桐
朝はやく
薄もやの中を歩く
ちいさなトランペットのような
薄紫の花が落ちている
そっと手に持つと
淡いかすかな香りがする
周りにはどこにも花は咲いていない
ふと顔を上げると
空に接する梢に紫の影がある
桐の花だ
灯台のように空から紫の光を放ち
花は舞い降りてくる
一つまたひとつ
風もないのに
薄紫に舞い降りてくる . . . 本文を読む
妖精のあなた
花びらのさざ波を
そつとすくって
あなたの髪をぬらそう
春の湖面に夢まどろみの泡が散る
白樺のささやきを
そつとすくって
あなたの唇をぬらそう
軽やかに薫る若葉の踊り
若草の流れる輝きを
そっとすくって
あなたのみ手をぬらそう
渦巻く太陽の誇り . . . 本文を読む
僕は旅人
子供の頃
おじいさん おばあさん
父 母 姉 兄
みんな 永遠にいると思っていた
一人いなくなり また 一人
いつのまにか 自分より
年上の人はいなくなっている
次は 自分の番か
人は 順々に 確実に
いなくなるものだなぁ
でも 代わりに
新しい人がいるよなぁ
新しい命があるよなぁ
新しい出会いがあるよなぁ
恋の で あ い . . . 本文を読む
僕は忘れます
僕はあなたのことを
キッパリ 決然と
忘れます
バソコンのクリック
日本海の蜃気楼
冬の朝陽が氷を溶かすように
僕はあなたのことを 忘れたい
あなたを想うと
辛いのです 耐えられないのです
胸が高鳴ります
パンドラの壷をうっかり開けて
飛び出したのは 恋
ヘラクレスの恋の苦行 恋の奴隷
やっぱり あなたを忘れられない
好きです
スキデス
すきなのです . . . 本文を読む
愛の花かご
ルンルンルン ランランラン
愛してるのよ
恋してるのよ
好きなのよ
甘い言葉を一杯つめて
今日も あなたに届けます
ルンルンルン ランランラン
可愛いね
綺麗だね
素敵だね
はずむ言葉を一杯つめて
今日も あなたに届けます . . . 本文を読む
リンゴとミカン
「木枯らしがビュービュー吹いているのに
ホッペを赤くして、お前元気だなぁ」
ミカンが言う
「コタツの上で丸くなり、テレビばかり見ていたら
駄目じゃないか」
リンゴが言う
僕は、コタツに入り、テレビを見ながら
リンゴとミカンを食べている . . . 本文を読む