Takahiko Shirai Blog

記録「白井喬彦」

中国の反日デモの性格

2005-04-12 17:19:31 | 国際
週明け(4月11日)の東京株式市場は中国での反日デモ拡大に対する警戒感から、海運、鉄鋼、商社、流通など中国での事業が評価されていた中国関連銘柄に売りが殺到した。

報道によれば、「反日感情の広がりが、日本製品の不買運動や日本企業との取引縮小につながる恐れもあり、先行き不透明感が広がった」のが売り殺到の理由だそうだ。海上物流が活発なことからこのところ買われてきた海運や、インフラ整備や旺盛な建設需要に対応するためフル生産を続けてきた鉄鋼が、「(反日デモ拡大で)大きな悪影響を受ける」との不安から一斉に売られたという。中国で事業をおこなう企業関係者も気が気ではないであろう。

「中国で日本製品の不買運動」と聞くと、日本人としてはいい気持ではいられない。中国における日本製品不買運動の歴史は古く、1908年同年2月5日の「辰丸事件」の際に起った大規模な日貨排斥運動を嚆矢として、戦前の日中関係は度重なる激しい日貨排斥運動で彩られている。当時の日本製品は中国にとっては純然とした輸入品であり、しかも安かろう悪かろうの商品が多かったたから、中国民衆も気軽に日貨不買に踏み切れたという事情もある。

しかし、現在の「日本製品」というのは純然とした輸入品ではない。実は中国国内で中国国民の手で生産されているものが多いのだ。だから彼らが日本製品の不買運動を推し進めていけば、中国経済を大きく阻害する危険がある。

中国の反日教育の中では、日本製品不買運動は「抗日の象徴」とされてきた。従って、吉林省の長春で日本製品の不買運動が起ったのは、そういう意味でよくわかる。また、湖南省武漢(湖南省)や重慶(四川省)へと拡大していく兆しを見せたことも、さもありなんと理解できる。つまり、歴史の伝統である「抗日の象徴」としての日貨排斥運動を再び起そうとしたのである。

しかしながら、改革開放を進める北京政府としては、このような日本製品不買運動が中国全土に拡大していくのは好ましくないだろう。民衆のガス抜きはデモのほうが無難だ。日本大使館や領事館に民衆が大挙押し寄せても、中国経済を阻害するような事態にはならない。中国政府の官僚たちはそう考えたのではないか。

共産党一党独裁の国家である中国では、政治を志す若者たちはどのようにして育っていくのか。そういう若者たちは、党や政府の指導下で、まず地域や職場における組織者となり、政治への一歩を歩み出すのではなかろうか。今回の反日デモの組織者はその類いの人々だったのではなかろうか。

今回のデモが党や政府の強い影響下で組織されたのだとしたら、国連安全保障理事会改革問題が決着を見るまで、この種の反日デモは繰り返しおこなわれ、その一方で日本製品不買運動はいつの間にか影を潜めていくのではないか。

中国政府が合意を与えたデモは中国政府の挙動を見ればすぐわかる。天安門事件や法輪功事件の場合と、今回の反日デモにおける中国政府の対応の違いに注目すれば、今回は明らかに政府演出に近いデモだったといえるだろう。

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