『蕎麦がき研究入門』

知らない・映えない・バズらない。なのに昔からある食べ物“蕎麦がき”に今、光を当てます。普通に食卓に上がるその日まで。

蕎麦がきアレンジレシピ~ミルク蕎麦がきぜんざい~

2020-06-11 19:32:00 | アレンジ蕎麦がきレシピ

どうも。蕎麦がきスイートビーンズ、片手袋研究家の石井です。この写真は、「人力富士見坂」を作りだした時の写真です。日暮里に都内最後の「本当に富士山が見える富士見坂」があるんですが、池袋辺りに高層マンションが建ったことにより完全な形では富士山が見えなくなってしまったんです。近所に住む僕は「だったら俺が新たな富士見坂作ってみせよう!」と鼻息荒く決意致しまして、妻を早朝に叩き起こしてこの写真を撮ったわけです。

☆和菓子作りは楽しい
この写真からも分かる通り、私が住んでる東京の谷根千地域は、本郷台と上野台に挟まれている為坂道が多く、その角度も急です。「そういう“坂町”みたいな町の特色を和菓子で表現できないかな?」。数年前、唐突にそんな事を思いついて、幾つも作成した時がありました。

たとえばこれは坂と坂に挟まれた根津地域を表現した、「根津」というお菓子。「水無月」という和菓子をヒントに、ドライフルーツを入れる事で坂道の石垣の感じを出しました。
これは「三毛」。谷中は猫町と言われるくらい猫が多いのですが、ゴマ、かぼちゃ、プレーン三種類のチーズケーキで三毛猫を表現したのです。

最終的に、谷根千を表す7種類の和菓子が出来上がりました。あれこれ考えながら、色んな和菓子を作るのは本当に楽しかったですね~。なんとなく、この『蕎麦がき研究入門』を書いてる時もそういう楽しさがあります。

☆一番楽しいのはあんこ作り
とはいえ、和菓子作りの中で私が一番好きなのは、あんこを炊いてる時なんです。長時間コトコトと炊いて、時折砂糖を加えたりアクを取ったり。やる事は基本的にこれだけ、でも糖分が多いので目を離すと焦げてしまう。だからボーっと考え事とかをしながら徐々に水分が減っていく鍋をただただ見つめる。この虚無の時間が良いんですよ。

このブログでは私が今まで作った事もないような蕎麦がきレシピを考案して、試作してみてます。でも今回作る事にした「蕎麦がきぜんざい」は過去に何度も作ってるし、絶対に美味しいのはもう分ってます。どちらかというと、最近やってなかったあの「虚無の時間」を味わいたい、つまり久しぶりにあんこが作りたい、というのがメインの動機となってレシピを選択しました。

ミルク蕎麦がきぜんざい(1人前)
(材料)
☆ミルク蕎麦がき
蕎麦粉・・・50g
牛乳・・・100ml


☆あんこ
小豆・・・500g
砂糖・・・500g
水・・・2ℓ
水あめ・・・少量
塩・・・少量


(あんこの作り方)
①小豆を水に浸して、浮いてきた割れ豆や混入物を取り除く

※傷んでる豆なんかは浮いてくるので取り除きましょう

②1回か2回、茹でこぼす
※沸騰したらお湯を捨て…を2回くらい。新豆なら1回でも大丈夫です。

③豆の約4倍の量の水で、箸で簡単に割れるくらいまで弱火で炊いていく

※あんまり豆が踊ってしまわないくらいの火加減でこの写真はちょっと火が強いですね。

ここが時間掛かるんですよね。焦って強火にすると豆が割れて綺麗に出来ないので、忍耐力が必要です。火を使ってるので離れるわけにもいかず、数時間椅子に座ってボーッと鍋を見つめます。そうすると蘇ってくるんですよ、忘れてたような過去の出来事が。

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うちの両親は僕が小学生の頃に離婚してるんですが、最後の数年間は父親は家にいなくて。僕は単身赴任だと言い聞かされてたんですが、ある日、ひょっこり父親が家に帰ってきたんです。両親の事情を知らない僕は大喜びしました。

「俺の行きつけの店があるから皆で行こう」

そういって父親は家族を車に乗り込ませ、家を出ました。ところが、その行きつけの店がどこにあるのか、何の店なのか全然言わないんですよ。ただただ車は高速を走り続け、出発する頃に聞き始めたナイター中継もいつの間にか終盤に差し掛かっています。

私は車酔いが激しいので限界を感じ始めてた頃、ようやく車は高速を降りました。あたりは真っ暗になっていますが、車は行き先があるような走り方ではなくフラフラと右に曲がり左に曲がり…。そうこうするうちに、車は小さな漁港の中に入っていきました。今考えると内房か外房のどこかだったと思います。

