
(※アニメ「ようこそ実力至上主義の教室へ」のネタバレ☆があります。これから見る予定のある方は閲覧しないほうが絶対いいです。せっかくの面白さが半減してしまうと思うのでm(_ _)m)
「最初、そんなに見る気はなかった」とか、「あまり期待せずに見はじめた
」……という映画が、少し見はじめただけで「マジおもろッ!!
」となるのは、時々ある話。。。
そして「ようこそ実力至上主義の教室へ」は、わたしにとってそんな感じのアニメでしたというのも、自分が高校生だったのなんか、今はもう△
年も昔の話――となると、そのくらいのティーン(笑)のスクールライフを描いたものって、「ああうん、今ごろの若い子たちはこーゆーのがいいんだろうね。おばちゃんにはもうあまりようわからんよ
」となったりすることもままある昨今(ババアよのう・笑)。
でも、そんなわたしが久しぶりに心を強く突き動かされたアニメ、それがよう実でした!!もうむっちゃ好きや!!
とはいえ、もし毎回のタイトルに「地獄、それは他人である(サルトル)」とか、「天才とは、狂気よりも1階層分だけ上に住んでいる者のことである(ショーペンハウアー)」といったように、偉人の名言っぽいのがなかったら……たぶん見てなかったと思うのです。あ、前置き長くなると感想について書けなくなるので、なるべく自分の書きたいことだけ書いてとっとと萌え
吐きだして終わらせよう(*´Д`)ハァハァ(こういう顔文字使っちゃうあたり、もうおばさんなのよ・笑)。
しょっぱなからネタバレ☆ぶっこんで申し訳ないのですが――これが主人公のサイコパス、綾小路清隆の1stの最終回における本音でした((((;゚Д゚))))ガクブル
いえ、ここ見た瞬間、最高に痺れました!!きよたん、第二話に「才能を隠すのにも才能がいる」とあるとおり、本当は頭脳明晰、スポーツ万能、まだ彼の過去については謎が多いものの、何か英才教育的機関で育てられた結果、そーなったらしい(ワイミーズハウスにおけるメロ・ニア的な?
)。でもそのかわり、「人間らしい感情」のようなものが欠けた人格が形成されてしまったらしく、綾小路くんの考えることは、とにかく自分の目的を達するための最短距離による計算、計算、計算……それはたぶん、「人間らしい感情についても自分が人間であるがゆえに理解できるが」、それ以外についてはAI並みに計算能力の高い、打算的超危険人物なわけです(でも、ファンは全員絶対そこが好き!!
)。
1stについて言えば、まず綾小路くんは自分と若干似た傾向にある行動様式の、堀北鈴音ちゃんとまずはそれなりに親しくなってゆきます(でも堀北さんサイドでは友達とは思ってない様子)。で、最初に出てくるヒロインっぽいキャラが堀北さんと櫛田桔梗ちゃんという巨乳いい子ちゃんキャラ。のちにはこのくっしー(※とは誰も呼んでない)も、闇を抱えたヤヴァキャラ
であることが判明しますが、それは2stに出てくるエピソードということで。。。
性格よくて面倒見のいい、いつでも笑顔の桔梗ちゃんは、クラスのみんなの人気者対して、幼稚園の頃から小学・中学とずっと友達がいなかったという堀北さんは、成績優秀で賢い子なものの、いつでも真面目に正しい超正論しかぶっかまさないので、クラスの他の生徒たちにはちょっと煙たがられています
(←?)。
一方、綾小路くんもまた、目立たぬ地味キャラをあえて演じているため、クラスの誰からも「あー、あの影うすい奴な」といったように認識されており……でも、ポイント稼いでD組からA組へと上がりたい堀北さんに綾小路くんは「とりあえず利害が一致する」ことから協力するようになり――で、1stにおいては、わたし的一視聴者の読みとしては、次のように思っておりました。
その~、わたしもあんまし詳しくはないものの……ぶっちゃけ、こうしたパターンのラノベ系のものは多い気がします。冴えない(という設定の)主人公男子が、異世界で人生やり直してそちらではあらゆる種類のおにゃの子からモテまくりとか、ファンタジーじゃない日常系のものでも、色んなタイプの女子からいつしか思いを寄せられる的な……まあ、「今はそうとは限らない」とはいえ、大抵、最初に接触した女の子と、喧嘩ばっかりしてたとしても最後はくっつくとか、そのライバルの女子たちもそれぞれ個性があって魅力的だったりとか――その中のひとりは必ず眼鏡キャラで巨乳であるとか、男っぽいキャラで自分を「ボク」とか「オレ」と呼んでるとか、ある程度パターンがあるような気がする(^^;)――わたし、「よう実」についても、そういうのの少しくらい新しい変形パターンかな……とか思ってたわけです、最初のうちは。。。
ところが綾小路くんは、目立たぬ地味男子をやりつつ、まるで影の裏番(死語☆)であるかのようなサイコパスだった……というところ!!
