戦犯合祀がのどに刺さったとげになっている」とし、「ボールは靖国神社にある」と神社側の対応を求めている。

 靖国神社側の自主的判断を促す点で麻生、谷垣両氏は共通するものの、麻生氏はさらにA級戦犯の合祀の見直しを含めて慰霊対象を国会の場で決めると提案している。国会審議を視野にした動きでは、安倍官房長官に近い中川秀直自民党政調会長も、靖国神社の国家管理を目指す法案の再提出に言及している。

 一方、安倍氏は7日の記者会見で「靖国神社の宗教性のあり方や祭神について、政府が見解を申し上げる事項ではない」と述べ、見直しそのものを否定した。対北朝鮮など外交路線では似通う2人だが、参拝の前提に神社のあり方の見直しを置く麻生氏と、事実関係は明言しないものの今年4月に参拝した安倍氏との違いがここにきて鮮明になった形だ。

 ただ、麻生、谷垣、安倍3氏とも小泉内閣の閣内におり、特に小泉首相が8月15日に参拝したような場合、どこまで論議が進むか。中川氏も、麻生氏の私案に対しては7日の講演で「非宗教法人化や分祀について持論を表明するのは結構だが、政府の一員のまま議論するのは、憲法の信教の自由との関係で避けるべきだ」と批判した。

■実現には高いハードル

 台頭し始めた靖国神社の見直し論だが、非宗教法人化やA級戦犯の扱い、さらには先の戦争をどう総括するのかというハードルが控えている。

 「非宗教法人化は三十数年前に議論されたが、宗教法人格を返上するとは考えにくい」。特定の宗教によらない国立追悼施設建設を主張する山崎拓・前自民党副総裁は7日の講演でそう語った。

 1960年代から70年代にかけ、自民党は靖国神社の申し出を前提に特殊法人に引き継ぎ、国の責任で「殉国者の英霊」を護持する靖国法案を5回提出。だが最終的には74年6月に廃案となって姿を消した。

 もともと靖国神社は国家管理に積極的だった。終戦時には陸海軍省の所管だったこともあり、69年には同法案成立を前提に宗教法人を離脱する方針を公表。宗教色がなければ政教分離に抵触せず、国や地方自治体による公的支出の対象となって財政も保証される。

 実現しなかったのは、当時の保革対立の政治状況のなかで、靖国神社の国家管理が「戦前回帰」との強い批判を浴びただけでなく、「非宗教化」自体に難しさがあったからだ。

 衆院法制局は74年の見解で、非宗教化の条件に「祝詞(のりと)は英霊への素朴な言葉に」「おみくじの販売は廃止」などを挙げた。これに靖国神社は「神霊不在、いわば正体不明の施設に堕する」と反発。国家護持を支持してきた日本遺族会も、靖国神社側の姿勢から事実上断念し、運動の中心を首相の公式参拝実現に移してきた経緯がある。

 さらには、靖国神社をめぐる法案が国会に提出され、慰霊対象の見直しを含む論戦に至れば、先の戦争の総括という重い課題に正対せざるを得ない。自民党に限らず、政治がその力量を問われることになる。

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2006-08-06 日 広島原爆の日

2006-08-06 23:20:00 | 「たかお・サンパウロ」

原爆記念日の社説・コラム(保存)

朝日新聞     二重被爆が示すむごさ 広島と長崎
毎日新聞(第1)  原爆の日 核兵器廃絶へ新たな一歩を
読売新聞(第1)  原爆忌 『北』の核の脅威を見ない平和宣言
日経新聞     日本は核拡散防止へ主導的役割果たせ
産経新聞7日付(第2) 広島平和宣言 『北の核』への警告がない
東京新聞     原爆忌に考える--伝えたいものがある

琉球新報     広島原爆の日・悲しい日だからこそ
沖縄タイムス   被爆体験への想像力を
西日本新聞    核兵器に身震いする想像力を 広島原爆の日
中国新聞(第1)  ヒロシマ61年 『戦争しない国』誓う原点に
北海道新聞(第2) 原爆の日*この祈りを大きな力に

朝日新聞 天声人語:広島市の平和記念資料館の前に立つ
毎日新聞 余録:  原爆忌 「後悔に1分たりとも時間を費やすな」
読売新聞 編集手帳:手鏡のなかにケロイドの顔がある
日経新聞 春秋:  原爆資料館と呼んでいる広島平和記念資料館には
東京新聞 筆洗:  市民を無差別に攻撃、殺りくし、・・・・
中国新聞 天風録: 車いすボランティア


2006-08-04 金  □■安倍官房長官 今年4月に靖国参拝していた

2006-08-05 22:31:47 | 「たかお・サンパウロ」

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2006/08/04 1141号                    (転送紹介歓迎)
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□■安倍官房長官 今年4月に靖国参拝していた

 朝日新聞が7月22、23の両日行った「次の首相の靖国神社参拝の賛否」を問う
世論調査によると、反対が60%を占め、賛成の20%を大きく上回った。1月の調
査では反対46%、賛成28%だった。

 小泉首相の退陣を前に、小泉政権の5年間を検証する動きや、次期政権のありよう
をめぐる議論のなかで、首相の靖国神社参拝の適否を問う世論が高まりを見せてきた。
そのなかで、昭和天皇が靖国神社へのA級戦犯合祀に不快感を示していた発言メモが
明らかになるという動きも起きてきた。

 そして4日、安倍官房長官が4月に靖国神社を参拝していたことが分かった。昨年
10月に官房長官に就任して以降、初めての参拝で、4月15日朝、靖国神社を訪れ、
「内閣官房長官安倍晋三」と記帳し、モーニング姿で昇殿参拝した。玉ぐし料はポケ
ットマネーから納めたという。

 安倍氏は、自民党幹事長や幹事長代理当時には、終戦記念日の8月15日に参拝し
ていたが、昨年秋の官房長官就任以降、自らの参拝の有無については明言しない方針
を示してきた。4月に参拝していたとの情報は安倍氏周辺の政府関係者からもたらさ
れたとの情報も出ているが、この時期に明らかにする理由や狙いなどに関連する報道
はない。また、安倍氏自身のコメントも、この原稿を書いているいまの段階で入って
きていない。

