『蕎麦がき研究入門』

知らない・映えない・バズらない。なのに昔からある食べ物“蕎麦がき”に今、光を当てます。普通に食卓に上がるその日まで。

蕎麦がきアレンジレシピ~みたらし蕎麦がき~

2020-06-27 19:42:00 | アレンジ蕎麦がきレシピ
どうも。蕎麦がきスウィートソルティ、片手袋研究家の石井です。この写真は、私の保育園の卒業アルバムに貼られていた写真です。ホットケーキか何かを楽しそうに作ってるのは良いのですが、私の三角巾の巻き方、どうなってるんでしょうか?肝心なところで何かが抜けてる。この頃から全く変わっていないようです。

☆甘じょっぱい思い出
皆さんは「甘じょっぱい思い出」ってありますか?「え?“甘酸っぱい”じゃないの?」。違います。“甘じょっぱい”です。

“甘酸っぱい”なら思い出すと胸がキュンとなる、と同時に、なんか後悔や悔いも残る思い出。そんな感じですよね?“甘じょっぱい”は違います。プロレスなどでは盛り上がりに欠ける残念な試合を「しょっぱい」と表現しますよね?ですから、甘い気持ちになると同時に物凄く残念な気分にもなる。そんな思い出の事です。

私、女性と初めて二人きりでお出かけしたのはいつかな?なんて考えた時、長年記憶から抹消してた出来事がありまして。本当はそれが女性との初デートだったんですが、数年前にようやく思い出しました。

中学二年生の頃だったんですが、ある日、部活の先輩女性から家に電話がありまして(携帯電話なんてない頃です)。

「Aさんがあんたに話したいことがあるって。今代わるね」

Aさんも部活の先輩でしたが、ちゃんと話した事は殆どなくて。呆気に取られてる私に、Aさんはこう告げました。

「あの、今度盆踊り一緒に行かない?」

なんと、突然のデートのお誘い。中学生になっても放課後、テレビ東京の『サラダ十勇士トマトマン』を楽しみに見てたような私です。Aさんのことが好きかどうかなんてことより、全く想像もしてなかった展開に頭がパニックを起こしてしまいました。

「は、はい」

そうお返事して受話器を切ってから初めて、私は事の重大さに気付きました。もう、速攻でジーンズメイトに駆け込み、デートに着てっても恥ずかしくない洋服を見繕いましたよ。ただ、記憶の範囲では何故かチップとデールみたいなキャラの可愛いTシャツを買ってしまったと思うんですが…。

で、当日。使い方もよく分からない水飴みたいなジェルを髪になでつけ、家を出ようとしたんですが、何かが足りない。言っても夜に外出する事自体がまだ珍しい年代です。もうちょっとこう、「悪さ」が欲しい。私はそっと兄の部屋に忍び込みました。そこに、見つけたんです。ネックレスを。そーっとそれをくすねて、待ち合わせ場所に向かいました。

遠くにAさんが待っているのが見えます。近付く私に笑顔を向けるAさん。視線は私の胸元に移動して、こう言いました。

「変わったのつけてるね」
私、兄が修学旅行で買ってきた「汽笛ぶえ」という木製の笛を首からぶら下げてたんですよね。Aさん、多分引いてたと思うんですが、褒められたと勘違いした私は、

「え?まあ。別に」

とクールに返事。その後、盆踊り会場に流れる祭囃子にあわせて、さり気に「ピッピッ」と吹いたりして。盆踊り終了後、Aさんが私を何かに誘う事は一度もありませんでした。

あ、甘じょっぺぇ…そりゃあ、記憶から消してたわけだよ。

☆甘じょっぱい蕎麦がきの可能性
何度も触れますが、リモート蕎麦がきをやった時に意外と高評価だったのが「砂糖醤油」でした。同時に、「お餅に合うものなら、蕎麦がきにも合いそう」という意見も。

普通の蕎麦がきに砂糖醤油を付けるだけでも美味しかったんですが、もう少し発展させたい。そこで思い浮かんだのが、「みたらし団子」です。あの甘じょっぱいトロッとしたタレは蕎麦がきにも合うんじゃないだろうか?