堀北さんに対して、「ひとりで孤独でも平気」ってところとか、自分とも通じるところがあって少しくらいは女子として好感を持ってるかと思いきや、一番大切なのは「利害が一致している」とか、「利用価値がある」ということ!!櫛田桔梗が他の男子同様自分にも好意を匂わせてくることから、多少なり男子として心が動くところがあるのかと思いきや――彼女に関しては、もしチェスにたとえたとすれば、「この教室のクイーン候補は今、櫛田、それに平田とつきあいはじめたことで存在感を増した軽井沢恵、それと堀北もその範疇に含めていいか?」といったように、彼は常に計算している。そして、こうした駒たちに突然想定外の動きをされると自分の(AI的)予想が狂うことから、そのたびに修正を加えなければならない……たぶん、綾小路清隆の脳内アルゴリズムの基本というのはそんなところなのではないでしょうか。。。
で、ストーリーの流れを見ていると、綾小路くんは人の心の機微のようなものもよくわかっており、それぞれの生徒の立場についても理解・共感し、優しく接することが出来る人物であるように見える――にも関わらず、ほんとはただのサイコパス!!ってところが、綾小路清隆くんの最大の魅力なんじゃないかな~と今のところ思いつつアニメ見ております
それでシーズン2!!早速ネタバレ☆で恐縮ですが、
いやもう、この回超痺れました!!
その~、綾小路くんは一見、運動苦手&体力なしなしキャラを装いつつ、本当は足も速く運動能力も高いわけですけど……C組のリーダーにして狂犬、龍園翔くんにつけ狙われ、ギャル系女子・軽井沢恵を助けるため↑のようなことに。。。
正直、決着がつくのはあくまで頭脳戦なんだろうなあ……と予想していただけに、肉弾戦というか、喧嘩で綾小路くんが決着をつけるとは思ってもみませんでした龍園には、筋肉ムキムキ黒人男子アルベルトがボディガードのようにいつもそばにおり、高校生というよりはマフィアのボスかヤクザの組長にしか見えない龍園翔に逆らおうと思う奴なぞいやしねえ……的空気の中、綾小路くんはアルベルトまでも軽々とのしてしまい、龍園のこともフルボッコ☆
――多少なり殺意や憎しみのある暴力であれば、龍園にも理解が可能であったかもしれない。でも綾小路清隆は……それをただのロボットが同じ動作を繰り返す反復作業のようにしか思っていない、というよりそんなふうにしか感じられないように育てられた、ということなのだと思います。ホワイトルームという特殊な環境の中で……。
「龍園敗れたり!!」と胸がすくのと同時、彼はこのまま退学するのかなあと思いきや、「まだあいつには利用価値がある」と判断した綾小路くんは、彼を自分の使える手駒として残しておく選択をする。まあ、普通の青春ものなら、対立していたヤンキー同士が喧嘩したその後は仲良くなる系のパターンで終わろうというものですが、綾小路くんの価値基準はあくまで「使える奴か使えない奴か」ということなんじゃないでしょーか。そして、龍園くんのほうでも、「こんな俺以上にこええ奴初めてだぜ
」という意味で、綾小路清隆という男に強い興味を持つ――なんかこのあたりも視聴者的に熱いっス。きよたんにとっては「そうか?(死んだ魚のような目
)」といったところでしょうけども、龍園翔が退学しないという展開は自分的に超乙☆でした!!
