『蕎麦がき研究入門』

知らない・映えない・バズらない。なのに昔からある食べ物“蕎麦がき”に今、光を当てます。普通に食卓に上がるその日まで。

新時代の蕎麦がきのリアル。「リモート蕎麦がきとは何か?」(後編・試食採点編)

2020-05-22 18:05:00 | 基本の蕎麦がきレシピ
さて、前回からの続きです。

2組のご夫婦と私、3拠点をZOOMで繋ぎ、一斉に蕎麦がきを作って食べる。それが「リモート蕎麦がき」です。ちなみに私以外は蕎麦がき作り初体験。道具が揃えられなかったりホーロー鍋だと作り難かったりトラブルはありましたが、無事に全員美味しそうな蕎麦がきを完成させました。
※村田夫妻。蕎麦がきは見切れてますが左端に写ってます。
※加賀谷・齋藤夫婦。ホーロー鍋のトラブルに負けず、無事完成です。

※私。PCの前にデンと置かれた蕎麦がき。シュールな絵面だ。

☆試食開始!
さあ、ここからはいよいよ試食タイム。そもそも皆さんは蕎麦がきを食べたことがあるんでしょうか?

齋藤「はっきりとした記憶がない」
加賀谷「昔そば団子というのを食べて美味しかったのだが、それが今考えると蕎麦がきだったかもしれない」
村田「ないですね」
むらたぬき「いや、あるでしょ。一緒に食べたと思うよ。でもはっきりと認識はしてなかった

…さすが蕎麦がき。影が薄い。でも、むしろそう来なくちゃね。この状態から実際に食べてみて、皆さんがどう変化するのかを知りたいんですから。

前回も書きましたが、「結局、基本の蕎麦がきに何をつけて食べると1番美味しいの?」という疑問に答えを出すのも「リモート蕎麦がき」の大きな使命。今回用意したのは以下の調味料です。

(共通枠)
⒈塩 ⒉醤油 ⒊砂糖醤油 ⒋ポン酢 ⒌ナンプラー ⒍カレー粉塩 ⒎マヨネーズ ⒏七味 ⒐柚子胡椒 ⒑わさび
11.蜂蜜 12.海苔

(独自推薦枠)
・石井・・・ゆかり、クリームチーズ
・齋藤&加賀谷・・・黒蜜、スイートチリソース
・村田&むらたぬき・・・ソース


これらを全員が同じ順番で試していきます。

まずは塩から。「美味しい!」という声が聞こえたので安心しました。実は知人がこのブログを見て蕎麦がき作ってくれたんですが、イマイチだったそうで。聞くと蕎麦粉が外国産だったとのこと。1番最初の方の記事で「国産にこだわる必要はない」と書きましたが、揚げたり焼いたりせずに蕎麦がきをそのまま食べる場合、やはり蕎麦粉の質は味に直接影響してしまいます。でも今回はご両家ともに国産蕎麦粉を用意して下さったので、味は保証されていたのでしょう。

ちなみに採点は10点満点。1番初めに試した塩を基準の6点として採点していこうとしたのですが、他の調味料を試すうちに塩の評価が高まり「別に基準点を決める必要はないか」となりました。

※どんどん試していきます


忘れないように携帯に点数をメモする皆さん

「あ、これ良いな」
「これは期待外れ」

採点は最後に一斉に発表してもらいますが、思わず感想が溢れます。村田さんだけは「私、これ7点」とその場で発表していくスタイルで面食らいましたが、OKです!違う場所にいながら、皆でワイワイと同じものを食べる。これは初めて経験する感覚であり、「リモート蕎麦がき」でしか味わえない楽しさでした。

☆結果発表!
さあ、およそ15種類ほどの調味料を試していよいよ点数の発表です!得点表にまとめましたので、ご覧ください!


さあ、どうでしょうか?皆さんの予想は当たったかな?え?「予想なんかしてない」?OKです!

