冬帽

冬帽に身構えて出るポストまで
年の暮れ歯科の予約も無事に終え
年の瀬に生き続けよと誕生日

鰭酒

立ち寄れば先ず鰭酒と息の合う
寝ぬそばにそっと置かれし玉子酒
生活の百態のぞかす日向ぼこ

開戦記念日

開戦記念日二度と称えぬ日としたき
白菜を割って干されし垣根かな
どんよりと明暗淡き冬の雲

冬満月

戌年の冬満月は冴え渡り
ボーナスの絶えて久しき齢かな
掛取りに明暗あるも情けあり

枯蔓

しがみつく枯蔓辿れば根元まで
咲き誇る小菊は散らず枯れるまま
荒ぶ風若竹防ぐ虎落笛

冬夕焼け

冬夕焼け明るき色に明日を見る
冬蜂の巣にすがりつつ力尽き
古暦備忘の役を果たし終え

冬木

庭先の冬木に朱き実のひとつ
銀色の房細りゆく枯尾花
枇杷の花色淡くして香の強き
惜しげなく黄場降り注ぎ宮護る

火鉢

その昔火鉢は囲む手を増やし
噛むでなし飲むには濃ゆき葛湯かな
雪吊りに名木護る風情あり