んで、こっからわたし、シーズン3見はじめるところなんですけど……シーズン2で大切だったのは、軽井沢恵と綾小路くんの関係だった気がするわけです。今までひどいいじめにあってきた恵は、軽井沢どころか重井沢と改名したほうがいいくらい、重い過去を背負ってる女子。そこで、再びC組女子にいじめられそうになってたところを助け、綾小路くんは軽井沢さんを自分にとって都合のいい手駒とすることに成功(洗脳ともいう・笑)。軽井沢恵は平田くんという、クラスのまとめ役的中心人物とつきあってますが、これは本当はただの偽装。いじめられないためには平田くんのような男子とつきあい、守ってもらう一方、クラス内における発言権を増す必要があると考えての打算的行動だった。平田くんはいい奴なので、過去に軽井沢さんがひどいいじめにあっていたことも知っており、そこらへんからつきあうことに同意したといったところ。。。
ところが軽井沢さん、手駒として使われているだけ・利用されているだけと思っていつつも、いつしか綾小路くんのことが好きになっており……という、この先がどうなるのかわかりませんが、1stにおいても、綾小路くんは巨乳の性格おとなし眼鏡女子・佐倉愛里ちゃんにすっかり恋されており、その気持ちにもおそらく気づいている模様。さらに、2stでは、佐藤さんという「THE平均的普通女子」なクラスメイトから告白され(でも可愛い)、デートしてみたり……まあ、なんだかんだめっぽうモテておりますがな、我らがサイコパス主人公綾小路清隆くんは。。。
さらに、2stでわたしが一番好きだったのが実は――綾小路くんに、幸村輝彦くんや長谷部波瑠加ちゃん、三宅明人くんといった一番友達に近い存在が出来たこと!!さらに、佐倉愛里ちゃんがそこへ勇気をだして「わたしも仲間に入りたい!!(>_<)」と自己主張したこと……ここが実は一番最高でした♪
なんでかっていうと、この五人ってみんな、なんか無理してなくてローテンションというか、そこで波瑠加ちゃんが「このみんなでグループ作らない?」みたいに言うんですよね。ここらへん、無理して自分を作って実はブッ壊れてる櫛田ちゃんが混ざるのとは違って(いや、彼女の気持ちもわかるんですけど^^;)、「このメンツでいるとラクー
」って雰囲気が、ほんと最高って思う。
まあ、わたし的に「よう実」のゴール(?)は、きよたんがどの女子と最終的にくっつくのかとかそうしたことではなく……どう考えても「脱・サイコパス宣言!!」など出来ずに二十歳越えそうな綾小路くんがどうなるのかってことだったりします。確かに、「自由」になるためならば、どんな女性とでも結婚し、一般的社会人として勤める傍ら、いい父親になることも出来るでしょう、綾小路清隆なら。でも、「本当は愛しているわけでもなかったが、この結婚は自由になるため妥協した結果なのだから仕方ない」とか、「自分のDNAをコピーしたようなガキなぞゾッとするが、いい父親の振りをすることくらいは演技力をかき集めればどうにか出来るだろう」――というのではなく、「誰かを本当に心から愛するって、こういうことなのか
」とか、「まさか自分の子供というものがこんなに可愛いとは……ッ!!
」みたいに彼がなれる日は果たしてやってくるのかどうか(でもその回のタイトルはたぶん、「豹が自分の斑点を変えることなど出来はしない」(旧約聖書・エレミヤ書より)といったところのような気がしたり)。。。
まあ、そこまでの成長が描かれることはないとは思うものの、てっきりシリーズ完結してるのかと思いきや、原作のほうもまだ終わってないと知り、愕然としましたうんにゃ、いいのら!!シーズン4、シーズン5と製作されていくごと、順番に楽しみに見ていくら、オイラ!!(誰なの?笑)。
なんにしても、これである程度萌えを吐きだせてすっきりしました!!シーズン3も見終わったら、たぶん絶対感想を書くことになると思ってます。何よりこの熱くたぎる萌えを吐きだすためにっ!!
それではまた~!!
惑星シェイクスピア。-【67】-
聖ウルスラ祭がはじまって二日目――その時にはもう、ギベルネスはメレギア町からメルガレス城砦へ戻ってきていた。そもそも、彼がウィザールークと彼の自警団に守られつつ、レンスブルックと一緒に出発したのは、聖ウルスラ祭のはじまる前日のことである。
モントーヴァン邸まで馬車を回してくれるというので、午前中のまだ陽射しの暑くなる前に彼らは待ち合わせして出かけるということになった。<綿布の王>は、西門の門番たちとすっかり顔なじみらしく、ウィザールークと彼の自警団とは軽口を叩きあってそこを通過していたものである。ギベルネスの知る限り、門からの出入りには時と場合により、面倒な手続きが必要になることがあるらしい。ただ出る場合においてはそれほどでもないようだが、入門においては明らかに渋滞している。最初、ギベルネスもレンスブルックもそれを、(聖ウルスラ祭が近いからだろうな)と理解していたが、箱馬車の中でウィザールークに聞いたところによると、それだけではないらしい。
