他にも用意しているエントリはあるのですが、今日はこちらを。
イーグルスのいわば乳幼児期にこの生まれたてのチームの基礎を作ってくれた野村克也監督(あえて「選手」でも「元監督」でもなく「監督」と呼ばせて下さい)が永眠されました。
近頃はテレビの出演もぐっと少なくなっていたけれど、正直現実味はなくても「また監督をやりたい」という意欲は持ち続けていたノムさん。
選手としても本当に限界になるまで、ボロボロになるまで現役でいることにこだわった人だったので「監督」としてももっとボロボロになるまでやりたかったんでしょうね。
選手時代はさすがに私も子供で、ご本人よりも侍ジャイアンツのようなプロ野球アニメでライバル役として登場するイメージの方が強かったものです。
ヤクルトスワローズの監督時代はちょっと野球から離れていた時期でもあり、野球ニュースで取り上げられるボヤキの印象が強かった。
私は在関西なので、阪神タイガースの監督に就任された時の関西メディアの大騒ぎはとても記憶にあります。
実際にタイガースの暗黒時代を終わらせたのは星野監督だったけど、そのための基礎を作ったのは間違いなくノムさんだったでしょう。
これで暗黒時代も終わる!と期待されて「黄金のノムさん像」なるものが発売されたり、かと思えばそれでもBクラスを脱出できなければ掌を返して叩いたり、関西でのタイガース報道にありがちパターンをしっかり踏んでいました。
そういえばこの頃までは私も辛辣で嫌味っぽいノムさん語録が少し苦手だったことを思い出します。
球団創設1年目を上位と大きく離されてのダントツ最下位で終わったイーグルスは、たった1年の混乱に満ちたシーズンを戦った田尾初代監督をあっさりと解雇しました。
そして次の監督としてやってきたのがノムさん。
元近鉄の選手と、他球団の実質戦力外のような扱いだった選手と、イーグルスが生まれてからプロ野球としてデビューした若い選手。
そんな選手たちが、ノムさんの毒舌についていけるだろうか。そう不安になったりもしました。
そんな不安や心配をしていた私ですが、夏ごろにはすっかり大好きになっていたものです。
ノムさんの指導を受けた多くの選手たちが才能を開花させたり引退後指導者となっていく姿はこれまでも見てきたけれど、イーグルスでもそろそろ生え抜きでノムさんから直接指導を受けた選手が指導者として歩み始めるくらいの月日が経ちました。
イーグルスが生まれてボロボロだった初年度を終えた時は、最初は最下位でも仕方ない、10年でCS、15年でリーグ優勝できれば万々歳だと思っていました。
それが3年で最下位脱出、5年でCS出場を果たし、星野監督時代にはなるけれど9年で日本一にもなった。その礎を作ったのは間違いなくノムさんだったと思います。
正直言うと、日本一になった時より2009年初めてCSに進出した時の方が楽しかったし嬉しかった。
誰かひとりの目立ったヒーローの力ではなく、決して突出した選手の集まりではなかったけどそれぞれの力を結集して2位にまで駆け上がったのが本当にノムさんのチームらしくて試合を見るたびワクワクしたものです。
CSのファイナルステージでファイターズに敗北した時、すでに勇退が決まっていたノムさんをファイターズの選手たちも当時ファイターズの監督だった梨田さんも一緒になって胴上げしてくれた時、どれほどノムさんが球界にたくさんの種を蒔いて育ててくれたのかをしみじみと実感しました。
あれがノムさんの現場の野球人として最後の瞬間だったのだと思うと、自らを月見草と称した野村克也の野球人生は正しかったのだと思わずにはいられません。
2020年。
ノムさんがいつもお説教していた嶋がヤクルトへ行き、イーグルスは今年からノムさんに指導を受けていた三木さんが監督になる。息子・克則もコーチとしてイーグルスに戻ってきてくれました。
ヤクルトでは高津さんが新監督に。
稲葉さんは引き続き侍JAPANの監督です。タイガースでは矢野さんが監督を勤めています。
ホークスでは甲斐捕手がかつて南海ホークスでノムさんが背負った背番号19を背負うことになりました。きっと直接指導してみたかっただろうな。
彼ら教え子たちの野球を今年も見守って、そしてめいっぱい辛辣にボヤいて欲しかった。とても残念です。
でも、先立たれたサッチー、沙知代夫人の元へ行けるのかと思えば悲しいことではないのかもしれません。
迎えるサッチーの「あんたまだ早いわよ」なんて言っている声が聞こえてきそうだけど、どうかあちらでもケンカしながら仲良くして下さいね。
野村克也監督。
ノムさん。
ノムじいちゃん。
じいちゃんのおかげでまた一段と野球が好きになった気がします。
楽しい野球を見せてくれてありがとうございました。
たくさんの種を蒔いて、育ててくれてありがとうございました。
じいちゃんのボヤキはもう聞けなくなってしまったけど、きっといろんな人の心の中でノムさんならこんな時こんな風にボヤくんだろうなと思います。
それはひとつの永遠でもあるんでしょう。
お疲れ様でした。
本当にありがとうございました。
どうぞ安らかに。
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