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2006-10-06 金 ■自民党安倍政権誕生 世論調査にみるその「人気」の実像(5)

2006-10-06 06:56:49 | 「JCJふらっしゅ」

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200610/06 1198号                    (転送紹介歓迎)
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□■自民党安倍政権誕生 世論調査にみるその「人気」の実像(5)

 9月26日の首相指名を前に、ロイター通信は、全国の個人投資家に安倍新政権に
対する見方を訊いている。

 調査は、9月16日から20日までに、ロイターが個人投資家向け金融専門サイト
「マルテックス・インベスター」の会員(約15万人)を対象に実施(有効回答数
2032人、回答者は9割が男性、年齢層は40歳代から60歳代が70%を占めた)。

 それによると株式市場に「プラス」とする回答が64%、「マイナス」が36%だ
った。

 プラスと回答した理由は、「小泉内閣の構造改革を継承する」との予想や、「外国
人投資家に小泉氏の後継者として好感されそうだ」との見方が多かった。マイナス要
因としては、同氏の経済政策のあいまいさや中国・韓国に対する外交姿勢を懸念する
声があった。

 このプラス要素は回答者のご祝儀ないしは、関連筋のプロパガンダに追随したもの
でしかなかった。その結果は、即座に出た。塩崎恭久官房長官は9月27日の株高を
受けて、「(安倍内閣で)改革が進むと評価したのではないか」と口にしたが、あち
こちで笑いものになった。

 新内閣への期待で株価が上がるでのあれば、新首相誕生の26日からというのが当
然で、27、28日の平均株価の上昇は「NY株高を好感しただけ」と、ゲンダイは
「安倍内閣とはまるで無関係」(外資系証券)と冷ややかにみていることを紹介して
いる(→ゲンダイネット)。

 またこのロイター通信の調査で、安倍新政権の支持・不支持を訊ねたところ、「支
持する」36%、「支持しない」38%だった。また、来年夏の参院選についての見
通しについての質問では、与党が過半数を「維持できる」と予想する回答は29%、
与党は過半数を「維持できない」とする回答は42%にのぼった。「分からない」は
29%だった。

 安倍政権がいつまで続くかという問いには、44%が「2007年中」と回答して
いる。理由としては「参院選で自公が過半数割れして引責辞任」を選んだ回答者が
773人と最も多かった。

 政策については、安倍氏が掲げた「美しい国、日本」というスローガンについて
「支持する」が56%を占めたが、これはいかようにも転がりうる中身のない言葉な
ので、ほとんど否定的な回答をするのもはばかれるので適当に受け流したとうけとめ
ることもできよう。

 また安倍氏の首相としての資質を問う質問に対しては、構造改革への取り組みの姿
勢について「期待できる」51%、「期待できない」49%と拮抗。首相としてのリ
ーダーシップについては「期待できる」38%、「期待できない」62%だった。外
交手腕についても「期待できる」38%、「期待できない」62%だった。

 各論に関しては、とるべき財政再建の手法については「歳出カットを優先し、増税
は避けるべき」と答えた人が77%、「増税はやむを得ない」23%を大きく凌駕し
た。「アジア外交」については、「対立は避けるべき」66%、「譲歩すべきではな
い」は34%だった。また、靖国神社への参拝については「参拝すべきでない」71
%、「参拝すべき」29%だった。

 来夏の参院選で何を争点とするべきかについては、「社会保障」54%、「消費税
引き上げ」39%、「アジア外交」37%、「地方の再生」36%などだった。

 調査対象の「マルテックス・インベスター」(URL:http://www.investor.reuters.co.jp)は、
ロイターの個人向け金融専門サイトで、会員は年収500─799万円が32%、
1千万円以上が26%を占める。金融資産残高(除く不動産)は500万円未満が
44%、3000万円以上は12%という構成だという(ちなみにここの会員が株式
投資をする頻度は、1カ月に1回が32%と最も多く、1週間に1回が22%となっ
ている)。

 この調査は、首相指名以前に行われたものであるが、これまでに紹介してきたその
後の各種サイトのアンケート調査と非常に似通った結果を示していた。安倍政権の誕
生に対して「否定的」な傾向をはっきりと示していたので、私としては強く印象に残
っていたが、新政権誕生をうけての各メディアの世論調査の結果は、政権支持が6割
―7割と、あまりに食い違ったものであった。

 回答者が個人投資家たちであるため、安倍氏の経済政策や外交姿勢を懸念する声の
なか、厳しい内容となったと想像することもできるが、経済専門誌である日本経済新
聞の調査では、政権支持が71%という非常に高い数値として公表された。読売新聞
の結果も70%強だった。

 自民党の総裁選で「7割」支持は固いとしてい陣営の思惑は見事に崩れたが、その
後の新首相誕生で「70%」の数字を実現してみせたことになる。そこにメディア内
部で何らかの力が働いたのではないか―私は即座にそう感じてメディアの世論調査に
ついて見直す必要を感じたわけである。

ロイター個人投資家調査:安倍政権誕生、株式市場にプラスが64%
http://news.goo.ne.jp/news/reuters/keizai/20060922/JAPAN-229386.html?C=S
ゲンダイネット 塩崎官房長官が「笑いもの」になっている
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2519361/detail


■日経世論調査 支持71%の数字の高さ、新首相の靖国参拝、賛否拮抗の怪


(調査方法)日本経済新聞社は26日から27日に緊急の全国世論調査(電話)を行
った。調査は日経リサーチが全国成人を対象に乱数番号(RDD)方式により電話で
実施。有権者のいる1306世帯から720件の回答を得た。有効回答率は55・1
%だった。男女比率は男性41%、女性59%。女性比率は前回調査より5ポイント
高く、支持率をやや押し上げている。

☆筆者のコメント:調査方法に関する説明は詳細だが、ネット上の記事にはそれがな
かった。女性比率が若干高かった理由は「内閣発足後に緊急に調査したため」とした。
そのせいで「支持率をやや押し上げている」と説明を付した。親切な説明である。回
答数は720件。読売新聞の有効回答は946件、回答率56.9%。朝日新聞の有
効回答は996人、回答率は57%。やはり全国世論調査というわりに、いずれの社
もサンプルの規模が少ない気がしてならない。それでも、マスメディアの世論調査で
は、有効回答数や回答率については知らせるべきである。

内閣支持率・日経世論調査
http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt22/20060927AT3S2702727092006.html


(1)安倍内閣の支持率 71%
  =政権発足時としては小泉政権が発足した2001年4月の80%に次ぐ歴代第
2位の高水準を記録した。すべての世代で65%以上だった。男性は68%、女性は
73%。自民支持層では91%に達し、連立を組む公明支持層は76%。民主支持層
でも52%が支持(日本経済新聞の解説、以下同)。

☆筆者のコメント:やはり世論調査の公表のしかたとして、「歴代第2位の高水準を
記録」のように「後光」を付与してものものしく出すことに抵抗を感じる。前に述べ
たとおり、調査員を介した世論調査の場合の回答者の側に生じる「壁」や、あるいは
調査員に与えられた「判断」の余地などを想像すると、この規模の調査で「支持率
71%」=すごい! と印象付ける必要があるかどうか、そこまでの根拠を有するか
どうか、見直すべきではないだろうか。

まして国民投票で選出されたわけでもなく、また自民党の総裁選の延長で発足した内
閣であり、判断材料が少なすぎる。にもかかわらず「支持・不支持」を問うわけであ
り、そこから出てきた数値の高さを、持ち上げて報じることの意味、作用、影響につ
いて考えるべきではないだろうか。新聞社が自社の世論調査に権威をもたせようとす
る姿勢はわからないわけではないが、日経が「支持率をやや押し上げている」と断わ
りをいれたように、もっと世論調査そのものの「あいまいさ」を伝えたほうが、信頼
度は高まるのではないだろうか。

(2)支持理由
「人柄が信頼できる」 51%
「清潔である」    24%
「自民党の内閣だから」19%

(3)安倍内閣に優先して処理してほしい政策課題
社会保障 58%
教育改革 29%
景気対策 26%
財政再建 21%
雇用対策 21%
治安・犯罪対策 21%
外交・安全保障 20%
税制改革 19%
環境問題 16%
地方経済活性化 15%
いわゆる三位一体改革 13%
政治改革 9%
憲法問題 8%
行革・規制緩和 7%
  =首相の持論である外交・安全保障や憲法問題は必ずしも関心が高いとはいえず、
優先順位を巡り意識のズレが生じている(同)。

☆筆者のコメント:上記の解説にもあるとおり、安倍氏と有権者の望む政策課題との
深刻なミスマッチをどのように理解すべきなのか。支持率と政策課題への期待の乖離
をどのように埋めるのか、日経だけでなく、新聞の世論調査全般について、読者にわ
かりやすく説明するか、それに代わる手法を開発するか。非常に重要な問題になって
いると思う。矛盾を矛盾のまま出すのはよいが、そこに問題が潜んでいないかどうか
チェックするのは当然のことである。多様な世論調査が可能となっている現在、ちょ
うちんやご祝儀の要素が無責任に放置され、結果に内包された世論調査の存在価値は、
今後厳しく問われる傾向が強まるものと思われる。

