拈華微笑 ネンゲ・ミショウ

我が琴線に触れる 森羅万象を
写・文で日記す。

  審『美』眼は『沈黙』の中で育成される

2023年01月25日 | 色読是空

  書籍で『沈黙の作法』、山折哲雄x柳美里(対談)著を読了。  やっぱり紙の本はいいなぁ・・・。

  読み終えた本の厚みを手にして、『あぁ読んだ…』という実感を持つ事…自体に何か意味があるのだろうか?

  海外在住ということで自然、電子書籍(アマゾン)購入になるんだけど、今数えると約100册になる。(驚!多分10年間くらいで?)

 

  パリのジュンク堂書店でこの本を見かけ、その帯の裏に書いてある二つの言葉・・・に惹かれて買ってしまった。

   『沈黙は、最高で最終的な宗教語なんです。』・・・山折哲雄

   『本当の問には答えが無い。』・・・柳美里

  まるで『禅』について語っているような、帯の言葉に『エッ!』…と、思いました。

 

  2019年にこの本が出版された時点で、山折哲雄氏は88歳、柳美里氏51歳。かなり歳が離れた者同士の対談は

  山折哲雄氏は宗教学者、評論家、 柳美里氏は劇作家、小説家・・・という肩書のせいもあり、全編に仏教的流れはある。

  今日までお二人について、全く知らずにいたので、彼等の著書を読んでからもう一度この本『沈黙の作法』を読むべきか・・・。

 

  柳美里氏は在日韓国人という出生で始まり、演劇人の夫との間に生まれた子どもの出産とその夫の死を同年に体験。

  その後劇作家、小説家として大成するも、2011年東北大震災後、作家としての信念を貫くべく、

  鎌倉の住まいから福島県南相馬市に移住し、本屋を始めるという普通ではない人物であった。

 

  一人は仏教、一人は作家の眼を通して『人間』を見つめ、至った共通の境涯が『沈黙の作法』であったか。

  最初から『自殺』、『いじめ』問題にふれ、『死生観』にまで話がぶっ飛ぶ。

  6回に渡る、対談のテーマは多岐に渡るといっても、必ず人間の深い処に集約する。

  その中で、山折哲雄氏が提唱する言葉

    『これから学びの進む小学生の入り口にして欲しいのは、心の領域を支える『美意識』です。

    美から入った方が、道徳的な感性やいわゆる日本人的な宗教的感性に近付きやすい。宗教や道徳で善や真をとくでしょ。

    善いことは美しい、真実は美しい、と受け取ることが出来る。そういうところにこの国の心の教育の特徴というか

    基本的な方向性があったと思いますよ。そこからそういう感覚が育つ。いじめは醜い、いじめる君自身が醜くなる、と導くことが出来る。』

  ・・・このように語る山折哲雄氏の変哲も無い、当たり前のような事が案外、現代下における諸問題の突破口になる気がした。

           

           この本の中で、山折哲雄氏によると柳美里氏は『弥勒菩薩』に似た表情をしている・・・のだそうだ。

            確かに、本当の審美眼を持てば『いじめ』はなくなるに違いない。

    

  

 

  

  



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