水温む

水温み手に優しき水となり
薔薇一花咲く喜びの限りなく
身をかがめ芝目整う老眼鏡

森林浴

神宮に森林浴の砂利響く
青蔦は灼熱防ぐ嵩を見せ
丸々と蚯蚓育てし堆肥でき

紫陽花

紫陽花の樹勢一気に咲き初むる
白雲の青に輝く夏の空
花終えし実る菜種は束ねられ

夏の蝶

白蝶の浮きたつ彼方夏の青
穀象にまみゆる事も間々ならず
咲き匂おう車は薔薇の屋根の下

蜘蛛の巣

高々と張られし蜘蛛の糸光る
這い登る雨後の幼き蝸牛
焼き鮎に一時流る無言かな

朝顔の苗

双葉にて朝顔見ゆる苗の顔
舞い上がる乾きの早き夏の午後
昼顔の淡き色咲き日暮れまで

泰山木の花

泰山木の花の重さは白磁色
金雀枝の蝶の重みにゆれ撓み
突風に公孫樹若芽は耐え切れず

愛鳥週間

人の手の限りを尽くさん愛鳥日
敗戦の傷の深さや憲法記念日
熱帯魚追いかける目に老若なき

夏

下駄履きの乾ききったる下駄の音
採れたてと分け合う姉妹の蕗の味
いかがかと熱き蚕豆差し出され

薔薇

薔薇の咲く好みの色に囲まれて
夏の蝶視点を揺らし大空え
ことごとく磨き輝く新樹光