転校先の中学校ではあれやこれや、家庭の事情を聞いてくる子はあまり居なかった。
三つの中学校に通った私が感じたことは
最初のニュータウンのある、E市のT町は、街開きして数年だったため、中学校も創立が浅く、若い世帯が多く地域の重鎮の様な人が居ないため先生達がのびのびしていて、生徒も素直で勉強の質も高かった。
次に通ったS市の中学校は、私が住んでいたような団地が、何十棟も立ち並ぶ町にあり、(もちろん一軒家やマンションの子も居たが)
荒れていた。
そして、初めて訪れたM市にある中学校は、閑静な町並みにあり文教地区といった感じだった。
三つの中学校では、制服はもちろん教科書や副読本も全く違った。
E市からS市に移った時はそれ程困らなかった。
M市では困った。
私は元々勉強が遅れていたのに、教科書も、副読本も難しい。
公立中学なのに、採用している教科書にレベルの違いがあったのだ。
それでも何とか規則正しい生活と毎日勉強するという習慣を付けてもらった。
まあ、そこの家庭も自分の本来の居場所では無いから遠慮ばかりして小さくなっていた。
与えてもらった小さな整理ダンスの文具を入れた引き出しの中が、触られているのに気づいてから
あまり、というか全然信用されてない事は分った。
父親とRさんと弟の家庭は全く違う市にあり、たまに弟が泊まりに来た。相変わらず可愛かった。
弟は泊まりに来たそこの家でも、夜中に目を瞑ったま暴れて泣いた。
その様子を見ておじいさんは、
こういう時はしっかりと抱きしめてあげなさい。とRさんに言った。
嬉しかった。
ホッとした。
私はひとつ心配事が減った。
弟はまだ8歳だから、大丈夫!
まだまだ取り戻せるよ!
あとは、私がこの家で良い子にしてたら良いんだよね。