事前に期待してたほどには力を発揮してくれなかったものもありましたし、大外から一気にまくってきたダークホースもいました。前者は僕の場合、カレー粉塩とゆかりかな?イメージでは「絶対に合うはず!」と思ってたのに、全然美味しくなかったですね。ただカレー粉に関しては商品によって違いがあり過ぎるので、加賀谷さん齋藤さんは割と高めの点数だったように一概には言えません。マヨネーズはもうちょっとやってくれると思ったんだけどな。

後者の代表はなんといってもナンプラー。実は私は当日用意できてない、という大ポカをやらかしたんですが、私以外全員の評価が高かったです。むらたぬきさんは最高得点つけてますね。あ、赤字はそれぞれの最高点なんですが、被りがないところを見ると、勿論個人の好みの違いもあるでしょうね。

その個人の好みの違いも統一見解も両方分かる、それぞれの選評をご紹介します。

齋藤
「蜂蜜がやっぱり美味しかった。でもまだこの先がある感じがしたので、“限りなく10に近い9”にした。しょっぱいのは想像つくが、甘いのが合うと思った。でも黒蜜までいってしまうとダメ。柔らかくて蕎麦の香りもして、スイーツの素養があると思う

加賀谷
「海苔と醤油が一位ですが、個人的に海苔が好きすぎるのでちょっとバイアスがあるかも。海苔を外すとナンプラー。蕎麦がきは食感と香りはあるけど旨味が足りないと感じて、そこをダシ的なもので補うという意味でナンプラーが良いのかも。全体的に複雑な味の方が合う。“甘い”より“甘じょっぱい”といった風に」

村田
「蕎麦がきは何より食感が良い。餅に合うものは大抵合うと思う。個人的には醤油系が好き。加賀谷さんが言うように複雑な味の方が蕎麦がきの美味しさが引き出される。だから砂糖醤油は美味しかった。ただマヨネーズとかだとマヨネーズに持っていかれちゃう」

むらたぬき
「めちゃくちゃ腹が減った状態で最初に食べた塩が美味し過ぎて、そのイメージになってしまった。醤油系も良くて、ナンプラーが1番。甘いのは合わないと思う。ただ、正直に言うとビールを飲んでた。だからスルメ的なつまみ感を求めてて、ナンプラーが良かったのかも。シラフだったら蜂蜜もいけてたのかも

いやあ、つくづくナンプラー用意できなかったのが残念。総じて評価が高い。でも、実は僕が用意してた醤油は土佐醤油で、鰹節の風味がプラスされてた訳です。だから皆さんの意見に納得感はありました。

あと平均点が高いのは砂糖醤油。「甘いのは合わない」と断言したむらたぬきさんまで8点ですからね。っていうかむらたぬきさん、M−1グランプリ初年度の談志師匠ばりに採点の乱高下が激しかったんですけど、ビール飲んでた!でも蕎麦がきはつまみ的な魅力もあるんですからOKです!

あと皆さん仰ってたのは「複雑な味の方が合う」ということ。今回あらためて分かったのは、蕎麦がきって決してアッサリ・サッパリしててスルリとすり抜けていってしまうような食べ物じゃないんですよ。風味も強いし、食感も割と重い。どんなに濃い味付けでも、必ず最後にフワっと蕎麦がきの風味が戻ってくる。それを受け止める為にはある程度濃くて複雑な味の方が、最後まで蕎麦がきと手を携えたままいられると思うんですね。僕は用意してなかったですけど、大根おろしの評価が高かったのも絡み具合が増すからではないでしょうか?マヨネーズは「マヨネーズが勝ってしまう」といよりは、マヨネーズと蕎麦がきが握手しないまま別れていってしまう感じ。

私が最高得点をつけたのは「蜂蜜+クリームチーズ」でした。

これ、まさに齋藤さんが指摘してる「蜂蜜は美味しいけどその先がある感じがした」への解答でしたよ。甘さとねっとりした濃厚さと蕎麦がきのモチモチ。これが絡まってとんでもなく美味かったです。でも、実は「さらにその先」も感じたので、それも今後追求してみます。

それにしても最終的な結論が、「蕎麦がきに合うのは砂糖醤油やナンプラー、蜂蜜にクリームチーズです!」って意外過ぎますよ!蕎麦がきなんて人によっては「人が少なくなった夕方の蕎麦屋で、日本酒をチビチビやりながらつまむ大人の食べ物」なんてイメージを持ってると思うんです。でも、違った。ナンプラーなんですよ、皆さん!

