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ポジティブな私 ポジ人

悪戦苦闘のオンラインコンサート

11月の半ば、友人から「坂本龍一のオンラインコンサートのチケットを買ったけれど、一人で見るのも何だから、一緒に観ない?」とラインが来た。ついでに女子会、ブチクリスマス会をしようというお誘いだった。

私のグループラインに「もんじゅのちえ」がある。「三人寄れば文殊の知恵」から名付けた、気の合う3人のライン。IさんとTさん。二人共かなりユニーク。お誘いはTさんからだった。

コンサートは12月11日。
11月の末に私はコロナ感染症になってしまったが、ギリギリ療養期間が明けていたので良かった。

当日、Iさんの車でTさん宅へ向かった。
Tさんの家は、芸術の森美術館から近い、結構な山の中。
Iさんは、久し振りに向かうTさんの家にちゃんと着けるか不安がっていたけれど、話すことがいっぱい湧き出る私は、運転しているIさんへお構いなしに、ベラベラと車の中で話し続けていた。
会話の途中で何度か「こっちで良かったっけ…」とつぶやく彼女に、無責任にも「大丈夫じゃない?」なんてのんきに応じる私だった。

途中運転する彼女が「鹿!」と叫んだ。
見ると、多くの車が行き交う道路際に、角の生えた雄鹿が一頭。更に反対側にも同じような体躯のもう一頭の雄鹿。仲間のいる方へ渡ろうと道路に出てきた。
遠ざかりながら、振り返って見ていると一台の黒い軽自動車が停車した。それにならって、他のドライバー達もスピードをゆるめ、それを見極めた鹿は道路を悠々と横断し、住宅街の中に駆けて行ったのだった。
エゾシカが増えすぎている。市街地で見かける頻度がキツネと共に上がっている。もう、札幌市はどんどん野生の王国となっている。

そんなことがあって、まだまだ道なりに進んでいたのだが、いささか道路事情に疎い私にも、有名な定山渓温泉の案内標識を見た途端、どうやら道を間違えていると気付いた。
Iさんの車はナビつきなのだが、彼女は使い方がよくわからないらしいので、私のスマートフォンのナビを起動してみることにした。

私もスマホのナビは、ほぼほぼ初めて使う。
目的地を「芸術の森美術館」と入力すると、爽やかな女性の声で「Uターンして7キロ戻ってください」と指示された。
やっぱり間違っていた。
後はナビが指示する通り、ショートカットなのか、見知らぬ山道を入り走ること20分。
彼女が「これこれ。この道路に出たかったのよー」と言った。そこからは、無事にTさんの家に着いた。

Tさんの家は、山の中腹にある。とは言っても、ポツンと一軒家ではない。芸術の森近辺には教育施設などもあるので、立派な一軒家が建ち並ぶ住宅街だ。

Tさんの家には何度か来ているが、前に来たのは何年も前の事だ。玄関の窓からブロンズ製らしきカエルが顔を覗かせお出迎え。
久しぶりに訪れた彼女の家は、異国に訪れたような気分を与えてくれた。

家の一階部分は、間仕切りの一切ない開放された空間で、20畳以上あるだろうか。吹き抜けもあり広々としている。
壁という壁にはアジア系の民芸品、子供達の作品、書、絵画等などあらゆるもので埋め尽くされている。それに加え、あちらの棚、こちらのテーブルに、書物の山。
私にとっては、ものすごく心地の良い空間で、一気にリラックスしてくつろいでしまった。
彼女たちが開放されたキッチンで甲斐甲斐しく働く中、私といえば、健康器具のステッパーが目に入り試してみたり、その横にあった「足つぼマッサージ」の足型に足を乗せて耐えてみたり、痛がってみたりと勝手な事をやっていた。

キッチンで料理中のTさんだが、もうすぐ坂本龍一のオンラインコンサートが始まるというのに、準備がまだだった。のんびり屋のTさんらしい。Iさんに促されて、PCに向き合った。

TさんとIさんは50歳後半。私が最年長。みな、IT苦手世代だ。
セッティングを始めたTさん。当初のプランでは、PCをテレビに繋いで大画面でみんなで見ようということだった。が、コンサート開始時間が迫るなか、なかなか進まない。

