外科医(9年目)日記

自分さえ我慢すればいいと思って頑張ってきた。そんな僕には家族が出来た。患者も大切、家族も大切。わがままだろうか?

人が死ぬ時 その4(最終話)

2008年07月05日 14時53分46秒 | 日記
患者さんはだんだん具合が悪くなっていった。
腹部の痛みと全身の倦怠感に、塩酸モルヒネが持続静注ではいっていた。

苦痛が強く、塩酸モルヒネを増やす必要があり、もしかすると意識レベルが
少し悪くなるかもしれない。
しっかり相談したいことがあるなら今のうちだ。

そうムンテラしたが、なんとさらにその患者さんは近所からも借金をしていた
らしく、娘さんの怒りは頂点に達していた。

「一日でも早く死んでもらうことが最後の子供孝行だ。」

患者さんにあっていったのだろう。。。
きっと、文句の一つでも言っていったのかもしれない。

次の日、患者さんは「ばちがあたったんだ」といった。
「病気はばちではないですよ」と僕はいうが、目が必死だった。。。

それから数日たったある日、その日は朝から手術があったので、
さっとその患者さんの所に朝寄った。。。

「今日は、ほんとでない、とにかくおかしいんだ。。。」
がんによる全身倦怠感が強く出ているのかもしれない。
痛み止めを少しだけ強くして、手術にむかった。

それからたった3時間後のことだった。

手術が終わるか終らない頃、病院のPHSがなった。
「患者さんが下顎呼吸です。」

あっけない最期だった。家族には連絡がいくも間に合わず、
誰に見守られるでもなく、看護婦と僕の目の前で、患者さんは息を引き取った。

少しして、家族が来た.特になくわけでもない.事務手続きを淡々として
淡々と帰って行った.

「ほんとに子供孝行してくれた」とよろこんでいた。

いろんな人がいて、患者になったり、家族とかかわったり。。。
いろんな人が僕の目の前で死んでいった。
でも、この人の死は僕の心に少しだけ、余韻を引いている。

                             おわり


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3 コメント

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余韻 (fabulous99)
2008-07-05 23:47:02
はじめまして。
先月からこちらのブログを拝見、拝読、拝感(←ふと作った造語です。)しております。

どうしてこちらのブログに興味を惹かれたかはまた後ほど・・・

人それぞれ色々な人生があるように死があるのは当たり前なんでしょうけれど、先月父を亡くした私にもこの方の最期は妙な余韻が残ります。

病気は罰? 父は罰で病気になって亡くなったのかな?
そうでは無いと思いたい・・・
最期まで家族孝行だった父
病気が罰なら病気になった人はみんな罪人?
そんな訳ない・・・
亡くなられたおばあちゃん、決して罰なんかじゃ
ありませんって私も言ってあげたかった。。。
顔も知らない、お名前も知らない赤の他人ですが、
お亡くなりになられた事、忘れないような気がします。。。ご冥福をお祈り致します。

P.S.コメントの名前はgooIDとは別の物を皆さんは使っていらっしゃるのでしょうか?
gooブログに書き込みするのが初めてですみません。

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病気は罰(ばち) (takakun9)
2008-07-06 17:50:45
fabulous99さんコメントありがとうございます。
僕も病気は罰だとは思ってません。

ただ人間弱気になった時に、支えてくれる人がいないといろいろわるいことばかり考えてしまうようで、
この患者さんは入院後、家族の面会がほとんどなく、
気弱になっていたのだと思います。。。

病院スタッフもいろいろ院内での催しごとにつれていったり企画したりしたのですが、心を数週間で和ませることはできませんでした。


追伸
コメントの名前は、皆さんばらばらだと思いますよ。
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care (fabulous99)
2008-07-06 21:14:46
お休みのところコメントありがとうございます。

今日はご近所の方のお通夜で先ほど帰ってきたの
ですが。。。
改めて先生は生涯にどれくらいの術で人を助け
生きながらえさせて、
その反面家族にも会えないまま亡くなって行く人を
何人くらい看取っていくのかな?と
待ち時間の間お数珠を数えながら数字がぐるぐる
回って、改めて単に手術をこなす仕事以外のcareって
事がどんなにか大変なんだろうな。。。と
拝感しています。。。



P.S.私の99は重陽の節句からです。
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