以上で「リモート蕎麦がき」は終了しました。勿論蕎麦がき作りを初体験して貰ったり、意外な発見があったのは大きいのですが、何も蕎麦がきじゃなくても「一緒に作って一緒に食べる」をリモートでやること自体、物凄く可能性を感じましたね。ZOOMでPCやiPadをガンガン動かす、っていうスタイルも新しい活用の仕方だと思いました。私もまたやりたいですし、皆様も是非企画してみて下さい。

何より、つい暗くなってしまいがちなこの状況で皆さんとワイワイやれて楽しかったです。協力して頂いて皆さん、本当にありがとうございました!

(おまけ写真集)





新時代の蕎麦がきのリアル。「リモート蕎麦がきとは何か?」(前編・調理編)

2020-05-20 18:12:00 | 基本の蕎麦がきレシピ

どうも。蕎麦がきリモート、片手袋研究家の石井です。この写真はマニア垂涎の商品を多数手掛けていらっしゃるマニアパレルさんで購入した「正常石井」Tシャツです。片手袋研究なんて説明しづらい活動をしている、且つ苗字が石井である私の為だけに作られたような商品です。実際、これを着始めてから片手袋を撮ってても奇異な目で見られることは0回になりました!心なしか半径1m以内に近寄ってくる人もいなくなった気がしますが、そこはソーシャルディスタンス。これほど良い買い物は近年記憶にありません!

☆まず“響き”ありき
先日、ふと「リモート蕎麦がき」という単語が頭に浮かびました。なんでそんな単語が浮かんだのか全く分かりませんが、あまりに意味不明な響きがツボに入ってしまい、一人で爆笑していました。そして気づいたらTwitterでつぶやいてたのです。
https://twitter.com/rakuda2010/status/1259812519247400961

すると、嬉しいことに何人か反応して下さった方がいて、「よっしゃ!それならやろう!」と実行に移すことになりました。何事もとりあえず言ってみるもんですね。とは言え、何をやれば良いんでしょう?「リモート蕎麦がき」ったって、そもそも通常時も各自で勝手に作るものですから、リモートで繋がる必要もないわけですし。

☆これが新時代の「リモート蕎麦がき」だ!
その時思い出したのが、この『蕎麦がき研究入門』を始める前、最初に思い描いていたブログのコンセプトでした。

①蕎麦がきが普通に食卓に上がる日を目指して作り方や魅力を普及する
②マニアブログフェスタに参加している様々なマニアさんを毎回お招きし、新しいレシピを正直に評価してもらう

ところがまさかのコロナ禍です…。①は良いとして、②は現状不可能になってしまいました。しかし、今回は「リモート蕎麦がき」。むしろその環境を活かして①と②の要素を両方盛り込める!具体的には「皆で同時に基本の蕎麦がきを作り、様々な調味料を用意して何を付けると1番美味しいのか決めてみよう」という企画内容にしました。

☆愛し合うということ、そして事前準備
今回手をあげてくれたのは、4名。いずれもマニアブログフェスタに参加中のマニアさん達です。


そして皆さん、ここだけの話なんですが…。実は加賀谷さんと齋藤さん、村田さんとむらたぬきさんはそれぞれ、夫婦なんです!固い絆で結ばれた美しい命と命、即ち、め・お・と。深く深く愛し合ってるんです!勿論、皆さんとはよく顔を合わせる仲ですけれども、夫婦で過ごしていらっしゃる日常のご家庭にお邪魔するなんて逆にリモートじゃなきゃ出来なかったことですね。それに古来より「夫婦とは蕎麦がきのようなもの」なんてよく言うじゃないですか?その意味でも今回の企画にぴったりの方々が集まってくれました。

さて2組のご夫婦に事前にお願いしたのは、まずは当然蕎麦粉の用意。これはスーパーや通販ですぐに用意して頂きました。あとは試食に使う調味料の選定。メールでのやり取りを経て、今回は以下の調味料を用意しました。

(共通枠)
⒈塩 ⒉醤油 ⒊砂糖醤油 ⒋ポン酢 ⒌ナンプラー ⒍カレー粉塩 ⒎マヨネーズ ⒏七味 ⒐柚子胡椒 ⒑わさび
11.蜂蜜 12.海苔

(独自推薦枠)
・石井・・・ゆかり、クリームチーズ
・齋藤&加賀谷・・・黒蜜、スイートチリソース
・村田&むらたぬき・・・ソース

☆そして本番
5月17日、日曜日。約束の日です。私は事前に、蕎麦がきを味見しながらZOOM出来る環境を整えました。

※蕎麦がきは冷めると味が落ちるので、あらかじめ調味料は全て並べました
※飲み物に調味料、PCをこんな風に配置します。あとは蕎麦がきを作るだけ

約束の夜20時。3拠点をZOOMで繋げます。
お!猫もいますね。

皆さんも私と同じように調味料などをセッティング済みでした。

※これは後に送ってもらった村田家の様子。村田家はPCとiPadを用意して参加してましたが、片方はキッチンに固定、片方は適宜動かしながら、というスタイルで挑むようです

