阪神間で暮らす-2

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サラリーマン増税など序の口 怪しい人づくりと教育無償化

2017-12-22 | いろいろ

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サラリーマン増税など序の口 怪しい人づくりと教育無償化

 高所得の会社員という「取りやすいところ」を狙い撃ち――。2018年度の与党税制改正大綱が決定し、総額2800億円に上る大増税に主要メディアも批判を加えている。だが、サラリーマン狙い撃ち増税なんて、ホンの序の口だ。今回の所得税見直しから浮かび上がってくるのは、安倍サマ流の古色蒼然とした価値観の押し付けなのである。

 サラリーマンに適用される給与所得控除の減額措置で、年収850万円から増税となるが、22歳以下の子供がいれば増税の対象外だ。つまり、今回の増税は子供をつくらないことへの「罰金」のようなもの。少子化を「国難」と言い切る安倍首相を担ぐ与党が狙い撃ちにしたのは、あくまで「子なし」世帯なのだ。根っこには「産めよ、殖やせよ」という戦前回帰の発想があるのだろう。

 もっと言えば、介護が必要な人がいる会社員も今回の増税の対象外だ。自民党の改憲草案は24条で〈家族は、互いに助け合わなければならない〉という規定を新たに設けた。この2つの事柄を考慮すれば、この政権が「育児と介護は国に頼らず家族が面倒を見ろ」という乱暴な価値観を国民にゴリ押ししているのは明らかだ。

 高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。

 「母子家庭の生活保護費の大幅な減額案を打ち出したことも含め、『家族の助け合い』を掲げることで、安倍政権の政策は体のいい『弱者排除』と『福祉切り捨て』に集約されています。少子化対策にしても、本当に子供を増やしたいのなら、フランスのように婚外子やひとり親家庭など多様な家族のあり方を認めるべきなのに、安倍政権はサザエさん一家のような3世代同居型で家父長的な時代遅れの家庭像を追い求めている。16年に首相の肝いりで3世代同居家庭へのリフォーム減税法を成立させたのも、その表れです。安倍政権は弱者切り捨てというネオリベラル的な自己責任論と、『家』の大切さや国家への忠誠を強調する戦前回帰の国家主義的側面がグチャグチャに混在している。本当に歪み切った政権です」

 少子化対策を「錦の御旗」と言わんばかりに、子育てや介護など個人の生活に国家がドンドン介入してくるのだ。特定の家庭像を押しつけるためなら、社会や国民の多様化を否定し、統制しようとする発想が安倍政権の根底にある。

2つの「革命」で見えてきた安倍流国民支配の全容

 安倍政権の国家主義的な本質は、「人づくり革命」と「生産性革命」からも透けて見える。

 人づくり革命の柱は「教育の無償化」だ。安倍政権は、返済不要の給付型奨学金と授業料減免の大幅な拡充を打ち出したが、財源は19年10月の消費税率10%引き上げによる増税分となる見込み。想定される支出は年間8000億円で、予算規模は現在の十数倍に膨らむことになる。

 子供を抱える世帯に代わって、国が教育の基本コストを税金で肩代わりするわけだが、これだけ負担が増えれば、国が教育現場に口を挟んでくるのは間違いない。

 既に税金が投入される大学や専門学校の絞り込みについて、「実務経験のある教員の配置」「外部人材の理事への任命が一定割合を超える」など、アレコレ注文を付けている。

 実務家教員の配置や外部人材の理事任命がどうして教育現場に必要なのかが、サッパリ分からない。自分の友人へのえこひいきが激しい首相のことだ。ひょっとして「アベ友」を各大学に送り込みたいのかと勘繰りたくもなるが、無償化の決定権を握られている以上、大学側も国の要求に従わざるを得ない。

「教育無償化」といえば聞こえはいいが、その真相は教育現場への国家権力の介入であり、政権のモンスターペアレント化なのだ。

戦後教育を否定し戦前倫理の復興を狙う

 エコノミストの高橋乗宣氏は本紙連載コラムで、「最悪の場合、国の教育方針に従わなければ『無償化』の対象にならないということも想定される」と危惧していた。安倍政権なら、やりかねないところが恐ろしい。改めて高橋乗宣氏に聞いてみた。

 「『革命』とは根本から改めることです。安倍首相にとっての『人づくり革命』とは、戦後に花開いた自由な民主教育をひっくり返したいのではないか。いきなりは無理でも、自分の首相任期中に戦後教育を転換させ、戦前回帰の軍国教育復活への道を開いておきたい。そんな危うい狙いを感じます」

 前出の五野井郁夫氏もこう警鐘を鳴らす。

 「今年3月に安倍政権は『教育勅語を学校教材として使うことを否定しない』と閣議決定。今でこそ安倍首相は、森友学園の籠池前理事長を『詐欺師』呼ばわりしていますが、かつては学園の幼稚園児に教育勅語を暗唱させた彼の教育方針について、『教育に対する熱意は素晴らしい』と国会答弁で持ち上げたほどです。安倍首相が求める『教育方針』とは、愛国心や忠誠心を重んじる戦前倫理の復興であることは言うまでもありません。無償化の支援を受ける学生にも、安倍流の教育方針を誓わせるのでしょう。彼が目指す戦争国家の構築に備え、国民に愛国心を植えつけるため、洗脳する気ではないかと本気で心配しています」

 サラリーマン増税や消費増税分のカネで賄われる安倍流愛国エリート選別――。安倍政権の人づくり革命、教育無償化には恐ろしいワナが潜んでいるのだ。

国家権力の介入が自己目的化

 生産性革命もムチャクチャだ。目玉は3%以上の賃上げに踏み切り、設備投資にも積極的な企業に対する法人税の優遇措置だ。3年間の時限措置で、実質的な税負担の割合を20%程度に引き下げるのだが、恩恵を受けられるのは法人税を納税できる黒字企業のみ。国税庁の15年度調査では黒字企業数は全体の約36%にとどまる。

 大半の企業が対象外となるのに、安倍政権が税制面からも「賃上げ」と「設備投資」にこだわるのは、企業への圧力が自己目的化している証拠だ。安倍は今年も経済界に「3%の賃上げ」を要請。“官製春闘”と揶揄されるロコツな政治介入は実に5年連続だ。

 賃上げや設備投資など民間企業の経営判断に、時の政権トップが具体的な数値まで挙げて、くちばしを入れるなんて異常だ。国家権力を持つ身なら、過剰な介入を慎むべきなのに、それを屁とも思っていない態度に、安倍の危険な本性が表れている。

 国家権力をフル回転させて強引に賃上げや設備投資を企業に押しつけ、あわよくばアベノミクスの失敗を糊塗したい。そんなヨコシマな期待もあるはずだ。

 「『教育無償化』や『賃上げ』など耳に優しい美辞麗句を用いて、教育や経済活動への国家権力の介入を強めていこうとする。戦前・戦中の軍部のように国家統制への道を切り開きたい。それこそが、安倍首相が打ち出した2つの『革命』の狙いで、国民をある一定の方向に導きたいのです。その道が戦前回帰の軍国化路線に向かっているように思え、末恐ろしくなります」(高橋乗宣氏=前出)

 戦争国家に備えた思想統制を強め、時の政治権力への忠誠を誓う国民を増やしていく。安倍サマ流の国家改造計画は着々と進んでいる。
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