みたらし蕎麦がき(2本)
(材料)
☆基本の蕎麦がき
蕎麦粉・・・50g
水・・・・100ml
砂糖・・・・少々

☆みたらしタレ
醤油・・・・大さじ1
砂糖・・・・大さじ3
水・・・・・大さじ4
片栗粉・・小さじ1.5
①みたらしのタレを作る。材料を鍋に入れ、弱火で沸かす
※このように、最初に全て材料を入れて沸かしても良いですが、片栗粉がダマになりやすいので、醤油、砂糖、水を沸かしてから水溶き片栗粉を加えた方が綺麗です
②基本の蕎麦がきを作る
※今回は蕎麦粉に少し砂糖も加えました
③蕎麦がきをお団子サイズに丸める
※いつも通り手のひらを濡らして。火傷注意。
④串を刺す
※串を刺して焼くと串が焦げてしまう事もあるので、蕎麦がき団子を焼いてから串を刺しても良いでしょう
⑤網で焼いていく
※こんな感じで少し焼き目を付けていきたいですね
⑥みたらしタレをかけて完成!
汽笛ぶえは記憶から抹消したい思い出でしたが、このみたらし蕎麦がきは記憶に残る美味しさでした!コツとして、蕎麦がき団子はかなりじっくり焼いた方が美味しくなると思います。表面がカリっとするくらい焼いてからタレをかけると、少し冷めても美味しく食べられましたよ。

あと上新粉の団子より食感は重いので、団子はあまり大きくしない事。思い付きでしたが蕎麦粉に砂糖を加えたのは正解でしたね。「なんか、レシピが甘いものに偏ってきてない?」とお酒が好きな妻に言われてるんですが、そんな彼女も美味しいと言ってくれました。

今回のレシピから想起した片手袋はこちら!
これは箱根彫刻の森美術館の庭園で出会った介入型の片手袋です。棒に突き刺さったフォルムが、どの彫刻作品よりも美しく印象に残ってます。

妻からは「もっと冒険した方が良いんじゃない?」とも言われてるので、次回は思い切った実験をしてみようかな?

蕎麦がきアレンジレシピ〜韓国風蕎麦がき〜

2020-06-16 23:19:00 | アレンジ蕎麦がきレシピ

どうも。蕎麦がきコクソン、片手袋研究家の石井です。この写真は、今年の2月に人生で初めてチーズハットグを食べたときの写真です。汚いオッサンのはしゃいでる写真で始まってしまい申し訳ございません。

私は韓国映画も好きだし過去には『チャングムの誓い』にどハマりしたこともあるのですが、昨今のK−POP的文化には触れていなかった為、新大久保の盛り上がりもよく分かっておりませんでした。しかしうちの子がTWICEにハマった上に少しオシャレにも興味が出てきて、「どうしても新大久保に連れて行って欲しい」とせがむんですよ。私には未知の世界だったので、新大久保に詳しい若い方にお願いして、家族全員でガイドして貰ったのです。
※『パラサイト』公開直後だったので、韓国食材のスーパーでもチャパグリを推してました
いや、駅を降りた瞬間、驚きましたよ。2月だったので既に外出を気にする人達も出始めていたと思うんですが、物凄い人出。しかもほぼ100%若者。良かった、ガイドをお願いして…。オッサン1人だったら太刀打ち出来ませんでしたよ。

でも、本当に楽しい1日でしたね。東京の一角に、突如として異国の空気が立ち込める不思議さ。うちの子もTWICEグッズや冒頭のハットグ、そしてフライドチキンをチーズにつけて食べるハイカラな料理を満喫し嬉しそうでした。

☆第三の立場
韓国というと思い出す話があって。高校の時の英語の先生が、在日コリアン2世か3世の方だったんですね。若くてロックが大好きでベースも上手な先生だったので、放課後色々語り合ったりもしたんですが、なんとなく生い立ちの話とかは詳しく聞けない雰囲気があって。

そんなある日。サッカーの日韓戦が行われるという日に、クラスの空気読めない奴が授業中に突然こんな質問をしたんです。

「先生はこういう時、日本と韓国どっちを応援すんですか?」

教室に(馬鹿!なんでそんな繊細な質問するんだよ!)という張り詰めた空気が充満しました。でも、今から考えたらそんな質問をタブーだと思った私たちの方が変だったんですけどね。別に聞いちゃいけないようなことでもなかったのに。ただ先生も突然の質問に面食らったような感じでしたが、しばらく考えてこんな風に答えました。

「は?別にどっちも。俺、サッカー興味ないし。まあ、強いて言えばどっちも頑張れ、じゃない?

