さて今日は、
「クイックシルバー・プロ・ゴールドコースト」を現地で観戦して感じたことを(やっと)書きます。
①大会の設備や規模について
まず、スナッパー・ロックスを始めオーストラリアの有名なサーフ・スポットはどこも素晴らしく整備されていて、たとえばキレイに管理されたトイレやシャワー、無料の駐車場、ベンチや木陰など、大勢の大会関係者や観客が大会会場に来ても、ほとんど不自由なく時間を過ごせるという環境は、本当にサーフィン先進国ならではと関心いたしました。もちろん、ゴミも全く落ちておらず(これは他のどこのビーチでも)、「海ではゴミを捨てない」という当たり前のことが徹底しているのでしょうね。
また、今回のように波の状況に合わせてスナッパー~レインボー~キラまでのとても広い範囲を使って大会が運営されるというのも、システムが整っていなければ本当に大変だと思います。メイン会場の一角には中継のための大型パラボラ・アンテナや恐らくスタッフなどのためのコンテナ室が並んでいました。
マイナー・スポーツに属するサーフィンでも、賞金も高額な世界最高のレベルの大会となると、こうも違うものかと大変驚きました。でも、このレベルが本当の「プロ」のスポーツ大会なのでしょうね。
そして、大会会場の様子は、まるでF1グランプリのような華やかさ(20年前位に、サン・マリノ・グランプリを見に行ったことがあります)で、多くのテント(しかもかなりしっかりした作りの)では、無料の飲食物(オージー愛するベジマイトを塗ったトーストなど)が提供され、あちこちに大会の様子を写す大型スクリーンやスピーカーが設置されていて、しかも選手や大会スタッフのテントは厳重にセキュリティーが保たれていて、本当に素晴らしいものでした。
②試合の雰囲気
大勢のオージーの観客たちは、地元ジョエル・パーキンソンやミック・ファニングに対する応援がもちろん凄くて、アメリカ人のケリーがいいライディングしてもいま一つ「シ~ン」見たいな反応がとても面白かったです。
観戦は、波をかぶるような位置や選手がテイクオフする場所に近い岩場の先端などからでも自由に出来るので、選手のパフォーマンスを本当に肌で感じられる気がしました。こんなプロ・スポーツはなかなか無いのではないでしょうか。
また、会場には日本人も結構いて、日本人プロ・サーファーも何人か来ていました。私も恐らくビデオの一角にちらっと映っていると思います。いつか日本人選手がWCTに参戦してくれたら、毎試合でもサポーターとしてくっついて行きたいです。
あと、サポートのジェット・スキーが凄かったです。ジェットも日本で見るより恐らく大型で6台くらい待機していて、キラの炸裂するブレイクを縫ってライディングを終えた選手を颯爽と迎えに行き、またアウトへ運ぶのですが、
あのジョエルが振り落とされていたくらいのコンディションでした。しかしながら、このレベルの試合には、ジェットはやはり不可欠だなと納得させられました。
③選手に関して
ケリーもミックも思ったより体は大きくなくて、でもアスリートらしく引き締まった体のようでした。やはり競技サーフィンは、パワー・スポーツではなくて体操やフィギュ・アスケートのような演技系のスポーツなので、重くて大きな体ではダメなのだなと実感しました。サーファーに対するトレーニングに当たっては、こうした認識が是非とも必要です。
また、ケリーは表彰式のあと、ず~っと各種インタビューを受け続け、終わったと思ったら大勢のファン一人ひとりに丁寧にサインに応じている姿に感心しました。普通は、強面のマネージャーのような人が、「もう、おしまい!」みたいにファンを制止して、選手を引き揚げさせるようなイメージがありますが、これはケリーの人柄なのでしょうかね。本当に素晴らしい「アスリート」だと思いました。
④意外だったこと
こんな凄い試合をやっているのに、近くでフリー・サーフィンしているサーファーがとても多かったこと。サイクロンがもたらした素晴らしい波のコンディションなので、「観戦なんかしている暇はないだろ!?」という人が多いのでしょうね。
また、我々がJPSAの大会の時に行っているような、メディカル・サポートの活動の様子がほとんど見られなかったこと。今回、本部テント等の視察は残念ながら出来なかったのですが、恐らくドクターやトレーナーは選手用の専用スペースにいて、サポートに当たっているのでしょうね。今度WCTの大会を視察する際は、こうしたスペースに入れるようもっと前から準備していこうと思います。
あと、スナッパー・ロックスはクイーンズランド(QLD)州で、すぐ隣のDバーから南はニュー・サウス・ウェールズ(NSW)州であるということ。ここで1時間の時差が生じるので、うっかりすると大変です。
テレビのニュースでは、ほとんどこの大会のニュースが報道されていなかったこと。テレビのスポーツ・コーナーでは、ラグビーのニュースがほとんどで、クリケットやサッカーなどフィールド・スポーツの方が人気なのでしょうね。サーフィンは、オージーにとっては「当たり前」のスポーツで、あまり注目を集めないのかもしれません。
(近くに普通にデーン・レイロルズが! でも、周囲の人は意外と冷静!?)
⑤日本のサーフィン
我々は、2009年から日本プロサーフィン連盟(JPSA)の公式大会と選手のメディカル・サポートを行ってきましたが、はっきり言って大会の規模も選手のレベルも全く比較にならないもものでした。
これは、JPSAに責任があると言うつもりではなく、サーフィンが競技スポーツとして観客にもスポンサー側にもあまり認識されていないことが根本にあり、資金がないから大会の規模も小さく、当然選手のモチベーションも上がらないから競技レベルの向上もなく、苦しい状況がず~っと続いているわけです。
サーフィンがオリンピックの公開競技にでもなれば、もう少しスポンサー企業も動くかもしれません。その日を夢見て、日本の競技サーフィンの発展に出来ることを少しずつでもやっていかなければならないと実感しています。
想像していた通りの、世界と日本の格差を実感できたことは、今回の旅の大きな収穫であったと思っております。