(4)首相の靖国参拝
賛成 40%
反対 41%

☆筆者のコメント:首相の靖国参拝について「反対」が「賛成」を1ポイントしか上
回っていない。ここにサンプルの問題ないしは調査員の調査方法などの課題が存在し
ていると感じる人は多いのではないだろうか。小泉首相の参拝はよいが、次の首相は
の参拝はだめという傾向が出ていた中での調査であり、まして同紙は昭和天皇メモを
スクープした新聞である。同紙の調査に同紙の読者が比較的積極的に応じたはずとい
うことを考え合わせると、あまりすっきりしない。新聞の行う世論調査で、日頃とっ
ている新聞を訊ねようとすると、世論調査ではなく勧誘の一環と勘違いされる可能性
もあって難しいかも知れないが、日頃読んでいる新聞と回答の関係なども知りたいと
ころではある。

 冒頭に挙げた調査結果では「参拝すべきでない」71%、「参拝すべき」29%だ
ったことを考えると、この賛成40%、反対41%という数字はいったどんな背景の
違い、回答者の違いから出てくるのか目を疑う内容であった。世論調査の数値とは、
これほどまでに流動的で、あいまいなものである。それを既存の新聞メディアが、「
本紙が責任と自信をもって公表いたします」と新聞のブランド価値を基盤に、信用を
付与してみせる理由がどこにあるのだろうか。

 また、メディアが打ち揃って安倍新首相には60%-70%の「支持」があるのだ
と世間に刷り込む結果となったことを、私たちはどう考えたらよいのだろうか。メデ
ィアが紙面や番組で伝えてくる「世間」の状況と、市民が実生活で感じている「世間」
との見事なまでの乖離。それはいったいなぜ、どのような理由で生まれているのか。
私たちはいま、そのことと真剣に取り組まねばならない状況に直面しているのである。

 


2006-10-06 金 (つづき)

2006-10-06 06:54:35 | 「JCJふらっしゅ」

(つづき)
 最後にJNNの調査を紹介しておこう。


JNN世論調査 改革路線「進むと思わない 61%」


http://www.tbs.co.jp/newsi_sp/shijiritsu/

(調査方法)
 電話による聞き取り方式 全国20歳以上の男女 有効回答数:1209 最大想
定誤差:±2.8%

(1)安倍新内閣についてどう思いますか。一つだけ選んで下さい。
          安倍内閣   小泉内閣発足時
非常に支持できる  13.2%  26.4%
ある程度支持できる 60.2%  61.6%
あまり支持できない 19.8%   8.6%
まったく支持できない 3.9%   1.8%
答えない・わからない 3.0%   1.6%

☆筆者のコメント:「あまり支持できない」「まったく支持できない」の数値からみ
て、はっきり「支持」と断定できるのは、「非常に支持できる」のほかは、「ある程
度支持できる」のうちの一部だろう。これを単純に足すと、73.4%になるが、そ
れをそのまま「安倍新内閣支持率73.4%」と打つのは危険すぎるように思う。

(2)最も重視すべき政策テーマ 安倍内閣が最も重視すべき政策テーマを、次のう
ちから3つまで挙げてください。

年金・医療制度 37%
中国や韓国との関係改善 34%
景気・雇用対策 31%
北朝鮮問題 29%
財政再建 28%
教育改革 24%
格差問題 22%
少子化対策 20%
消費税の引き上げ 13%
行政改革 13%
憲法改正 10%
安全保障問題  4%
その他  1%
答えない・わからない  2%

☆筆者のコメント:「中国や韓国との関係改善」や「北朝鮮問題」が多めに出ている
のはテレビの特性だろうか。それにしても筆頭に「年金・医療制度」がきており、政
権の掲げる方針との乖離ははっきりしている。

(3)どの政党を支持しますか?あなたは現在、どの政党を支持していますか。
            9月2日調査との比較
自民党  42.4%  +1.6pt
民主党  18.9%  -0.7pt
公明党   3.6%  -0.4pt
共産党   3.2%  +0.9pt
社民党   1.2%  -0.5pt
国民新党  0.2%  ±0.0pt
新党日本  0.2%  ±0.0pt
それ以外の政党を支持  0.7%  +0.3pt
支持する政党はない 26.1%  -2.7pt
答えない・わからない  3.4%  +1.3pt

☆筆者のコメント:この政党支持の配分でありながら、新内閣の支持率が7割を超え
る現象について、やはり調査する側はよく研究する必要があるのではないだろうか。
そこに潜む日本社会のマインドを放置して、マスメディアが常に与党への支持の大き
さをアナウンスすることは、意図する以上に自民党の強さへの同調を煽ることにつな
がっていないだろうか。それは日本の市民社会の形成にとって、プラスになるように
は思えない。必要なリアルな情報を入手できず、ご祝儀の性格の強い情報ばかりが届
くような状況は、自民党にとってもよくないことだろう。

(4)改革路線は進む? 安倍内閣で改革路線は、小泉内閣の時よりさらに進むと思
いますか? 思いませんか?

思う          29%
思わない        61%
答えない・わからない  10%

☆筆者のコメント:改革が進まないとする回答の多さは何を意味しているのだろうか。
改革が進まないことを期待しているのか、それとも小泉政権と比較して無理だと判断
しているのか。どうしても支持率の数字と関係付けて考えようとしてしまうが、「支
持」の回答と、この設問への回答は切離して捉えるべきだとすれば、「支持」とは何
なのか。メディアの側はやはりそこのところをしっかりと追究していくべきではない
だろうか。

(5)安倍首相の靖国参拝は? 安倍総理は総理大臣在任中、靖国神社を参拝すべき
だと思いますか、それとも止めるべきだと思いますか?

参拝すべき 33%
止めるべき 53%
答えない・わからない 14%

☆筆者のコメント:やはり「止めるべき」が多い。次の日本経済新聞の場合は、この
同様の設問への回答が拮抗している。

(6)いつまで首相を続けて欲しい? 安倍氏にいつまで総理大臣を続けてほしいで
すか? 次の中からあなたの考えに近いものを一つ選んでください。

半年以内         5%
1年くらい       15%
2年くらい       23%
3年くらい       20%
4年くらい        7%
小泉氏と同じ5年くらい 16%
それ以上         7%
答えない・わからない   8%

☆筆者のコメント:「2年くらい」が多く出ているが、3年、5年も多い。回答者の
ご祝儀数値か、それとも調査員の存在の影響などが何らかの形で出ているのだろうか。

 最後にネット上での「投票」のその後を記して本稿を終えることにする。

 ネット上では、「来年の参院選まで」とする回答がダントツだが、その後、「超短
命」の数値が上昇してきた(vote.goo)。また安倍政権の「支持」を問う投票(quizzes.
-yahoo)では、「支持しない」が再度上回っている。投票への参加意欲や回答の姿勢、
調査員が存在しないこと、サンプル数、サンプルの階層構造など、明らかにマスメデ
ィアの行う電話世論調査とはベースが異なるが、従来と異なる形態のオピニオン活動
を行うネットユーザーたちの動向は明らかに「一つのトレンド」としてとらえること
ができるだろう。投票システムの向上・発展と、投票そのものを対象とした調査・研
究が進むことによって、従来の世論調査との棲み分け、読み分けがより正確にできる
ようになっていくものと思われる。

vote.goo(昨日)
<設問>
戦後3番目の長さとなった小泉政権の後を受けて誕生した安倍政権はいつまで続くの
でしょうか。長期政権を維持できるのか、短命で終わるのか、皆さんの予想はいかが
ですか?
<回答>
佐藤栄作級(約7年)     2.9% ↓
小泉前首相越え        4.4% ↓
中曽根・小泉級(約5年)  17.3% ↓
来年の参院選まで      54.9% ↓
宇野宗佑級(69日)    12.5% ↑
分からない            8% ↓
http://vote.goo.ne.jp/news/result/abeseiken/

quizzes.yahoo(昨日)
<設問>
あなたは安倍内閣を支持しますか、しませんか?
<回答>
2006年09月26日より 計8614票
支持する       45%  3816 票
支持しない      50%  4237 票
いえない/わからない  7%   561 票
http://quizzes.yahoo.co.jp/quizresults.php?poll_id=3530&wv=1



2006-10-02 月 ■自民党安倍政権誕生 世論調査にみるその「人気」の実像(4)

2006-10-02 06:55:00 | 「JCJふらっしゅ」

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□■自民党安倍政権誕生 世論調査にみるその「人気」の実像(4)

 マスメディア企業が実施する世論調査の実態を検討するにつけ、インターネットを
利用した世論調査の今後の可能性を思い描がざるをえないことに、どうしても戸惑い
が生じる。

 マスメディアが実施する世論調査は、その総合体質をもって、また間に人を介在さ
せて、「あたが選ばれましたので、回答してください」と、それもある日突然、社会
の代表として発言するよう指名される圧力が常に働いている。

 それに翻弄される度合いは人によっても、その人が置かれた状態によっても、さま
ざまな変数となる要因を背景に大きな落差が存在すると思われるが、突然姿勢を表明
するよう求められるという非日常的な出来事であることは否めない。

 マスメディアの側がその権威ある名前をもって調査を行うこと。そこには敬意や憧
れとともに、だからこそ生じる反発や緊張の類が存在して不思議ではない=日本社会
の醸成する謙虚さ、和の精神などと称されるプラスの精神的営みを形成するもっと複
雑な社会心理学的な要素、要因などと密接に関係していると予想される。

 それは日本社会が西洋流のデモクラシーを包含できるほどに高度に積み上げられ発
達してきた精神文化と呼ぶことができるかもしれない。その叡智はブッシュ政権が打
ち出す「中東民主化」の構想などを、民主主義の武力による押し付けはおかしい、と
即座に反対の意見が高まるほど敏感かつ複雑な深みをもっていると考えられてよいだ
ろう。

