gooブログはじめました!「水文統計的集中豪雨の研究」

「集中豪雨」は学術的に定義された用語ではないため「量的定義はない」が、水文統計では「量的定義」が可能です。

集中豪雨の発生を加味した結合累積雨量

2019-07-10 17:58:27 | 学問
 最近、しばしば線状降水帯という用語が報道される。集中豪雨は線状降水帯によってもたらされ、日本のどこででも起こり得る現象である。
 気象学的に集中豪雨を数的に表現することはできないが、水文統計的には可能である。著者は、24時間雨量とその中の最大1時間雨量の結合超過確率を計算する方法を数値実験によって導き、超過確率に対応する正規値を結合係数と呼び、結合係数が1より大きい場合を集中豪雨と定義した。
 また、結合係数と累積雨量の積を結合規模指標と呼び、過去の豪雨について累積雨量と結合規模指標を図に並示して、累積雨量では表せない集中豪雨の発生を表現できることを示した。
 しかし、2011年台風12号による奈良県上北山(アメダス)で総雨量1805.5mmが観測され、十津川の大規模斜面崩壊が起こったが、この場合の結合係数は初期に1を超えたものの、後半には1より小さく計算されたため、結合規模指標を表わす曲線は増加曲線とならず、部分的集中豪雨を伴う大雨とした。
 雨が前半に強く降り、後半に前半ほどではないが強く降り続くような降り方をする雨の場合、累積雨量は当然のことながら増加曲線となるが、結合規模指標は低下曲線となる事例であった。
 このような事例において、結合係数が1より小さく計算された場合、結合係数は集中豪雨が発生したかどうかを判定する因子であることから、集中豪雨と判定されない場合には結合係数を1とし、結合規模累積雨量、あるいは単に結合累積雨量と呼ぶことが考えられる。結合累積雨量は増加曲線となり、累積雨量と並示することで、集中豪雨の発生とこれが大きいほど危険であると認識できる。