「もちろん、一年の中で聖ウルスラ祭の時期が一番ひでえってのは確かに間違いねえ。が、東門も西門も、開門時からすでに渋滞してるってことが多いな。というのも、ここメルガレス城砦はメレアガンス州一番の都市だ。ゆえに、野菜だ果物だ魚だ肉だなんだ、自分が畑や野で育てたものが、実にいい値段で売れる。オレだってそうさ。反物やら撚糸やら染料やらなんやら……ここで売れなきゃよその城壁町へ行くってことになるだろうが、なんといってもメルガレス城砦で売るのが一番いい値になるんだからな。そんな奴らが他のところからいくらでも押し寄せて来るし、見慣れねえ顔の奴が幌馬車に大量に荷を積んでるとなりゃ、門番たちのほうでも警戒するってもんよ。で、一応一通りの手続きとして色々聞いて、荷のほうもあらためにゃならんわな。後ろの奴らにしてみりゃ迷惑なことさ。というのも、朝の七時に開門するって聞いたもんで、六時や五時にやって来てみりゃ、すでに結構な行列になってるときたもんだ。で、なんだかんだで暑い中何時間も待たされて、涼しい門の下を通れるのは正午過ぎ……なんてのはザラだ。ところがこのオレ、ウィザールークさまはどうしてると思う?どんなに後ろへいようとも、ここメルガレス城砦へやって来りゃすぐに涼しい顔して門を通れるときたもんだ。それが何故だかわかるかい?」
「ようするに、賄賂ですか?」
ウィザールークならば気を悪くすることはあるまいと思い、ギベルネスはズバリそう聞いた。すると、(わかってんじゃねえか!)とばかり、ウィザールークは指を鳴らしている。
「あんたも話が早えな、ギベルネ先生。もしかして政治家向きなんじゃないのかい?それはさておき、オレがまだこのメルガレス城砦で何者でもなかった頃……やっぱり、あんな渋滞の後ろあたりにいて、汗をふきふき自分の番を待ってたことなんぞ数え切れねえ。ところがだ、ある時自分の休んでた旅籠の一階でな、酒を飲んでるさっきの門番のひとりと会ったのよ。『親父の借金で首が回らねえ』だなんだ嘆いてやがるから、まずはせめても酒を奢ってやることにしたわけだ。そのついでに、この世の厳しさを嘆く奴さんの身の上話や打ち明け話なんてのを実に共感的に聞いてやった……もちろん、美味しい食事と一緒にな。こいつはオレの話を仲間内に広めてくださったらしく、以降、オレの姿を見るなり一緒に酒を飲んだり食事をしたがったりする連中が急増したってわけだ。おりゃあな、先生。そういう時、投資と思って金に糸目はつけねえんだ。で、そのあとはもう話の通りのほうがスルーリスルーリ、スルリのリってもんだよ。オレがどんなに行列の後ろにいようとも、向こうでこのチビの小人を見つけて『どうぞどうぞ、前のほうへいらっしゃってくださいましな、旦那』というわけだ。いやはや、そういう時の他の一般庶民らの顔ときたら!まったく見物だぜ。この片目のチビは、一体どういうわけでこんな大物のように扱われてるのかと、実に不思議そうな顔で恨めしそうにこちらを見やる連中までいるってわけだ。胸がすくったらありゃしない!」
得意そうに「えへん!」とウィザールークは胸を張ってみせることさえした。彼らは箱馬車に向かいあって座っていたが、片側にギベルネスとレンスブルックが並んでおり、その向かいの座席にウィザールークがふんぞり返っているといった形である。
クッションのよく利いた深紅のベルベットの座席、象嵌装飾のある、磨き上げられたマホガニー材……彼の雇っている用心棒は六名もいて、それぞれ荷馬車の御者の席か荷下ろしをした後ろの幌のかかった荷台で揺られているかのいずれかであった。聞いた話によると、彼らは普段は綿花畑にいるか、蜘蛛の糸取りをしているかのどちらかであるという。
「まあ、間違いなく私は政治家向きではありませんが」と、ギベルネスは笑って言った。確かに、賄賂というのは良くないことではあったろう。だが、他の日々行列に並ぶ庶民には申し訳ないが、彼はさほど重い罪をウィザールークに感じなかった。「そうしたある種の処世術というのは大切なことでしょうね。生まれつき貴族に生まれていればしなくていい苦労が庶民にはあるわけですから、実際のところ『うまくやる』というのは世の中を渡っていく上で知恵を絞って行うべきこととは思います」
「レンスブルック、おまえの先生は話がわかってらっしゃるなあ」と、ウィザールークは腕を組み、やたらうんうん頷いている。「そうともさ。オレは今まで一度も、法を犯すようなことまではしたことがねえ。そのことだけは誓ってそうだと言える。それに、酒を奢って意気投合した奴の親父の借金をつっとばか都合してやったからとて、それのなんの悪いことがある?オレはメルガレス城砦へやって来るたび時間の節約が出来、あいつらはうまい酒と食事にありつけて、翌日もまた仕事を頑張ろうと思うという、ただそれだけの話じゃねえか」
