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正規雇用と非正規雇用

2023-08-20 13:14:44 | 話の種

「正規雇用と非正規雇用」

正規雇用と非正規雇用について、その定義、推移と内訳、雇用契約について整理してみた。

〇[定義](法律上の明確な定義はない)

[正規雇用](正社員、正職員)
一般的に、正社員(正職員)は、「直接雇用で」「労働契約の期間の定めがない」「所定労働時間がフルタイムである」者をいう。

[非正規雇用](正規雇用以外のもの)
「契約社員」「嘱託社員」「パートタイマー」「アルバイト」など

*正規雇用の概念で「労働契約の期間の定めがない」という箇所に不思議に思ったが、これは期間を定めての雇用(契約)ではないということで、退職規定などは雇用契約のなかで定められる。

〇「正規雇用者と非正規雇用者の推移」(「労働力調査」総務省)
(括弧内は非正規雇用者比率)

1990年 (正)3,473万人(非) 870万人(20.0%)
1995年 (正)3,761万人(非) 988万人(20.8%)
2000年 (正)3,609万人(非)1,258万人(25.8%)
2005年 (正)3,318万人(非)1,577万人(32.2%)
2010年 (正)3,334万人(非)1,690万人(33.6%)
2015年 (正)3,242万人(非)1,956万人(37.6%)
2020年 (正)3,483万人(非)2,119万人(37.8%)
2022年 (正)3,544万人(非)2,046万人(36.6%)

*1990年のバブル崩壊後、1999年以降景気悪化が更に深刻となり、企業の倒産や人員削減による失業、新規採用の抑制などにより過酷な就職難が発生したが、この表でも2000年以降急速に非正規雇用が増加している。

〇「非正規雇用者の内訳」(2022年1-3月平均)(「労働力調査」総務省)
(括弧内は女性の比率)

パート  (男)119万人(女)873万人(88.0%)
アルバイト(男)222万人(女)222万人(50.0%)
派遣社員 (男)  53万人(女)  83万人(61.0%)
契約社員 (男)147万人(女)133万人(47.5%)
嘱託   (男)  72万人(女)  43万人(37.4%)
その他  (男)  38万人(女)  43万人(53.1%)

合計   (男)651万人(女)1,397万人(68.2%)

*非正規雇用は全体的に女性の比率が高いが、特にパートや派遣社員が多い。これには「年収の壁」の問題も無視できない。

〇「非正規社員の比率(産業別)」(2018年 厚生労働省)
(産業分類のなかで非正規社員の比率が高い業種のみ掲載)

第一次産業
 製造業(22.7%)
第二次産業
 卸売業・小売業(73.1%)
 不動産・物品賃貸業(30.0%)
第三次産業
 宿泊業・飲食サービス業(73.1%)
 生活関連サービス業・娯楽業(54.1%)

全体(38.0%)

*第一次産業は非正規雇用の割合は低いが、やはり卸・小売業やサービス業は非正規雇用の比率がかなり高い。

〇「正社員・正職員の職種別男女比率」(2022年 厚生労働省)

総合職  (男)(81.6%)(女)(18.4%)
限定総合職(男)(69.1%)(女)(30.9%)
一般職  (男)(68.5%)(女)(31.5%)
その他  (男)(75.9%)(女)(24.1%)

全体   (男)(75.2%)(女)(24.8%)

*昔から男女格差が言われているが、正社員に於いても女性の比率は相変わらず低い。


(参考)

〇[雇用契約] 

「雇用契約」とは、「労働者が使用者(雇用主)のもとで労働に従事し、使用者はそれに対する賃金を労働者に支払う約束をする契約」(民法第623条)。
従って法律で定義されていることにより、雇用契約を結ぶことで労働者は労働基準法や労働契約法により守られることになる。

会社と雇用契約を結んで仕事に従事する者は全て労働者として定義され、労働者はパート・アルバイトなどの雇用形態に関係なく、労使間で「雇用契約」を結ぶことが法律で義務付けられている。(雇用契約は労働条件を明確にする重要なもの)

(「労働契約」という言葉もあるが、雇用契約は民法上で定められた、使用者と労働者の契約のことで、労働契約は労働基準法や労働契約法など、労働に関係する法令やルールを扱う際に使用される言葉。一般的にはほぼ同義語と解して差支えない。)

〇「雇用契約の法律に於ける概念(目的)」

[雇用契約の民法上の規定(特徴)]

「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」(民法第623条)

*民法の規定は「労務を行うこと」と「報酬を支払うこと」に主眼が置かれている。
*このような役務型契約は、売買型契約や賃貸借契約と異なり対象物が介在せず、サービスの提供が主体となる。
*民法上の雇用契約は諾成契約なので、書面締結することを必ずしも要件とはしていない。

[雇用契約の労働契約法上の規定(特徴)]

「この法律は(中略)労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。」(第1条)

*民法や労働基準法ではカバーしきれない内容を法規定したものが「労働契約法」で、「労働者の保護」「労使間の力関係の均衡」が目的。
*労働契約法では、使用者と労働者の関係が民法よりも明確に規定され、書面締結することも定められることになった。(労働契約法第4条第2項)
*第5条では、「使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をするものとする。」とし、民法では具体的に定めなくても労働者を危険から保護する義務があるとされていた内容を明示した。

〇「雇用契約書と労働条件通知書」

雇用条件(労働条件)を記載したものには「雇用契約書」と「労働条件通知書」がある。

「雇用契約書」は「労働者と雇用主との間の労働契約の内容を明らかにするための契約書」。

(給与、就業場所、時間、業務内容、昇給、退職などの労働条件に関する重要事項を取り決めて書面化し、企業側と労働者側の双方が署名押印(又は記名捺印)をして締結する。雇用契約書は、記載する事項について法令等では定められていない。実務上、雇用契約書と労働条件通知書を兼ねるケースも多く、その場合には労働条件通知書に記載が求められる事項を、雇用契約書にも記載しなければならない。)

「労働条件通知書」は「雇用契約を結ぶ際に「事業主側から労働者に通知する義務のある事項」が記載されている書類。

(書面に記載して必ず明示しなければならない。これには必ず記載しなければならない絶対的記載事項が含まれる。労働条件通知書は、企業側が作成して労働者へ交付するもので、労働者側は署名押印(又は記名捺印)はしない。)

[絶対的記載事項]

・労働契約の期間
・就業場所
・従事する業務の内容
・始業時刻と終業時刻
・交代制のルール(労働者を2つ以上のグループに分ける場合)
・所定労働時間を超える労働の有無
・休憩時間、休日、休暇
・賃金の決定、計算、支払方法、締切日、支払日
・退職や解雇に関する規定

*パートタイムやアルバイトなどの短時間労働者については、以下の内容も明示する必要がある。
・昇給の有無
・退職手当の有無
・賞与の有無
・雇用管理についての相談窓口の担当部署名・担当者名等

〇「労働基準法」

労働基準法は「労働三法」(労働基準法・労働組合法・労働関係調整法)の一つ。
労働基準法は、労動者が働く条件についての最低基準を定める法律。
労働基準法は、使用者と労働者の間でもっとも頻繁に問題となる法律であり、労働条件に関して、多岐にわたるルールが定められている。
(労働条件の明示、解雇の予告、賃金支払いの5原則、労働時間・休憩・休日、残業代、有給休暇、就業規則、労動者への周知)

*「労働法」とは、使用者(雇う側)と労働者(雇われる側)の関係性を定める法令の総称。

 


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