 マスメディアが市民個々に働きかけることから生じ、個々から引き出すことになる
さまざまな気遣い、慮り、疑い、思惑、対抗措置など、個々の対人、対社会の姿勢が
集合して結果的に生み出す、現在はコントロール不能(ないしは不要)の種々のバイ
アスの類を除去する世論調査のシステム構築の可能性が、ネット上の投票には潜んで
いるように思われる。

 少なくともネット上の投票は、日本社会においては上意下達の一方通行路の情報告
知システムとして機能しやすいマスメディアからの働きかけではなく、ユーザーが直
接アクセスし、自らその呼びかけを読み、一票を投じるかどうかを検討してから、そ
の行為を決断できる。自身の回答を歪められることもないし、不当に取り扱われるこ
ともない(と感じることが出来る程度に技術的な進化を遂げている。だがそこに高度
な調査機能と信頼性を確認できるかというと実際にはまだまだ課題が眼前に横たわっ
ている)。

 私は上記のヤフーの「投票」のように、投票者の意図は別として、安倍不支持派の
先行を発見した支持派が、何らかの予備的な活動を経て、その数値を逆転してみせた
ところに、現在のマスメディアが行う世論調査以上の世論形成システムの可能性と調
査システムとして高度に成熟し活用されるシステムとなる可能性を感じる。

 従来のマスメディアによる世論調査は、お上が民草の代表など一部に意見具申の場
を設けたので、「自由に答えなさい」というシステム、つまりそういっておいて「罰
する」「投獄する」など、現実には少しも自由ではない非道な社会構造の記憶(時代
劇などによって伝承される社会的な記憶としてみれば顕著だが、それ以上に生活に社
会に深く根ざしているように思われる=それは間諜、つまりスパイ、あるいは余所
者・外部者に対する警戒心の強さとも関連する)や、その根本的な間違いに気づくま
では集団が形成している慣習や掟、申し合わせの類を受け入れようと模索し、そこに
同化しようとする社会的適合性獲得の文化、あるいは「そんな資格も立場も力量も持
ち合わせておりません」と代表に推挙されることを躊躇する謙譲・謙虚な姿勢を生み
出している文化的背景。

 マスメディアによる世論調査のすべてが、そのまま世論操作の道具であるとなどと
決め付けるつもりはない。だが、そうした従来の忌避すべき封建的、暴力的支配と服
従と反逆の関係が克服されたことを公に宣言する上で、戦後の民主主義社会の宣伝、
アピールに効果を発揮した時代もあったが、それはマスメディアを事業とする企業が、
成長を遂げ企業として成熟していく過程で種々の民主的な要素を削ぎ落とし、変質さ
せてきた歴史があることは忘れるべきではないだろう。

 言論封殺を企図したテロや、学校現場や会社組織に横行する懲罰の類、あるいは権
威(と思われる者)に同調することで得られる(と一方的に思い込まれる)「仲間意
識」と期待される「えこひいき」の構造などは、卑屈な茶坊主を大量発生させ、元気
に堂々とものを言うことが正しくないと社会に印象付けるのに十分な効果を発揮して
いるといえるだろう。

 ネット上で「炎上」などの呼び名で、一部の人々の動きが社会的な注目を浴びたり
する。これもその系譜の延長線上で理解されることだ。撃退すべき対象に攻撃をしか
けてだまらせ村八分にしようとする。これは社会的「異物」を排除しようとする感情
の表出といえようが、そのエネルギーは長く持続することはないという側面をもって
いるのも実に原初的と呼ぶべき日本社会の構造の特性でもある。

 しかし、その「外的」「異物」が明らかに「外国人」だったり「外国」だったりす
ると、急速にナショナリズムを高揚させる習性。これは残念ながらスポーツの世界に
おけるプチナショナリズムの台頭に同調する快感に留めることができず、そのまま仮
想敵国の脅威、それに対する闘争心に火がつき、排除の論理へと結びつく傾向は、自
らを「敗者」「弱者」と認識することができ、それに対する理不尽な攻撃がなされた
ときにはそれに断固対抗してもよいとする価値観と密接にへその緒でつながっている。

 その場合、日本は弱者でなければならず、安倍氏のいうように日本はこれまでの強
国へのキャッチアップ(追いつけ追い越せ)をめざす時代から卒業しなければならな
い。しかし安倍氏は、言外に日本はまだそこにいて、これから世界のリーダーをめざ
すべきとするメッセージを送っている。その内容の古さ、時代ズレは、現実社会の
「生活実感」、「日本はたいした国ではない」「国際的に遅れている」「ひどいこと
ばかりだ」という印象や感覚や感情と適合する側面があるのではないかと、私は疑っ
ている。

 前号に引き続き、ネット上での安倍新内閣に対する反応を紹介しておこう。

<設問>
あなたは安倍内閣を支持しますか、しませんか?
<回答>
2006年09月26日より 計5826票
支持する       53% 3052票 ←39%←36%(きょう一日で逆転)
支持しない      40% 2296票 ←52%←56%
いえない/わからない  9%  478票 ←10%
http://quizzes.yahoo.co.jp/quizresults.php?poll_id=3530&wv=1


 安倍政権を「支持する」が「支持しない」を追い抜いた。(昨日は39%だったの
で一気に14ポイントアップの猛追だったといえる(投票場所は、上記URLで開く
画面の右下のほうにあるので確認してほしい)。ここまでこだわる「何か」があった
と推察できるが、もう一つの政権の長さの「投票」(vote.goo)はどうなっただろうか。

「安倍新政権はいつまで続く?」の質問に対して、以下のように「来年の参院選まで」
の短命政権とする回答がダントツで、さらにその割合を増やした(ヤフーのほうは猛
追で、こちらのグーのほうは「来年の参院選まで」が安泰だ。安倍政権の支持者の方
々も「政権の長さ」についてはあまりこだわりがないのだろうか。

<設問>
戦後3番目の長さとなった小泉政権の後を受けて誕生した安倍政権はいつまで続くの
でしょうか。長期政権を維持できるのか、短命で終わるのか、皆さんの予想はいかが
ですか?
<回答>
佐藤栄作級(約7年)    3%
小泉前首相越え       4.6%
中曽根・小泉級(約5年) 18.2%
来年の参院選まで     56.5%(昨日より0.1ポイントアップ)
宇野宗佑級(69日)    9.3%
分からない         8.4%
http://vote.goo.ne.jp/news/result/abeseiken/

 安倍政権じゃ、来年の参院選まで待たずに、早めに解散して本格政権をめざすべき
とする声も、政権発足「ご祝儀」の高支持率を背景に出ているともいう。あるいは安
倍政権は最初から中継ぎの約束でもできていて、本格政権は別の人が担うシナリオで
もあるのだろうか。よくわからない。


◆無党派層の一部が、安倍氏の首相就任で自民党の支持率を押し上げた


 続いて、毎日新聞が26、27両日実施した緊急の全国世論調査(電話)の結果を
ざっとおさらいしておこう(下記記事より抜粋)
<出典>
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060928k0000m010145000c.html
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/feature/news/20060928k0000m010146000c.html

(1)内閣支持率 歴代3位の67%
 「支持する」 67%
 「支持しない」16%
 「関心がない」14%
(2)支持する理由
 「首相に若くて清新なイメージがあるから」54%
 「首相の指導力に期待できるから」    17%
 「首相の政策が期待できるから」     15%
(3)支持しない理由は
 「首相の政策に反対だから」    39%
 「首相の指導力に期待できないから」24%
 「自民党の首相だから」      19%
(4)最も期待する政策
 「社会保障制度改革」27%
 「教育改革」    15%
 「財政再建」    15%
 「景気対策」    13%
(5)閣僚・自民党役員人事
 「評価する」 49%
 「評価しない」29%
(6)人事で党内意見に配慮したと思うかどうか
 「おおいに」「ある程度」(合算)配慮した 72%
(7)安倍首相の靖国神社参拝
 「すべきではない」 48%
 「すべきだ」    39%
 <内訳>
 安倍内閣支持層
 「すべきだ」   48%
 「すべきではない」40%
 安倍内閣不支持層
 「すべきではない」81%
 「すべきだ」   11%
 自民支持層
 「すべきだ」   55%
 「すべきではない」34%
 他党支持層
 「すべきだ」公明36%、民主26%、共産19%、社民26%
 女性
 「すべきだ」   35%
 「すべきではない」50%
 男性
 「すべきだ」   44%
 「すべきではない」44%
(8)安倍氏が今年4月に靖国神社を参拝し、その事実を公表していないことへの評価
 「支持する」   46%
 「支持しない」  46%