「…………………」
レンスブルックは黙っていた。ギベルネスも気づいていたことだが、彼はウィザールークと一緒にいると、奇妙なところで沈黙を守ることがよくある。というのも、レンスブルックにしてみれば、この<兄弟(きょうでえ)>は、功利主義と欲望の塊なのであった。そして、そのことを彼自身責めようなどとは少しも思わない。だが、自分も彼と同じように「どうにかして成功してみたいもんだぎゃ」と思ってきただけに――自分もまたウィザールークのように何かの商売が成功していた場合、まったく同じ欲の塊の守銭奴になっていたろうことを思うと……彼は鏡の中にもうひとりの自分を見る思いがして、なんともゾッとしてしまうのだった。
このあともウィザールークの自慢話は続き、自分がどれだけ広い綿花畑を所有しているか、何人の従業員を雇っているか、蜘蛛を育てて一本の糸を取るのがどれだけ貴重で大変か……といった話をする間、レンスブルックのほうでも「それはすごいぎゃ」とか、「へええ。蜘蛛の飼育業ってのも苦労の連続だぎゃ」と、感心して相槌を打っていたものの、ギベルネスはその間も、この小さな友の気持ちがわかっていた。ウィザールークのようになれる自分――ようするに、金や食べ物や着る物、衣食住のことで一切悩まなくていい生活――になれたらどんなに良いかと切望していたはずなのに、彼が理想の姿とは相当かけ離れて見えることに戸惑っているのだろうと。
初めて来る場所のはずなのに、ギベルネスは時折、箱馬車の窓から見える景色に、何か強い郷愁(ノスタルジー)を覚える自分に驚いていた。お粗末な、道路とも呼べないような埃っぽい砂色の田舎道、そしてその両側に広がるまばらな潅木の生える荒地……だが、そんな中にも時々、緑の密集地帯や林や森といっていい場所を駆け抜けることがあり、そうした場所には決まってと言っていいほど必ず、畑と家屋が仲良く並んでいるのである。
そしてそうした姿というのは、ギベルネスが故郷の星ロッシーニにて、幼き頃、祖父母の住む田舎町で見た景色を連想させたことから――それが、彼の心に胸をしめつけるような懐かしさを覚えさせる原因だったらしい。ギベルネスの祖父母ともに、裕福でありつつ老後は田舎に引っ込み、趣味で農業をしていたが、隣家との距離が同じように相当離れていたものだった。
また、ギベルネスもレンスブルックも、ウィザールークが何故「そういうことなら一度うちへ来いや」と気安く招いてくれたのか、その理由についてもよくわかっていた。というのも、正午になる前には彼ご自慢の広い綿花畑に到着していたからであり、そこでは男女入り混じった何十人もの従業員たちが腰を曲げて働いているところであった。「兄弟、おめえも見たら広くてびっくりするぜ」とウィザールークが言っていたとおり、綿花畑のほうは軽く百エーカーはあるのでないかというほど広大だったのである。
その後、貴族の屋敷にも見劣りしないウィザールークの屋敷のほうで昼食をご馳走になると――こちらも工場のように広い蜘蛛の飼育場のほうへギベルネスとレンスブルックは案内してもらっていた。
「蜘蛛っつうのはな、先生。木の匂いってもんを好むものなのよ」
飼育小屋のほうは細かい区画に分かれ、そのすべてが木造であった。ギベルネスの感覚としては、そこはどことなくじめっとしていて薄暗く、人間的感覚として決して快適と呼べる室内環境ではなかったろう。しかも、一体何百匹、あるいは何千匹蜘蛛っ子がいるのだろうか……と背筋におぞましさを感じるという意味でも、若干体感温度が下がってくるように感じられる場所でもあった。
しかも、当然のことではあるが、まるで博物館でのように透明なアクリルの仕切り窓が都合良く介在するというわけでもない。その上、しょっちゅう足許あたりを黒蜘蛛や黄色い縞が入っているのや、銀灰色の大小のそれたちが、音もなくサササササと地面を移動してゆくのである。
ギベルネスは顔に出すまいと努力していたが、それでもそんな光景に出くわすたび、ギクッとしたりドキッとしたり、ゾワッとしたりする本能まで隠しきることは、流石に無理というものだった。
「ハハハッ!!ギベルネ先生、驚いていらっしゃるな。ですがまあ、こんなのは序の口も序の口でっせ。蜘蛛いうもんはな、先生……」
そう言って、ウィザールークは地面の一匹の足の長い蜘蛛を手のひらに乗せていた。しかも、さも愛しそうに紺色の胴のあたりを人差し指で撫で、頬ずりまでしている。