 小泉首相と安倍官房長官は4~6日の3日間、そろって東京を留守にする日程とな
っている(→毎日新聞)。

毎日新聞 官邸 首相と官房長官、4~6日そろって留守に
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060804-00000011-maip-pol

 なお、この件の報道をネット上でざっと確認すると、各社の見出しとアップされた
時間は次のようになっている。

朝日新聞 安倍氏、今年4月に靖国神社を参拝 官房長官就任後は初
2006年 8月 4日 (金) 01:26
http://news.goo.ne.jp/news/asahi/seiji/20060804/K2006080305830.html?C=S
時事通信 安倍氏が4月に靖国参拝=例大祭前、中韓反発は必至-総裁選論議に影響も
8月4日7時1分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060804-00000008-jij-pol
共同通信 安倍氏が4月15日靖国参拝 中韓両国の反発必至
2006年 8月 4日 (金) 07:09
http://news.goo.ne.jp/news/kyodo/seiji/20060804/20060804a1380.html
読売新聞 安倍官房長官は今年4月に靖国参拝…総裁選の争点にも
2006年 8月 4日 (金) 08:21
http://news.goo.ne.jp/news/yomiuri/seiji/20060804/20060804i102-yol.html?C=S
毎日新聞 <安倍官房長官>今年4月に靖国神社参拝
8月4日8時45分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060804-00000007-mai-pol

◇政党としての虚ろな姿に、自民党の末期症状を感じる

 最初に触れた朝日新聞の世論調査では、次の首相として最も人気が高かった安倍氏
の支持層でも靖国参拝反対が52%で、賛成の29%を大きく上回っていた。4月に
参拝していたことがわかったことが、安倍氏の人気にどのように影響するのか。その
ことが今後の自民党総裁選挙だけでなく、日本の政治の行方を見ていく上での一つの
素材となることは確かだろう。

 自民党総裁選は、(1)自民党員が投票するという点から、自民党内部における靖
国神社参拝問題の捉え方、(2)人物や政策、あるいは派閥などに象徴される人的糾
合力などから、国民の「人気」をあてにした政治へとシフトする自民党の出方、(3)
総裁各候補とそれを支える人々の政策の違いや、打ち出し方の違い、などチェックし
ていくべき点は多々あるだろう。

 私としては、自民党の総裁選挙が、まるでタレントの人気投票のようになっており、
その人物が国会で最大勢力を依然占めている政党の総裁にふさわしいかどうか、どの
点で優れ、どの点で問題があるのかといった判断基準がほとんど提供されないまま、
テレビ映りや表面的なパフォーマンスで人気度が計られ、それによって自民党内部が
揺れ動いていくという、政党として実に虚ろな姿に、この党の末期症状を感じつつ、
かつだからこそ憲法も無視して極端に走る姿勢に、国の行く末を危惧するところであ
る。

 首相や閣僚の靖国参拝問題は、裁判所が憲法判断を避けて通ることで逆に明白なよ
うに、それが憲法違憲であることは明らかである。しかし、自民党の一部は靖国参拝
をテコに天皇制の復活を夢見ることで求心力をもとうとしている。そこに昭和天皇の
メモが登場して、その論理にゆさぶりがかかっている。

 メディアはそれをテコに、靖国参拝問題の争点化を急ぎ、小泉首相は8月15日の
参拝可能性を否定せずに自身の「思い」に議論を収斂させようとし、安倍氏などは天
皇の政治利用は好ましくないなどとメディアを非難することで、靖国問題の争点化を
ことごとく回避しようとしてきた。

 だが、政治家を選出する行為が人気投票に陥ってしまえば政治が崩壊する危険性が
高まるのと同様に、この首相や閣僚の靖国参拝問題も昭和天皇のメモをテコに、その
是非を問う姿勢では心許ない。

 靖国参拝にこだわる政治家がどこまで旧天皇制の復活や靖国神社の盛り返しを本気
で考えているのか。またそれに同調しているように思える層が、どこまで靖国神社や
旧天皇制の復活に入れ込んだ状態となっているのか。安倍氏が4月に靖国に参拝して
いたという報道、そしてそれに対して安部氏がどう答え、自民党内部はどう動き、さ
らに選挙民が与えてきた安倍人気の高さはどう動いていくのか。

 そのことに昭和天皇のメモが大きく影響するのかどうか。タレント化する政治家の
人気が、昭和天皇のメモによってその人気を下げるようなことがあるのだろうか。あ
るいは、仮にそうした動きにつながったとしても、選挙民の天皇制への郷愁や忠誠心
のほどを過大に評価すべきなのか否か。日本国憲法の掲げる象徴天皇制のもとで、ど
のような教育や学習がなされ、どのような社会を築いてきたのか。

 自民党次期総裁候補の靖国参拝問題をめぐる報道が、その一つの到達点を指し示す
指標を提供するものとなるかどうか。日本及び日本人のアイデンティティの構築に、
天皇制や靖国神社がそれほど不可欠に根づいたものなのかどうか。私はいま、それを
根づかせようとして焦っている自民党の姿をこそ暴き出し、靖国参拝にこだわる政治
家と、民意の乖離をはっきりと提示していくことが重要だと考えているが、いかがだ
ろうか。

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2006-08-04 金 昭和天皇「不快感」発言記録メモについて (1)

2006-08-04 23:30:20 | 「たかお・サンパウロ」
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2006/08/04 1141号                    (転送紹介歓迎)
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        ◇◇ 「親の心子知らず」の意味するもの ◇◇
           ―――昭和天皇「不快感」発言記録メモについて

                             中村 有朋

■はじめに■

 1132号(7月26日付)「Y記者の『ニュースの検証』」
( http://blog.mag2.com/m/log/0000102032/107522754.html )は、
A級戦犯靖国合祀についての、昭和天皇の「不快感」発言記録メモに関連する各紙社
説を、手際よく整理・紹介しており、多面的な分析はきわめて有益であった。

 とくに、地方紙にも目を配り、『沖縄タイムス』が昭和天皇の戦争責任に言及して
いることに着目、これを重要な問題提起と指摘されたことに賛意を表したい。なぜな
らこの問題を考える際には、あとで述べるように昭和天皇と戦争責任という論点を抜
きに論ずることはできないからである。