<特徴>
1 自民党支持率が8月の前回調査比10ポイント増となり、民主、公明、共産、社
 民各党の支持率がほとんど変わらない中、無党派層が9ポイント減少した。
2 安倍晋三首相の就任により、無党派層の一部が自民党支持に向かったとみられ、
 無党派層が前回37%いたことを考えると、数字上は4人に1人が自民支持に移行
 した計算となる。
3 支持政党別に安倍内閣への支持、不支持を見ると、自民支持層は小泉内閣だった
 前回の76%から今回は90%へ増えた。公明支持層も47%から80%に急増、
与党支持層の「安倍人気」が圧倒的なことを示した。
4 無党派層、民主支持層の内閣支持率は、前回それぞれ36%、22%だったこと
 から考えると、これまで小泉内閣を支持していなかった人たちにも支持が浸透して
 いる。
5 現時点で小泉前内閣を支持するかどうかも質問。支持57%、不支持28%で、
 8月調査の小泉内閣支持率45%より増えた。前内閣支持派の87%が安倍内閣を
 支持する一方、不支持派でも40%が安倍内閣支持と答えており、「小泉政治の継
 承」を期待して安倍内閣を支持する人が多い半面、「小泉政治の是正」への期待か
 ら支持している層の存在もうかがわせた。
6 年齢別の内閣支持率では、無関心層の多い20歳代が57%とやや低め。20歳
 代を含むすべての年齢層で80%台を記録した小泉内閣発足時(01年4月)ほど
 の爆発的人気にはなっていない。
7 安倍内閣に期待する政策は、「社会保障制度改革」が内閣支持層でも不支持層で
 もトップで、年金などの将来不安の強さを示した。
8 内閣支持層では安倍首相が力を入れる「教育改革」が17%でこれに続いたが、
 再チャレンジ政策などによる解決を訴えた「格差是正」は7%、自民党総裁選で前
 面に掲げた「憲法改正」はわずか6%。「政策より人気先行」のスタートを改めて
 印象づけた。
  内閣不支持層では17%が「格差是正」、16%が「アジア外交の立て直し」を
 挙げ、小泉内閣の残した二つの「負の遺産」が安倍内閣への不支持につながってい
 ることをうかがわせた。
   (以上、「毎日世論調査:無党派の四分の一自民へ 「安倍効果」出る」より)

つづく (1件10,000文字の制限をを越えるために分割)


2006-10-02 月 (つづき)

2006-10-02 06:50:00 | 「JCJふらっしゅ」
(つづき)
☆筆者のコメント:毎日新聞の調査結果で目を引いたのは、以下の点だろう。

(1)4月の安倍氏の靖国神社参拝の件で、その事実を公表していないことへの評価
 が拮抗していること
(2)無党派層の一部が、安倍氏の首相就任で自民党の支持率を押し上げたこと(た
 だし20歳代は低め)
(3)内閣に期待する政策は「社会保障制度」がトップで、年金などの将来不安の克
服への期待が高いこと
(4)小泉内閣の生み出した「格差」と「アジア外交の崩壊」、二つが安倍内閣への
不支持につながっていること

 毎日新聞の世論調査全般についても、前に挙げた新聞メディアの状況は共通している。
年代別の動きや、野党支持者の反応を政党別に細分化して発表したのは参考になる。無
党派層の「移動」(4人に1人が自民支持に)についての記述もわかりやすかったが、
その原因や動機についてはふみこまれておらず、一時の現象なのか、そうでないのか
は不明だ。

 昨年の郵政総選挙のときに自民党支持を底上げした現象と共通した部分があるよう
にも思える。この「動き」を把握することが、時代を流動化させている状況にピント
を合わせることにつながるのかもしれない。私が時々指摘する「過剰同調」の傾向と
リンクするものなのかどうか、あるいは同調ではなく確信に基づく動きなのかどうか。

 メディアは極論を排除していないか、それでいいのかという検証のテーマと、極端
を受容する姿勢とその後の成り行きに「暴走」を結果的に呼び込んでしまうに至る実
態(これは政治からカルト宗教までさまざまな局面で起きている)。

 逸脱者に伴走してその逸脱を制御しようとする日本的「対応」の一つの側面(日本
の母性的対応と称されるなど、賢者の対応、参謀的行動ともプロパガンダされる体制
堅持の思想=これは公明党が小泉与党にいて自民のブレーキ役をつとめるとしてきた
立場と似ている)は、やっかい者にやっかいを負わせるしたたかな計算があってこそ
有効な場合も出てくるが、逆に荷を背負わされて信頼されていると早合点したり、そ
う思ったのに実は信頼されていないことに気づいて、いずれにしても極端に走ってみ
せるという危険を内包している。

 言論公開市場における極論の排除は、逆に不安定を社会にもたらす。それは言論テ
ロをさせない配慮という消極的な姿勢ではなく、極端のもつ別の側面を見抜く眼、極
論が訴える本質が発するもう一つの声にタイムリーに耳をすます必要性のことである。

 いまでこそようやく「格差社会」「ワーキングプ」アの重大な問題が認識されるよ
うになりつつあるが、その実態に苦しむ状況が目立つようになったのは、少なくとも
もう5年も、6年も前のことである。メディアとともに生まれ育ってきた世代にとっ
て、メディアはいざというときに自分の力になってくれないと信じ込ませる事態は、
メディア社会の基盤を揺るがすほどのリパーカッション(反撃)として立ち表れる。

 攻撃性を高めねばならないと、その気になって動き出す極論、攻撃性をいくら高め
ても満足の地平に至ることにはならない限界。情緒的、感情的吐露の一形態としての
極論の台頭をどう考えていくべきなのか。

 もはや単純にネット上で「支持」「不支持」の争奪のバトルを繰り広げることが、
時代を正しい方向に導くわけではないことは自明のことであろうが、そこには「敵」
を求めてやまない事情とパッション(情熱)が横たわっている。そしてさらに同時に、
ネット上だけでなく、日常風景の中にもみられる極論のなかには、納得のいくジャッ
ジメント(水戸黄門的裁定)を希求してやまない現実の窮状が存在しているのである。

 威勢のよい極論を吐いて人気をえようとするプロの政治家に同調する人々が、そこ
に何をみているのか。伴走して食い止めようとする人情が支持を突き動かしているの
か、あるいは悪をほおっておけないという一本気な感情の台頭が、命の大切さをつき
破って自己矛盾を起こしかけているのか。さまざまな要素が入り乱れて、「解」を追
い求めながら見つけられないというジレンマが

 しかし日本のその悲惨も、国家規模の実験も、小泉時代で終わりにすべきである。
これ以上国家主義的な流れを放置し、嫌悪の対象として他国を選択させるような感情
の操作を繰り返し、権威を志向する者たちが権威の構造に連なって末端まで同調傾向
を強めるような政治や報道を続けるようなことがあれば、それはもはや善意でも、正
義でもないことをはっきりと突きつけられる日が訪れるに違いない。

 醜いだけの弱肉強食の論理を、卑近な日常にも、世界の日常にも蔓延させることが
いかに人心をざらつかせ、活力や創造性を根源から奪い去るものであるか、まずメデ
ィアが私たちの共有する情報環境を変えていくことから始めねばならないだろう。

 社会の大状況に目を向けるべきときに、日常的身辺的処世術に民心を誘導し、大状
況との関係を語るのではなく、大状況とのかかわりを見通す視点を断ち切ってしまえ
ば、それもはや大状況からの逃避を推奨し促す行為でしかないのである。政治家まで
がポピュリズムを強めたり、またタカ派のポーズで民心をひきつけようとしたりする
ぶざまな社会を出現させるに至っている。

 新聞だけでなく、特に放送メディアは、到来したブリードバンド時代における存在
価値の創出、発信の方法も含めて、報道やエンタテイメント番組の今後のありようを
真剣に模索し、議論と実績を積み上げていくべきときを迎えているのではないだろう
か。


 次号ではJNN、日本経済新聞、ロイター通信などの新政権関連調査の報道をみて
おくことにしたい。



2006-10-01 日 ■自民党安倍政権誕生 世論調査にみるその「人気」の実像(3)

2006-10-01 01:41:04 | 「JCJふらっしゅ」

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200610/01 1194号                    (転送紹介歓迎)
[JCJふらっしゅ]

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□■自民党安倍政権誕生 世論調査にみるその「人気」の実像(3)

 前回に引き続き、ネット上の動き、関心からみておこう。
 自民党の代表選が実質的に開始される中、たとえばネット上では次のような結果が
出ていた。ネット上の反応は「移ろいやすい」ということもできようが、マスメディ
アの実施する世論調査は「固い」とは言い切れない。

 自分のとっている新聞社の調査なら答えるが、他社の場合は断わる人が多く出ると
か、電話調査の場合は当然、面接の場合でも調査票は調査員が握り、回答を記入する
のは調査員であるとか、最初に支持・不支持を訊ねるためあとで修正しにくいとか、
逆に誘導質問にのせられて、自分の考えをうまく回答できなかった、などのケースは
後をたたない。

 調査方法や調査データに関する詳細を公表する会社もあれば、そうしていない会社
もある。調査項目や無効回答の割合などの詳細が公表されているからといって、回答
にバイアスがかかっていないとか、このようなバイアスがかかっている可能性がある
とか、調査の結果はさまざまな読み方ができるという具体例を示すなどの努力はされ
ていないのが現実だ。

 前にも述べたように、設問の仕方、設問の順番、設問の発し方、回答の記入の仕方、
され方などのテクニカルな側面だけでなく、電話でも面接でも、その調査の手法・内
容によって回答者の心理的側面からくるバイアスを完全に消し去ることは困難といえ
る。

 新政権発足の段階で実施され、発表される「世論調査」の結果が、往々にして「ご
祝儀」となるのは、調査者と回答者のいわば「合作」といえる側面もあるのかもしれ
ない。それであるならば、回答者数においてマスメディアの調査よりも多い(繰り返
し投票できないようにセットした調査においては)、インターネットを活用した「自
主投票」の結果や推移を、マスメディアの世論調査の結果と比較してみていくことも
大事になっているといえるだろう(もちろん大事なものであれば、参加することも)。

 今回の安倍政権発足時においてマスメディアが実施した世論調査の結果では、政権
支持率は60~70%代に落ち着いており、その支持の根拠・傾向はおしなべて「イ
メージ」に傾斜し、政策面での評価はなされていないに等しい。