「こんな手のひらサイズくらいのもんからは、売り物になるようないい糸は取れないもんでしてな。最低でも二年か三年は育てて大きくする必要があるのですわ。そうした人間にとって重宝な糸を出す蜘蛛にまで育てるには、心地好いストレスのない環境と、栄養たっぷりなご馳走というのが必要なわけでして……そこらの森にいって探しても、そんな蜘蛛は滅多におりません。なんでかっていうと、人間のほうで保護してある程度そのように仕向ける必要があるからなのですよ。ま、入口付近にいる蜘蛛ちゃんたちは、うっかり踏んで何匹か死んだかてええようなもんですわな。ですが、ここから先の区域にいるのは……もしギベルネス先生が『気色悪い!!』と狂ったように叫び、こん棒かなんかで撲殺したら、オレのほうではまあ『うえ~ん。そんなことしたらボクちゃん泣いちゃう!!』といったところだったでしょうな。まあ、大事な商売道具をダメにされたという意味で」
ギベルネスは明らかに蜘蛛のサイズが大きくなったことに対し、ほとんど条件反射的に「おえっ!!」と感じたのだったが、どうにか顔の表情に嫌悪感まで滲ませまいと必死だった。
そこには二人の男性の従業員がいて、木製の手桶を片手に持ち、紗のような白いレースの巣の糸に何かを引っ掛けているところであった。大きなガガンボ、蝶やトンボなどなど……(確かにこれは、蜘蛛にとっては最高の、栄養満点のご馳走だろうな)とギベルネスも思った。だが、蜘蛛の食事場面というのは見ていてあまり心地好いものでなかったのは確かである。
「先生、大丈夫だぎゃ?なんだか顔色が悪いぎゃよ」
「いえ、これも自然の摂理の一場面ですからね。屠殺の場面と一緒で、目を背けてはいけないとは思います。ですが……」
レンスブルックは、砂蜘蛛に片目を食い破られた身とはいえ、蜘蛛自体のことを憎んだことはないし、小さな頃には部屋のどこかで蜘蛛を見かけるなぞということはあまりにありふれたことだった。ゆえに、彼はウィザールークほどの強い愛着がないというだけで、特別嫌悪感までは湧いてこない。彼はまた、ゴキブリといった害虫を見かけた際にも、素手で握り潰すことの出来る精神の持ち主でもあった。
けれど、彼の尊敬するギベルネ先生のようにお上品な方には、こうした場面はショッキングで耐えられないのではないか……といったように想像し、心配したわけである。
「ハハハッ!!ギベルネ先生、レンスブルックの言うとおり、無理はいけねえよ。この奥の部屋にはオレにとっちゃとっときの金の卵である大きな蜘蛛っ子がいるでな。フヒヒッ。こんくらいの蜘蛛っ子でそんなにビビッてなさるなら、見んほうがええ気がするだども、そこんところどうでっしゃろな、先生?」
「いえ、是非とも見せていただきましょう」
ここまで来たのだから、最後まで見てやろうとの思いで、ギベルネスはレンスブルックの後についていった。若い男と中年の従業員はそれぞれ(よしときゃいいのに)という顔をして、肩を竦めている。だが、その大きな蜘蛛と蜘蛛の巣を――気味が悪いと本能的に感じるのと同時に、ギベルネスは「実に見事で美しい」とも感じていたのである。
縦に五十センチ、横幅が二十センチばかりもあるような大蜘蛛が、その部屋には何匹もいた。それぞれ色も種類も違うように見受けられたが、あるものは宝石のサファイアのように青く、別のものはマリーゴールドのようなオレンジ、別のものは黄色と黒のまだらであったりと……どの蜘蛛も体の大きさに比例するように大きな巣を張っており、あたり一面、白いレースが重なってモコモコ膨らんで見えるほどだった。
「ええと、あの……あちこちにあるモコモコした白いあれというのは……」
「ああ。ありゃ、この蜘蛛ちゃんたちの産んだ卵でさあね。そのうち、ここら一面蜘蛛っ子の海になるでしょうが、生まれてくる子ってのは不思議なことに、他のこの子らの同じ種が産むのとまったく同じちっこいサイズのクモちゃんなんですな。大きく育てた蜘蛛から生まれるのは、そこそこまあまあ大きいクモ……ということであれば、オレたちも苦労せんのですがな。そして、ここまで苦労して育てた蜘蛛ちゃんたちも、いい糸を紡がんようになったら処分せにゃなりません。人間が人工的に育てた蜘蛛はそのまま自然界に逃がすというわけにもいきませんもんでな」
「ですが、ここまで苦労して大きく育てたということは……」
大きな蜘蛛たちはみな、人間の目玉に相当するような、二つの主眼と六つの複眼を持っていた。自分の故郷の星の常識が、ここシェイクスピアでも通用するとはギベルネスも思っていない。だが、彼の知る限り、惑星ロッシーニに住む蜘蛛という存在は、眼のいいものもいるが、大抵の蜘蛛は視力が悪く、あまりものがよく見えていないということだった。だが、この部屋の木製の仕切り部屋で巣を張っている蜘蛛はどれも――間違いなくその大きな主眼によってこちらをガン見しているようにしか感じられなかった。むしろ、じっとそちらに視線を集中させていると、頭の中に(アンタ、ダレ?)、(エサ、マダ?)といった声さえ聞こえてくる気がして、ギベルネスは自分の気のせいとわかっていながら……それでもやはり、何やら妙に落ち着かなかったものである。
