広く明るいリビングにはベビーベッドがあって、生後六ヶ月の赤ちゃんが小さな口で小さな指をしゃぶりながら、幸せそうに横たわっていました。小慧はソファーに座り、それまで決して自分の顔を飾ることがなかった笑みを浮かべながら、その光景を見ていました。
かつて不妊だった小慧が元気な赤ちゃんを産めたのは、科学的処置や医療の結果ではありませんでした。それは神様によって彼女に与えられたいのちなのです。医療を探し求めた二年以上にわたるつらさを振り返ると、彼女は複雑な感情で一杯になりました。
二十代前半のころ、小慧は二年間交際したボーイフレンドと結婚し、結婚後は夫の愛と献身に恵まれましたが、かわいい赤ちゃんを産んで家庭を始める夢を叶えることも楽しみにしていました。しかし小慧はどうしても妊娠できず、その理由を確かめようと病院に行ったところ、医師からこう告げられました。
「先天性卵巣形成不全が治癒する可能性は極めて低いです」これはどうしても子どもを欲しがっていた小慧にとって苦痛に満ちた打撃となりました。彼女は息の下で自分にこう言いました。「どうしてこんなことになるの。子どもを産めない女なんて誰が尊敬するでしょう。子どもを産めなかったら、将来、夫はそれでも私を望むかしら。それにお義母さんも孫と会うのを心待ちにしているし」涙が頬を伝い落ちる中、小慧は後ろ向きで惨めな思いに捕らわれました。
「先生、現在の医学はとても進んでいますし、私の状態がよくなって妊娠できる可能性が低いのはわかっていますが、それでも治すために全力を尽くしたいんです。先生、お願いですから助けてください!」子どもを産む望みがすべてその医師にかかっているかのように、小慧は懇願しました。医師は最先端の赤外線加温殺菌治療を小慧に施し、薬を処方しましたが、半年間にわたる治療を行ない、三万元の費用をかけてもなお、小慧の病状は変わりませんでした。まったく改善していなかったのです。小慧はひどい無力感を覚えました。自分の病状に対して本当に治療法はないのだろうか。小慧は、必要な器具を完備し、国内最先端の技能を有する医師がいる病院で治療を試みたいと望みました。そこに必ず答えがあるはずだと考えたのです。そこで彼女は情報を集め、治療を求めて有名な国立病院へと向かいました。
しかし医師は、彼女が持ち込んだ資料に素早く目を通し、病状やこれまでの治療歴についていくつか簡単な質問をしたあと、こう言いました。「あなたはずっと生理が弱く、卵巣も数ミリほどの長さしかなくて、エストロゲンも少ないです。あなたの病歴と検査結果も、先天性卵巣形成不全という診断と一致しています。だから新たな検査は行ないません。その代わり、人工的に生理を誘発するため、人工プロゲステロンを使うことにします」しかし二ヶ月にわたる治療を経ても病状が改善することはなく、薬の副作用のせいで食欲を失いました。痛みと苦しみがひどいため、薬をとり続けることもできませんでした。しかし小慧は諦めたくはありませんでした。数多くの不妊を見事に治療した病院や医師について、インターネットの記事を読んだりテレビや広告で見たりしましたが、そのすべてを頭に思い浮かべ、次の回復例となることを夢見ました。彼女は最後の希望にかき立てられて、名の通った二つの大病院に行きました。診察のあと、有名な医師がこう言いました。「あなたのエストロゲンレベルはとても低いので、生涯にわたってホルモン補充療法を行なわなければならないでしょう。治療をやめることはできません。さもないと老化が早まります」その言葉が傷口にすり込まれた塩のようだということに、疑問の余地はありませんでした。自分の病状が生涯にわたるホルモン補充療法を必要とするとは、想像できたはずがありません。小慧は失望を覚え、医師の言葉に耳を傾けてもう半年治療を行なうしか選択肢はありませんでした。しかし再検査を行なったとき、彼女の卵巣は小さすぎるままで、成長した卵子も見られませんでした。小慧は完全に絶望しました。
小慧は呆然としながら最終検査の結果を見つめました。過去二年間、彼女は仕事で貯めた十万元をすべて治療に費やしました。また、治療のために苦しい思いをしてきたことも記憶に鮮明でした。医師の指示通りに検査を受け、薬を飲み、注射をされ、そのすべてについて細かな点までまったくおろそかにしませんでした。冬の寒さや夏の暑さの中でも予約した検査には必ず行き、どれほどの距離を旅したか、どれほど多くの血を抜かれたか、何回注射を受けたり薬を飲んだりしてきたか、思い出せないほどでした。しかし結局、彼女の病状はこれっぽっちも改善していなかったのです。その代わり、肉体的にも精神的にも疲れ果て、苦痛にさいなまれ、またホルモンを長期投与したことによる副作用のせいで、体重が元々の四十五キロから六十キロに増えました。サイズも何段階か大きくなりました。満月のようになった顔と膨れ上がった身体を鏡で見たとき、それまで経験したことのない失望を感じました。それまでずっと、医学と科学には権威があると思っていましたが、想像するほど素晴らしいものではなかったのです。その瞬間、彼女は頼るものが何もないかのように感じ、悲しみと絶望に捕らわれました。