 それは有権者にとって重要な人物判断の材料を、安部氏が、答えることを避け、逃
げ回っていることとも深く関係しているわけであるが、それを「おかしい」と糾弾す
る声は世論調査には出てこない。そのこと一つをとっても、現在の日本のマスメディ
アが慣例的に実施している世論調査の手法は、このネット時代、根本から見直される
べきときを迎えているといえるだろう。

 前置きが長くなってしまった。
 実質的に、自民党の総裁選まっただなかといえる8月末段階における数字である。
 このデータの場合は、回答者の支持政党などの属性も出ているので、より詳しくは、
サイトにアクセスしてみてほしい。ただしネット上のサイトには、回答者数や設問の
精度などに落差がある。投票サイトではなく、結果だけ掲載しているところもある。
それぞれに全く異なる性格を有しているので、その点に留意しながら比較材料を探し
ていただきたい。

<設問>基礎データ(2006.08.21~2006.08.31)
内閣を支持しますか? 支持率 39.7%
<回答>
支持する         21.8%
どちらかというと支持   17.9%
わからない         0.6%
どちらかというと支持しない 9.0%
支持しない         50.5% (ダントツ)

回答数  2,101票 (男性88.9%・女性11.0%)
参考: 30~50代が75.3%
調査方法 インターネットによる自主投票のみ
http://www.election.co.jp/news/2006/news0901.html


 前号に引き続き、紹介した「投票」のその後もみておこう。
 Yahoo!みんなの政治
<設問>
あなたは安倍内閣を支持しますか、しませんか?
<回答> 2006年09月26日より 計3383票
支持する       39%  1314 票 (36%↑)
支持しない      52%  1745 票 (56%↓)★
いえない/わからない 10%   324 票
http://quizzes.yahoo.co.jp/quizresults.php?poll_id=3530&wv=1

 安倍政権を「支持する」が、追い上げてきている。(昨日は36%だったので3%
アップの猛追といえる)。☆投票場所は、上記URLにアクセスして開く画面の右下
のほうにあるので確認していただきたい。

 さらに前回のネット上の「投票」(vote.goo)はその後どうなっただろうか。
 こちらは「安倍新政権はいつまで続く?」の質問に対して、以下のように「来年の
参院選まで」の短命政権とする回答がダントツで、さらにまたその割合を増やしてい
る。

<設問>
戦後3番目の長さとなった小泉政権の後を受けて誕生した安倍政権はいつまで続くの
でしょうか。長期政権を維持できるのか、短命で終わるのか、皆さんの予想はいかが
ですか?
<回答>
佐藤栄作級(約7年)      2.9%
小泉前首相越え         4.6%
中曽根・小泉級(約5年)   18.3%
来年の参院選まで       56.4% ←55.6% ←54.4%
宇野宗佑級(69日)      9.4%
分からない           8.5%
(DATE:2006/09/30 23:30)
http://vote.goo.ne.jp/news/result/abeseiken/


 世論調査が「客観的データ」だと単純に信じ込む愚を、私たちはそろそろ卒業する
必要がある。もはや世論調査は、政府や公権力などに対する要求、要望、要請を反映
するものではなくなっている。その設問はおおむね「客観性」を装い、回答者に対し
てまで「客観的」に答えることを無言のうちに強いている。

 そこから出てきた結果がなぜ「客観的」とはいえないのか。前述したことの繰り返
しになるので簡潔に述べておこう。「世論」に「客観」はないのである。もし最大限
に客観的なデータを取ろうとすれば、市民の要求、要望、要請の所在に絞り込むこと
が現状では最短の方法だと思う。

 紙面などでは比較的「高い」支持率が大きな見出しとなり、本当は最も大切な国民
の要求は付け足しのように最後のほうに載っているというスタイルが、いまや一般的
になっている。この段階ですでに、メディアが「客観性」を装いながら、だれの立場
に立って世論調査を実施しているのか明白である。

 だれのための、何のためのメディアなのかを考えたとき、支持率のポイントは、個
々の回答者としては、礼儀正しい市民の「ご祝儀」であるにもかかわらず、それが増
幅されて「高ポイント」の支持率となって紙面を飾る。それが基盤とされて、わが陣
営は高支持率成りと動き出す。メディアも自分たちでつくり上げたものであることを
忘れて、他社もそうなのだからと、高支持を誇る政権だと思い込んで恐縮して動くよ
うになったりする。

 ただ今回、安倍氏の初の所信表明演説に対する各紙の論調などをみると、一部を除
いてメディアはまだその「自家中毒」には陥っていないようだ。各紙社説には厳しい
指摘が並んだ。

 ただ「指南役」や「激励役」を早くも買って出ているところもある。政治家とは、
自分を隠してまでやりたいものなのだろうか。そんなことで激動の荒波を乗り越えら
れるのだろうか。

 「指南役」や「激励役」を自負するメディアは、今後ははっきりと「政府御用」と
題字に銘打つもよし、ただ、そのご指南や激励を社説の欄でいちいち開陳されるのは
読者にとっていかがなものだろうか。気分だけ一億総ご指南役、激励役に仕立て上げ
ても、たどり着く先が「国家主義」ではあまりに情けない。国の未来はそんなところ
から拓けてはこないのである。

 メディア社会に生まれ、どっぷりメディアつかって生活することが自然という層と、
戦後世代というのはかなりダブる。メディア人が見るより、ずっとメディアの奥を読
んでいる。ちょっと何かが動くと、どっと揺れるという現象が指摘されているが、そ
の現象はかつてのヒーロー、スーパースターを軸としたマスプロ、マスセールの時代
とは少々異なっている。

 昨年の郵政総選挙では、400万票の積み上げで自民党は第一党の利益をものにし
て大勝した。だが、その騒ぎの中心を担った小泉チルドレンたちは、今回の総裁選、
組閣騒ぎとは縁がなかった。自民党は自党の構成メンバーである国会議員さえも
「使い捨て」る時代を迎えている。それほど生き残りに必死にならざるをえないのだ。

「美しい国」とスローガンをかかげるだけで、その中身はない。それをビジョンと呼
ぶことはできない。日本国憲法の遵守を誓わない政治家や政党に改憲を提起する資格
などないように、いまその日本国憲法や教育基本法のもつ価値を投げ捨てることを標
榜する者たちに、時代に対応した政策やその遂行を求めること自体に無理があるので
はないか。

 そうした時代にメディアはどうあるべきなのか、どんな課題を時代から突きつけら
れているのだろうか。過去5年強の間に本来着手すべきであった時代の本質的な課題
にこそメディアは取り組まねばならない。その意味で、政権発足時の世論調査も含め
た報道は、事件・災害報道であれば「初動」にあたる。本稿でも、いま少し議論を深
めておくことにしたい。

 なお前回、今号で続き(毎日新聞ほか)を紹介させていただくと予告したが、時間
と行数の都合で、次回に続き(毎日新聞、日本経済新聞ほか)を紹介させていただく。

(次号につづく)


<関連社説>
北海道新聞社説 首相所信表明*言葉は国民に届いたか
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/backnumber.php3?&d=20060930&j=0032&k=200609305542
西日本新聞社説 まだまだ政策が抽象的だ 首相所信表明
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/column/syasetu/20060930/20060930_001.shtml
中国新聞社説 所信表明演説 実像見えぬ「美しい国」
http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh200609300206.html
琉球新報社説 首相所信表明・急ぐべきは格差是正/基地・振興リンク論筋違い
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-17630-storytopic-11.html
東京新聞社説 歴史観をなぜ語らない 安倍演説
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20060930/col_____sha_____002.shtml
毎日新聞社説 安倍首相演説 じわり脱小泉そろりと右へ
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060930ddm005070145000c.html
朝日新聞社説 所信表明 そろり安全運転ですか
http://www.asahi.com/paper/editorial20060930.html

産経新聞 【主張】所信表明 買いたい国家再生の気概
http://www.sankei.co.jp/news/060930/edi001.htm
読売新聞社説 [所信表明演説]「目指す国家像をどう具体化する」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060929ig90.htm

──────────────────────────────────────

 


2006-09-29 金 ■自民党安倍政権誕生 世論調査にみるその「人気」の実像(2)

2006-09-29 17:03:19 | 「JCJふらっしゅ」

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2006/09/29 1193号                    (転送紹介歓迎)
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前号のつづき)

□■自民党安倍政権誕生 世論調査にみるその「人気」の実像(2)
  政権発足直後の「世論調査」にみる「ご祝儀」報道の臭い


 前号に引き続き、ネット上での安倍新内閣に対する反応から紹介しておこう。

<設問>
あなたは安倍内閣を支持しますか、しませんか?
<回答>
支持する       36%  824 票
支持しない      56% 1298 票
いえない/わからない 10%  211 票
2006年09月26日より 計2333票 Yahoo!みんなの政治
http://quizzes.yahoo.co.jp/quizresults.php?poll_id=3530&wv=1

 さらに前回のネット上の「投票」(vote.goo)はその後どうなっただろうか。
「安倍新政権はいつまで続く?」の質問に対して、以下のように「来年の参院選まで」
がダントツで、さらにその割合が増えている。

<設問>
戦後3番目の長さとなった小泉政権の後を受けて誕生した安倍政権はいつまで続くの
でしょうか。長期政権を維持できるのか、短命で終わるのか、皆さんの予想はいかが
ですか?
<回答>
佐藤栄作級(約7年)    2.9%
小泉前首相越え       4.7%
中曽根・小泉級(約5年) 19%
来年の参院選まで     55.6%(TOP独走) 前回54.4%↑
宇野宗佑級(69日)    9%
分からない         8.9%
(DATE:2006/09/29 21:00)
http://vote.goo.ne.jp/news/result/abeseiken/


