話の種

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和製漢語

2024-07-05 16:32:48 | 話の種

「和製漢語」

明治維新の文明開化により西洋の文物や知識が大量に移入されるようになったが、そこで当時の知識人たちが苦労したのはその翻訳である。

この翻訳で問題となるのは単語で、原語を漢語に置き換えなければならない。
これ迄日本にあったものならば問題ないが、それ以外のものは新たに作らなければならない。

お茶の水女子大学の研究年報(陳力衛・著)「和製漢語と中国語」によると、この時期の漢語は急激に増加しており、それまでの800年間とこの時の40年間の増加率はほぼ匹敵しているとのこと。

『源氏物語』から『和英語林集成』に至る800年間の漢語増加率(15.3%)
『和英語林集成』(1867年刊)から『新訳和英辞典』(1909年刊)に至る40年間の漢語増加率(13.5%)

そして、この時に増えた漢語は次の3種類に区分されるとのこと。

(A) 中国語から直接借りる。「電気、電報、地球、銀行、化学、直径、風琴など」
(B) 中国古典語を用いて外来概念にあてる。「革命、文化、観念、福祉、文明など」
(C) 日本人の独自の漢字意識で外来概念にあてる。「哲学、喜劇、郵便、美学など」

(A)は中国語で書かれた近代知識にかかわる漢訳洋書や中国で出版された英華字典から直接取り入れたもの。
(B)は中国古典に使われていた言葉の意味を変えて転用したもの。
(C)は純粋に和製漢語としてつくられたもの。

*(B)は中国語古典語として、新たに日本で作られた語形ではないが、日本で新しい意味を付与したということで和製漢語とすることが多い。

この和製漢語或いは翻訳でよく知られているのが福沢諭吉である。
諭吉が創作したり新しい概念を導入したりした言葉はたくさんあるが、よく引き合いに出されるのが「自由」という言葉で、次のように説明されている。

「私たちが普段使っている言葉の中には、実は明治時代に新しい意味を持つようになったものがたくさんあります。明治のはじめ、西洋の様々な概念が数多く日本に入ってきましたが、その中には日本人が初めて出会うものも多く、新しい概念を伝えるためには、学者たちが新たに言葉を作ったり、既存の日本語を再定義する必要がありました。例えば「Liberty」という言葉は「自由」と訳されますが、実はこれは福沢諭吉が再定義したもの。それまで「自由」は「わがまま」という意味を持っていましたが、福沢諭吉は「Liberty」の訳語として用いる際に、人々が互いを妨げることなく自分自身を幸福にすること、といった意味を「自由」に持たせ、「Liberty」という概念を広めました。」(金城学院大学文学部)

*「わがまま」は「自分の都合を中心に物事を考え行動するさま。他人の都合を顧みないさま。」と解されることが多いが、ここでは「我儘」「我が侭」ということで「自分の思うがままに」と理解した方が良い。

*「自由」の意味については下記説明がある。

LibertyやFreedomが「自由」と翻訳されて以降、外的要因から束縛されないという意味で使用されることが多い言葉になりました。社会の常識や身分などに縛られないことを福沢諭吉は「自由」と翻訳しました。
しかし、もともと「自由」とは「自らに由る」とあるように、自らの意志をよりどころにすることを意味した言葉であり、執着から解き放たれた状態である「解脱」を表すこともあります。
つまり、仏教由来の「自由」とは外的な要因ではなく、自分の心のあり方を表す言葉でした。(浄土宗十念寺)


ところでこの和製漢語だが、その後漢字の本家である中国でも多く取り入られるようになり、現代中国語の70%が日本語由来だとも言われている。

これについてYahoo知恵袋には下記コメントがあった。

「日本は欧米からの新しい情報や技術を独自に造語を作り日本語に翻訳しました。これは日本がアジアでいち早く近代化した一因であると思われます。
中国は独自に造語を余り作らず、その日本語を輸入して使っている為70%が日本語由来という事になったのだと思います。
日本では解体新書などのように、欧米の情報を熱心に翻訳する人が多かったのではないでしょうか。昔は翻訳は簡単な事ではありません。対応する言葉がないのですから。解体新書の翻訳は4年間もかかっています。
日本は欧米言語の翻訳の為に造語を作りました。」

