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検察が自民党裏金問題で不起訴処分

2024-07-14 11:50:54 | 話の種

「検察が自民党裏金問題で不起訴処分」


自民党の裏金問題で今年1月検察は安部派幹部5人の立件を見送ったが(この時は他の安部派議員3人と秘書らが立件されている)、一昨日(7/8付)は告発されていた計16人の国会議員や元議員を不起訴処分とした。(派閥の収支報告書にウソの内容を記載していたとされる3派閥8議員については「嫌疑なし」、派閥から受け取ったキックバックを自らの政治団体の収支報告書に記載しなかった11人については「嫌疑不十分」だった(3人は重複)。)
(この他、派閥や各議員の会計責任者など24人については「起訴猶予」または「嫌疑不十分」、2人については「被疑者死亡」で不起訴処分とした。)(従って今回は計42人が不起訴)

*不起訴処分:検察官が「起訴しない」とする決定
*不起訴処分の種類:
 ・嫌疑なし(犯罪を犯していない、嫌疑がないとされるケース)
 ・嫌疑不十分(完全に嫌疑がなくなったわけではないけれど証拠が不十分なケース)
 ・起訴猶予(諸事情によりあえて起訴しない決定)

*立件:
刑事事件が起こった際、テレビ報道などで立件という言葉を耳にするが、立件とは、法律用語ではなく、定まった明確な定義があるわけではない。一般的に、「検察官が公訴を提起できる要件が備わっていると判断し、事案に対応する措置をとること。」という風に理解される。テレビ報道においては、警察が逮捕したという意味で使うこともあれば、検察官が起訴という意味で使うこともある。

検察は今年1月に安部派議員3人を立件したが、安部派5人衆といわれる幹部の立件は見送っている。
これは不記載額3千万円を基準に線引きしたためで、「過去の摘発例を超える判断は公平性に欠け法的安定性を損なう」と述べているが、ちょっと待てよと言いたい。
最高裁は旧優生保護法問題で国の賠償責任を認めたが、これはかつて最高裁自身が下した「時の壁」という判断(判例)自体を変更したことによるもの。
裁判所は過去の判例を覆してまで正義を貫こうとしているのに、検察は未だに前例踏襲に拘って不正を見逃そうとしているのだろうか。過去の判断は間違っていたとは思わないのだろうか。
まず必要なのは法律に違反しているかどうかの判断で、金額の多寡はその次の問題である。
(金額の多寡というのは、事件の悪質度と同様、量刑にかかわる問題に過ぎない。)

日本の検察は「有罪となる確証がないと不起訴にする」傾向が強い、言い換えれば「確実に有罪判決を得られると確信した場合のみ起訴する」と言われているが、今回本当にその確証が得られなかったのだろうか。

政治家がらみの事件では特に不起訴が多い気がするが、どうも検察と言えども政治家に対する「忖度」があるとしか思えない。
(例えば、「もり・かけ・さくら」といわれる「森友学園」「家計学園」「桜を見る会」の問題など)

他方、検察は民間人相手の訴訟には異常なほどの執念を発揮する。
(例えば、「袴田事件」や「大川原化工機事件」など)

今回の裏金問題の42人不起訴処分についても、当然SNSでも国民の怒りが沸騰している。
「これで国民が納得すると思う?」
「一般人も一定額、脱税してもいいのですか?」
「これでは裏金や政治資金パーティーは無くならない」
「マジメに納税するのがアホらしくなる」
「もはや法治国家ならぬ犯罪者を野放しにする放置国家」など

この不起訴処分についても、当然告発した大学教授たちはこれを不服として、今後検察審査会に申し立てをする方針だが、思うような結果は期待できないだろう。
起訴相当あるいは不起訴不当となる確立はかなり低く、仮に裁判に持ち込めたとしても、有罪となる確立は更に低い。
(政治家がらみの事件で検察審査会の議決により、裁判で有罪となった例もないわけではないが、その場合でも有罪となったのは秘書で、政治家本人は無罪となっている。)

検察は日本では「起訴便宜主義」により、司法の側面も担っているが、組織上は行政機関であり、任命権者も内閣であることより、現行制度では検察がこのようになってしまうのは仕方がない(どうしようもない)ことかもしれないが、もういい加減に国民の声に耳を傾け、諸問題につき再考すべき時であろう。

*検察審査会とは:

検察審査会議において、検察が不起訴処分にした事案を、告発人からの申し立てにより、その可否を審査する。(非公開)
構成は選挙人名簿に基づきくじで選出された11人の検察審査員(任期6カ月)。(名前は非公開)

検察審査会議の議決は次の3種類。(議決書は非公開)
「起訴相当」(起訴すべきである)(*11人中8人以上の賛成が必要)
「不起訴不当」(更に詳しく捜査をすべきである)
「不起訴相当」(不起訴処分は妥当である)

・議決が「不起訴相当」となった場合は終結。
・議決が「不起訴不当」となった場合は、検察は再捜査を行う。その結果「不起訴」となれば終結。「起訴」となれば「裁判」となる。
・議決が「起訴相当」となった場合は、検察は再捜査を行う。その結果「起訴」となれば「裁判」となる。「不起訴」となれば再度検察審査会にかけられる。

再度行われた検察審査会議の議決は次の2種類。
「起訴すべき旨の議決(起訴議決)」(*11人中8人以上の賛成が必要)
「起訴議決に至らなかった旨の議決」

・議決が「起訴議決に至らなかった旨の議決」の場合は終結。
・議決が「起訴すべき旨の議決(起訴議決)」の場合は指定弁護士による起訴となり、裁判となる。

*起訴議決がされると、検察審査会の所在地を管轄する地方裁判所は、検察官の職務を行う弁護士を指定し、指定された弁護士は検察官に代わって起訴をして訴訟活動を行う。

(参考)

本日(7/10)検事総長交代の報道があった。(7/9付)
後任は畝本直美氏(62)で、女性で初めての検察トップへの就任となる。会見で「検察が国民の信頼という基盤に支えられていることを胸に刻み、適正な検察権の行使に努めたい」と抱負を述べているが、直前の東京高検検事長のときに自民党の裏金事件で捜査を指揮したが(安部派5人衆問題のとき)、派閥幹部が立件されなかったことでかなり批判を浴びている。果たしてこの人で大丈夫だろうか。

 


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