 各紙の社説にはおしなべて二つの共通する特徴が見られる。(以下、単に「社説」
と記すのは、7月21日ないし22日に各紙が掲載したものをさす)

 第一に、昭和天皇が、平和主義者であり日本国憲法を尊重し擁護する人物であった
という評価を、明示しないまでも暗黙の前提として論を展開しているいること[2]、
第二に、『毎日』を除き各紙とも靖国神社の基本的性格についての考察という視点を
を全く欠いたままでの論議であること[3]、そして第三に、(特異な主張を掲げる
『産経』を除き)問題の核心がA級戦犯合祀にあるとしていることである。

 そのような昭和天皇美化を前提とした論調、また靖国神社問題の根底に横たわる論
点に目をつぶった論述でよいのかどうか、大いに疑問である。なぜなら、こうした言
説が主要メディアでばらまかれるとき、国民世論を危険な方向、つまりあの筆舌に尽
くしがたい惨禍をアジア諸国とわが国にもたらした戦争についての、科学的な検証と
主体的で真摯な反省を欠いたまま、日本国憲法の掲げる恒久平和の理念を捨ててしま
う方向に向かわせるベクトルとして作用しかねない、と危惧するからである。

 思うに、以上の見地に立って「不快感」発言記録メモに端を発する靖国論議を考察
するためには、第一に昭和天皇の戦争責任の有無について、第二に昭和天皇に戦争責
任ありとするならば、彼がどのようにしてその責任追及を逃れ得たのかについて、第
三に戦後の昭和天皇は果たして日本国憲法の掲げる平和主義に忠実であったか、どう
かについて、第四に十五年戦争[4]戦没者追悼のあり方について、という四つの問
題を解明しなければならない[5]。

 その理由は、第一に、昭和天皇がA級戦犯合祀についての「不快感」を表明したの
だから、いったい昭和天皇自身と戦争犯罪とはどういう関係にあったのかが必然的に
問われるからであり、第二に、彼は周知のように法廷に立たされることもなく、皇位
から追われることもなかったからであり、第三に、「松平は、平和に強い考(え)が
あった」と、昭和天皇が「平和」に対する考えをここで人物評価の基準としているの
であるからであり、第四に、A級戦犯合祀のままでよいのか、「分祀」するのがよい
か(可能か)、あるいは靖国神社ではなくて別の国立施設(無宗教・無宗派)にすべ
きか、など、あたかも三者択一、他に選択肢がないかのような議論が広く行われてい
るからである。

 そして、あらかじめ拙文の結論を述べておくとするならば、唐突に聞こえるかも知
れないが、「親の心子知らず」という昭和天皇の言葉は、発言者本人の意図とは関係
なく、意外にも戦後日本史のある断面をきわめて的確に表現する意味をもっているこ
とに気付かされるのであり、また、「不快感」発言記録メモに関するジャーナリズム
の反応が、今日の日本のイデオロギー状況のある側面をあざやかに示している。この
ことをふまえてこそ十五年戦争の真に国民的な自己点検と総括が可能になると考える。

 以下、順に考察する。

■1■昭和天皇の戦争責任

 十五年戦争に関する昭和天皇の戦争責任については、多くの近現代史研究者による
すぐれた業績の積み重ねがある[6]ので、ここでは、これらおびただしい研究の結
論に依拠し、要約しておきたい。

 1931年の柳条湖事件を発火点とする「満州事変」にあたっては、朝鮮軍司令官林銑
十郎が参謀本部の同意なく独断越境出兵したのを昭和天皇は事後承認し、翌32年には
関東軍を賞賛激励する勅語を与えた。1937年、中国に対する本格的侵略戦争の開始に
あたって、彼は進みつつあった講和交渉の打ち切りに加担し、41年、近衛文麿首相が
内閣を投げ出して辞職した際には、日独伊三国同盟締結を推進し対米英強硬姿勢をと
る東条英機を首相に任命して、4回にわたる御前会議を経て対米英開戦の「聖断」を
下した。陸海軍大元帥として終始仔細にわたって戦争指導にあたり、敗色濃厚となっ
てからも皇位保持を最高の目的とする立場に固執して、近衛文麿らの進言を無視して
いたずらに戦争終結の機会を逃し、沖縄、広島、長崎をはじめ全国に惨禍を拡大した。

 このように、侵略戦争を開始し拡大して、アジア諸国人民と日本国民に最悪の犠牲
と損害をもたらした点において、昭和天皇が戦争責任を免れないことに疑問の余地は
ないと思われるが、なお念のために『読売』社説の論旨に関連して付言しておく。

 すなわち、同社説は、昭和天皇が「(戦前、戦中に)一貫して戦争を回避すること
を望みながら、(大日本帝国憲法下の)立憲君主としての立場を踏まえて積極的な発
言は控えた」【()内は中村】と述べている。

 しかし、十五年戦争期の天皇の行動を詳細に研究した結果によれば、彼はときには
立憲主義的偽装を用いつつ、「必要と感じた場合には、様々な形で自らの政治的見解
を積極的に表明したばかりでなく、自らの政治的意思を断固として貫徹することが少
なくなかったのである。」[7]

 また多くの史料によって実証されたところによれば、大元帥・昭和天皇は統帥部な
どからさまざまな上奏を受け、それに対する「御下問」や「御言葉」を用いることで、
統帥部を激励したり、時には叱責したりして、実際の戦争に多大な影響を与えたこと、
もはや動かし難い史実である[8]。『読売』社説の論旨、所詮は言い古された謬論
俗説のひとつである。

■2■昭和天皇の戦犯裁判のがれの工作とGHQの占領政策

 1945年9月2日の降伏文書調印直後から、昭和天皇周辺と天皇自身による戦争責任の
がれの工作が開始された。早くも9月14日、近衛文麿、重光葵らは「陛下がニューヨー
クタイムス記者を引見して『真珠湾攻撃は東条の独断であって、陛下は知らなかった』
と云ふ趣旨を言明されて之を通信せしめる案を相談」、昭和天皇はこの案に乗り気で
「陛下は(記者引見の)早きをご希望なり」と記録されている。そして9月25日、天皇
のニューヨーク・タイムズ記者フランク・クルックホーンらとの会見が実現、同日付
ニューヨーク・タイムズ紙は1面トップで「裕仁、記者会見で東条に(真珠湾)奇襲
の責任を転嫁」と報じた[9]。

