1.安倍首相訪中:最悪の対日関係改善に強い希望 胡指導部
2.安倍首相訪中:アジア外交立て直しへ強い意欲 補選前に
3.安倍首相:「変化」期待の中韓両国側と思惑が一致
4.安倍首相訪中:胡錦濤国家主席と会談固まる 韓国訪問も
--------------------------------------------------------
毎日新聞 政治 > 行政 2006年10月2日 3時00分
安倍首相訪中:最悪の対日関係改善に強い希望 胡指導部
【北京・飯田和郎】中国の胡ム濤指導部が、安倍晋三首相と胡国家主席の首脳会談に応じる決断をしたのは、小泉純一郎前首相の靖国神社参拝で「国交正常化以来最悪」(日中筋)の対日関係を、安倍政権誕生を機に改善したいという強い希望からだ。事前折衝ではすでに、安倍首相の今後の靖国参拝について、中国国民を一定程度、納得させる「合意」がなされた可能性がある。
胡指導部は小泉政権末期から「安倍首相誕生」を想定したうえで、日本側にサインを送り続けてきた。胡主席ら首脳・高官はこのところ、日中関係に言及する際、「共に努力する」との言葉を繰り返した。
中国側は「中日関係は重要な歴史的時期にある」(温家宝首相)との認識を持つ。日本を一方的に批判するだけではなく、日中双方による打開策の模索や譲歩の必要性を強調したものだ。実務的な対日関係を目指そうという胡指導部の姿勢が表れており、それが安倍首相受け入れの最終判断の根拠になったとみられる。
中国共産党は8日から4日間、北京で第16期中央委員会第6回総会(6中全会)を開く。国慶節(建国記念日)からの連休中の現在も6中全会の準備が続いており、党の重要会議開催という多忙な時期に外国首脳を迎えるのは極めて異例だ。これも中国側の関係改善への意欲の強さを示している。
一方で、中国は靖国参拝への態度を明確にしない安倍首相に警戒感も抱いてきた。また、反日機運が根強い現在、安倍首相の受け入れは、指導部にとって勇気を伴う決断でもある。安倍首相が首相就任後も靖国参拝を続ければ、指導部批判につながりかねないからだ。
このため、首脳会談では、安倍首相が靖国問題で中国側にとって前向きと受け取れる発言が約束されているとみられる。ただ、冷え切った日中関係が一気に改善される可能性は低く、胡指導部は初の首脳会談を通じて、安倍首相との信頼関係構築から手をつけることになる。
--------------------------------------------------------
毎日新聞 政治 > 行政 2006年10月2日 3時00分
安倍首相訪中:アジア外交立て直しへ強い意欲 補選前に
安倍晋三首相の早期訪中・訪韓がZットで実現する方向となった背景には、今月22日投開票の衆院統一補選前にアジア外交立て直しへの足がかりを得たいという、首相の強い意向があった。ただ、中国は首相に靖国神社参拝の自粛を求める姿勢を変えていない。首相は参拝問題について「行くか行かないかも含め言わない」ことを総裁選で強調していただけに、中国の胡錦濤国家主席や韓国の盧武鉉(ノムヒョン)大統領にどういう見解を示すかが焦点となる。
「中国としては安倍首相は任期中、靖国神社を参拝しないと理解している」。中国筋は1日夜、安倍首相の訪中が実現する方向になったことを明かしたうえで、安倍首相が胡主席との会談で参拝自粛を表明することに期待感を示した。安倍首相サイドと中国の間で参拝自粛の密約が交わされた可能性を指摘する声も出始めている。
安倍政権誕生を織り込む形で、外務省は新政権発足以前から中国、韓国との首脳会談実現を模索してきた。ただ、「靖国」問題がやはりネックとなった。先月23~26日に東京で開かれた日中次官級の総合政策対話で外務省の谷内正太郎事務次官が首相の早期訪中を打診したのに、中国の戴秉国外務次官は「政治的障害を取り除く必要がある」と首相の参拝自粛を求めて合意できなかった。
「訪韓だけではインパクトが薄い。訪中と訪韓はセットだ」(日本政府筋)。次官対話が不調に終わった後も日本側は中国との水面下の折衝を続けるとともに、韓国にも訪中を前提とした首相訪韓の受け入れを働きかけてきた。11月にアジア太平洋経済協力会議(APEC)の開かれるベトナムでの日中・日韓首脳会談は実現する見通しが強まっていたが、安倍首相にとっては衆院統一補選前の「訪中・訪韓サプライズ」が欲しいところだった。