この答えを聞いて私は、目から鱗が落ちましたね。まあ、日本と韓国の関係という繊細で複雑な問題を考える時、極端な回答しか想定できなかったんですよ。だからこそ空気は張り詰めたわけですし。ところが、「そもそもサッカーに興味ない」っていう第三の選択肢の存在に気付かされたわけです。そりゃあそうですよ、たとえ生まれ育った国が関係していようが、みんながみんなサッカーに興味ある訳じゃないんですから。

この経験は本当に勉強になりましたね。何かと何かが対立してしまっている時、そのどちら側にも立っていない人たちの存在を忘れてはいけない、と。

☆「美味い」最優先主義
その点、料理ってのはまたちょっと別の角度から面白い位置にいますね。特に日本はちょっとあり得ないくらい、食卓に各国の料理が普通に並びます。「各国の専門料理店が沢山ある」のは勿論、個人個人の食卓に並んじゃうんだから面白いですよ。休日に朝は昨日の残りのカレー、昼はパスタ作って、夜はラーメン食べる、なんて全然珍しくないじゃないですか?各国で食べられているほど本格的かは取り合えず置いといて。

島国という地政学的な条件から、外から入ってくるものに排他的になってしまったりする面は確かにあるんですが、食い物だけは難しいこと考えずに貪欲に取り入れる。あとカレーパンやトンカツ、ナポリタンみたいに、勝手に日本食と合わせちゃったり独自の解釈を加えたりもする。「美味い」を前にすると、途端にびっくりするくらいリベラルな国民性が顔を出す。まあ、それだけに食い物だけ「美味しい」ところ取りするのはどうなんだろう?という疑問も浮かびますが。あと、他国で日本食が独自の発展を遂げているとしたら、それにも寛容でありたいですけど。

☆日韓蕎麦がき交流
まあ、その「食におけるリベラル性」を蕎麦がきにも取り入れない理由はありません。「リモート蕎麦がき」をやった時に「餅に合うものは蕎麦がきにもいけそう」という意見がありましたよね?勿論、普通の餅でも良いんですが、新大久保の楽しい思い出もありますし韓国のトッポギも良いな、と思いました。冷麺の麺は蕎麦粉を使いますし、蕎麦がきと韓国料理の相性も良いのでは?というのもトッポギを思い浮かべた理由の一つです。

しかし、私は韓国に行ったことも本格的な韓国料理を食べた経験もあまりないのです。慌ててネットでトッポギのレシピを色々と調べました。色々なレシピがありましたが、「コチュジャンを使う」とか当たり前のことを別にすると、共通してるのはさつま揚げを入れることと、ケチャップを入れることでしたね。韓国に何度も行っている妻に聞くと、「さつま揚げかは分からないが、確かに魚介的な何かが入っている」とのことでした。

それを踏まえた上で、私はケチャップの甘味が苦手なので、自分でレシピを考えてみました。

韓国風蕎麦がき(2人前)
(材料)
☆基本の蕎麦がき
蕎麦粉…50g
水…100ml

しょう油…小さじ2
砂糖…小さじ2
コチュジャン…小さじ2
鶏がらスープ…小さじ2
粉末赤唐辛子…お好み
※調味料は目安です。お好みで加減してください。

ニラ…半束
さつま揚げ…2枚
卵…1個
ニンニクみじん切り…少々

水…250ml
水溶き片栗粉…少々


①鍋にごま油を敷き、ニンニクを弱火で炒める。

②ニラとさつま揚げを軽く炒める

③砂糖、しょう油を加えて馴染ませる

④水を加えて一煮立ちさせたら、鶏がらスープとコチュジャンを入れて弱火でほんの少し煮る


⑥鍋に蕎麦がきを投入

⑦少量の水溶き片栗粉を加える

※多分トッポギは餅を入れることでトロミがつくんだと思うんですが、今回は蕎麦がきなので片栗粉を用いましょう

⑧お好みで粉末の赤唐辛子、塩、胡椒などで味を整える


⑨皿に盛ったら、黄味を乗せて完成!