このことをはじめ、以下に述べるような経過をたどって、敗戦直後・冷戦直前のき
わめて複雑な国際・国内政治力学のなかで、昭和天皇がさまざまな手段を用いて天皇
制の重大な危機をかろうじて乗り切ったその背後には、極東国際軍事裁判開廷前の、
天皇不訴追を目的とする日米両国(というより、むしろGHQ<占領軍総司令部>と
昭和天皇の宮廷)の共同作業がある。その内容は、東野真著「昭和天皇二つの『独白
録』」(日本放送出版協会、1998年)に詳しいのでそれに譲ることとするが、この共
同作業の開始に至った経過だけは、ここで述べておく必要がある。

 当時、連合国のなかではアメリカはもとより、イギリス、オーストラリア、カナダ、
中国、ソ連などの諸国で「天皇は戦犯である。戦犯第一号である」という声が強かっ
た。(当時の外務省情報局長・加藤俊一の話[10])のみならず、アメリカ国務省で
も、占領軍総司令官マッカーサー周辺でも、「みんな天皇の処刑を望んでいました。
ヒトラーとムッソリーニが死に、残っているのはヒロヒトだけでした。彼らのスロー
ガンは『HH-Hang Hirohito(裕仁を絞首刑にしろ)』でした」[11]という証言が
ある。

 こうした状況のなかで、昭和天皇にとって圧倒的に不利と見られた情勢を大きく転
換する人物が現れた。占領軍総司令官ダグラス・マッカーサーである。

 アメリカ軍にあって対日宣伝・心理作戦に従事していたボナー・フェラーズはマッ
カーサーの軍事秘書官となつていたが、彼の助言もあって、マッカーサーは、天皇の
権威を利用すれば日本国民は自分の指令どおりに動き、占領行政は円滑にいくと当初
から考えていた。そして、ひそかに次期大統領選挙に出馬することをねらっていたマ
ッカーサーは、政治家としての力量を証明するには、日本占領統治を混乱なく成功に
導くことが不可欠であると考えており、天皇の力を利用して占領の円滑化をはかると
いう戦略を採用した。

 1946年1月25日、マッカーサーは陸軍参謀総長アイゼンハワー宛に緊急電を打ち
「天皇を告発するならば、日本国民の間に必ずや大騒乱を惹き起こ」す、と警告して
天皇不訴追を訴えた[12]。

 このようにして、皇位の安泰を最優先課題として追求していた昭和天皇及びその側
近の思惑と、占領統治のために天皇を利用したいと考えていたマッカーサーの政治野
心とが、期せずして奇妙な利害一致により結びつくこととなった。

同年3月6日、フェラーズは元海軍大臣・米内光政を呼び、「天皇が何等の罪のない
ことを日本人側から立証して呉れることが最も好都合である」と伝えた[13]。極東
国際軍事裁判の法廷に昭和天皇が立つことを避けるべく、天皇とその側近による訴追
回避対策作業が始まった。その成果のひとつが世に知られる「昭和天皇独白録」[14]
である。

 1946年5月3日、極東国際軍事裁判が開廷したとき、被告の中に昭和天皇の名はなく、
48年11月、東条英機元首相ら7人が死刑の判決を受け、天皇の戦争責任問題には一応
の決着がつけられた。そして、52年4月28日、サンフランシスコ講和条約が発効し、
その第11条で、日本国が極東国際軍事裁判所の裁判を受諾したことなどにより、国際
関係の上でも昭和天皇の戦争責任は不問に付されることが確定した。

 かくして、昭和天皇は天皇制の重大な危機を切り抜けることに成功した。ついに
「朕ハ茲ニ國體ヲ護持シ得」(終戦詔書)たのである。

■3■戦後の昭和天皇と日本国憲法の平和主義

『日本経済』社説は、「昭和天皇がA級戦犯合祀に強い不快感を示したのは、過去の
戦争への痛切な反省と世界平和への思い・・・があったためと推察される」と述べ、
「そうした昭和天皇の思いを日本人として大事にしたい」という。

 もしそのとおりであるならば、昭和天皇は「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が
起ることのないやうにすることを決意し」たと宣言した日本国憲法前文の原則に忠実
であったことになる。

 果たしてそうか。かつて大日本帝国天皇として「統治権ヲ総攬シ」「陸海軍ヲ統帥」
した彼は、本当に過去の戦争を痛切に反省したであろうか。答えは明らかに「ノー」
である。

 証拠を例示しよう。

 1946年当時の木下道雄侍従次長の記録によれば、「昭和天皇独白録」作成時に天皇
は、戦争の原因とその防止が不可能であった理由について、「我が国の国民性に」
「付和雷同性」が多く、そのために平和論が沈黙し、「軍部の主戦論に付和雷同して
主戦論を振り廻す」という状況であったことを挙げ、「かように国民性に落ち着きの
ないことが戦争防止の困難であった一つの原因であった」と語っている。そして国民
の教養を高めることが必要であると、わけ知り顔に述べている[15]。どこに天皇自
身の反省が見られるであろうか。昭和天皇自身が勅令をもって改悪した治安維持法の
猛威が、国民に沈黙を強制したのではなかったのか。国民の付和雷同性や教養の低さ
のせいにするのは陋劣であるとの批判を免れまい。二・二六事件の際に、断固として
大元帥の権限を発揮して叛軍を鎮圧せしめたのは、いったい誰であったのか。「軍部
の主戦論」を増長させたのはいったい誰であったのか。ここにはまじめなな反省のか
けらもないといわなければならない。しかも、昭和天皇は戦争の結果について「我が
祖先に対して誠に申訳なく、衷心陳謝する」と述べている[16]。どうやら彼は衷心
陳謝の相手を間違えたようである。

 また、昭和天皇はサンフランシスコ講和条約調印直後に、吉田茂首相に「明治大帝
の孫である自分の治世に、日本が海外領土をすべて失わなければならないことは、自
分にとって痛切な打撃である」と語り、領土の喪失を大変残念がったという。明治天
皇をモデルとした帝国主義国家の君主としての、武力による領土拡張・勢力圏拡大を
当然とする考え方[17]のどこに、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ること
のないやうにすることを決意し」た日本国憲法を尊重・擁護すべき義務を負う(憲法
第99条)天皇の姿が見えるであろうか。