「そりゃそうですがな。しかも、こんくらい大きいことになりますとな、胴のあたりを潰して殺すとなったら、家畜の肉とはまた違った質感の、なんともいえん感触がありますでな……うちの裏には、そんな蜘蛛ちゃんたちを供養する墓があるくらいなんでっせ、先生。オレにしてみたら、他の全然知らない人間がどっかで死んだなんぞと聞くより、この蜘蛛ちゃんたちの死のほうがよっぽど悲しいくらいでしてな」
「それは確かに、そうでしょうね……」
ギベルネスはもう少し我慢してその場にいようと思ったが、やはりそろそろ限界だった。気のせいなのはわかっているのだが、ここにいる何十匹もの大きな蜘蛛たちが一斉にこちらを見、全神経の注意を傾けているように感じられて仕方がない。
「すみませんでしたな、ギベルネ先生」
蜘蛛の飼育小屋を出て、屋敷のほうへ小道を辿って戻る途中、ウィザールークがそう言った。珍しく彼の片方しかない瞳とその上の眉が、申し訳なさそうに翳って見える。
「が、まあ、あとのことはどうということもなく、家の中で済むことばかりですからな。あんなに大きく蜘蛛を何匹となく育てたところで、その糸をそのまま使えるというわけではないのですよ。草や花などから取った染料に蜘蛛ちゃんたちの紡いだ糸を通してやると……あ~ら不思議!!とばかり、しっかりした何本もの糸に変わってゆくのです。それが何故かというのは、自然の不思議としか言いようがありませんわな。まあ、そんなこんなで最上の布を織るのにはやたらと時間と手間がかかります。が、先生ご所望のガーゼということになりますとな、最上の布を作るのに出る余剰分の糸を集めてきて簡単に縦糸と横糸を組み合わせて雑に編めばいいというわけでして、『こんなんでほんまに金もろてええんかな?』という代物なわけですよ」
「では……」
「ええ。オレにもし慈善心いうものがもっとあったら、ただで引き受けてもいいくらいでしたでしょうが、そんなもんでも一応人件費は食うというわけでして、相当お安くしとこうとは思いますが、それというのもこれというのも、メルガレス城の宮廷出入りの話があるためだということ、どうかお忘れなきようよろしゅう頼んます」
ギベルネスはこの時、心からほっとした。てっきり、(一本の糸を紡ぐにもこんだけ大変なんでっせ。ゆえに、それなりのものはしっかりいただかにゃ……)と、親指と人差し指で丸を描かれるとばかり思っていたのである。これからランスロットやギネビアたちの馬上試合トーナメントがどうなるかは彼にもわからない。だが、ハムレット王子が最終的にメレアガンス伯爵と無事同盟を結ぶような関係になったとすれば、ウィザールークのメルガレス城における宮廷出入りなど、いくらでも可能なことになるのではなかろうか。
ギベルネスとレンスブルックは、この日の午後とその翌日にかけて、ウィザールーク所有の草花やハーブを育てている広い庭園、さらには彼が飼育する蜂の巣まで見せてもらっていた。ウィザールークは優れた養蜂家でもあるらしく、食事の際には黄金色の蜂蜜がたっぷり付いてきたものである。
「ウィザールークの奴は、まったくすごい奴ぎゃ」
夜、寝室でふたりきりになると、レンスブルックは感心したように興奮して言った。屋敷のほうもまったく立派で、客用寝室の調度品や家具類、ベッドに至るまで、異星人であるギベルネスの感覚を持ってしても、豪華なホテルのそれとひけを取らぬほどのものだったと言える。
「最初は、しょうもない欲望の塊の守銭奴と思ったぎゃ。んだども、こんだけ苦労してりゃあ、オラと同じあの小さい体で『えっへん!』とふんぞり返るだけのことはあるぎゃ。ほいで、オラにも顔と境遇の似たよしみでいつでも遊びに来いって言ってたぎゃ。いやはや、ハムレットさまの旅のほうが無事終わったということにでもなった暁には……オラも、こういう自然豊かなとこで、のんびり暮らすのもいいかと思うくらいだぎゃ」
「そうですね。私も、あの素晴らしい天国のような庭園を見たりしているうちに、ふとそんなふうに思ったくらいですよ。でも、レンスブルックにここへ来てもらいたいということのうちには……きっと、本当の意味で心の許せる友達が欲しいということでもあるのではないですか?」
「先生。先生の言いたいことは、オラにもよくわかるぎゃ……」
簡単にいうと、ウィザールークは屋敷に何人もいる召使い含め、従業員のことは誰も心から信頼していないのである。彼らのことを優秀な働き手として尊重していたり、家族のことを気遣ってやったりもしているが、ウィザールークはおそらく、根本のところでわかっているのだろう。『自分など、資産や土地がなければただの片目しかないチビ。そんな奴を一体世の中の誰がまともに相手などするだろうか』ということを。