本格的なトッポギを知らないので何とも言えませんが、今回も美味しかったです。本場の味を知っている妻も「向こうのトッポギはこんなにスープみたいな感じではないけど、これはこれで美味しい」とのことでした。

蕎麦がきってこれほど濃い味付けのもので煮込んでも、中心にまでは味が染みてませんでした。それほど中が詰まり上がってるんですね。で、それは悪いことではなく、蕎麦がきの味もしっかり残っているので、トッポギを使わない意味もちゃんと出せてると思いました。

それにしても、コチュジャンや唐辛子ベースのスープも蕎麦がきも、多分お互いにびっくりしたと思うんですよ。突然、今まで出会った事もない者同士が、鍋という小さな部屋に押し込まれた訳ですから。

「お、お前誰だよ?俺達にはトッポギという身近なパートナーがいるんだぞ!」
「それはこっちのセリフだ!俺達だって塩や醤油というシンプルな奴らとつるんでるんだ。お前らみたいに真っ赤で派手な奴らに興味ねーんだよ!」

なんて罵り合って。でも、意外や意外。しばらく一緒に風呂に入って温まったら、不思議なほどに気が合って絶妙なハーモニーまで奏でだす。お互い「お前らも中々やるじゃねーか!」なんて讃え合って。うんうん、これぞ「食のリベラル性」です!

突如、訳の分からない例え話が始まってしまいましたが、今回想起した片手袋はこちら!
ナイキとアディダス、それぞれ赤と青の片手袋が綺麗に片方ずつ忘れられていた、ゲームセンターでの一コマです!

これから、韓国に限らず色んな国の要素を蕎麦がきにも取り入れてみたいと思います!

蕎麦がきアレンジレシピ~ミルク蕎麦がきぜんざい~

2020-06-11 19:32:00 | アレンジ蕎麦がきレシピ

どうも。蕎麦がきスイートビーンズ、片手袋研究家の石井です。この写真は、「人力富士見坂」を作りだした時の写真です。日暮里に都内最後の「本当に富士山が見える富士見坂」があるんですが、池袋辺りに高層マンションが建ったことにより完全な形では富士山が見えなくなってしまったんです。近所に住む僕は「だったら俺が新たな富士見坂作ってみせよう!」と鼻息荒く決意致しまして、妻を早朝に叩き起こしてこの写真を撮ったわけです。

☆和菓子作りは楽しい
この写真からも分かる通り、私が住んでる東京の谷根千地域は、本郷台と上野台に挟まれている為坂道が多く、その角度も急です。「そういう“坂町”みたいな町の特色を和菓子で表現できないかな?」。数年前、唐突にそんな事を思いついて、幾つも作成した時がありました。

たとえばこれは坂と坂に挟まれた根津地域を表現した、「根津」というお菓子。「水無月」という和菓子をヒントに、ドライフルーツを入れる事で坂道の石垣の感じを出しました。
これは「三毛」。谷中は猫町と言われるくらい猫が多いのですが、ゴマ、かぼちゃ、プレーン三種類のチーズケーキで三毛猫を表現したのです。

最終的に、谷根千を表す7種類の和菓子が出来上がりました。あれこれ考えながら、色んな和菓子を作るのは本当に楽しかったですね~。なんとなく、この『蕎麦がき研究入門』を書いてる時もそういう楽しさがあります。

☆一番楽しいのはあんこ作り
とはいえ、和菓子作りの中で私が一番好きなのは、あんこを炊いてる時なんです。長時間コトコトと炊いて、時折砂糖を加えたりアクを取ったり。やる事は基本的にこれだけ、でも糖分が多いので目を離すと焦げてしまう。だからボーっと考え事とかをしながら徐々に水分が減っていく鍋をただただ見つめる。この虚無の時間が良いんですよ。

このブログでは私が今まで作った事もないような蕎麦がきレシピを考案して、試作してみてます。でも今回作る事にした「蕎麦がきぜんざい」は過去に何度も作ってるし、絶対に美味しいのはもう分ってます。どちらかというと、最近やってなかったあの「虚無の時間」を味わいたい、つまり久しぶりにあんこが作りたい、というのがメインの動機となってレシピを選択しました。