まずは以前このブログにもアップしたYouTube動画、「基本の蕎麦がきの作り方」を共有して皆で見ます。こういうことが出来るの、ZOOMの便利な点ですね。
※これは後に齋藤さんに送ってもらった画像。こちらはPCをキッチンに置いて、見ながら作れるようにしてたんですね。

そして、いよいよ蕎麦がき作り開始。一応当ブログでは「蕎麦粉75g、水150ml」を一人前の蕎麦がきの分量としているので、計量して貰います。


各家庭の水分量などをチェックします。これはリモートだとちょっと不便でしたね。同じ場所にいればすぐ分かるんですけど。
※私、画面に顔を近づけてチェックしてますね…。顔を近づけても見え方は変わらないのに。こういうことを自然にやってしまうのが老化なんですね。

今回、加賀谷&齋藤家は北海道産、村田家は長野産、どちらも国産の蕎麦がきを用意して下さいました。「蕎麦粉75g、水150ml」はあくまで目安でしかなく、蕎麦粉や季節によって水分量はだいぶ変わることもあります。今回もやはり村田家はほぼそのまま、加賀谷&齋藤家は目安よりも多めの水を加えました。

さあ、いよいよ火にかけて掻いていきますよ!しかし、ここで問題が。実は両家共に「蕎麦がき棒」を用意できなかったのです。

※っていうか、こんな棒が二本普通に転がってる家はないですよね

そこで、両家共に「すりこぎ棒一本スタイル」でいくことにしました。さあ、勇気を出して初めての蕎麦がき!

と、まあいきなりガッキーが始まったのですが、私、爆笑してしまいました。ZOOMの4画面のうち3画面で「ガッコンガッコン」凄い音鳴りながら棒振り回してるんですよ!どういう状況なんですか、これ!村田家の様子が動画で抑えられてましたので、ご覧ください。





むらたぬきさんの動画には私の笑い声が入ってますね。やっぱりすりこぎだと一本に固まってきた蕎麦がきが全てくっついてしまうので、相当力が必要になってくるようです。

こちらは加賀谷さんの様子。

加賀谷さんはホーロー鍋で作ったのですが、固まってきても蕎麦がきが鍋肌から剥がれず苦労していました。応急処置として一度濡らしたスプーンで蕎麦がきを剥がしてまとめてもらい、それを再び掻き回してもらいました。やはり鍋はテフロン加工などを使用してもらった方が良いですね。

皆さん初めての蕎麦がき作りに戸惑いもあったと思いますが、無事完成しました。

※こちらは加賀谷&齋藤家。試食しやすいようにスプーンで一口大にしてもらいました。PCも食卓に移動してますね。村田家は残念ながら完成品の写真がありませんでした。

皆の完成を見届けたので、私も急いで蕎麦がきを作ります。

慣れれば5分も掛からず出来てしまうのが蕎麦がきの良いところですね。

さあ、いよいよ実食タイムですが、ちょっと長くなってしまったので後編に続きます。

基本の蕎麦がき〜道具編〜

2020-04-12 01:50:00 | 基本の蕎麦がきレシピ

どうも。蕎麦がき冒険家。片手袋研究家の石井です。この写真は私が発明した「リモートワー君」を利用して撮影した写真です。現在の情勢を踏まえ、仕事でも飲み会でもZOOMなどを利用しておられる方も多いのではないでしょうか?あれ、確かに便利ですけど、家にいるのに「そろそろ約束の時間だから着替えなきゃ」って本末転倒ですよね?

背景は合成できるけど、問題は前景。自分自身ですよ。そこで私、パジャマのままでもZOOMを利用できるシステムを開発したのです。それがこれだ!


皆さんも是非、この「リモートワー君」利用して下さいね!それじゃ!

…いや、違った。蕎麦がきの話でしたね。前回はようやく、基本の蕎麦がきの作り方をご紹介することができました。とにかくすごく簡単で手軽であることが分かって頂けたと思いますが、それでも幾つか用意しなければいけないものもあります。今回と前回、併せてお読み頂ければもう蕎麦がきは怖くありません!