 新聞社等の行う電話世論調査の結果と比較して、ネット上の投票者はおおむね自民
党の継続新政権に対して歓迎していない、あるいは否定的な見方をしている。この数
字の落差をどのようにとらえるべきだろうか。

 ネット上で投票する人は、無作為に抽出された対象者と異なり、自由に自身の態度
を表明していると考えられる。それはたとえば、次に紹介する朝日新聞の調査で、
「有効回答は996人。回答率は57%」と報告されているように、回答しなかった
人が43%に上っていることを考え合わせておきたい。これは「有効回答」を明記し
ていない他の調査でも同様だと思われる。

 つまり、ネット上で投票する人は、ネット上で投票しない人と比較してはるかに少
数だと思われる。ネット上で投票しない人のなかに「気がつかない人」「知らない
人」「関心をもたない人」などを含めれば、投票者の割合はほんのごく少数に限られ
ることになる。

 しかしながら、無作為に抽出され、電話をされることになる新聞等の調査でも、そ
れに回答しない人の割合は半数近くを占めると報告されていることを考えると、投票
の精度はあまりかわらないともいえる。現実の選挙における投票でも、投票しない人
は存在するからだ。

 ここでは深く立ち入らないが、ネット上の投票の結果と、新聞社等の行う電話世論
調査の結果との明確な「落差」は、単純に回答者の「意識」の高さや、投票に対する
「積極性」にあると想像するだけで、切り離して考えるだけでよいのかどうか、私に
は疑問である。

 今後の「世論調査」、高度情報社会における「世論調査」のありようを考えると、
新聞社等の社会的な機関が人を介して行う電話世論調査よりも、ネット上の投票のほ
うがより現実の「投票」に近いように感じるからだ。コストや手間を考えても、将来
「電子投票」が当然という時代になるのは必然的とさえいえるだろう。

 そして、やはり「いつもと同様」、マスメディアによる世論調査の「結果」が大々
的に報じられ、安倍政権への「支持」が圧倒的に高いことを社会的に広く「印象づけ
る」ことになっている。この事実をどう考えるのかである。日常生活のなかに、ある
日突然、マスメディアと名乗る人から電話がかかってくる。回答を要求された人は、
どんな反応をしやすいか。日本人の習性のようにいわれる「ホンネとタテマエ」、あ
るいは「ハレとケ」について考え合わせてみるのもよいかもしれない。

 もちろん、そこに自分という存在がどのようにかかわっているか、どのように自分
の思いや希望を投影させるかという選挙や政治のシステムについて、あるいは歴史認
識について、あるいは人と集団と社会のダイナミズムについての学習、教育、研究と
その情報や成果の共有のありようについても、考え合わせてみるべきであろうと思う。

 大きな選挙の前となると、マスメディアはまるで予想屋になったかのように、ある
いはテストの試験官になたかのように、数字を並べ分析してみせ、候補者や政党をハ
デに競わせてみせる。その効果は、そのときによって、与党側だけでなく、野党側に
有利に働くこともあるだろう。

 大事なのは、いかに「公平・平等」に取扱うかという、一定期間におけるルールの
徹底だけでない。報道の内容で重視されるべきはいかに「公正」であるかということ、
そして「戦争」を煽るような論調に対して、あるいはそうした勢力に対して、きちん
と抑制的であるかどうかであろう。

 それは日本国憲法に則ってということでもあるし、それだけではなく、マスメディ
アや政治家、政党が、国民に広く他国を攻撃したり、戦争が近づいていると危機を煽
ったりすることの危険、犯罪性について深く、確固とした認識を共有する「現代国家
のありよう」の問題でもある。

 「正義のため」と称して、不法に他国を侵略して市民と兵士を大量に殺戮する行為
は、いかなる言辞をもってしても正当化されることはことはない。逆に、その行為の
残虐性、欺瞞、虚偽にまみれた「国家の犯罪」をあばきだす。「テロとのたたかい」
を標榜する米ブッシュ政権は、米国民、そして世界の世論からその不当性、過ち、犯
罪性を指摘されている。

 日本の小泉政権はそれに同調し、平和主義日本の国際的な立場、地位、信用を暴落
させた。国会に占める議員の数を根拠に、それを引き継いだ安倍自民党新政権が、そ
れでも7割もの支持を得ているとカウントされることを、そのまま素直に信じること
はできないし、それに何ら疑問ももたないことのほうが、高度情報社会の現在、メデ
ィアにかかわるものとしては怠惰の謗りを逃れないだろう。

 なお本稿は2回ではおさまりきれないので、今回は朝日新聞の調査に関しての紹介
と記述に留め、次号で続き(毎日新聞ほか)を紹介させていただく。


◆市民、読者との関係、距離が問われる朝日新聞「全国世論調査(電話)」


 続いて、朝日新聞社が26日夜から27日にかけて実施した緊急の全国世論調査
(電話)の結果を見よう。

 〈調査方法〉26、27の両日、全国の有権者を対象に「朝日RDD」方式で電話
調査。対象者の選び方は無作為3段抽出法。有効回答は996人。回答率は57%。

(1) 内閣支持率63%、不支持率18%
 =発足後、初めての支持率としては小泉内閣の78%に及ばないが、最近では橋本
内閣の61%を上回る戦後歴代3位の高水準(→朝日新聞の評価分析、以下同)。

(2) 内閣の顔ぶれについて
 「新鮮だ」    35%
 「そうは思わない」38%

☆筆者のコメント:「新鮮だ」とは思わないが、「新鮮だ」を凌駕した。それでも内
閣支持率63%という結果になる。ここに日本社会の特性があるのか、それともこれ
は調査方法の問題なのか。

(3) 来年夏の参院選に自民と民主のどちらに勝ってほしいか
 自民47%
 民主36%

 =内閣支持率は女性がやや高い。支持政党別では自民支持層で89%と圧倒的だ。
ただし無党派層は47%で、小泉内閣発足時の74%には及ばない(同)。

☆筆者のコメント:自民47%、民主36%という数値はなるほどと思わせるもので
はあるが、これは政党支持率とは異なる設問となっている。こうした設問自体が、さ
まざまに情報が積もり積もって、政治を「情緒化」させる要因となってないか、考え
る必要があるのではないだろうか。有効回答した人だけでなく、回答しなかった人の
反応、姿勢をどのように把握し、考慮に入れるのか。その点も、この手の設問も場合
には問われねばならないのかもしれない。

(4) 内閣を支持する理由
 「政策の面から」    28%
 「なんとなく」     27%
 「首相が安倍さんだから」24%

☆筆者のコメント:「政策の面から」が28%と少し多く出ているが、評価された政
策とはどんな点なのか知りたいところだが、これではわからない。「なんとなく」
「首相が安倍さんだから」は、もはや「感覚的」なイメージに過ぎない。設問は、そ
うした情緒的な側面をも拾い上げて、状況を正確に分析しようとしたものなのか、そ
れともそうした情緒的な側面を回答に加えることで政権支持の数値を押し上げること
を狙ったものなのか。少なくとも、こうした情緒的な設問が、回答する側にどのよう
な心理的影響を及ぼすかを考えるべきではないだろうか。この点は、マスメディア研
究、社会調査法における研究で深めるべきテーマではなかろうか。

(5) 強力な内閣だと思うか
 「頼りない」34%
 「強力」  23%
  =小泉内閣発足直後、「強力」との印象が多かったのと対照的だ。ただ、回答で
 最も多かったのは「その他」の43%。新内閣の「実力」は今後、見定めようとい
 う気配も漂う(同)。

☆筆者のコメント:これも同様で、「頼りない」34%と出ているような政権が、支
持を63%も獲得すること自体、不思議といわざるをえない。「回答者がそうだった
んだから」と居直って済むことではないだろう。その矛盾に直面して、まず調査方法
に問題はなかったのか問うのが自然であろうし、そこに問題を発見できなければ、そ
の現象を掘り下げようとするのがメディアとして当然の姿勢である。

(6)教育基本法改正について
 「今の国会にこだわらず、議論を続けるべきだ」 66%
 「今の国会で成立を目指すべきだ」       21%
  =安倍首相が最優先課題にあげる臨時国会での教育基本法改正については、と多
 く、にとどまった。「改正する必要はない」は6%。首相の意気込みとは裏腹に世
 論は慎重なようだ(同)。

☆筆者のコメント:新たな首相が「最優先課題」としてあげた項目に対して、圧倒的
に「否」の回答が出ている。この段階で、現在の「暫定政権」の方針が否定されてい
るのである。にもかかわらず、支持は63%という数値が出る。いよいよ設問、調査
方法、回答者のカウント等のありようについて、メディアとしては疑問をもつべきで
はないか。

「いや、これが日本社会ですから」というような姿勢では、日本社会を愚弄するだけ
である。メディアが自身を特別なエリートとして認識し、市民社会の形成に貢献しよ
うとしないのであれば、それはそのまま反市民的な姿勢と映じることを知っておかね
ばならないだろう。

(7)中国や韓国との外交の改善について
「積極的に取り組んでほしい」 83%

  =小泉内閣から引き継いだ最大の懸案である中国や韓国との外交の改善について
 は、「積極的に取り組んでほしい」が83%に達した。民主支持層では9割近く、
 内閣支持層や自民支持層でも8割を超えた(同)。

