ふんわりノート☆

ジャズシンガー平良亜矢子(たいらあやこ)のブログ。
日頃の“ふんわり”な出来事や音楽の覚え書き。

一度目の月命日

2011-06-02 23:17:27 | Weblog
時が過ぎるのはあっという間。でも長かったような気もするこの一ヶ月という時間。
こんな風にして時間は、私が彼と共にいた地点と
どんどん離れていってしまうのかと思うと、非情だな・・・と思う。

昨日は義妹さんにお付き合い頂き、彼の口座がある銀行へ手続きをしに行った。
話には聞いていたけど一緒に訪れる機会はなかった、私には初めての根津。
大学に入る前後の2年間、2人でこの近くに住んでいたそうだ。

老舗らしきこだわりのお店が幾つも並ぶ情緒のある商店街。帰りに
店頭に美味しそうな商品が幾つも並べてある八重垣米菓というお煎餅屋さんに入り、
人気の品詰め合わせを幾つか買った後、歩道にはみ出した籠の中に
「東京ぬれやき煎」を見付けた。彼が大好きだったぬれ煎餅。
でも体が不自由になってからは下町辺りに来ることもなかったので、
私が数度どこかで貰って来た「ぬれ煎」を美味しそうに食べていた記憶しかない。
だから、思わず引き返して買い求めた。彼が好きだったのはこれだったのかも。

その数件隣りの小粋なデザインが目を引く和食器のお店も気になったけど、
そうゆう物はいつもペアで買っていたから、入る気にはとてもなれず・・・。
信号を渡る手前で、背後に佃煮屋さんがあるのに気付き入ってみた。
以前どなたからかお土産に頂いた事があって見覚えのある、京佃煮・野村
旬のオススメを幾つも味見させてくれた後、入れてくれた昆布茶が凄く美味しくて、
これにお湯を注いだだけヨと教えてくれた塩昆布と、山椒昆布と葉わさびを買った。

下町の美味しい物の話をよくしていた。きっとここが大好きだったんだろうと思う。


そして今日は、初めての月命日。
朝、炊きたての御飯に昨日買った佃煮を乗せて、祭壇にお供えした。

この一ヶ月、様々な手続きや大まかな荷物の整理はしたけれど、
例えもう不必要でも彼が普段使っていた物はまだ片付ける気がしない。
けれど逆に、買い置いてあった新品には思い入れがないので、
そんな服等数点を被災地支援物資を集めている従兄弟に預けたりした。
そして、どうするかずっと考えていたのは、
身障者だった彼が残した未使用の車椅子用品や衛生医療・日用品の数々。

大抵の支援物資収集団体では、数が揃ってる物や未開封品が求められ、
その上現在は、日用品の受付け自体を見合わせている組織も多いので、
被災者と支援者が個人的にやり取りするネット上のサイトをこの数日調べてみて、
支援マッチングのボランティアプラットフォーム」で
私が持つ品を必要としている方々をやっと見付けることができた。
いづれも石巻の方で、仲介役の方が相手先への連絡方法を教えて下さったけれど、
お一人は転々とご親戚に身を寄せる高齢者で、最近お身内に不幸があり連絡は困難。
でも受取可能な住所は存在するので、とにかくあるだけの情報で必要品を熟考する。
もうお一人とは電話が通じ、看護師さんで近隣の2つの介護施設と
相談所に顔を出す身障者の為に、日々物資を集めているそうで、
ご自身も職を失い、最近やっと再就職先を見付けたと嬉しそうに話して下さった。

雨だったのでビニールシートを被せて郵便局に行き、段ボールを2つ郵送した。
私が提供出来るものは、どれもサイズや用途が限られたものだけど、
だからこそ少し値が高くて手に入りにくく、
少量とは言え、まさにそれが欲しいお一人の方にとっては優に一ヶ月分はある。
その一ヶ月の力になれれば、私の旦那さんも喜んでくれるんじゃないかと思う。


そして今日はもう1つ。
御香典返しと生前お世話になった方々への御礼を兼ねて制作中のメモリアルCD、
そのジャケットのデザインラフが数点あがったとメールを頂いて拝見した。
ラフとは言え、どれも本当に素晴らしい作品達。
このCDの制作に携わって下さっている皆さんは、
生前彼と親しくして下さっていたミュージシャンを中心に、その彼らが
信頼を置く一流の音楽関係者の皆様で、ジャケットデザイナーさんもそのお一人。
著作権さえ含め、皆様が御好意でご参加下さっていて、感謝してもしきれない。。。
彼らが作って下さっているこの最高の作品が、
一人でも多くの、飯星裕史の音楽を愛して下さっている方と、
彼の音楽を必要として下さる方々の手に渡るように、
私も微力ながら全力を尽くしたい。皆様、是非聴いて下さいね。

平良亜矢子