「そうした昭和天皇の思いを日本人として大事にしたい」という『日本経済』社説の
論旨は、到底受け入れがたいのである。

(つづく)


2006-08-04 金 昭和天皇「不快感」発言記録メモについて (2)

2006-08-04 23:30:10 | 「たかお・サンパウロ」

◇◇ 「親の心子知らず」の意味するもの ◇◇
           ―――昭和天皇「不快感」発言記録メモについて (2)
つづき

■3■戦後の昭和天皇と日本国憲法の平和主義

『日本経済』社説は、「昭和天皇がA級戦犯合祀に強い不快感を示したのは、過去の
戦争への痛切な反省と世界平和への思い・・・があったためと推察される」と述べ、
「そうした昭和天皇の思いを日本人として大事にしたい」という。

 もしそのとおりであるならば、昭和天皇は「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が
起ることのないやうにすることを決意し」たと宣言した日本国憲法前文の原則に忠実
であったことになる。

 果たしてそうか。かつて大日本帝国天皇として「統治権ヲ総攬シ」「陸海軍ヲ統帥」
した彼は、本当に過去の戦争を痛切に反省したであろうか。答えは明らかに「ノー」
である。

 証拠を例示しよう。

 1946年当時の木下道雄侍従次長の記録によれば、「昭和天皇独白録」作成時に天皇
は、戦争の原因とその防止が不可能であった理由について、「我が国の国民性に」
「付和雷同性」が多く、そのために平和論が沈黙し、「軍部の主戦論に付和雷同して
主戦論を振り廻す」という状況であったことを挙げ、「かように国民性に落ち着きの
ないことが戦争防止の困難であった一つの原因であった」と語っている。そして国民
の教養を高めることが必要であると、わけ知り顔に述べている[15]。どこに天皇自
身の反省が見られるであろうか。昭和天皇自身が勅令をもって改悪した治安維持法の
猛威が、国民に沈黙を強制したのではなかったのか。国民の付和雷同性や教養の低さ
のせいにするのは陋劣であるとの批判を免れまい。二・二六事件の際に、断固として
大元帥の権限を発揮して叛軍を鎮圧せしめたのは、いったい誰であったのか。「軍部
の主戦論」を増長させたのはいったい誰であったのか。ここにはまじめなな反省のか
けらもないといわなければならない。しかも、昭和天皇は戦争の結果について「我が
祖先に対して誠に申訳なく、衷心陳謝する」と述べている[16]。どうやら彼は衷心
陳謝の相手を間違えたようである。

 また、昭和天皇はサンフランシスコ講和条約調印直後に、吉田茂首相に「明治大帝
の孫である自分の治世に、日本が海外領土をすべて失わなければならないことは、自
分にとって痛切な打撃である」と語り、領土の喪失を大変残念がったという。明治天
皇をモデルとした帝国主義国家の君主としての、武力による領土拡張・勢力圏拡大を
当然とする考え方[17]のどこに、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ること
のないやうにすることを決意し」た日本国憲法を尊重・擁護すべき義務を負う(憲法
第99条)天皇の姿が見えるであろうか。

「そうした昭和天皇の思いを日本人として大事にしたい」という『日本経済』社説の
論旨は、到底受け入れがたいのである。

■4■十五年戦争戦没者追悼のあり方について


 「はじめに」で指摘したように、『毎日』を例外として、各紙とも靖国神社の基本
的性格について全く視野の外に置いた社説を掲げている。そして問題の核心が「A級
戦犯合祀」にある、という論旨は(特異な主張を掲げる『産経』を除き)各紙に共通
している。

 しかしその『毎日』も「戦後、天皇によって遺族が癒やされるという戦前の伝統は、
天皇の(靖国神社への)私的参拝という形で続いていた。それが絶たれた原因は、A
級戦犯合祀という神社側の選択にある」と述べ、天皇の靖国尊重を当然自明のことと
して位置づけ、かつ

●「戦没者に感謝と哀悼の誠をささげるための施設として議論の余地がないなら、――[A]
なぜ内外で大きな論議を呼ぶのだろうか」と自問して、
●「最大の原因は、A級戦犯合祀にある」と自答している。――――――――――――[B]
『毎日』が、せっかく戦前の靖国神社が「国民が戦死者をとむらう宗教施設ではな」く、
●「天皇が、天皇のために戦死した軍人たちの栄誉をたたえる顕彰施設だった」―――[C]」
という事実に言及しながら、[A]に関しては、仮定形を用いることによって敢えて命
題の是非に切り込むことをしなかったために、他紙同様に[B]の結論を導き出したの
である。【[A]、[B]、[C]は中村】

 問題の核心は、従って[C]という動かし難い歴史的事実、そしてその[C]を、靖
国神社が今日でも所与の前提として自らを性格づけている[18]、という厳然たる現
実を眼にしながら、なおかつ[A]の立場を取りうるか、という論理問題に帰着する。

 この問題は二重の意味をもっている。すなわち第一に、日本国民の誰でも十五年戦
争の犠牲者を追悼する場所として、靖国神社がふさわしいと考えることができるかど
うか、という側面と、第二に、戦没者の遺族の誰でも、その近親者を偲び、慰霊する
場所としてふさわしいと考えることができるかどうか、という側面である。

 まず第一の点から考えてみよう。

[C]については、そしてそれが日本人古来の宗教的感情や伝統とは全く異なるもの
であることについては、宗教学者が指摘するところである[19]。靖国神社(創建当
初は「東京招魂社」)の思想的源流は幕末維新期の招魂の思想であり、「政治的軍事
的性格が強烈な宗教的観念であ」り、「味方の士気を鼓舞し、死地に赴かせるために、
きわめて効果的な『信仰』であった」という[20]。

 中曽根元首相が1985年7月27日、自民党主催の軽井沢セミナーでの講演で、自らの
靖国公式参拝の意図を説明して「国のために倒れた人」に感謝をささげることをしな
いで「だれが国に命をささげるか」と説き、新しい「英霊」づくりをねらう趣旨の発
言をした[21]が、ここには、東京招魂社以来の「靖国」の思想が脈々と受け継がれ
ている。