まあ「用意するもの」と言いましても「蕎麦粉、鍋、棒」の三つだけ。早速、順番に紹介していきますね。

①蕎麦粉
これが一番厄介かもしれません。とは言え基本的には「近所のスーパーなんかで手に入る蕎麦粉ならなんでも良い」です。まず、ちょっと蕎麦粉について説明しますね。これが蕎麦の花です。

蕎麦畑って本当に綺麗なんですよね。で、これが蕎麦の実。殻がついた状態。

殻を取るとこうです。

新蕎麦は秋のイメージがあると思いますが、今は夏に収穫される品種もあります。蕎麦の実の断面はこんな感じです。

で、これを挽いて粉にするわけですが、挽き方によって蕎麦粉はざっくり三種類に分けられます。

左から「一番粉・二番粉・三番粉」です。ちょっと光の加減でうまく撮れませんでしたが、右にいくほど色が濃くなっています。

・一番粉(≒更科粉)
蕎麦の実を挽くと、最初に中心の白い部分が出てきます。これが一番粉です。デンプン質が多く、蕎麦にすると透き通っていて弾力がありますが実は蕎麦の風味は弱いです。タンパク質が殆ど含まれていないので蕎麦打ちは難しいですし、蕎麦がきに使うことも殆どないと思います。一番粉を更科粉と表記してある場合もあるのですが、厳密にいうと違います(実は上の写真は更科粉なのですが)。まあ、普通にスーパーなどで手に入ることもないでしょうし、このブログではそこまで細かい違いについては書きません。

・二番粉
一番粉よりもやや外側の部分。胚乳などの部分を含み、栄養価も風味も色も一番粉より強くなります。皆さんが普通に手に入れることのできる蕎麦粉は、大体これになると思います。前回ご紹介した、そして当ブログで基本とする蕎麦がきは、この粉で作ったものとします。

・三番粉
二番粉の後に出てくる、外側がメインになってくる蕎麦粉です。色は黒っぽくて蕎麦にして食べると粗々しい食感。栄養価も一番高いです。「田舎蕎麦」なんて名前で出されてるものの殆どは、この粉で打った蕎麦ですね。勿論、蕎麦がきにも出来るんですが、ちょっと主張が強すぎてアレンジが難しく感じられます。なのでこのブログでは二番粉の蕎麦がきを基本にしますが、いずれ三番粉の可能性も追求していきたいですね。

・国産と海外産
さて、このブログを書くにあたって「そもそも蕎麦粉が簡単に手に入らないんじゃあ、読者の方が作れないよな」と思いまして、近所のスーパーを偵察してきました。そしたらまあ、結構普通に売ってましたね。

こちらは300gで300円くらいでした。ただ、蕎麦がきって下手したら蕎麦切り(皆さんが普通に食べる細い蕎麦はこう呼びます)よりダイレクトに蕎麦の風味を楽しむものなわけです。だから蕎麦粉自体の品質が味に大きく影響するわけですが、一般的に国産の方が海外産より味も風味も勝ります。ただ、国内で流通している蕎麦粉のうち、国産って僅か3割位なんですよ。だから手に入れるのも容易じゃないし、値段も結構します。上の写真のも中国産でした。

でもね。私がこのブログを立ち上げた動機の一つが「蕎麦がきが普通に食卓に上がる料理になって欲しい」というものなのです。だから、蕎麦がきを作るにあたって、あらゆるハードルは設けたくない。とりあえず手に入るものなら何でも良いです。海外産だってできたては十分に美味しい筈です。で、たまに国産が手に入ったら存分に味わう。それで良いんです。とにかく手に入ったもので作ってみましょうよ!

②鍋
まあ、これこそなんでも良いですが、幾つか蕎麦がきに向いてる条件はあるかもしれません。

右のミルクパンのようなものではなく、左の口が広いものが良いですね。強火で掻いていくので、小さい鍋だと焦げやすいです。同じ理由で鉄鍋みたいに手入れが難しいものより、「〇〇コート」といった焦げ付きにくいものが良いです。まあ、これもスーパーとかで1,000円もしないで買えるんじゃないでしょうか?