王彬彬氏の論文
「現代中国語の中の日本語「外来語」問題」

【現代中国語の中の日本語「外来語」は、驚くほどの数がある。統計によれば、わたしたちが現在使用している社会・人文・科学方面の名詞・用語において、実に70%が日本から輸入したものである。これらはみな、日本人が西洋の相応する語句を翻訳したもので、中国に伝来後、中国語の中にしっかりと根を下ろしたのである。わたしたちは毎日、東洋のやり方で西洋の概念を論じ、考え、話しているのだが、その大部分が日本人によってもたらされたものである。このことを思うと、わたしは頭がかゆくなってしまう。
実際上、日本語「外来語」を離れてしまえば、わたしたちは今日ほとんど話をすることができない。わたしがこの日本語「外来語」を論じる文章を書くとき、大量に日本語「外来語」を使わなければ、根本的に文章が成立しないのである。この問題はここ数年、何度か複数の人々によっていろいろな角度から説かれてきた。】

(参考)

「和製漢語は特に近代以降、中国に逆輸出されたものも少なくない。中国が近代化を遂げる過程で、特に日清・日露戦争前後に、中国人留学生によって日本語の書物が多く翻訳されたことが大きいともされる。
中国語になった和製漢語の例として「意識」「右翼」「運動」「階級」「共産主義」「共和」「左翼」「失恋」「進化」「接吻」「唯物論」など種々の語がある。
中国でも西洋語の翻訳が試みられ、華製新漢語と呼ばれる。華製新漢語は、しばしば和製漢語と競合するようになることもあった。」(Wikipedia)

(面白いのは社会主義、共産主義なども和製漢語で中国でもそのまま使われているということ。)

 

・「和製漢語(Wikipedia)」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%92%8C%E8%A3%BD%E6%BC%A2%E8%AA%9E

 

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和製英語

2024-07-05 16:31:27 | 話の種

「和製英語」


以前TBS-TVの番組「マツコの知らない世界」で和製英語についての話があった。

番組の中で、北九州市立大学准教授のアン・クレシーニ氏は和製英語について次のように述べている。
・日本人は発想力が豊かで、また言葉を短縮するのが得意。
・日本人にとって、元の英語よりもそれを変化させた和製英語の方が、「発言しやすい」「聞き取りやすい」「その対象物を想像しやすい(その対象物の内容が分かりやすい)」。

なるほどと思ったが、今や和製英語は数限りなくあるので、その中でも上手い表現だなと思うもの、英語だと分かりにくいもの、また使い方次第で誤解を招きやすいものなどを幾つかピックアップしてみた。

ベビーカー ← (米)stroller(英)pram / buggy
ベビーベッド ← (米)crib(英)cot
チャイルドシート ← car sheet
オープンカー ← convertible
ハンドル ← steering wheel
サイドブレーキ ← (米)handbrake(英)parking brake / emergency brake
バックミラー ← (米)rear view mirror / room mirror(英)driving mirror
サイドミラー ← (米)side view mirror / door mirror(英)wing mirror
ウィンカー ← (米)blinker / turning signal(英)indicator
クラクション ← horn

ボールペン ← ball point pen
シャープペンシル ← mechanical pencil
ホッチキス ← stapler
キーホルダー ← key ring

フライドポテト ← (米)french fries(英)chips
ソフトクリーム ← soft-serve ice cream
シュークリーム ← cream puff
ピーマン ← green pepper
バイキング ← buffet

ビジネスホテル ← budget hotel
フロント ← reception
トイレ ← (公共の場)restroom(家庭)bathroom
コンセント ← (米)outlet(英)socket
ビーチサンダル ← flip-flops
ランニングマシン ← treadmill
 
レントゲン ← x-ray
アトピー ← eczema / (医学)atopic dermatitis

サラリーマン ← office worker / company employee
マンション ← apartment / condominium
クレーム ← complaint
ヒーローインタビュー ← player-of-the-game interview
バージンロード ← wedding aisle

(*他にもいろいろあると思うが取敢えずここまで。)

(追記)

和製英語は日本人にも分かり易くということで工夫の跡が見られるが、最近は英語をそのままカタカナにして使用するので非常に分かりづらい。

当方の経験から言うと、

例えば「ダイバーシティ」だが、最初は全く意味が分からなかった。「多様性」という日本語があるのに何故わざわざこのような言い方をするのだろうか。(当初はダイバー(潜水する人)のシティ(町)かと思ったり、お台場にあるダイバーシティのような商業施設のことかと思ったり、混乱した。)

「インバウンド」も当初分からなかった。「訪日旅行者」或いは「訪日外国人」と言ってくれれば分かり易いのだが。

「インボイス」(送り状)、この言葉は当方以前貿易関係の仕事をしており普段使っていたので問題ないが、そうでない人には分かりづらいかも知れない。

(*この他いろいろあると思うが取敢えずここまで。)

*これらの言葉も日常的に使われるようになれば、そのうち定着したものとなるだろうが。

 

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英語の発音(カタカナ英語)