 靖国神社が「大東亜戦争」を「自存自衛」の正義の戦争であったという立場の宣伝
をし続けていることは、今日ではもはや周知の事実である。そして同神社が「天皇が
天皇のために戦死した軍人達の栄誉をたたえる顕彰施設」だったという『毎日』の指
摘についていえば、戦後、日本国憲法のもとでは戦前のような、天皇の靖国、忠君愛
国の靖国、というような形はとれなくなった。しかし靖国神社付属の軍事博物館・遊
就館で「随時上映」される映画「君にめぐりあいたい」のナレーションでは、「内閣
総理大臣ならびに全閣僚、三権の長、そして天皇陛下がご参拝になられて、英霊の御
霊は鎮まり、全国のご遺族のお気持ちは安まるのです」と、同神社が今日目標として
いるところをあけすけに語っている[22]。靖国神社自身が露骨に戦前への回帰を狙
っているのである。

 十五年戦争の痛苦の反省のうえに立ち、国民主権と恒久平和主義を基本原則とする
日本国憲法のもとで、このような施設を、国民の誰でもわだかまりなく戦没者を追悼
する場所として位置づけることがいいのかどうか、答えはもはや明白ではないか。

 なぜ各紙はこれを問題としないのか。A級戦犯が合祀されているか否かにかかわら
ず、靖国神社の性格自体が問題なのだ、という当然のことを、各紙はなぜ指摘しない
(あるいは指摘できない)のか。

 次に第二の側面。

 十五年戦争のためにむざむざと犠牲になった近親者について、なんらかの形で(で
きれば国が関与する形で、人によっては天皇の参拝をえて)その霊を慰めてほしい、
あるいは顕彰してほしいと思う遺族の心情は、問答無用と切り捨てて無視するわけに
はいかないかもしれない。そのような心情風土を育ててきた天皇制国家の遺産なのだ
から。

 しかし、いくつもの訴訟が提起されているように、台湾、朝鮮など旧植民地出身の
犠牲者の遺族、キリスト教信者である遺族、その他宗教上の信条や世界観のゆえに、
特殊な国家神道の一形態として創建された靖国神社に自らの血縁者が「合祀」される
ことによって精神的苦痛を強いられている人々、強い不同意の意思をあらわしている
人々が多いという事実は、なんぴとも否定できない。

 靖国神社は、戦没者の遺族の少なくない人たちにとっては、その近親者を偲び、慰
霊する場所としてふさわしくないのである。この人たちにとって靖国神社は、信教の
自由、信条の自由を著しく侵犯する宗教的・政治的施設なのである。
 ここでもこの問題の答えは、明らかに「ノー」である。
 それでは、戦没者追悼はどのようにすればよいのか。

 やや長くなるが、ノンフィクション・ライター・田中伸尚氏の文を引用させていた
だきたい。

 「首相が参拝という行為で靖国神社に関わり合いを持とうとするのは、靖国神社の
戦争の記憶の仕方を通して、国家の戦争の記憶の仕方を国民に伝えようという意思の
表明である。・・・・決して『理不尽な死』を死なせたことを内外の遺族に謝罪し、
反省し、二度と同じ死者を出さない、という戦争の記憶の仕方ではないのである。仮
に新たな国立施設へと舵を切れば、そうした問題は消えるだろうか。解決するだろう
か。問題は、靖国か、新施設かなのだろうか」[23]、と田中氏は問う。

そして田中氏は、叔父を戦死で失った真宗大谷派の僧侶・釈氏政昭さん[24]が、
「多くの国民国家が常設してきた戦死者儀礼装置への強い疑義・異論」を申し立てて
いる、と紹介し、「国がやるべきことは、(戦没者を)褒めることでも、(戦没者に)
感謝することでもありません。それは戦争の事実を隠蔽してしまいます。国が何かし
たいなら、二度とくり返さないというシステムをつくることでしょう」と釈氏さんが
語り、国立の追悼施設については「そんなものは不要です。第二の靖国をつくるよう
なもの」と強い疑問を呈したことをつづっている[25]。【( )内は中村】

 国がつくるべきは戦争を二度とくり返さないというシステムだ、そのことこそ戦没
者に哀悼の誠を捧げることだ、と喝破したこの僧侶のことばこそ、アジア諸国民とわ
れわれとの間に確固とした信頼関係を築き、「国際社会において、名誉ある地位を占
め」る航路を示す羅針盤ではないだろうか。

 私は「国家は、死者をそれぞれの家族に返せ」[26]という釈氏政昭さんの要求に
心からの賛意をあらわしたい。そして、国が戦没者追悼・慰霊の施設をつくることに
反対する。またよしんばそのような施設をつくるとしても、合祀については少なくと
も戦没者遺族の個々の同意を必要要件として求める。 

■むすび■「親の心子知らず」の意味とジャーナリズムの反応について

 「不快感」発言記録メモにいう「親の心子知らず」という言葉は、いうまでもなく、
敗戦直後の松平慶民・宮内大臣と、その長男、松平永芳・靖国神社宮司を比較し、評
価するものであることに間違いはない。

 1946年3月から4月にかけて、昭和天皇の戦犯裁判回避対策の一つ として、「昭和
天皇独白録」が作成されたことについては上記■2■で述べた。

 「独白録」作成のため昭和天皇から直々に話を聞いた側近五人組[27]のなかでは、
父・松平慶民が最も地位の高い人物であった。従って少なくとも形式的にはこのプロ
ジェクト・チームの主宰たる役割を果たしたであろうことは推測に難くない[28]。
また、子・松平永芳は靖国神社宮司就任の前から、「東京裁判を否定しなければ日本
の精神復興はできないと思う」という信念の持ち主であったという[29]。

 「不快感」発言記録メモでの「親の心子知らず」とは、もちろん単に「平和に強い
考(え)があった」父にくらべて、子の方はA級戦犯を合祀するなど分別のない人物
だ、「だから私はあれ以来参拝していない」、というだけの単純な意味だ。

 しかし、極東国際軍事裁判という大日本帝国の指導部を裁いた戦争犯罪人裁判と昭
和天皇との関連を媒介項として考察すると、単にそれだけにとどまらない歴史的な意
味合いが姿を現わしてくるように思われる。