ミルク蕎麦がきぜんざい(1人前)
(材料)
☆ミルク蕎麦がき
蕎麦粉・・・50g
牛乳・・・100ml


☆あんこ
小豆・・・500g
砂糖・・・500g
水・・・2ℓ
水あめ・・・少量
塩・・・少量


(あんこの作り方)
①小豆を水に浸して、浮いてきた割れ豆や混入物を取り除く

※傷んでる豆なんかは浮いてくるので取り除きましょう

②1回か2回、茹でこぼす
※沸騰したらお湯を捨て…を2回くらい。新豆なら1回でも大丈夫です。

③豆の約4倍の量の水で、箸で簡単に割れるくらいまで弱火で炊いていく

※あんまり豆が踊ってしまわないくらいの火加減でこの写真はちょっと火が強いですね。

ここが時間掛かるんですよね。焦って強火にすると豆が割れて綺麗に出来ないので、忍耐力が必要です。火を使ってるので離れるわけにもいかず、数時間椅子に座ってボーッと鍋を見つめます。そうすると蘇ってくるんですよ、忘れてたような過去の出来事が。

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うちの両親は僕が小学生の頃に離婚してるんですが、最後の数年間は父親は家にいなくて。僕は単身赴任だと言い聞かされてたんですが、ある日、ひょっこり父親が家に帰ってきたんです。両親の事情を知らない僕は大喜びしました。

「俺の行きつけの店があるから皆で行こう」

そういって父親は家族を車に乗り込ませ、家を出ました。ところが、その行きつけの店がどこにあるのか、何の店なのか全然言わないんですよ。ただただ車は高速を走り続け、出発する頃に聞き始めたナイター中継もいつの間にか終盤に差し掛かっています。

私は車酔いが激しいので限界を感じ始めてた頃、ようやく車は高速を降りました。あたりは真っ暗になっていますが、車は行き先があるような走り方ではなくフラフラと右に曲がり左に曲がり…。そうこうするうちに、車は小さな漁港の中に入っていきました。今考えると内房か外房のどこかだったと思います。

「Uターンをする」

父親はそう言って車をバックさせるんですが、何故か私は恐怖心を抱いたんです。(海の中に落ちる!)。父親は暗闇の中にも関わらずあまり後方を確認しないで、すごい速さでバックするんです。(ああ、本当に危ない!)、思わず声が出そうになった瞬間、堤防のギリギリで車は止まり、漁港から出て先ほどの道を逆走し始めました。

結局、道沿いにある魚介が豊富な居酒屋みたいなところに入って刺身なんかを食べました。どうでも良いですけど、その時に私は人生で初めて鯵のたたきを食べて、「こんな美味いもんがあるのか!」と驚きました。でも、どう考えても父親は馴染みの客ではなさそうだったんですよね。確か、父親に会ったのはその日が最後だったと思います。

後年、母親にこの出来事を覚えているか聞いてみたのですが、母親は青い顔をして、

「実は私もあの時、あの漁港は怖かった。車を落とそうとしてるんじゃないか?って」

と告白しました。まあ、もはや真相はわからないんですが、何かボタンが一つ掛け違えていれば、私は今頃この世で呑気にブログなんて書いていなかったかもしれませんね。

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④豆が柔らかくなったら砂糖を加えて(1回目)アクを丁寧に取りながら煮る

※こんな感じで箸で潰せるくらいが目安です

※砂糖はいきなり全部入れるのではなく、三回に分けて入れます。一気に入れると浸透圧の関係で豆が潰れます

※丁寧にアクを取りながらに続けます。ドブみたいな色で不安になりますが、焦らないで下さい

⑤水気がなくなってきたら、2回目、3回目の砂糖を投入する。

※豆が顔を出し始めるくらい水分が飛んできたら、2回目の砂糖を投入です。勿論、アクはその都度掬ってください
※これは3回目。1回目に砂糖を入れた時より、だいぶあんこっぽくなってきました

⑥水気がほぼなくなるまで煮詰める。焦げやすいのでここからは常にヘラでかき回す。
3回目の砂糖を入れる頃には、水気もだいぶ飛んでると思います。そうすると糖分が多いので鍋底が非常に焦げやすくなります。常にかき回しながらさらに煮詰めていきます。

※鍋底からしっかりかき回しましょう

「このくらいからは気を付けて!」というのが分かりやすいように、映像で撮ってみました。



⑦水気が飛んだら水あめと塩を少々を加え完成!

