外科医(9年目)日記

自分さえ我慢すればいいと思って頑張ってきた。そんな僕には家族が出来た。患者も大切、家族も大切。わがままだろうか?

民主党圧勝、急性虫垂炎

2009年08月30日 21時48分16秒 | 日記

急患室に、救急車で患者さんがきた。

20歳代の女性。下腹部の激痛だ。

病院に着いたときには、あまりの痛さにのたうちまわっている状態。。。

 

話を聞くと、その前日に、別の総合病院に腹痛でいって、便秘の治療をして

きたというのだ。本当はその後も腹痛は良くなっていなかったそうだ。。。

 

次の日まで何とか我慢して、別の個人医院へ、そこから救急車で当院へきた。

 

若い女性。結婚している。子どもはまだいない。。。

妊娠の可能性は?薬は使っていいのだろうか?

子宮外妊娠の可能性は?

 

残念ながらうちの病院にも土日は、産婦人科医がいない。。。

相談する先生もいない。

 

まずは、妊娠の可能性を否定して、CTをとる。

なるべく本人の希望を聞きながら診察したいが、とにかく痛がっていて、

そんな場合ではなかった。消化管穿孔ではないだろうか?

そのくらいの痛み、腹部の様子だった。。。

 

CTの読影も自分でするしかない。放射線科が常駐していないのだ。。。

腹部救急疾患に関しては、僕もそれなりの自信がある。しかし、

絶対ではない。。。

 

若い女性のだんなさんは、絶対を求めてくる。

「絶対大丈夫でしょうか?」「絶対に妊娠がないとはいえないかもしれない」

 

そのたびに、説明をして、生理があるというのに、妊娠反応検査をして。。。

 

最初、ぱっとCTを見たときは、虫垂炎ではないと思った。

だんなさんが、クラミジアの治療をしているとのことで、骨盤内臓腹膜炎の

可能性が高いだろうと思った。

しかし、婦人科はいない。

「抗生剤をして、様子をみましょう。。」

 

一度そういった跡に、もう一度、CTを見直す。CT室に行って、細かい画像を

再確認する。

すると、虫垂が見えてきた。虫垂炎だ。。。

 

熱もある。下腹部痛。腹膜炎。

よし、開腹手術の適応だ。。。

 

ここからは、自分の診断の自信と勇気と後は家族へいかに納得してもらうかだ。

誤診の可能性だってある。手術ミスだってある。術後に傷が化膿することだって

あるだろう。。。その責任を僕が引き受ける。。。

 

婦人科も放射線科も、麻酔科だって、休日にはいない病院で、緊急手術。。。

たいていは大丈夫だろう。しかし、たった一度の過ちが、その人の人生を狂わす

僕の人生を狂わすかと思うと、通常の神経では緊急手術はできないと思う。。。

 

「患者さんがもし望むなら、手術は6時間くらい遅れるかもしれないが、

別の町の総合病院におくろうか?」

「でもそれでは、たいしたことない手術の可能性が大きいのに、家族も本人も

大変だ。」

「お見舞いだって通院だって地元の病院のほうがいいだろう」

 

いろんな考えが浮かび、僕の信念を曲げようとする。。。

 

結局、腰椎麻酔で、急性虫垂炎の手術をした。

 

結果は、虫垂炎でした。経過はまだ一日なのでなんともいえないが、

緊急手術にはこんな危険、責任が付きまとうのです。。。

 

民主党にはどうにか安全に、緊急手術ができるような病院ごとの連携を

とれるようにしてもらいたい。。。そう思う、今日この頃でした。


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