2024-07-05 16:22:57 | 話の種

「英語の発音(カタカナ英語)」


新聞に「カタカナ英会話」という本の広告があり、内容紹介の例として次のようなものがあった。

「Can I help you?」→「ケナイヘォピュ」
「I don't know」→「アロンノウ」
「getting」→「ゲリン」

なるほど、発音してみると確かにそれらしく聞こえる。
ということで早速この本を買ってみたが、最初の説明文のところに次のような記述があった。
(一部略)

「日本語と英語の発音は根本的に違うため、どこからどこまでが1つの単語なのかが分かりづらく、全部つながって聞こえてしまう。
これはアメリカ人やカナダ人のネイティブは実は舌足らずで、話す時にかなり「はしょる」からです。
そこで、「はしょり」や「つながり」を逆手にとり、それをカタカナにすることで「まるでネイティブ」な音になるメソッドを考えました。
一瞬、え?と思うようなカタカナ表記もたくさんありますが、これは教材の音声などのゆっくり、はっきりと話す英語と、ネイティブ同士が話すスピードの英語とで、聞こえ方が全く違うからなのです。」

この説明を読んで、日本人が英会話が出来ない(下手な)理由がよく分かった。

日本語は子音と母音の組み合わせで出来ており言葉自体がはっきりとしているが、英語は子音と母音が入り混じっており、それが繋がって発音されると、我々日本人は聞き取れなくなってしまう。
一方話す方はどうかというと日本人は生真面目なので、出来るだけ学校で習った文法通りに、そして正しい発音で話そうとするので、逆に話せなくなってしまう。

他国を見てみると、例えばシンガポール人やインド人の話す英語には特有の訛りがあり、中でもシンガポール人の英語は「シングリッシュ」と言われるほど独特の訛りがある。その他の国でも多かれ少なかれ同じことが言える。しかし彼らは文法、発音など気にせず堂々と英語を喋っている。
日本人も見習うべきところであろう。

*「カタカナ英会話」について友人に話したところ彼も知っていたようだが、あまり真似しない方がよいと言われた。というのは、このようにネイティブ風に話すと、相手もこちらがネイティブだと思って早口で返してくるからとのこと。どうやら彼の友人がそのような経験をしたことがあるらしい。

*もう一つの話題として、米国に行った駐在員が電話で彼らの話す英語が聞き取れず、適当にイエスを連発したあと、「ところでこれは?」と聞いたところ、今俺がずっと話していたではないかと言われたとのこと。
特に困るのは彼らとの会食の時で、話題が飛んでしまうと内容が分からなくなってしまい、ついていけなくなってしまう。
従って当方はネイティブとの会話は、まずこちらから質問しそれに答えてもらうという形を取り、結構これが功を奏した。

さて話を元に戻すと、この「カタカナ英会話」の説明を読んで、私が思い当たったのはカラオケで英語の歌を歌う時のことである。
英語の歌詞に忠実に歌おうとすると、どうにも上手く歌えない。これは本の説明にあったような理由によるものだろう。
従ってこれからは英語の歌を歌う時は、個々の単語に忠実に歌おうなどとはせず、はしょるところははしょって、発音なども無視して、ともかく曲の流れに沿って歌おうと思っている。
そうすればスムースに気持ちよく歌えるのではと思う。
どうせ英語の歌など、周囲の人は発音など気にして聞いてはおらず、「ジャンバラヤ」などは南部訛りのひどい歌で、アメリカ人でも分からないだろうから。


(参考)英語の発音

「McDonald's」はよく例として出されるが、マクドナルドでは通じない。発音記号は [məkˈdɒnldz]で「Mc」と「Donald's」の間で切るイメージ。カタカナで表記するのは難しいが、敢えて書くと「メク ダーヌルズ」となり、「ダ」の部分にアクセントがある。(カタカナでの表記は人によって異なるので実際にネイティブの発音を聞いて覚えるしかない。)
ちなみに、「Mc」はアイルランドやスコットランド系の名前でよく使われ、「息子」と言う意味で、「Donald's」は「ドナルドの」という意味。つまり「ドナルドの息子」となる。(マクドナルドの創業者はドナルド兄弟)

「buffet」は[bəféɪ]と発音する。(カタカナでは「ビュッフェ」ではなく「バフェィ」のイメージ)

他に下記なども日本人が間違えやすい例。

「alcohol」 [ǽlkəhɔ̀(ː)] 〇アルコホール ×アルコール
「virus」 [váiərəs] 〇ヴァイラス ×ウイルス
「allergy」 [ǽlərdʒi] 〇アレジ― ×アレルギー

*最近は翻訳機が発達しているので、ここで述べてきたことは最早必要ないかも知れないが。

 

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