③蕎麦がき棒
火にかけて混ぜる際、箸のように細い棒では固まってきた時に上手くいきません。ある程度太い棒を用意して下さい。
こんな感じのやつですね。あ、すみません。これはヨックモックのシガールでした。こちらも蕎麦がきと同じくらい美味しいので、見つけたら手に入れましょう。手土産に迷ったらシガールにしとけば良いんです。シガール嫌いな人なんていないですから。八重洲地下街にヨックモックがやってるカフェがあるらしいんですが…おっと、「リモートワー君」の話でしたね。いや、違うわ。蕎麦がきだっけ?

まあ、なんでも良いんですけど、ホームセンター、あるいは100均なんかでもこんな棒が売ってますから。あ、でもバルサ材みたいに極端に柔らかい木は駄目ですよ。あと角棒は手が痛くなっっちゃいますから、丸棒を選んでください。

個人的には直径18mmのが一番使いやすいと思います。手の大きさによって違うと思いますが、僕はそれを20cmに切ってます。ちょっとマニアックになりますけど、「ノコギリ」っていう道具があるんで、それなんかを使うと便利じゃないかな?


先端にちょっとだけヤスリをかけておくと、鍋を傷つけたりしなくて済みますよ。ちなみにこの棒。特に名前なんてないんで、このブログでは「蕎麦がき棒」と呼ぶことにします。チト、キラキラネームっぽいっすけどね。

勇者は「ヒノキの蕎麦がき棒」を手に入れた!

長々と掻いて、いやさ、書いてしまいましたが、用意するものはこれだけです!食料品とかも扱ってる大型のホームセンターだったら、下手すりゃ一箇所で揃っちゃいますよ。つくづくハードルの低い料理です。

考えてみりゃあ、片手袋だって研究家の私だから見つけられるってことはなくて、誰にでも容易に見つけられるもの。

こりゃあ、益々片手袋と蕎麦がきは殆ど同じに思えてきましたよね?

よし!装備も揃えたし、次からはいよいよアリアハンから冒険に出るぞ!まずはどんなアレンジレシピを試しましょうかね?乞うご期待!

※文中、“勇者は「ヒノキの蕎麦がき棒」を手に入れた”という表現がありましたが、木材がヒノキかどうかは確認しておりませんでした。謹んでお詫び申し上げます。

基本の蕎麦がき〜作り方編〜

2020-04-06 01:25:00 | 基本の蕎麦がきレシピ

どうも。蕎麦がき第七世代。片手袋研究家の石井です。

さてさて、『蕎麦がき研究入門』第3回目。今回はいよいよ、蕎麦がきの具体的な作り方を書いてみたいと思います。もしかしたら前回、前々回と僕が上げた蕎麦がきの写真を見て、違和感を抱いた方もおられるかもしれません。

一般的に蕎麦がきと言いますと、

※写真はフリー素材より転用

このように木の葉型になっているもの、

※写真はフリー素材より転用

あるいはそれをお湯や蕎麦湯の中に浮かべたものが思い起こされるのかもしれません。蕎麦がきのフリー写真素材を探したら、まずこれらの写真が出てきたことがそれを物語っています。蕎麦屋でこういうのをつまみながら酒をチビチビとやる。粋な大人の嗜みですね。

しかし、当『蕎麦がき研究入門』で設定する“基本の蕎麦がき”は、少し違うスタイルのものです。何故か?ごめんなさい、単純に僕がそっちの方が好きだからです。そして作るのがより手軽なので、「蕎麦がきの魅力を広める」という目的にも合致しています。

今回は基本の蕎麦がきの作り方を紹介しますね。この基本を踏まえた上でそれを様々にアレンジしていこうと思ってますので、まずは覚えてみてください。大丈夫。超簡単ですから。

「基本の蕎麦がき」の作り方(1人前)
(材料)
・蕎麦粉・・・75g
・ 水 ・・・150ml
※蕎麦粉によって水分含有量が変わってくるし柔らかさの好みもあるので、そこは加減してください。多め、少なめに作りたい場合はこの比率を保って調整してください。

材料、たったこれだけです!初めて蕎麦がきを食べた人は「つなぎに何か入れてるんですか?山芋とか」なんて仰るんですけど、正真正銘、蕎麦粉と水だけ。蕎麦を打つ時は、十割蕎麦でもなければ小麦粉や卵、ふのり(海藻)なんかを入れますが、蕎麦がきはこれだけで出来ます。なので、蕎麦の風味をより強く感じるのは、蕎麦切りより蕎麦がきであると言えますね。ただ蕎麦粉には色んな種類がありますので、その辺りのことは次回、書いてみたいと思います。