メールで届いた「チケット番号とパスワード」を入力しても、エラーの連続。番号かパスワードが違うとメッセージが出る。私も一緒に確認したが、届いたチケット番号とパスワードに間違いない。いよいよ、私も真剣モードで一緒に取り組み始める。

「1からやり直してみよう」メールの受信のチェックから。すると、開いたメールには別のチケット番号が記載されている。
後から分かったことだが、配信先から最初に送られたチケット番号が間違っていたと、後から正しい番号が送られて来ていたのだった。
彼女も忙しい毎日を送っているので、すべてのメールをチェックしていなかったらしい。

早速新しいチケット番号とパスワードを入力し、黒いスクリーンが現れホッとしたのも束の間。今度は「HDPCを取り外すか、別の機器でログインしてください」とメッセージが出た。
Tさんは申込みの際の試聴は出来たと言っていた。その際のPC環境の注意点等を見逃した可能性もある。

昭和世代の私達には、オンラインコンサートはハードルの高いものだった。

HDPCとは何かから始まり、その取り外し方を検索するも、外付けの機器でもないし、すぐには無理そうだった。他の機器と言っても、彼女の家には他にPCは無い。万事休すか…。
「4,000円無駄になるけどしょうが無いか」とTさんが弱音を吐く。

後残された方法はといえば…3人のスマホ。
二人共かなり型の古いiPhoneだ。
その中で私のスマホは5Gも対応出来ると、買うときに店員さんから説明された最新機器だ。中国製で安い奴だけど。
「きっとこれで対応出来るはずだ」とは思ったけど、ログイン画面を出すために、主催会社の坂本龍一オンラインコンサートを検索するけど、なかなか見つけることが出来ない。

他に何か方法は…頭に思い付いたのは、Tさん宛に送られたメールを私のスマホに転送してもらったら出来るかも、ということだった。
兎に角やってみるしか無い。早速転送してもらい、URLからログインしてみると、すでに始まっていたコンサートの深く染み入るピアノの音色が聞こえてきた。「ヤッター!」「バンザーイ」子供みたいに歓喜。

早速Tさんはスピーカーに私のスマホを繋げ、豊かな音が空間一面に広がった。
やや大き目の私のアンドロイドの画面に、坂本龍一のモノクロームの演奏画面も見ることが出来た。一件落着。

この一連の出来事。ITに通じた人ならば、もっと簡単に出来たと思うし、鼻で笑う人もいるかも知れない。でも、何とか頑張って出来た。それがとても嬉しい。

その後は、Tさんが作ってくれたポトフや付け合せ、Iさんが用意してくれた高級な佐藤水産の海産物の数々と六花亭のお菓子“醍醐”。私も二種類のパウンドケーキを久しぶりに焼いて持参した。
コロナ時代に手作り品はどうかとも思ったが、朝焼いて直ぐに“隔離”して持参した。それにおおらかな二人の事だ、歓迎してくれるかなと思った。

友人が送ってくれた写真から


せっかく写真に収めるのだからと、ラップを外してお料理を撮影したにも関わらず、テーブルの私の目の前には丸めてクシャクシャになったラップが放置されている…嗚呼。



クルミとレーズン、抹茶と小豆甘納豆のパウンドケーキ。オーブンの温度が安定せず膨らみがやや悪いものの、味はまぁまぁの出来。

コンサートの中、それぞれのお料理を堪能しながらおしゃべりで盛り上がった。
普通のコンサートなら御法度だが、オンラインコンサートならではの事。ワイワイガヤガヤの中、よく知られた「ラスト・エンペラー」「シェルタリング・スカイ」「戦場のメリークリスマス」の映画主題曲が心地よく流れていた。何と楽しくリッチな空間だろう。

その日はそれぞれの事情で午後3時半過ぎには解散となったけれど、兎に角楽しいひと時だった。私の心は完全にリフレッシュ。コミュニケーションの喜びと大切さを再確認した一日でもあった。

そして、私のスマートフォン大活躍の一日でもあった。中国製の安い奴だけど…優れもの。



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