※水あめはあれば、で良いんですけど、入れると綺麗な照りが出ます。水飴を入れると少しだけ緩くなるので、再び煮詰めてください

※塩を少し加えると、甘みが引き締まります

※完成!完全に水気を飛ばすと、冷めた時に硬いあんこになってしまうので、これくらいで大丈夫です。

結局、夜の0時に始めて完成したのは3時くらいでしたね。ボーッと過去の思い出に浸ったり、これまた皮剥きに時間が掛かるらっきょうを仕込んだりしてました。


でもね、あんこは手間が掛かるぶん、自分で作ると本当に驚くくらい美味しいものができますよ。(勿論、前回のインタビューでも言った通り、市販のあんこを買ってきても何の問題もありません!)

※小豆500gで中型のバット一杯分出来ました。

※正直、これだけ食べてても十分美味しいです。

※こんなに大量のあんこ、すぐには消費できないと思います。小分けにしてラップに包み冷凍保存すると便利ですよ

⑧牛乳で蕎麦粉を溶いて蕎麦がきを作りましょう

パンケーキ風蕎麦がきを作った時に試した牛乳で溶く手法が美味しかったので、甘いものの時はこのやり方でいきます。作り方はいつも通り

※スプーンで一口大に掬って皿に盛りましょう

⑨あんこを乗せて完成!

※お好みでお抹茶を立てても良いですね。あんこの上に乗っているのは、蕎麦の実を揚げたものです。カリカリとした食感が変化をつけてくれます

まあ、今回は食べるまでもなく美味しいのは分かってましたし、実際最高の甘味だと思います。今回は粒あんでしたが、こしあんが好きな人もいるかと思います。こしあんはさらに手間が掛かるので、先ほども書いたように市販のものを買ってくるのでも全然OKです。

私個人はあんこを炊きながらボーッとしている時間が好きなので、作るのが全然苦痛ではないんですよね。豚の角煮をコトコト煮込んだりするのが好きな人は、是非あんこにも挑戦してみてください。

今回のレシピから思い浮かべた片手袋はこちら!

浜辺に流れ着いた片手袋です。浜辺って片手袋の多発地帯なんですが、波や水平線に沈んでいく太陽とともに、ボーッと何時間でも見てられるんですよね。それがあんこを炊いてる時の感じに似てます。

次回も新たな蕎麦がきレシピに取り組んでみたいと思います!生きてて良かった!

新時代の蕎麦がきのリアル。「インタビューのポーズは蕎麦がきで!」

2020-06-01 17:07:00 | その他

どうも。蕎麦がきインタビュイー、片手袋研究家の石井です。この写真は数年前にウェブメディア「DANRO」に掲載されたインタビュー時の写真です。この写真、個人的に凄く気に入っておりまして。「そこ、大事」と呼んでるんですが、物凄く深淵なテーマについて語っていそうなのに話してるのは片手袋のこと、っていうギャップが良いんですよ。「DANRO」は3月でコンテンツ配信を休止、掲載されているコンテンツの公開は9月までなので紹介させていただきました。

☆「ろくろを回す」に新たな風を
インタビューに掲載されるインタビュイーの写真、何故か「ろくろを回す」ようなポーズが多いと言われますよね(特にWEB業界の人が多い、という説もあるようです)?
※こういうやつですね

でもこのポーズを表現するのに「ろくろを回す」って言って大勢の人がすぐに理解できるのって、陶芸とかその製作過程が広く共有されてるからじゃないですか?で、私は思ったんです。「蕎麦がきもそこまで持っていきたいな」って。

なので、試しに「ろくろを回す」が「蕎麦がき」でも代用可能か、実験してみます。ちなみに蕎麦がきを作る際のアクションはこんな感じですね。


せっかくなんで、この『蕎麦がき研究入門』のコンセプトをお伝えするインタビューをお届けしながら、徐々にポーズが蕎麦がきになっていく様にご注目下さい。果たして「蕎麦がきポーズ」は新時代の「ろくろを回す」になれるのか?もし気に入ったら皆さんも使ってみてよね!

「蕎麦がき」は日本の食卓の風景を変えるか?今最注目の「蕎麦がき研究家」に見えている景色とは?

「蕎麦がき」。ありとあらゆる食材・料理と日々接する飽食の時代において、あまりに存在感が薄い食べ物である。もしかしたら「一度も食べたことがない」あるいは「聞いたことすらない」という方も少なくないのではないだろうか?しかし、そんな蕎麦がきにスポットライトを当て、静かなる革命を企てる一人の男がいる。

石井公二さん、39歳。我々はそんな蕎麦がき革命家が何を考え、何を達成しようとしているのかを聞いてみることにした。

■「あるのに見えてない」に惹かれ続けてきた人生
ー本日はよろしくお願い致します。まずは、蕎麦がきを研究するようになったきっかけを教えて下さい。

石井:蕎麦がきの話をするには、どうしても片手袋の話をしなくてはなりません。実は私、元々の肩書は「片手袋研究家」なんです。

ー片手袋ってあの道端によく放置型として落ちてたり、拾われて介入型になってたりする、あの片方だけの手袋のことですか?