「Uターンをする」

父親はそう言って車をバックさせるんですが、何故か私は恐怖心を抱いたんです。(海の中に落ちる!)。父親は暗闇の中にも関わらずあまり後方を確認しないで、すごい速さでバックするんです。(ああ、本当に危ない!)、思わず声が出そうになった瞬間、堤防のギリギリで車は止まり、漁港から出て先ほどの道を逆走し始めました。

結局、道沿いにある魚介が豊富な居酒屋みたいなところに入って刺身なんかを食べました。どうでも良いですけど、その時に私は人生で初めて鯵のたたきを食べて、「こんな美味いもんがあるのか!」と驚きました。でも、どう考えても父親は馴染みの客ではなさそうだったんですよね。確か、父親に会ったのはその日が最後だったと思います。

後年、母親にこの出来事を覚えているか聞いてみたのですが、母親は青い顔をして、

「実は私もあの時、あの漁港は怖かった。車を落とそうとしてるんじゃないか?って」

と告白しました。まあ、もはや真相はわからないんですが、何かボタンが一つ掛け違えていれば、私は今頃この世で呑気にブログなんて書いていなかったかもしれませんね。

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④豆が柔らかくなったら砂糖を加えて(1回目)アクを丁寧に取りながら煮る

※こんな感じで箸で潰せるくらいが目安です

※砂糖はいきなり全部入れるのではなく、三回に分けて入れます。一気に入れると浸透圧の関係で豆が潰れます

※丁寧にアクを取りながらに続けます。ドブみたいな色で不安になりますが、焦らないで下さい

⑤水気がなくなってきたら、2回目、3回目の砂糖を投入する。

※豆が顔を出し始めるくらい水分が飛んできたら、2回目の砂糖を投入です。勿論、アクはその都度掬ってください
※これは3回目。1回目に砂糖を入れた時より、だいぶあんこっぽくなってきました

⑥水気がほぼなくなるまで煮詰める。焦げやすいのでここからは常にヘラでかき回す。
3回目の砂糖を入れる頃には、水気もだいぶ飛んでると思います。そうすると糖分が多いので鍋底が非常に焦げやすくなります。常にかき回しながらさらに煮詰めていきます。

※鍋底からしっかりかき回しましょう

「このくらいからは気を付けて!」というのが分かりやすいように、映像で撮ってみました。



⑦水気が飛んだら水あめと塩を少々を加え完成!

※水あめはあれば、で良いんですけど、入れると綺麗な照りが出ます。水飴を入れると少しだけ緩くなるので、再び煮詰めてください

※塩を少し加えると、甘みが引き締まります

※完成!完全に水気を飛ばすと、冷めた時に硬いあんこになってしまうので、これくらいで大丈夫です。

結局、夜の0時に始めて完成したのは3時くらいでしたね。ボーッと過去の思い出に浸ったり、これまた皮剥きに時間が掛かるらっきょうを仕込んだりしてました。


でもね、あんこは手間が掛かるぶん、自分で作ると本当に驚くくらい美味しいものができますよ。(勿論、前回のインタビューでも言った通り、市販のあんこを買ってきても何の問題もありません!)

※小豆500gで中型のバット一杯分出来ました。

※正直、これだけ食べてても十分美味しいです。

※こんなに大量のあんこ、すぐには消費できないと思います。小分けにしてラップに包み冷凍保存すると便利ですよ

⑧牛乳で蕎麦粉を溶いて蕎麦がきを作りましょう

パンケーキ風蕎麦がきを作った時に試した牛乳で溶く手法が美味しかったので、甘いものの時はこのやり方でいきます。作り方はいつも通り

※スプーンで一口大に掬って皿に盛りましょう

⑨あんこを乗せて完成!

※お好みでお抹茶を立てても良いですね。あんこの上に乗っているのは、蕎麦の実を揚げたものです。カリカリとした食感が変化をつけてくれます

まあ、今回は食べるまでもなく美味しいのは分かってましたし、実際最高の甘味だと思います。今回は粒あんでしたが、こしあんが好きな人もいるかと思います。こしあんはさらに手間が掛かるので、先ほども書いたように市販のものを買ってくるのでも全然OKです。

私個人はあんこを炊きながらボーッとしている時間が好きなので、作るのが全然苦痛ではないんですよね。豚の角煮をコトコト煮込んだりするのが好きな人は、是非あんこにも挑戦してみてください。

今回のレシピから思い浮かべた片手袋はこちら!

浜辺に流れ着いた片手袋です。浜辺って片手袋の多発地帯なんですが、波や水平線に沈んでいく太陽とともに、ボーッと何時間でも見てられるんですよね。それがあんこを炊いてる時の感じに似てます。

次回も新たな蕎麦がきレシピに取り組んでみたいと思います!生きてて良かった!


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