(作り方)
①鍋に蕎麦粉を入れて、水を加える。

もう、「ドバーッ」と一気に入れちゃって良いです。

②よく混ぜる
「グルグル〜」っとね。満遍なく混ぜてくださいよ。

こういう「ダマ」が残らないようにしてください。

「ダマ」を割ってみた状態。粉が混ざらずに固まってしまってるんですね。本当は粉を鍋に入れる段階でふるいにかけたり、水と混ぜた状態で一度濾したりすれば良いだけ(しかもその方がより滑らかな仕上がりになります)なんですが、その作業を「基本の蕎麦がき」のデフォルトにしなかった理由はいずれ書きたいと思います。

これくらいの柔らかさになると思います。

③鍋を火にかけながら混ぜる(搔く)
この作業が「蕎麦“搔き”」の名前の由来ですね。実は昔よく蕎麦がきを食べていたようなお年寄りほど、「あんな不味いもの二度と食べたくない」と仰ることがあります。そういう方に詳しくお話を伺うと、大抵蕎麦粉に熱湯を加えて混ぜたもののことを言ってるんですね。勿論、それも蕎麦がきなんですが、正直それだとあんまり美味しくないです。蕎麦がきは蕎麦粉に含まれるデンプンが熱で糊化することにより固まるんですが、熱湯では糊化が不十分です。

この工程も色々やり方があります。「あらかじめ鍋でお湯を沸かしておき、そこに蕎麦粉を放り込んで搔く」とかね。でも、このブログは僕のブログですから。私の勝手に書いて良いんです。俺がルールブックだ!(一人称表記の揺れ)。このブログで採用する基本の蕎麦がきの作り方。それは②までで用意したものを、鍋ごと直火にかけてひたすらかき混ぜるのです!

こればかりは写真では伝わりにくいので、動画で最初から最後まで撮影してみました。


ポイントをまとめますと…
・強火で一気に掻き上げる
・小さく混ぜると焦げるので、大きく混ぜる
・固まり始めてからは早いよ

ということです。火にかけてから完成までのイメージを超絶分かりやすいグラフで表すと、

↑こうじゃなくて、

↑こうです。参考にしてみて下さい。

④すぐに食べよう!
さあ、あっという間に完成しました。

で、ここからが蕎麦がきで一番重要なポイントかもしれません。完成したら、とにかく早く食べましょう!出来立ての蕎麦がきは本当に美味しんですが、その味が低下していくスピードが信じられないくらい早いです。モッチリ、ネットリした食感がすぐに損なわれて、なんだかボソボソした塊に早変わり。

それを防ぐためにもお湯の中に浮かべたりする訳ですが、個人的にはそれだとちょっと水っぽくてベストには思えないんですよね。お酒のお供には「さっさと食べろ!」なんて慌ただしいかもしれませんが(ちなみに僕は下戸)、このブログは僕のブログですから。私の勝手に書いて良いんです。俺がルールブックだ!(一人称表記の揺れ&二度目)。

食べ方は第1回で紹介したように、塩や醤油を付けるだけで充分美味しいです。

ものすごく素朴な食べ物ではありますが、ざる蕎麦をもり汁で食べる時よりも蕎麦の味や香りが鮮烈に楽しめて…

Good!

さあ、これで「基本の蕎麦がき」の作り方のご紹介はおしまいです!どうですか?本当に簡単でしょう?「美味しい」っていうのは勿論なんですが、「簡単」っていうのも蕎麦がきの大きな魅力の一つです。そして素朴な分、アレンジのし甲斐もありそうですよね。塩や醤油で食べる以外の可能性の追求は、これからドンドンやっていきましょう!

次回は蕎麦粉の選び方や使用する道具について書いてみますので、引き続きよろしくお願いいたします。

※本当に大変な事態になってしまって、皆さん不安やイライラが募ってると思います。家の中での生活をより楽しくする一手段としても、当ブログを参考にして頂ければ、と思います。本当に簡単な料理ですから、もし良かったら「作ってみたよ!」というご報告、写真と共にお待ちしております。万が一ある程度溜まったら、そのご報告を紹介する回があっても良いですね!