石井:そう、それです。幼い頃から片手袋を気にしていたんですが、15年前からは研究も始めまして。研究といっても見つけたら死なない限りは必ず撮影する・死ぬまで片手袋にまつわるありとあらゆることを研究し尽くす・人間の生活や都市の変化を片手袋から読み解くといったライトな物ではあるのですが。片手袋に惹かれてしまう理由は沢山あるのですが、「まちの至る所にこれだけ大量に存在しているのに、誰も見てないし気にもしてない」というのも大きな要因です。それって、とても不思議じゃないですか?
※石井さんが実際に撮影した片手袋

ー確かに。石井さんのご著書『片手袋研究入門』を拝読してから、「こんなに沢山の片手袋に囲まれて生活してたのか!」と気づくようになりました。

石井:ありがとうございます。でも片手袋が見えてくるようになった目で世界を見渡すと、他にも「あるのに見えていない」片手袋的なものがいっぱいあることにも気づくんです。で、私はどうやらそういうものを素通りできない体質なんですね。「皆が見てないなら、せめて自分一人は徹底的に見て考えてやる!そして、その魅力を広めるんだ!」という、誰の為にもならない独りよがりな使命感に燃えてしまう、と言いますか(笑)

ーまさに、その対象が蕎麦がきであった、と。

石井:その通り!

■『蕎麦がき研究入門』で大事にしていること
ー石井さん自身はどうやって蕎麦がきと出会ったんですか?

石井:どういうわけか、うちは蕎麦がきを普通に食べる特殊な環境だったんですよね。まあ、徐々にそれが当たり前じゃないことに気づき、驚きましたよ。「え?みんな、蕎麦がきって普通に食べないんだ!」って。それでもたまに蕎麦がきを食べたことある方に出会うんですけど「粋な大人の食べ物だよね」とか、お年寄りの場合だと「あんなマズいもの2度と食べたくない」とか言われたり。でも、僕にしたらそれも不思議なわけです。「いやいや、別に子供でも気軽に食べられるし、めちゃくちゃ美味しいじゃん!」って。それがずっと続いたんで、「これはなんとかしなくちゃいけないぞ」という気持ちが芽生えました。


ーその結果、今年2020年にブログ『蕎麦がき研究入門』がスタートしたんですね。最初にどのようなコンセプトを設定したんでしょうか?

石井:まずは味より何より、「簡単に作れる」ということを前面に出そうと思いました。実際、基本のプレーンな蕎麦がきって必要な食材も材料も極端に少ないんです。5分もあれば誰でもできる。正直、「人生最高の…」とか「死ぬ前に最後に食べたい…」とか大袈裟な旨味のある食べ物ではないんですけど、手軽にしみじみ美味しいものが作れる、って最高じゃないですか?

ー食べるものを手作りする、という重要性もありますしね。

石井:ああ、それは違うんです。私自身は外食やコンビニの料理を否定する気は全くないです。『天のしずく 辰巳芳子“いのちのスープ”』という、料理研究家辰巳芳子先生主演の素晴らしいドキュメンタリー映画があります。辰巳先生は映画の中で終始一貫して、食べるものを丁寧に手作りすることの大切さを訴えておられて、とても尊敬できます。しかし現代のライフスタイルにおいては、その考えによって苦しめられたり罪悪感を背負ってしまう人もいるはず。一方、料理研究家土井善晴先生の『一汁一菜でよいという提案』という本では、「まあ、無理せずご飯と具沢山の味噌汁くらいあれば良いんちゃう?」という提案がなされています。人によってはそれですら重く受け止めしまうかもしれないんですが、多分土井先生が仰りたいのは「料理を作ることをそんなに重く受け止めなさんな」っていうことだと思ってて。何しろ「究極、作ったもんが不味くても良いじゃん」みたいなことまで書いてあって。優しい物腰ですけど、あの人はパンクですよ。何より家庭料理の第一人者である土井勝先生の子供がそれを言う、ということに意味がありますよね。「肩に力を入れすぎなさんな」って。


ーでは、『蕎麦がき研究入門』では何を訴えたくて、それをどう表現しようと思っていますか?