ただ、訪中・訪韓が実現しても、靖国参拝など歴史認識問題で小泉純一郎前首相と同様、首脳同士の溝の深さが際立ってしまえば、かえって日中・日韓関係の改善が遠のきかねない。中国側が首相訪中を受け入れたこと自体は関係改善の意欲の表れだが、対中強硬派を支持基盤とする安倍政権だけに、靖国問題などでの譲歩を危ぶむ見方も出ている。【平田崇浩】
--------------------------------------------------------
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20061002k0000m010141000c.html
毎日新聞 政治 > 行政
安倍首相:「変化」期待の中韓両国側と思惑が一致
毎日新聞 2006年10月2日 3時00分
途絶えていた日中、日韓首脳会談が再開されることになった。小泉純一郎前首相が退場、安倍晋三首相に代わったのを機に、日本の「変化」を期待する中韓両国側と、アジア外交立て直しに強い意欲を示す安倍新政権との思惑が一致した結果だ。ただ、中国は安倍首相に対しても、靖国神社参拝の自粛を求める姿勢を変えていない。中国の胡錦濤国家主席や韓国の盧武鉉(ノムヒョン)大統領に首相がどういう見解を示すかが大きな焦点となる。
「中国としては安倍首相は任期中、靖国神社を参拝しないと理解している」。中国筋は1日夜、安倍首相の訪中が実現する方向になったことを明かしたうえで、安倍首相が胡主席との会談で参拝自粛を表明することに期待感を示した。首相は参拝問題について「行くか行かないかも含め言わない」ことを総裁選で強調していたが、具体的な対応は明らかでない。安倍首相サイドと中国の間で参拝自粛の密約が交わされた可能性を指摘する声も出始めている。
◇靖国問題などで譲歩危ぶむ見方も
安倍政権誕生を織り込む形で、外務省は新政権発足以前から中国、韓国との首脳会談実現を模索してきた。ただ、靖国問題がやはりネックとなった。9月23~26日に東京で開かれた日中次官級の総合政策対話で外務省の谷内正太郎事務次官が首相の早期訪中を打診したのに、中国の戴秉国外務次官は「政治的障害を取り除く必要がある」と首相の参拝自粛を求めて合意できなかった。
「訪韓だけではインパクトが薄い。訪中と訪韓はセットだ」(日本政府筋)。次官対話が不調に終わった後も日本側は中国との水面下の折衝を続けるとともに、韓国にも訪中を前提とした首相訪韓の受け入れを働きかけてきた。11月にアジア太平洋経済協力会議(APEC)の開かれるベトナムでの日中・日韓首脳会談は実現する見通しが強まっていたが、首相にとっては10月22日投開票の衆院統一補選前の「訪中・訪韓サプライズ」は欲しいところでもあった。
ただ、訪中・訪韓が実現しても、靖国参拝など歴史認識問題で小泉前首相と同様、首脳同士の溝の深さが際立ってしまえば、かえって日中・日韓関係の改善が遠のきかねない。中国側が首相訪中を受け入れたこと自体は関係改善の意欲の表れではあるが、対中強硬派を支持基盤とする安倍政権だけに、靖国問題などでの譲歩を危ぶむ見方も出ている。【平田崇浩】
◇首相の靖国参拝問題で「合意」の可能性も
中国の胡錦濤指導部が安倍首相との首脳会談に応じる決断をしたのは、小泉前首相の靖国神社参拝で「国交正常化以来最悪」とされた対日関係を、安倍政権誕生を機に改善したいという強い希望からだ。事前折衝で安倍首相の今後の靖国参拝について、中国国民を一定程度、納得させる「合意」がなされた可能性も考えられる。
胡指導部は小泉政権末期から「安倍首相誕生」を想定し、強硬姿勢から転換。「中日関係は重要な歴史的時期にある」(温家宝首相)と位置づけ、首脳・高官は最近、日中関係に言及する際は必ず「共に努力しよう」と繰り返した。
これは日本を一方的に批判するのではなく、日中双方による打開策の模索や譲歩の必要性を強調したもので、実務的な対日関係を目指す胡指導部の姿勢が表れた。それが安倍首相の受け入れという最終判断につながったようだ。
中国共産党は8日から中央委員会総会を開く。重要会議開催という時期に外国首脳を迎えるのは極めて異例。中国側の関係改善への熱意を日本側に伝える効果も期待しているようだ。
