「……何だよ、これ……」
茶の間のテーブルの上に置かれていた紙を見て、俺は眉間の皺が次第に
深くなってる事に気付いていなかった。
その日、試験も終わった俺は明日からの試験休みと冬休みをどう
過ごそうかと、学校から浦原商店へ向かう道で考えつつ歩いていた。
「黒崎さん。確か今日で試験が終わりって言ってましたよね」
浦原商店に着いたのが調度昼で、俺も一緒に昼食をご馳走になり、食べ
終えて浦原さんと二人っきりになった時に尋ねてきた。
「ああぁ。だからここに立ち寄れたんじゃねぇか」
「じゃあ、明日からお休みっスよね」
「終業式には行かなきゃならねぇけどな」
「お休みの間、ご予定はあるんっスか?」
「啓吾が映画見に行こう。って言ってたが、まだ約束もしてねぇし、今の
ところ別にねぇけど」
「予定ないんっスか?…これからクリスマスやお正月が来るのに、予定が
ナイ!」
「!…予定が無くて悪かったなっ!!」
「いやぁ~、無い方がこちらにとっては都合がイイんですよ」
「??……都合がイイってどう言う意味だよ」
「それはですね、黒崎さん……あなた、うちでバイトしませんか?ほら、
お正月の初売りバーゲンとかに欲しい物とか買いたくありません?」
「はぁぁ?バイト??」
「はい。これからの年末、色々と忙しくなるんで人手が欲しいんっスよ」
「忙しくって…ここ、客来るのかよ」
「何気に失礼な事言ってますねぇ、黒崎さん。まぁ、あなたが立ち寄る時
間と小学生が立ち寄る時間は違いますし、忙しいのはここじゃなく、
配達なんです」
「配達ぅ~?そんなもんやってんだ」
「ほら、駅前にあるスーパーでしょう。そこのお菓子コーナーの一部に
駄菓子が置いてあるの知りません?」
「………そういえばあったような……」
「うちが卸してるんっスよ」
「はぁ?」
浦原さんの説明によると、<他にも何店かのスーパー等に商品を卸していて、
年末にもなると商品の動きも多くなるから人手が欲しい>と言う事だった。
「時給千円で、テッサイの昼食・オヤツ付でどうっスか?」
「テッサイさんの昼食…オヤツ付……」
テッサイさんの作る料理の方に興味をそそられてしまう。
「決まりっスね。ああっ、勿論終業式の時はお休みして頂いて結構です。
あとお休みは日曜で、それ以外は31日まで来て頂けると有り難いっス。
店の仕事だけじゃなく、家の中も手伝って頂く事になるかと…何分、
毎年テッサイに統べて任せて、私は篭ってしまうんで、店と家の事が
大変らしいんっスよ」
<人手が足りないは、テメェが篭ってるからだ!!>と言っても、サラリと
かわすだけだと俺は、浦原さんと出会ってからの半年の間に悟ってしまった。
「では、明日の9時からココに来て下さい。黒崎さんは門限がありますし、
18時まで働いて頂きますよン」
次の日、店に着くとジン太と雨が遊びながらも掃き掃除や拭き掃除をして
いたのに挨拶をして、店の中に入ると浦原さんが座っていた。
昨夜部屋に届けられたメッセージを思い出し、撲り付けた。
「テッメェ~、昨日のアレは何だよ!!」
「…痛いっス、黒崎さん。……雇用契約書を書いてなかったなぁと思っ
て、届けたんっスけど…それが何か?」
「最後の遅刻の事だよ!」
空気の入れ換えの為に窓を開けた時、以前俺の部屋に送られて来たのと
同じ方法で雇用契約書が届けられたのだが、最後に遅刻のペナルティとし
て書かれてあったのが<遅刻をしたら朝まで寝かせず>だった。
「シテ欲しくて、てっきり遅刻かと思ってましたよ………痛いっス、
黒崎さん」
俺は浦原さんに頭突きしていた。
「誰が遅刻なんてするかっ!!!」
「ええぇ~、シテくれないんですかぁ」
「テメェ、大きな声で恥ずかしい事言うなっ!!」
真っ赤になっている俺を楽しげにからかう浦原さん。
「じゃあ黒崎さん、エプロンをどうぞ」
手渡されたエプロンを広げ、それを浦原さんの顔目掛けて投げ付けた。
「何するんっスか、黒崎さん。エプロンしないとお洋服が汚れてしま
いますよ」
「普通のエプロン寄越せ!」
「あいにくとコレしかなくて」
「嘘を付くなっ!!」
俺が浦原さんに投げ付けたエプロンは、フリルが付いた白いエプロンだった。
「付けて下さいよぉ~。黒崎さんに似合うと思って買ったのにぃ」
「語尾を延ばして言われても、可愛くねぇよ!!…って言うか、それだけ
の為に買って来んなっ!!」
「黒崎さんの白のフリルエプロン姿、新婚さんみたいじゃないっスかぁ」
「却下だ!!………誰が新婚なんだよ!」
「店長、そろそろお時間が…」
このままでは先に進まないと思ったテッサイさんが、浦原さんと俺の間に入る
と手に持っていた浦原商店のエプロンを俺に差し出してくれた。
「じゃあ、黒崎さん。テッサイと一緒に配達をお願いします。以外と力
仕事なんで、気をつけて下さいな」
「では店長、行ってまいります」
こんな出だしで俺の浦原商店でのバイトが始まった。
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↑は、チビ
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「違うのを」と思い妄想したのですが…段々と最終的にどうしていいのか分から
なくなったので、現時点ではボツネタと言う事で。
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