阪神間で暮らす-2

テレビを持たず、ラジオを聞きながら新聞を読んでます

安倍首相の「寄り添う」は口だけ 沖縄知事選の重みと行方

2018-08-13 | いろいろ

より

*****
安倍首相の「寄り添う」は口だけ 沖縄知事選の重みと行方

 安倍首相が政権に返り咲いてから6回目の出席となった長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典。9日のあいさつもヒドい代物だった。

 「わが国は非核三原則を堅持しつつ、国際社会の取り組みを主導していく決意です」などと勇ましい言葉を吐いていたが、6日に広島市で営まれた原爆死没者慰霊式・平和祈念式で読み上げたスピーチ原稿を使い回し。

 「広島」が「長崎」に、被害者数の「十数万」が「7万」になり、国連の現職トップとして初めて式典に出席したグテレス事務総長に言及した程度の違いしかなかった。昨年7月に国連で採択された核兵器禁止条約は完全に無視。昨年同様に広島、長崎でも核禁条約には一切触れなかった。

 核禁条約を巡っては、国内300超の地方議会が署名・批准を要望し、松井一実広島市長も田上富久長崎市長も「平和宣言」で前向きな努力を求めている。9日の式典では埼玉在住の日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の田中煕巳代表委員が県外在住者として初の被爆者代表を務め、「平和への誓い」を朗読。安倍の姿勢をこう糾弾した。

 「被爆者の苦しみと核兵器の非人道性を最もよく知っているはずの日本政府は、同盟国アメリカの意に従って、核兵器禁止条約に署名も批准もしないと、昨年の原爆の日に総理自ら公言されました。極めて残念でなりません」

 金言耳に逆らうとは言ったもので、安倍はその後の会見で核禁条約について「安全保障の現実を踏まえることなく作成されたことから、核保有国は1カ国として参加していない」と一蹴。米国の核の傘で守られている現実を棚上げし、「立場の異なる国の橋渡しをすることは、わが国ができる大きな貢献ではないか」とうそぶき、核廃絶軽視の姿勢をあらわにした。長崎原爆被災者協議会の田中重光会長が「唯一の被爆国だというのなら、(核廃絶の)先頭に立つべきだ。よその国の人みたいだ」と憤るのも当然だ。口先首相のやりきれない薄っぺらさにマトモな国民はうんざりしている。

■ 民主主義も司法も行政にねじ曲げられた

 その上、ゾッとさせられたのが沖縄に対する安倍の非情な対応だ。

 米軍普天間基地の辺野古移設を巡り、新基地建設阻止を訴えて安倍政権と真っ向対立してきた沖縄の翁長雄志知事が急逝。4月に切除した膵臓がんが肝臓に転移したという。安倍がお悔やみを口にしたのは、訃報が流れてから半日以上も過ぎた9日午後。式典後の記者会見で報道陣の質問を受け、「沖縄の発展のために尽くされたご貢献に対し敬意を表したいと思います」と形ばかりの言葉を並べただけだった。第1次政権をブン投げ辞任し、お先真っ暗な時代を支援した俳優の津川雅彦氏の逝去とは雲泥の差である。津川が亡くなった翌日、安倍は個人ツイッターに〈悲しいですね。さみしい思いです〉などと長文を4連投。ブラ下がり取材までやり、発言内容は首相官邸ホームページに「津川雅彦氏の逝去についての会見」として全文掲載されている。

 翁長と親交があった沖縄国際大教授の前泊博盛氏は言う。

 「好き嫌いという価値観でしか行動しない。オトモダチしか大事にしない。安倍首相の一連の振る舞いは、その人間性をますます浮き彫りにしたのではないでしょうか。翁長知事が政府と対立を深めても辺野古移設阻止を成し遂げようとしたのは、アイデンティティーの問題が横たわっていたからです。国土面積の0.6%に過ぎない沖縄に在日米軍基地の7割が集中し、県民は事件や事故と隣り合わせの異常な生活を強いられている。しかし、政府も県外の国民もカネをもらっているからいいだろうという態度です。踏みにじられている現状を打開するため、米軍基地負担とリンクした沖縄振興策はいらないと反対したのが翁長知事だった。しかし、民主主義のルールにのっとって戦い、司法に訴えても、行政にねじ曲げられる結果になってしまいました。翁長知事は大変な圧力を受け、ストレスやプレッシャーで命を削り取られていったと思えてなりません。翁長知事は辺野古の最初の犠牲者になってしまった」