石井:ですから、忙しい日々の中でちょっと時間がある、と。その隙間に簡単に作れるものの選択肢の中に、蕎麦がきが新しく加われば良いと思ってます。「蕎麦がきが普通に食卓に上がる日を目指す!」という野望があるんですが、その為にはむしろ気軽で手軽であることが重要だと思ってて。だから基本的な作り方や分量は提示しつつ、「蕎麦粉は国産であれ!」とか「これは絶対にこの分量を計らなきゃ駄目!」みたいな書き方はしてません。毎回、私自身が失敗もありうる状況で新しいレシピにチャレンジしつつ、方向性だけ伝われば良いと思ってて。「今回はトマトソースを試してみるけど、トマトソース自体は色々ググってみて!」くらいのノリで。今時、レシピなんて幾らでも見つかるんで、私は「蕎麦がきを使って何が出来るか?」という可能性だけ提示するに留めてます。見た人が「じゃあ違う作り方してみよう」も全然OK。こういったところも片手袋に通じるんですよね。私は世界で唯一の片手袋研究家でありますが、それ故に今は研究の土台を築き上げて可能性を提示してる段階なのです。これからは色んな人が色んな考え方やり方を気軽に持ち込んで欲しいんです。


ーなるほど。あくまで手軽さが重要なんですね。とはいえ、作るのが若干面倒臭そうなレシピもありますね。

石井:そうですね、揚げたりするのはやはり手間が掛かりますね。手軽だ、簡単だ、というのを主軸にしつつ、アレンジしたり手が込んだものを作る可能性も残しておきたいんですよね。忙しい中で何がなんでも手作りのご飯を用意する必要はないけど、たまに時間がかかるものを作って自分や人を喜ばせたい、というのも自然な欲求じゃないですか?特にコロナ禍において自宅生活が長引いた時、家で何かに作る楽しさに目覚めた人もいると思います。蕎麦がきはその意味でも最適で、あっという間に作れる手軽さと、多様なアレンジを加えても受け止めてしまう懐の深さと両方兼ね備えていて。ただ塩だけつけて酒のツマミにしても良いし、明太子とチーズを挟んで揚げてもいける。万能選手ですよ。


■今後の展望
ーこれまでブログをやってきて、新しい発見はありましたか?

石井:私自身、こういう機会がなければ「水じゃなくて牛乳で蕎麦がきを作ってみよう」とか思わなかったので、毎回発見の連続ですね。実はブログを始める前は新たなレシピの蕎麦がき料理を、毎回「マニアブログフェスタ」参加者の方々に試食してもらおうと思ってたんです。コロナによってその企画は実現できなくなりましたが、逆に「リモート蕎麦がき」なんていう企画ができました。あの企画のおかげで、「蕎麦がきにはナンプラーや蜂蜜が合う」なんていう発見もできました。


ー今後やってみたいレシピや企画はありますか?

石井:レシピはもっと大胆な冒険をしても良いですね。今はまだ置きにいってるんで。失敗する可能性がかなり高い挑戦もしてみたい。チョコでコーティングする、とか。あとは「リモート蕎麦がき」みたいに食べる環境や状況自体の模索もしたいですね。「アウトドア蕎麦がき」なんて面白そうだな、と思ってます。一人で突き詰めるのも良いんですが、色んな人と一緒に試行錯誤してみたいですね。

ーありがとうございました。最後に何かありましたら。

石井:本当に簡単に作れるものなんで、ぜひ試してみてください。一つだけ注意があるとすれば、フライパンはテフロン加工のものか、〇〇コートみたいなやつを使うこと。そうすれば極めて失敗の少ない料理なので。あとは「こんなのやってみて」とか「こんなことやりませんか」なんてご提案があったら、お気軽にご連絡ください。


■取材を終えて
身振り手振りを交え、熱く蕎麦がきを語る男の姿。途中から実際にフライパンや出来立ての蕎麦がきが我々の目に浮かんでくるような、そんな生々しいインタビューとなった。この男、まだまだ世の中をかき回していくに違いない。そう、それはまるで蕎麦がきを作るように。(インタビュー収録:6月1日 取材・構成:石井公二)