先ごろ、
フジサンケイ・ビジネスアイで紹介されていた
グローバル・インサイト社の調査によると、SWFの資産は2005-07年の3年間、
年率24%で成長し、過去5年の国別資産増加率では、ナイジェリア(291%)、オマーン(256%)、カザフスタン(162%)、アンゴラ(84%)、ロシア(74%)、ブラジル(65%)と、見事に資源国が上位を占めています。また
07年の世界のM&Aに占めるSWF資金の割合は35%にのぼり、今年1月単月では米国内のM&Aで買収ファンドを抜いたんだとか。
ここから浮かび上がってくるのは、
石油の消費者(および消費者のために補助金を負担している政府、、、ということは結局その国民)が支払っている、投機資金によってつり上げられた「実需だけならあり得ないような対価」が、世界各国の業界再編に投下されているという、実に奇妙な構図です。そしてこのおカネは、油を売って得た対価なわけですから、97年のアジア通貨危機の時に大量に動いた欧米経由の運用資金(=ヒトのおカネ)とは、リスク・リターン・プロファイルも大きく異なるはず。もちろん自国民に対しては説明責任を負うんでしょうけれど、もともとが「泡銭」なので、この原油高の局面では、スッちまったところで痛くも痒くもないワケで。。。
グローバル・インサイト社は、SWFが米サブプライム問題で傷ついた欧米金融機関への資本注入により、「
最後の貸し手(Lender of Last Resort、以下LLR)」の役割を果たす」と予測していますが、ホントにそうなんでしょうか?SWFに関して今注目されているのは、その資金量に加えて、「機動性の高さ」ではないかと思いますが、それは上記の「痛くも痒くもない」という点と大きく絡んでいます。こういう投資家が泡銭を大量に突っ込むことによって、救われなかったはずの企業が再生するようなケースも出てくるとすると、まさに機動的なコミットメントそのものがリターンを大きくするという現象も起こり得ます。逆に、ボロボロなんだけど潰れたら社会的影響が大きいような先に、損失覚悟で資金投入したりはしないでしょう。そう考えると、本来の意味でLLRが果たす役割とは、ちょっと(というかだいぶ)違いますね。
「
その男、悪魔か、救世主か...」というキャッチコピーで颯爽と登場したNHK土曜ドラマ「
ハゲタカ」の主人公・鷲津政彦が、
小説の新作ではSWFからアプローチを受けています。何だか因縁めいたものを感じさせますね(笑)。