 すなわち、第一に、皇位の安泰、保持を最優先課題としていた敗戦直後の昭和天皇
にとって、東京裁判不訴追という当面の目標が、側近五人組の尽力などもあって達成
されたことは、恐らく生涯忘れ得ぬできごとであったろう。そして彼の記憶にあって
は、松平慶民の名は「独白録」とは切っても切れぬものであったこと、疑問の余地が
ない。そんなニュアンスがこの「親の心」にこめられているように読むことが可能だ。

 第二に、このようにして東京裁判の法廷に立つことを免れ、そしてこの裁判の結果
がサンフランシスコ講和条約によって日本国の受け入れるところとなり、国際的にも
昭和天皇の戦争犯罪免責が確定した。せっかくマッカーサー総司令官などによって不
訴追の恩恵を受け、いわば虎口を脱し得たのであるという歴史的経緯にてらして考え
れば、A級戦犯の合祀された靖国神社に昭和天皇が参拝することは、とりもなおさず、
天皇の連合国に対する信義違反となることは明白である。もし天皇が靖国に参拝すれ
ば、巧みに(狡猾にというべきか)戦犯容疑をのがれたあの一連の歴史的大芝居を台
なしにすることになる。子の方の松平には、こんな歴史的・政治的重大事がわかって
いない。昭和天皇のそんな思いが、暗々裡に「子知らず」にこめられていたのではな
かろうか。

 そして第三に、このように検討を進めてくると、今日のわが国主流ジャーナリズム
がおかれた、ある特別な状況が浮かび上がってくる。

 『朝日』社説がその標題を「昭和天皇の重い言葉」と書き、『日本経済』が「昭和
天皇の思いを大事にしたい」と題し、『北海道』が「靖国問題への重い発言」と標題
を記しているように、死後17年もたってなお、昭和天皇の言説がジャーナリズムに深
刻な影響を及ぼしている[30]。なぜだろう。抽象的にいえば、皇室を特別扱いする
日本ジャーナリズムの通弊がここにもあらわれている、ということなのだろうが、よ
り具体的に見ると、平和主義者であり、立憲君主としての立場を堅持し、戦後は象徴
天皇として日本国憲法によって課された新たな役割を果たした昭和天皇、という迷信
に近い過大評価(誤解+買いかぶり)[31]がジャーナリストの間に根強く残ってい
て、そのことが、かたくなな小泉首相の靖国参拝固執により日本のアジア外交に重大
な障害がもたらされている現状のもとで、これほど大袈裟に「不快感」発言記録メモ
を評価させる要因となったのではあるまいか。

 『朝日』7月31日付は、「首相は自分の『心』にこだわるだけでなく、天皇の『心』
にも思いをいたすべきではないか」とする若宮啓文・論説主幹の一文を掲載している
[32]。

 小泉首相が靖国参拝を自民党総裁選挙にあたっての公約として以来、本人がいくら
「心の問題である」と強弁しようとも、「参拝」はもはや国政上・外交上の大問題と
なってしまっている。「国政に関する権能を有しない」天皇、それも17年も前に故人
となった昭和天皇の「心に思いをいた」して、首相が自らの責任において国政問題と
化したことがらについて行動を再検討せよ、との論旨である。

日本国憲法第4条第1項は天皇の国政に関与する権能を完全に否定している。従って、
通説によれば天皇の行為は「仮りに私人としてであるにせよ・・・政治的な意見を発
表したりすることは許されない」のであり、また「国事に関する行為以外の公的な行
為は・・・政治的な性質をもたない儀礼的な行為であることおよび・・・内閣の責任
の下においてなされるものであることを条件として、その限度内において認められ
る」[33]に過ぎない。よってこの規定は、天皇の行為を羈束するのみならず、逆
に、首相らが天皇の意向や感情に従って、或いはそれを忖度し、これを基準として国
政にあたることをも禁止する趣旨であると解さなければならない。このことは天皇が
故人であろうと生存中であろうと、また天皇がA級戦犯合祀をどのように評価しよう
と、全く無関係である。

 『朝日』論説主幹の一文は、まさにこの憲法第4条第1項の解釈上許されない行為を
首相に求めているのである。大新聞の幹部記者によるこのような提言を読んで、一瞬
私はわが眼を疑い、内心「や、ブルータス、お前もか」とつぶやいた[34]。これは
なにも一『朝日』に限らない、上述のように「大袈裟に『不快感』発言記録メモを評
価」したのはほとんどすべての全国紙共通の現象である。昭和天皇美化の精神風土は
ここまで根付いているのか、病膏肓に入るとはこのことではないかと痛感する。

 ジャーナリストも政治家も、昭和天皇の亡霊の呪縛から、もうそろそろ脱却すべき
ではないだろうか。

                            (元公務員/74歳)
つづく


2006-08-04 金 昭和天皇「不快感」発言記録メモについて (3)

2006-08-04 23:30:00 | 「たかお・サンパウロ」

◇◇ 「親の心子知らず」の意味するもの ◇◇
           ―――昭和天皇「不快感」発言記録メモについて (3)
つづき

◆注◆

[1]はなし

[2]たとえば「昭和天皇がA級戦犯合祀に強い不快感を示したのは、過去の戦争への
痛切な反省と世界平和への思い、米英両国や中国など諸外国との信義を重んじる信念
があったため・・・。そうした昭和天皇の思いを日本人として大事にしたい」(『日
本経済』)。

[3]『毎日』は「戦前の靖国神社は、国民が戦死者をとむらう宗教施設ではなかった。
天皇が天皇のために戦死した軍人達の栄誉をたたえる顕彰施設だった」と、やや本質
に触れる議論を展開している。しかしたとえば『朝日』は「昭和天皇が靖国神社に赴
き、戦没者の魂をなぐさめたいと思うのは自然な気持ちだろう」と述べたうえで、
「(A級戦犯を)一緒に弔うとなると話は別だ」といい、A級戦犯の合祀こそ問題の
核心だ、という理屈を基本としている。他の各紙も(特異な「主張」を掲げている
『産経』を除き)大同小異の論理立てである。

[4]1931年9月18日(柳条湖事件)から1945年9月2日(降伏文書調印)までの、「日
本と諸外国との連続した一連不可分の戦争」を指す。この呼称は「現在まだ世間のす
べての人たちに理解されるだけの通用性をもっているとは思えない」(家永三郎「太
平洋戦争」岩波書店、1986年、ix頁)が、他に適切な呼び方が見当たらないので、便
宜、用いることとする。

