もう電話に出んわ

　昨年から、ごくたまに、自宅に変な電話がかかるようになった。
　いや、「変な」と言っては失礼か。
　先方は、どこかで耳にしたことがあるような情報誌の担当者を名乗り、夫に取材を申し込んでくるだけなのだから。
　インタビュー記事を書きたいと言われても、あいにく、夫には会社を宣伝する気などみじんもない。
　電話番の私は、内心うんざりしつつ、外出中で戻りは遅いことを伝えて話を切り上げた。

　夫は会社員だけど、個人事業主でもあるので、社長としての夫に電話があっても不思議はない。
　ただ、登記簿には載らない情報である電話番号をどこから得たのか、不思議に思った。
　会社の登記住所は自宅のとは表記が違うし、自宅の電話番号を電話帳に載せたことは一度もない。
　いったいどうやってリンクできたのだろう？

　ひょっとすると、数年前に夫が法人向けのパソコンを購入した時の情報が漏れたのかもしれない。
　カスタマーセンター（メーカー）、カード会社、配送会社……あるいは、銀行、税務署などのお役所からという可能性もある。
　今のご時世、情報の売買を疑えばきりがない。

　念のためにネットで情報誌を検索すると、実在する老舗の会社の刊行物だった。
　その後、別の会社からも似たような用件の電話があったので、もう少し検索してみると、「取材商法」などと呼ばれているらしい。
　取材というと、受ける側が謝礼をもらえそうだけど、そうではなく、情報誌に記事を掲載する宣伝費を支払う契約になるようだ。
　あとで夫に話すと、「カネがもらえるなら取材を受けてもいいけど」とのんきな答えが返ってきた。

　電話というと、そのほとんどがグループホームからで、母に何かよくないことが起きたか、消耗品の補充を求める内容などだ。
　あとは、世論調査の自動音声、リサイクル業者、買い取り業者、清掃業者、ご近所の畳屋さんのセールスくらい。
　セールスの電話は不特定多数にかけているだけなので、こちらから先に名乗るような真似はせず、丁寧に速やかにお断りして切るのが常だ。
　でも、取材電話はこちらを特定してかけてくるので、ある程度の応対をしなければならないのが微妙にストレスだ。
　そして、そのストレスが夫には全く伝わらないというのもまたストレスになるのよね～。
　今度、夫が在宅の時にかかってきたら、取り次いでしまおうかしら。