また一方で、ギベルネスとレンスブルックがたったの二日滞在した程度では、わからぬことが同時に存在していたのも事実である。ウィザールークが綿花畑の主となる前、ここメレギアの町は横暴な荘園主に支配されており、この男は奴隷のように町の男女を働かせ、さらには自分の好んだ若い娘を何人も手籠めにしていたため……最終的に恨みのあった何十人もの町人からリンチにあい殺されたのである。ウィザールークはその少し前にこの男から綿花畑の土地を購入しており(彼はその放縦な生活から借金がかさんでいた)、無事法の執行の元、比較的安く広大な土地が手に入ったのは良かったとはいえ――何かあれば荘園主の凄惨な死の二の舞になるのではないかと、ウィザールークが常に怯えていたというのは事実である。だが、実際には綿花畑で働く従業員たちは、先代の荘園主よりウィザールークが百倍もマシな好人物であるとして、彼に深い尊敬の念すら持っていたといって良かっただろう。ましてや、働いた分の給金について出し渋ったことのないこの雇用主を、「片目のない小男」として影で嘲笑う者がいたとすれば……その者は先代の荘園主の話を引き合いに出され、むしろたしなめられたほどであったに違いない。
「そういう意味でオラは、顔と背格好のよく似たあいつが気の毒でもあるぎゃ。とはいえ、あいつはやっぱり凄い奴ぎゃ。オラもやっぱし、昔はあいつと同じように考えていたぎゃ。こんな片目しかないチビに世間の荒波というやつは決して優しくないぎゃ……そこんところの風当たりをマイルドにしたかったら、少しでも多く金を持って羽振りが良くなるのが一番だぎゃ。ウィザールークもここまで資産を増やすには、きっと相当苦労したぎゃ。オラも、最初はここまでの守銭奴になるのはどうぎゃと思うたども、今はあいつを見習ってもっと努力すべきとも思うぎゃ」
「確かに、ウィザールークは素晴らしい働き者ですが」と、ギベルネスはすべすべした枕カバーを心地好く撫でつつ言った。これも、例の蜘蛛の糸が原料になっているらしい。「レンスブルック、あなたにはあなたにしか成し得ない、何か他のことがあるんじゃないかという気がしますよ。なんにしても、今回のことはレンスブルックのお陰で本当に助かりました。彼も、あなたが自分と似ていたから私にも気を許してくれたんじゃないかと思います。じゃなかったら、きっともっと金額を吹っかけられてたんじゃないでしょうか」
「はははっ!!こんなオラでも先生のお役に立てて良かったぎゃ。あとは明日、あいつがメルガレス城砦へ戻るのに合わせて一緒に帰れば……ランスロットたちの例の計画と、馬上試合トーナメントの結果がどうなるか、その行く末をしっかりばっちり見届けられるぎゃ」
「そうですね」
このあとふたりは灯火を消して眠ったが、ギベルネスは眠りに落ちるまでの間、ウィザールークの屋敷に来れたことを心から喜んでいた。無論、ああした巨大蜘蛛の姿など見なくても、結果として彼の手許にガーゼや包帯がもたらささればそれで良い……という話ではあったろう。だが、ウィザールークがこのような素晴らしい屋敷に招いてくれたのみならず、金をもっと吹っかけようとすればそう出来たにも関わらず、すべて正直に話し、安くしてくれたこと――そのことが何よりも嬉しかった。また、このような事業の成功があり、貴族のような屋敷に住んでいながら、彼が孤独の影を抱えているらしきこともわかり……ギベルネスはこう思わずにいられなかったものである。
(もし私が本当に<神の人>であったなら、ウィザールークのために、心から熱く祈ることが出来ただろうにな……)
夜眠る前、すべすべした枕カバーの感触を頬に感じつつ、ギベルネスは最後にはそんなことまで考えてしまい、ほんの形ばかりではあったが、彼やレンスブルックのため、さらにはこれから先のハムレット王子や自分の行く末についてのことまでもを――神に祈りつつ、ギベルネスは静かに眠りに落ちていったのである。
とはいえ、ギベルネスが祈っていた神というのは、ここ惑星シェイクスピアで崇められている神でもなければ、彼の母星で信仰されていた神でもなく……彼個人が独自に考える、この全宇宙の運行に関わるような、どこか総合的・包括的な神、ということではあったのだが。
なんにしてもこの日、ギベルネスは頭の隅でちらと(あの美しくも恐ろしい巨大蜘蛛たちに襲われる夢でも見るのではあるまいか)と思ったりもしたのだが――彼は疲れていたせいもあるのだろう。翌朝、目が覚めてのち、夢の内容についてはあまりよく覚えていなかった。ただ、前日に見た、色々なものの情報が入り混じったような夢を見たようにはぼんやり記憶していた。つまり、どこか天国的な庭園にて、美しい草花の中を宝石のような蝶が飛んでいるといったような……そしてその蝶はどこか、あの蜘蛛たちが小さくなって羽を持ち、そよそよと風に吹かれ、一緒に歌うように飛んでいるように見えたものだった。
だが、ギベルネスは朝起きてすぐくらいの時にはこの夢を覚えていたものの――朝食時、ウィザールークに「よく眠れましたかね、先生?」と聞かれた時には、「ええ。とてもぐっすり」と答えると同時、(何かすごくいい夢を見ていた気がするものの、どんな夢だっけ?)と忘れてしまっていたのだった。
>>続く。