賀茂川耕助氏の「耕助のブログ」より
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新経済シルクロード
日本のメディアではあまり報じられないが、ヨーロッパ・アジア地域の「ユーラシア」において、上海協力機構(SCO)の活動が活発になり、その貿易相手国と共に、今のアメリカを中心とする世界に対抗する新たな枠組みができつつある。
SCOは中国とロシアが中心となり、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、そしてインドとパキスタンも含んで経済や政治面で協力していこうという動きである。その2013年の会合で中国の習近平中国国家主席は「新経済シルクロード」を提案し、それが現在の陸と海に展開するインフラ、「一帯一路構想」へと発展した。
この地域における60カ国、人口にすると40億人以上が含まれるプロジェクトの中心として中国は、3兆ドルもの投資を行っている。すでに中国からパキスタンのグワダル港まで約3千キロに沿う地域が含まれる中国パキスタン経済回廊(CPEC)では道路や鉄道などのインフラ建設がほぼ完成した。このような広範囲に及ぶインフラで重要なのはセキュリティーである。SCOにパキスタンとインドの両国を参加させたのも、近隣諸国で異なる民族間の緊張を回避し平和的に発展をさせるためで、中国は安全がなければ繁栄はないことを認識しているのであろう。
中国の一帯一路構想であまり知られていないものに北極圏ルートがある。北極圏はアメリカやカナダ北部、フィンランド、ロシア、アイスランド、ノルウェーなどの開発が北極評議会を通して行われていた。そこに中国がロシアの協力を得て参画してきたのである。中国が北極圏ルートでヨーロッパへ物資を輸送すれば、現在スエズ運河を経由しての航海と比べ航路も大幅に短縮され、時間、燃料、人的資源において大きな節約となる。
アメリカが現在のような覇権を手にしたのは世界中に軍事基地を造り、軍事力を拡大したことにあるが、今、中国が同じ道をたどりつつある。軍事予算はまだ圧倒的にアメリカの方が大きいものの、中国の軍事費も着実に増えている。中国が初めて海外に軍事基地を造ったのはアフリカのジブチで、中国海軍は海賊対処のために艦隊を派遣し、民間商船を護衛する任務に従事してきた。今年になってから中国はその連携を強化し、一帯一路構想においてジブチをアフリカ地域の海上交通の要衝とし、鉄道や港などの建設で協力をするという。
かつてベネチア共和国は、中近東、極東との交易をアドリア海を経由して行ってきた。その後、イギリスやオランダがアジアの植民地沿いに航路を移して中国と交易をするようになり、アドリア海の繁栄は過去のものとなった。21世紀の中国の海のシルクロードも、中国から東南アジア、インド、ケニアを経由し、スエズ運河を通って地中海に入りベネチアが発着点となる。地中海の拠点として、すでに2016年4月に国営の中国遠洋運輸集団がギリシャはアテネのピレウス港を買収している。
「経済シルクロード」という壮大な名称を冠するインフラ政策により、今、中国はアメリカに代わる大国となりつつある。
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