☆筆者のコメント:こうした設問を聞いて、「あ、やっぱり不支持に変えてください」
と回答者はいえるだろうか。もし先に「支持、不支持」を問われていた場合。しかし
その順番でなければ、「誘導質問」だといわれかねないので、あらかじめ回答者自身
がもつ「支持、不支持」姿勢を聞いているのです、というのであれば、それは世論調
査というより、自らの日常的な報道の姿勢、日頃のジャーナリズム性を問われること
になるのだという認識が問われることになる。

(8)歴史認識を巡り、安倍首相が自らの認識を示していないことについて
 「評価する」  24%
 「評価しない」 52%
 (自民支持層44%、民主支持層73%、無党派層半数超)

(9)政党支持率
 自民   39%
 民主   14%
 無党派層 41%

☆筆者のコメント:(8)(9)について。他の設問でも感じたことだが、自民支持
層、民主支持層以外の政党支持層をあげないのは、なにか理由があるのだろうか。
「2大政党時代」を理由にあげるのだとすれば、「朝日新聞は2大政党制の樹立を促
進する新聞です」と公言すべきであろう。そういわずに政党名を二つしかあげないの
であれば、回答者に二つ以外の政党支持者は含まれていなかったと報告すべきである。
数字だけを独り歩きさせるようなことがあれば、天下の朝日新聞としての認識が問わ
れるところであろう。きちんとネット上でも断わりをいれるべきだ。

そうではなく、回答者に他の政党支持者も含まれていたのだとすれば、他の政党支持
者を無党派層に含んだのかどうかを明言すべきである。その場合には、そのように処
理した理由を述べる必要がある。こうした側面に「反市民的」な臭いを感じ取る人は
多いのではないだろうか。また、そうした括り方であれば、繰り返しの投票を許容し
ないシステムをもったネット上の投票のほうがずっと信憑性が出てくるようにも思え
る。

(10)新内閣のもとで景気はどうなる
 「よくなる」    29%
 「そうは思わない」 48%

☆筆者のコメント:今度の政権が取り組むべき最優先課題として、年金などの社会保
障や景気対策、財政再建などをあげられよう。外交と歴史認識には「どうする」を問
う姿勢が感じられるが、全体として「どうする」よりも「どうなる」を回答者に強い
る設問の姿勢、市民の要求、要請を具体的にすくいあげて世に問おうとする姿勢を欠
いた世論調査とは、実質的にいかなる社会的役割を負うものなのだろうか。

朝日新聞にとって読者とは、世論とは何なのか。同紙と市民、市民社会との関係につ
いてのビジョンを喪失していないか、歪んでいないか。ジャーナリズムとしての軸を
もっとはっきりともつべきではないのか。私は新政権発足直後の世論調査について、
朝日新聞の場合にも、やはり「ご祝儀」報道の臭いを感じてしまうのである。

TITLE:asahi.com:安倍内閣支持率63%、戦後3位の高水準 本社世論調査 - 政治
DATE:2006/09/28 06:54
http://www.asahi.com/politics/update/0927/014.html

次号につづく)


 


2006-09-28 木 ■自民党安倍政権誕生 世論調査にみるその「人気」の実像(1)

2006-09-28 12:57:23 | 「JCJふらっしゅ」

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2006/09/28 1192号                    (転送紹介歓迎)
[JCJふらっしゅ]

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□■自民党安倍政権誕生 世論調査にみるその「人気」の実像(1)

 小泉政権の後を継いで、とりあえず発足した自民党安倍政権。
 マスメディアは政策ではなく、人事をめぐって右往左往の騒ぎだ。発足したといえ
ども、まだ国民の審判は経ていない。現在はまだ踊り場、中継ぎの状態でしかない。

 にもかかわらず、その政権の「人気」のほどをアピールし始めた。政権持ち上げの
根拠というか、ツールは例によって「世論調査」だ。

 とはいえ、小泉政権のときと違って、ちっとも熱狂的なファンが目立つわけもない。
大量に「おっかけ」の存在が発生しているような状態ではない。にもかかわらず、そ
の「支持率」は共同通信65%、読売新聞70%、朝日新聞63%(発表順)と報じ
られている。

 この「ご祝儀」ともいうべき数値を生み出しているのは、マスメディア側の設問の
仕方や調査・算出方法などによるものなのか、それとも回答者側の儀礼的姿勢、「ご
祝儀」「タテマエ」の姿勢が濃厚に反映した結果なのだろうか。

 マスメディアの世論調査結果を見る前に、インターネット上の「投票」が行われて
いるので、その途中経過の数値をご紹介しておこう。そのほうが現在の状況を見極め
やすくなると思われるので。

 ネット上の「投票」(vote.goo):「安倍新政権はいつまで続く?」の質問に対して、
以下のような結果となっている(DATE:2006/09/28 06:59)。

<設問>
戦後3番目の長さとなった小泉政権の後を受けて誕生した安倍政権はいつまで続くの
でしょうか。長期政権を維持できるのか、短命で終わるのか、皆さんの予想はいかが
ですか?

<回答>
 佐藤栄作級(約7年)    3.2%
 小泉前首相越え       4.7%
 中曽根・小泉級(約5年) 20.1%
 来年の参院選まで     54.4% (TOP独走)
 宇野宗佑級(69日)    8.4%
 分からない         9.2%
 
http://vote.goo.ne.jp/news/result/abeseiken/

 上記から、安倍新政権は「来年の参院選まで」(54.4%)で終わると思ってい
る人が圧倒的であることがわかる。ネット上の、それも関心の高い層の投票というこ
とにとどまるのかもしれないが、現在までの段階で、これに「投票」しようと広く呼
びかけが行われた形跡はない。

 政権の「人気」をはかる一つの指標としては、重視してよいものだと思う。自民党
総裁選において、ネット上では安倍氏より「麻生氏優位」という流れができたのも記
憶に新しいところだ。「安倍人気」は、いかに「高い」と宣伝されても、まったく実
感が伴っておらず、そのキャンペーンに近い効果を発揮しておかしくない情報に、市
民が浮き足立って引きずり込まれているような形跡も、現在のところは感じられない。

 ただ、中曽根・小泉級(約5年)と見る人が20.1%いたりする。まだ各種陣営
の「手」がついていない現在の段階で、圧倒的多数を占める「来年の参院選まで」、
つまり「短命」とする根拠もまだ定かではないが、「長期」と判断する根拠もない。
かなり期待や希望も含めた世論の「実像」の所在を、比較的ストレートに表している
ようにも感じられる数値ではある。

 そんなことを念頭において、マスメディアの世論調査の結果を以下に見ていこう。
 以下では、各メディアの調査の結果と評価分析を紹介しながら、私なりの感想を述
べさせていただくが、混乱をさけるために私なりの論評の前には「☆筆者のコメント」
と付した。

 なお本稿は1回ではおさまりきれないので、今回は共同通信と読売新聞の調査に関
しての紹介と記述に留め、次号で続き(朝日新聞ほか)を紹介させていただく。


◆世論の望む最優先課題とかけ離れた「公約」の安倍政権
 共同通信「全国緊急電話世論調査」から

 まず共同通信社が26日夜から27日にかけて実施した、全国緊急電話世論調査の
結果から見ていこう。

(1) 内閣支持率65・0%、不支持率16・2%
  =発足直後としては宮沢内閣以降で小泉内閣、細川内閣に次ぐ3番目の高さで、
 橋本内閣と同水準(→共同通信の評価分析、以下同)。

☆筆者のコメント:支持率がやけに高い。なぜこうした数値が出るのか、小泉自民党
政権への「同調」傾向などを念頭に、その理由を検討していく必要がある。この共同
通信のものばかりでなく、世論調査の結果を細部からみていくと、それでもなぜ今度
の政権を「支持」するという回答に結びつくのかわからないのである。本来であれば、
「支持」には直接結びつかない回答が増えているのである。

(2) 支持理由
 「ほかに適当な人がいない」22・6%
 「首相を信頼する」    21・9%

☆筆者のコメント:「ほかに適当な人がいない」とする回答が比較的多かったわけ
だが、それでも「支持」は消極的な姿勢に終始していることが読み取れる。「首相
を信頼する」との回答も、安倍氏をなぜ「信頼」できると思うのか、その情報はま
だまだ多くはない。先頃の北朝鮮のミサイル発射問題への対応が、その評価に結び
ついているのだとすれば、その根拠はメディアによって作られた虚像でしかない。

(3) 首相が靖国神社を参拝すべきかどうか
 「すべきではない」51・3%
 「すべきだ」   33・0%
  =参拝に反発する中韓両国との関係改善など、アジア外交立て直しに期待する声
 が多数を占めた(同)。

☆筆者のコメント:安倍氏は靖国神社参拝について「語らない」としている。首相が
靖国神社を参拝すべきではないと考える回答者が半数以上を占める調査であったにも
かかわらず、支持率は高く出る。調査の実施者からみても、メディアの操作を疑うよ
り、この「矛盾」から回答者の「回答の姿勢」を読み取っていくことが大切かもしれ
ない。

単なる数値の合算だけでは、回答者の「回答姿勢」の奥に存在する「ホンネ」「疑問」
「迷い」「要求」などを、いかに把握していくか。今後のメディアの「受け手研究」
の飛躍的向上・発展を期待したくなる素材である。

(4) 取り組むべき最優先課題
 1 年金などの社会保障37・9%
 2 景気対策17・5%
 3 財政再建11・6%

☆筆者のコメント:政府が取り組むべき最優先課題として、上記が挙がっている。安
倍氏が打ち出した「公約」のようなものと、まったくかけ離れていることを重視した
い。小泉政権の場合、国民の望む最優先課題に取り組もうとしない政権であっても、
国民の支持率は「アウト」の判定までダウンすることはなかった。

