gooブログはじめました!「水文統計的集中豪雨の研究」

「集中豪雨」は学術的に定義された用語ではないため「量的定義はない」が、水文統計では「量的定義」が可能です。

水文統計的「集中豪雨」

2012-06-13 13:57:00 | 学問
 集中豪雨について,気象の辞典(和達,1972)には「局所的に,短時間に多量に降る強い雨。がけくずれ,洪水などの災害を伴い,社会問題となっている。この言葉は報道関係者によって名づけられたもので,量的な定義はない。」と述べられている。ここでは水文統計的集中豪雨の量的定義を試み,過去の集中豪雨に適用した結果を述べる。集中豪雨の“集中”には,面的および時間的集中の意味がある。それがこの用語の特徴であり,量的定義が難しい点でもある。ここでは時間的集中についてのみ論述する。
 気象学では,降水現象の原因と過程を対象とするのに対して,水文統計(水文)学では集計時間の長さと量が対象である。任意に定めた一定の長さの時間(以下,代表時間という)の中で起こった降水現象において,単位時間に最大いくら降ったかを考えることで降水の時間集中度の概念が生まれた(松田・角屋,1983)。代表時間の中に無降水の時間を含める考え方は,気象学的には無理であろう。ただし降水データは10分降水量,1時間降水量,日降水量,月降水量,年降水量などの記録が集計されている。これらのデータには当然無降水の時間が入っている。水文統計(水文)学ではこれらの集計記録を基礎データとしており,単位時間内においてこれらの値は当然一様分布していないが,t時間の平均値を強度として用いることもあり,便宜上,一様分布を仮定することも多い。代表時間の長さが変われば降水の時間集中度の値は変わる。さらに降水の継続時間が同じ降水のみを解析対象とするのは解析結果の適用において実用的でない。降水の集計記録を水文統計的に扱うことによって初めて集中豪雨を定義することが可能である。
 ここで扱った集中豪雨は,条件付き結合係数が1より大きいか,それが部分的に大きくなった強雨を伴う大雨である。条件付き結合係数とは,降り始めから時刻tまでの累積降水量の条件下で,最大24時間降水量R24hとさらにその中の最大1時間降水量R1hの結合超過確率に対応する正規変換値である。R24hとR1hの間には独立範囲と従属範囲があり,累積降水量にも従属するので一般的には計算できないが,数値実験によって実用推定式が作られており(松田・足立,2005),若干の置き換えを許すことによって計算が可能であると考える。