その夜、小慧は眠ることができずにベッドの中で寝返りをうっていました。窓の外に広がる夜の暗闇を見ていると、自分が無力に感じられ、両目の端から涙が静かに枕へ流れ落ちました。
小慧の祖母はいつも孫娘への気遣いを見せていましたが、彼女の家を訪れたところ、小慧が不妊のせいでどれほど苦しみ絶望しているかを知りました。祖母は優しくこうアドバイスしました。「小慧、これまでの数年間、不妊を治すためにあなたがどれほど苦しんできたか、どんなことを経験してきたか、私はわかってますよ。あなたがそのすべてを耐えているのを見て、とても心配だったのよ」小慧は無言のまま涙がこぼれ落ちるのを我慢しました。祖母は続けました。「実は、妊娠するかどうかについて私たちに選択肢はないの。私たちも、それにお医者さんや科学もそれをコントロールすることはできなくて、神様だけがおできになるのよ。あなたは神様を信じるべきだわ。神様の御言葉は、私たちが人生で出会う問題や困難をすべて解決できるんですから」祖母の言葉に小慧は慰められ、心が穏やかになるのを感じました。
祖母はさらに続けました。「小慧、神様の御言葉を読んで、子どもを授かることについて何と言っているか見てみましょう」小慧は神様の御言葉の本を手に取って読みました。「人間の計画や幻想は完璧であるが、自分の子の人数や自分の子の容姿、能力などは自分で決められず、…人間は、自分の子孫のために一切努力を惜しまないが、最終的には、自分がもうける子の人数や、その子がどのような子であるかは、その者の計画や願望通りにはならない。貧しいながら多くの子を授かる者もいれば、裕福ながら子を授からない者もいる。娘を欲しがっていてもその願いが叶わない者や、息子を欲しがっても息子が出来ない者もいる。」
祖母はこう教えました。「神様の御言葉がそのことをどう説明しているか、はっきりわかるわね。私たちが子どもを授かるかどうか、その子が男の子か女の子か、どんな外見になるか、そして将来どんなことをするのかは、私たちにもお医者さんにもどうにもできないの。できるだけ早く子どもを産みたいと願った、あなた自身の努力を振り返りましょう。あなたは医学的な治療を求め、最先端の治療を受けるためにあらゆる大病院に行ったわね。自分にできることは何でもしたけれど、すべて無駄に終わった。小慧、私たちは人間には頼れないの。神様に頼るとき初めて、奇跡が起こるのを見られるのよ。アブラハムが百歳のとき妻のサラはもう九十歳だったけど、神様はイサクという名の息子をお与えになった。一年後、子どもを授かるなんて生物学的に無理だと私たちには思える年齢で、サラは本当にアブラハムの息子イサクを産んだのよ。神様の権威は、私たちの頭では理解できないの」。
祖母の話を聞いたあと、小慧は治療を受けた自分の経験と、あらゆる可能な方法を考えてすべての大病院に行ったものの、結局まだ妊娠できていないことを思い起こしました。小慧は神様の御言葉と祖母の教えを受け入れました。
「小慧、自分の病状をよくしようとして、これ以上問題を抱え込んではだめよ。あなたが子どもを授かると神様がお決めになったら、遅かれ早かれ妊娠するわ。ただ誠実にそれと向き合い、神様に祈って頼り、神様のご支配と運命に従いなさい。そうすれば、もう心配したり苦しんだりすることはないし、幸せに楽しく生きることができるわ」。
その瞬間、自分が子どもを授かるかどうか、あるいはいつ授かるかは、自分で計画したり準備したりできることではなく、また努力や医療によって変えられるものでもないことを、小慧は理解し始めました。祖母の助けを借りて神様への服従の祈りを唱えると、これまでにないほどのくつろぎと落ち着きを感じました。他人が自分をどう思っているか、義両親と夫が自分をどう扱うだろうか、もはや気になりませんでした。その後、彼女は子どもを授かる能力を医学に託さず神様の手に委ね、神様が指揮と采配をなさるのに任せました。彼女は自由時間に両親の家に行き、祖母と一緒に神様の御言葉を読んだり、神様を讃える賛美歌を歌ったりして、心の奥深くで神様の平和と喜びを感じました。