その理由として、メディアの「政権監視能力」に問題があること、メディアが監視で
はなく政権に対して「忠言」する姿勢を総じて強めていることなどに起因しているの
ではないか、と私は疑いを抱いている。また小泉政権は、メディアも含めた世論の批
判を、「いなす」「うっちゃる」その姿勢について関心を呼び込む性格を有していた
とも考えられる。

それが一国の首相、政権として適切なものであるとは到底いえないが、それを大問題
にさせずに、他へ目をそらせ、関心を削ぐための「事件づくり」も含めたメディア対
策、言論対策の手法について、受け手・世論の反応とともに検討・研究を深めるべき
事柄であるように思われる。

→共同通信:安倍内閣、支持率65% 51%「参拝自粛を」
  2006年 9月27日 (水) 18:39
 
http://news.goo.ne.jp/news/kyodo/seiji/20060927/20060927a1840.html


◆内閣支持率「7割」の背後に漂う、世論の「不信」と「諦観」
 読売新聞「緊急全国世論調査(電話方式)」から

 続いて、読売新聞社が26、27の両日実施した緊急全国世論調査(電話方式)の
結果を見てみよう。

(1) 内閣支持率70・3%、不支持14・2%
  =内閣発足直後の調査(大平内閣以降)では、小泉内閣の87・1%(電話方式)、
 細川内閣の71・9%(面接方式)に次ぎ3番目の高率。初の戦後生まれで52歳
 の安倍首相の清新さに期待が集まったとみられる。ただ、閣僚の顔ぶれに「満足」
 している人は4割に満たず、格差問題などの政策課題で成果を上げられるかについ
 ても、厳しい見方が多かった(→読売新聞の評価分析、以下同)。

 自民党政党支持率49・4%
 民主党政党支持率16・0%
  =直接は比較できないものの9月の本社面接調査(42・4%)に比べ上昇した
(→読売新聞の評価分析、以下同)。

☆筆者のコメント:読売新聞はどうしても「7割」を越える結果を引き出したかった
のだろうか、と想像したくなるほどに、きわどい数値である。しかし、例によって、
同紙の世論調査は下から読むと別の側面がみえてくる。

メディアによる世論操作の技術と、回答者の駆け引き・擬態、さらに大部数を維持し
なければならない新聞メディアとして最低限の信憑性の維持の必要性などが混在する
と、「見出し」のキャンペーン性(この場合は「安倍内閣の支持率70・3%、歴代
3位」という、政権に対する「ちょうちん」行列)に、その「御用新聞」としての姿
勢が際立って表現されることになる。

(2) 安倍首相への「期待」
 「期待している」=74% (※「どちらかといえば」を合算)

  理由:(一つ選択)
  「清新なイメージがある」(34%)
  「信頼できる」     (22%)
  「改革姿勢が明確」   (14%)

☆筆者のコメント:「期待」の数値を、何とか「捻出」した感じが濃厚だ。「信頼」
も「姿勢」への共鳴も低いのが実態であることが読み取れる。

(3) 閣僚の顔ぶれ
  「満足」  36% (※「非常に」「多少は」を合算)
  「答えない」37%

☆筆者のコメント:満足度は低い。同紙としても、政権に対する「発言力」を維持す
る上でも、この手の「不満」をいかに社論として保有しておくかがカギなのであろう。
「答えない」とした回答者が、実質的に「満足」を超えていることにも留意しておき
たい。

発足したばかりの内閣の顔ぶれを、「不満」回答する材料など、まったく用意
せずに答えさせたと見るべきで、「答えない」は「わからない」「不満」が混合した
ものと推測される。メディアの「情報創出」のテクニックの一つとして研究すべき対
象ではないだろうか。

作り手が手癖や無意識で行っている実務の中に、相当、批判を加え、暴露して、読者
や視聴者とあらかじめ共有しておくべきメディアの「情報製造プロセス」やテクニッ
クが潜んでいるように思う。これは党派やメディアの体質を超えて情報そのものに入
れ込まれる「プロパガンダ」の性格を知ること、知らせることと同義でもある。表現
力の源泉ともなるものでもあるので、一概に否定することだけが正しいわけではない。

高度情報社会のなかで市民の情報発信力、メディアリテラシーを高め、人間が「個」
を確立し、発展させていくうえでも、そのテクニックと功罪についての認識を広める
ことが必要になっているように思う。

(4) 自民党役員人事で、派閥の意向にとらわれず自らの考えを貫いたか
  「そうは思わない」45%
  「貫いた」    39%
  =総裁選での大勝を受けて、派閥の意向に配慮した「論功行賞人事」となったこと
 が影響したと見られる(同)。

☆筆者のコメント:自民党内の派閥への「配慮」を「問題はない」と受け止める層の
台頭と、派閥への「配慮」が首相自らの考えを貫くことの障害にはならないと思いた
い層の混在を感じる。派閥がどうのこうのよりも、やるべきことを早くちゃんとやっ
てほしいという切なる要請と、どうせだめだろうという諦めとが、回答者を襲ってい
るのではないか。

(5) 首相補佐官を5人置くなど「官邸主導の政治」を目指していることに関して
  「評価する」計63% (※「どちらかといえば」を合算、と思われる=筆者)

☆筆者のコメント:この63%はどこから出てきたのか。頼りない首相の「弱点」を
補強する意味ばかりでなく、与党内与党、政権内政権の形成を許容する「官邸主導の
政治」には、複数の上司に振り回されるスタッフの創出、ダブルスタンダードの横行、
民主的議論の積み上げの排除など、結局は、無駄ばかりが多くなる可能性が高い。

自ずと首相は「勢い」「ポーズ」に走り、実質的な成果が期待できない政権となる。
これは小泉政権ですでに「証明」されており、それに輪をかけた状況が生まれる危惧
がある。しかしこの情報は、おそらくよく説明もせずにこの設問をした同紙は、民主
主義をないがしろにすることに「賛成」の立場なのだろうと推測することを可能にす
るものともいえる。

(6) 取り組んでほしい政策課題(複数回答)
  1 社会保障制度改革(89%)
  2 景気・雇用対策 (84%)
  3 アジア外交   (73%)
  4 財政の健全化  (72%)

☆筆者のコメント:政権を検証していくための指標はまさにここにある。にもかかわ
らず、そこに軸足を置いて検証や批判を加えず、「改憲」や「仮想敵国」への対応、
「米国追従の重要性」「軍備の増強」などを煽り、評価しようとする姿勢が同紙ばか
りでなく、マスメディア全体の中にもぐりこんでおり、それが政治家の「ポーズ」を
支え、「人気」を煽り立てる結果を導き出している。

そうした傾向をもつメディアの、メディアとして逸脱した社会的責任を徹底的に追及
していくことが、市民社会の維持・発展に不可欠の要素となっている。それを怠れば
日本社会は情報窒息社会へと陥りかねない。

(7) 中国や韓国との関係改善(をできるか)について
 「できる」    44%
 「そうは思わない」42%

☆筆者のコメント:中国や韓国との関係改善をできると思う人と、できないと思う人
が拮抗している。できないと思う人は、それでもこの新政権を支持するのかどうか。
支持率からいって矛盾があるわけだが、そこには「関係改善などできなくてもよい」
=自分とは関係がない、相手のほうが悪い、どうせできないといった声が、「この政
権ではだめだ」とする批判にもぐり込んでしまっているとも考えられる。

ナショナリズムのムードで人心をひきつけようとしたり、注目を浴びようとしたりす
る政治家やメディアの商売のやり方が、人の心や人と人の関係をざらつかせ、社会を
不安定にする一因となっていないだろうか。政治だけでなく、マスメディアの「社説」
「論説」「評論」などに挟み込まれる無責任な言葉を、しっかりと批判していくこと
が緊急の課題として私たちにのしかかっているように思われてならない。

(8) 所得などの格差問題を解決できるか
 「そうは思わない」63%
 「できる」    20%

☆筆者のコメント:上記同様、こうした問題を解決できないような政権が「7割」の
支持を得ることは考えられないわけだが、メディアの心ない「政権持ち上げキャンペ
ーン」が垂れ流す論理矛盾が、現代社会の鏡として機能し読者・視聴者に誤った情報
環境を提供することで、個々の現実環境の捉え方を歪めてしまう可能性がある。

日本国憲法に違反した、反社会的な言動をまかり通し、価値判断を混乱させ、メディ
アに接する個々人や集団に「失望」や「孤独」を醸成し加速させる要素として機能す
ることがあれば、往々にしてメディア接触を忌避する行動を促す要因ともなる。これ
はメディア社会におけるメディアの自殺行為ともいえる。日本国憲法をないがしろに
する権力にすりより御用商店と化したメディア企業は、自らを袋小路に追い込んでい
く。

しかしそうした市民に対する反逆行為が、事業者を「危機」に追い込んでいくプロセ
スで、そうした企業は「転身」をはかれず、さらに「一人勝ち」を夢見てその道に突
進してしまうことも考えられる。その体質を内包するマスメディアは、危険に早く気
づかねば早晩死活問題となろう。それでも戦争のできる国への「突進の道」を選択す
る場合には、市民社会を巻き込まないように、最低限留意してほしいものである。

→読売新聞 安倍内閣の支持率70・3%、歴代3位…読売世論調査
 2006年9月28日1時45分
 
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060927it13.htm

次号につづく)