 国政選挙並みの力を注いできた安倍自民

 死期が迫った翁長は、前知事による埋め立て承認の撤回手続き開始という最後のカードを切ったのだ。

 核廃絶も基地問題も寄り添うフリ。安倍政権の偽善とペテンをこれ以上見過ごしていいのか。翁長の逝去がもたらした9月実施の前倒し知事選の重みをどう生かすかは、沖縄だけの問題ではない。くしくも自民党総裁選と同じタイミングだ。勝てば政権信任、負ければ地方選が常套句の安倍自民党は、知事奪取に向けて死に物狂いで動き回っている。今年行われた沖縄の市長選は国政選挙並みの注力で3勝1敗と勝ち越している。体調が悪化した翁長の辞職を想定し、宜野湾市長の佐喜真淳氏の擁立を先月決定。すでに出馬表明していた沖縄観光コンベンションビューロー元会長の安里繁信氏は断念させて、保守分裂回避の一本化を進めている。

 一方、翁長2選をにらんでいたオール沖縄陣営は後継候補選びを急いでいる。12日まで職務代理を務める謝花喜一郎副知事、糸数慶子参院議員、2月の名護市長選で3選を果たせなかった稲嶺進前市長、翁長との共闘で4年前の選挙で勝った城間幹子那覇市長、金秀グループの呉屋守将会長らの名前が挙がっているという。

 「自民党が警戒しているのが参院3期目の糸数議員です。知名度が高く、確実に票を集められる。ただ、革新系の沖縄社会大衆党に所属しているため、さらなる保守層離れを引き起こす可能性もある。城間市長を擁立すれば、後継選びも同時並行で進めなければなりません。左傾化を嫌がる保守系や経済界も乗れ、全県的に知名度のある人物を立てられれば、オール沖縄の再結束は期待できる」(地元メディア関係者)

■ 父親の苦言「思いやり、情がない」

 石破茂元幹事長が正式に名乗りを上げた自民党総裁選は、いまだ出馬表明していない安倍の勝利が確実視されているが、息を吐くようにウソをつくその場しのぎに、地方は怒りの反乱の兆しを見せている。

 「沖縄県知事選の前倒しを受けて党本部は弔い合戦になるとネジを巻いていますが、翁長知事の訃報に冷たく接した安倍首相の対応はいくら何でもヒドい。地元から冷たすぎるという声が上がっていると聞きます。官邸の後手後手対応に苦しむ西日本豪雨の被災地でも不満が高まっている。官邸は石破さんの地方票を2割に抑え込むよう号令をかけていますが、筋書き通りにいくとは思えません。小泉進次郎議員の動向次第で国会議員票が動き、地方票も雪崩を打つ展開があるんじゃないか」(自民党中堅議員)

 西日本豪雨の被災者を本気で救済する気が安倍にあれば、直ちに臨時国会を召集して補正予算を組んでいるだろう。野党もそれを求めている。ところが、今年度予算の予備費から1058億円の支出を閣議決定しただけでお茶を濁している。臨時国会を開けば、総裁選の票固めで豪雨の最中に開かれた赤坂自民亭や無派閥議員との会合のあれやこれやを野党に追及される。保身のために被災者をないがしろにしているのだ。7派閥のうち、竹下派と石破派をのぞく5派閥が安倍支援でまとまったというが、安倍スリ寄り議員たちもいい加減に目を覚ましたらどうなのか。

 政治評論家の野上忠興氏は言う。

 「安倍首相のインタビュー取材で本人が話していたことですが、安倍晋太郎元外相は生前、安倍首相に〈相手の立場を考えなければダメ〉〈他人に対する思いやり、情がない〉とたびたび注意していたそうです。いずれも政治家に最低限必要な条件だと」

 多くの世論調査で内閣支持率は支持と不支持が5カ月連続の逆転。不支持の理由は「首相の人柄が信用できない」が断トツだ。世論は確実に嗅ぎ取っている。いま必要なのは、そうした空気を知事選、総裁選にガツンとブツけることだ。
*****




コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。