[5]一般全国紙の論調にくらべて、その読者の側には鋭く問題の本質に迫る見識を示
すものがある。いわく「天皇がA級戦犯をどう思おうと問題ではない。天皇自身の戦
争責任を忘れ去るのはまだ早い」「戦争に駆り出されて殺されて者が、殺したやつら
と同じ屋根の下にいられるはずはない。彼らは皆、故郷の自分の家の墓に戻っている。
会いたければそこに詣でればよい」と。
 (7月29日付『朝日』投書欄、和歌山県92歳男性)

[6]たとえば、
 井上清「天皇の戦争責任」、現代評論社、1975年。
 藤原彰・吉田裕・功刀俊洋・伊藤悟「天皇の昭和史」、新日本新書、1984年。
 千本秀樹「天皇制の侵略責任と戦後責任」、青木書店、1990年。
 佐々木隆爾「現代天皇制の起源と機能」、昭和出版、1990年。
 藤原彰「昭和天皇の十五年戦争」、青木書店、1991年。
 大江志乃夫「御前会議――昭和天皇十五回の聖断――」、中公新書、1991年。
 吉田裕「昭和天皇の終戦史」、岩波新書、1992年
 山田朗「大元帥・昭和天皇」、新日本出版社、1994年。
   同 「昭和天皇の軍事思想と戦略」、校倉書房、2002年。

[7]たとえば、藤原・吉田・功刀・伊藤、前掲「天皇の昭和史」42頁~50頁。

[8]山田、前掲「昭和天皇の軍事思想と戦略」、108頁、155頁~263頁。

[9]『朝日』、7月26日。

[10]東野真「昭和天皇二つの『独白録』」、日本放送出版協会、1998年、20頁。

[11]マッカーサーの軍事秘書補佐官フォビアン・パワーズの回顧談。東野、同前、33頁。

[12]東野、同前、99頁~101頁。


[13]同前、105頁~106頁。

[14]寺崎英成、マリコ・テラサキ・ミラー編著「昭和天皇独白録――寺崎英成・御
 用掛日記」、文藝春秋、1991年。

[15]関幸夫「天皇の戦争責任と君主制」、白石書店、1995年、174頁~175頁。

[16]同前、175頁。

[17]山田、前掲「昭和天皇の軍事思想と戦略」、130頁~131頁。

[18]「やすくにQ&A」(靖国神社ホームページ
 http://www.yasukuni.or.jp/annai/qanda.html)
   小堀桂一郎「靖国神社と日本人」、PHP新書、1998年、115頁、162頁~168頁、
264頁~266頁。

[19]たとえば、
   村上重良「国家神道」、岩波新書、1970年、184頁~187頁。
    同  「靖国神社の歴史的役割と公式参拝の問題点」(『ジュリスト』、
No.848 1985年、61頁~62頁)
中村 元「靖国問題と宗教」(同前『ジュリスト』、36頁~37頁)
   また、梅原猛氏の説につき、『朝日』、2006年1月27日、池田洋一郎「神道から
  はずれる靖国神社」。

[20]村上、前掲『ジュリスト』、61頁~62頁

[21]金子満宏「談話」、同前『ジュリスト』、129頁、に引用されている。

[22]「首相参拝と”靖国派”の要求」、『赤旗』、6月11日。

[23]田中伸尚「靖国の戦後史」、岩波新書、2002年、241頁~242頁。

[24]真宗大谷派福善寺住職・釈氏政昭氏(「小泉靖国参拝違憲訴訟」四国訴訟団原
   告団長)、田中、前掲書、239頁~240頁。

[25]田中、前掲書、241頁~242頁。

[26]同前、242頁。

[27]他の四人は、松平康昌宗秩寮総裁、木下道雄侍従次長、稲田周一内記部長、寺
   崎英成御用掛であった。吉田、前掲書、103頁。

[28]実質的に最重要な役割を果たしたのは寺崎英成と松平康昌であった。吉田、同
   前。

[29]「『靖国』と政治1」、『毎日』、2005年7月12日。

[30]『朝日』7月31日付投書欄には、北海道の69歳男性がつぎのように書いている。
   「私が今回一番気がかりなのは昭和天皇が・・・発言から18年たってなお世論
  を左右していることだ。・・・日本は戦後、民主主義国家になり、天皇は現人神
  から象徴に変わった。国民の一人ひとりが考えをきちんと築かないと、歴史の後
  戻りもなしとは言えまい」と。

[31]昭和天皇が日本国憲法第4条第1項に違反する疑いの濃い行為を、たびたび敢え
  てしたことについては、たとえば
 1)1947年9月、昭和天皇は使者を通じてつぎのような意見を占領軍総司令部に伝え
 ている。
 「天皇は、アメリカが沖縄を含む琉球の他の島々を軍事占領しつづけることを希望
 している。天皇の意見によると、その占領はアメリカの利益になるし、日本を守る
 ことになる」、さらに占領の形態としては、「日本に主権を残す形で二十五年から
 五十年あるいはそれ以上にわたる長期の貸与とし」云々と。藤原・吉田・功刀・伊
 藤、前掲「天皇の昭和史」135頁~136頁。
 2) 1973年5月29日、増原防衛庁長官が「当面の防衛問題」について昭和天皇に報
 告した。いわゆる「増原防衛庁長官内奏問題」である。
  このとき天皇は、自衛隊は「近隣諸国に比べ自衛力がそんなに大きいとは思えない。
 国会でなぜ問題になっているのか」と政治的内容を含む質問をした後、「防衛問題
 はむずかしい問題だろうが、国の守りは大事なので、旧軍の悪いことはまねせず、
 いいところは取り入れてしっかりやってほしい」と述べた。増原長官は天皇が自衛
 隊を激励したものと受けとめ、感激したという。横田耕一「憲法と天皇制」、岩波
 新書、1990年、94頁。

[32]若宮啓文「天皇の『心』をどう読むか」

[33]佐藤功「日本国憲法概説」、学陽書房、1980年、274頁~275頁。

[34]前掲注[30]に引用した一読者の健康な民主主義的感覚と対比せよ。

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