ただ、安倍首相の訪中同意は「勇気」を伴う決断でもある。反日機運が根強い中、首相が訪中後、靖国参拝をすれば、指導部批判につながりかねない。このため、首脳会談では首相が靖国問題で、中国側が前向きと受け取れる発言をすることが約束されているとの見方も強い。
歴史認識に関し、安倍首相が北京でどのように言及するかが最大の注目点になるが、一気に関係が改善するとは期待していない。胡指導部は初の首脳会談を通じ、安倍氏との信頼関係構築から手をつけたい考えだ。【北京・飯田和郎】
◇日中が動き始める中で現実的な選択 韓国
韓国政府は「安倍政権になっても靖国問題に関する従来の立場は変らない」(外交通商省高官)との対日強硬姿勢を堅持し、歴史問題で日本が「誠意ある行動」を示すことを促してきた。靖国参拝問題への安倍首相の対応はなお不透明な部分が多いが、韓国としては、日中が動き始める中で現実的な選択をしたと言えそうだ。
韓国政府内には「日本の友好国として、中国より先に(安倍首相と)首脳会談すべきだ」(外交通商省筋)との主張もあったが、結局は中国が先行するのを認めた。元々は中国に先立って日韓首脳会談を開催する提案を日本から受けていたが、5~8日が秋夕(旧盆)の連休のため、日程が合わなかった。
安倍首相が中韓を連続して訪問する形なら、日中韓の3カ国連携を重視するという盧武鉉(ノムヒョン)政権の持論を「壊さない」と国内向けに説明できる利点もある。【ソウル堀山明子】
--------------------------------------------------------
毎日新聞 政治 > 行政
安倍首相訪中:胡錦濤国家主席と会談固まる 韓国訪問も
2006年10月2日 3時00分
安倍晋三首相が8日に中国・北京を訪問オ、胡錦濤国家主席と会談することが1日、固まった。中国側が会談に応じる方針を既に日本側に伝えている。日中関係筋が明らかにした。首相は訪中後、9日に韓国も訪問し、盧武鉉(ノムヒョン)大統領と会談する方向で最終調整している。日本の首相が訪中して首脳会談に臨むのは01年10月の小泉純一郎前首相以来5年ぶりで、首脳会談は昨年4月のジャカルタ以来。小泉政権で冷え込んだ中国、韓国との関係は、安倍首相の中韓セット訪問で改善に向け一歩踏み出すことになる。
首相は中韓両国との関係改善を日米同盟強化と並ぶ外交の最優先課題としている。首相には両国を初外遊先にすることで、アジア重視の姿勢を内外に示す狙いもあり、中国とは自民党の中川秀直幹事長らが水面下で交渉を続けてきた。
これまでの調整で、韓国とは8、9両日の訪問が検討されてきた。ただ、韓国は竹島問題などをめぐり反日感情が根強いため、韓国単独訪問には難色を示し日中間の調整を見守っていた。中国側が首脳会談に応じる方針を日本側に伝えてきたことで、中韓両国のセット訪問実現が確実となった。日中外交当局は2日に首脳会談に向けた詰めの協議を行うが、安倍首相は温家宝首相とも会談する見通しだ。
中国政府は安倍首相就任後の9月26日、温家宝首相が就任を祝い「日中関係は重要な歴史的時期にある」とするメッセージを安倍首相に送った。これに応える形で、安倍首相も同月29日の所信表明演説で「中韓両国との信頼関係の強化は、アジア地域や国際社会全体にとって極めて大切であり、未来志向で率直に話し合えるようお互いに努めていくことが重要」と表明した経緯がある。
10月8日は中国共産党第16期中央委員会第6回総会(6中全会)の開幕日に当たる。国内で重要な政治日程がある中での訪問受け入れは、安倍政権誕生を機に対日関係改善を目指す中国側の意欲の表れとみられる。
ただ、これまで中国は首脳会談の条件として、首相の靖国神社参拝自粛を明言するよう要求してきた。日本側は参拝をあいまいにする安倍首相の戦略を説明、理解を求めており、両国政府間で何らかの折り合いがついた可能性もある。首脳会談でこの問題がどう扱われるかが最大の焦点だ。
首相の訪中について外務省幹部は「これですぐに未来志向というわけではないが、成功すれば安倍外交の大きな一歩になる」と話している。
毎日新聞 2006年10月2日 3時00分
--------------------------------------------------------