賀茂川耕助氏の「耕助のブログ」より
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麻薬中毒、米衰退に拍車
先月ラスベガスで起きた銃乱射事件は、アメリカの政情不安をさらに悪化させる出来事となった。
報道によれば、犯人は単独でホテルの32階の部屋からコンサート会場に銃を乱射し、数分間に58人を殺害、500人以上を負傷させたという。従軍歴もない犯人の年齢や体格を考えただけでも、高度な武器を使って短時間に数百人を狙撃することは考えにくいし、セキュリティーの厳しいホテルにどうやって大量の自動小銃を運んだのかも疑問である。しかし過去の銃撃事件と同じく、犯人は遺体となって発見されているのだから動機が解明されることはないだろう。
もう一つのアメリカへの打撃は、サウジアラビアのサルマン国王がロシアを訪問したことだ。アメリカと同盟国のサウジアラビアだが、この訪問で武器調達を含めロシアと多くの協定を結んだという。アメリカがロシアに経済制裁を行ってから、サウジアラビアは政府や民間の投資ファンドを通じてロシアのインフラや農業などに投資をしてきた。2030年までに脱石油・産業振興の道筋を示す構想である「ビジョン2030」を掲げているサウジアラビアにとって、ロシアのインフラに投資することは石油時代の終焉を見込んでの行動であることは間違いない。
すでに世界は太陽光発電などの再生可能エネルギーへシフトしており、中国、フランス、イギリスなど多くの国がガソリン車とディーゼル車の販売禁止を計画している。この現状においても、アメリカの政府予算は中東の石油支配のための戦争や軍事基地に注がれているが、世界はアメリカとは別の方向に動き始めているのかもしれない。
海外で戦争を繰り広げ、国内では銃乱射事件や麻薬乱用と、欧米先進国の中でもアメリカほど問題を抱えている国は他にない。世界人口の5%にすぎないアメリカで囚人の数は世界の25%にも上るのは、産業が空洞化し、失業と貧困がまん延する中で麻薬使用や犯罪ばかりが増えているためだ。
かつてアメリカに産業があった時代の工業地帯は今やラストベルト(錆びついた地域)と呼ばれ、大統領選挙でトランプ候補の「雇用を取り戻す」という演説に共感した人々の地域であるが、皮肉にもトランプ大統領はラストベルトの人々をさらに貧困に追いやる政策をとり続けている。
ラスベガス銃乱射事件の犯人も抗不安薬を使用していたという報道があったが、アメリカにおける薬物の蔓延は無視できないものがある。プリンストン大学のクルーガー教授が2015年に行った調査によれば、働き盛り世代のアメリカ人男性の6人に1人が失業しており、その失業者の半分以上が鎮痛剤を常用し、その3分の2がオピオイドと呼ばれる麻薬性鎮痛剤だという。薬物中毒は経済的に苦境に陥った白人層、トランプ大統領の支持基盤に多いともされ、トランプ政権以前から続く産業の空洞化、脱製造業化の影響はあらゆるところで病巣を広げ、アメリカの衰退にさらに拍車をかけているかのようである。
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