goo blog サービス終了のお知らせ 

day by day

癒さぬ傷口が 栄光への入口

『リバーサルオーケストラ』《2023冬/水22》(終了)

2023-03-20 | テレビ。
2023年1月期:冬ドラマがそろそろ最終回を迎えています。
今期は本当に豊作で質の良いドラマが多くて忙しかった。
野球のない季節で助かりました。
そんな中で特に気に入っていたドラマのうちのひとつ・『リバーサルオーケストラ』が最終回を迎えたので新鮮なうちにこの気持ちを書き留めておきたいと思います。

『リバーサルオーケストラ』



※リストを表示するとサムネがいじわる予告になるのむりwwww

=スタッフ・キャスト=

出演:門脇麦 田中圭 永山絢斗/生瀬勝久 他
脚本:清水友佳子
音楽:清塚信也 啼鵬
演出:猪股隆一 小室直子 鈴木勇馬
プロデューサー:三上絵里子

え、三上Pってブラッシュアップライフも手掛けてたの?企画したドラマが2本同期にオンエアされてどちらも当たるとかそんなことある?
そして脚本の清水友佳子はTBSで新井Pと組んで大ヒット作品を多く生み出した奥寺氏のサブ脚本家のような立場でたくさんの名作ドラマに携わっている。変わったところだと、朝ドラ『エール』で当初予定されていたメイン脚本家林宏司が理由は明かされてはいないものの突如降板し後を引き継いだメンバーの1人だった。(もう一人は「舞いあがれ!」で物議をかもした航空学校編を書いた嶋田うれ菜)急遽入った人の名前までは憶えていなかったけどどのあたりを書いてたんだろう。今作は単独で書きあげられた作品だが作品や登場人物に対する愛情が溢れたやさしい脚本だったと思う。

このドラマにとって生命線ともいえる音楽担当は"ピアノの弾ける漫談師お喋り上手なピアニスト"こと清塚信也。メインテーマは『チャイコフスキー交響曲第5番』をアレンジしたものだがそれが最終回に繋がる。今やクラシックとポップスの架け橋になっている清塚の見事な匙加減で、『主人公』としての音楽をより効果的に、感動的に聴かせることに成功していたように思う。


=イントロダクション=

どんなに暗い世の中でも音楽は人の心に届き、元気をくれるもの…。
2023年、年始め!
オーケストラが奏でる迫力満点の音楽で
日本中を元気にするドラマをお届けします!

超地味な市役所職員・谷岡初音。実は彼女は…元天才ヴァイオリニスト
表舞台から去り、穏やかに暮らしていたはずが…
強引すぎる変人マエストロ 常葉朝陽に巻き込まれ
地元のポンコツ交響楽団を一流オケに大改造!?
しかーし!!
2人の前には、数々の障害と強敵が…!!
「崖っぷちだけど、音楽が好き」
夢にしがみつき、懸命に頑張る愛すべきポンコツオケ。
夢を追う生き方は、難しいけれど、面白い!
そう。
「クラシック音楽って、なんか堅苦しい…」、「敷居が高くない?」
そう思っているアナタにも、決して遠い世界のお話ではありません!

この冬。スカッとして胸がアツくなる
一発逆転の音楽エンターテイメント、始まります。


地方都市(と言っても埼玉なので首都圏ですが)西さいたま市(架空)。
ここの市長が「音楽のまち宣言」とやらを出して市立の交響楽団とシンフォニーホールを作った。
市長の息子が世界的な指揮者であることから『音楽』という発想だったのだろうが、おそらくは市長としての人気取り政策だっただろう。もし息子が例えば絵画に秀でた才能で世界で有名な人物だったなら発想は音楽ではなくそっち方面だっただろうなと容易に想像できる。
そんな市長の思惑で作られたオーケストラ、一応は給料をもらっているプロ。
とはいえ有名オケに入れるほどではないメンバーが、緊張感なく趣味の延長のようにやっていた、それが以前の『児玉交響楽団』通称『玉響』だった。

厳しくて頑固で変人な指揮者がやってきて、かつて天才と呼ばれたヴァイオリニストをコンマスに据え、ポンコツオーケストラを育てる話。

本当にざっくり言うとそういう話だが、それははるか昔からジャンルを変え、手を変え品を変え定番のように擦られてきた筋立ての物語だ。特にスポーツもので多いと思う。
そういうものが何故ずっと擦られてきたかというとこういうものが人は大好きだから、こういう物語を見ていると自分も頑張ろうかなと力を貰った気持ちになれる人が多くいるから……だろう。
今まで見たことないようなジャンルだったりジャンル分けすら難しいような新しい視点の物語を生み出す人は本当にすごいけれど、使い古されたような骨格にどんな肉を着けて、見た人が元気を貰えるような、物語そのものを愛しく思えるような、そんな物語に仕上げていくのもまた素晴らしい職人の技のように思う。

クラシック音楽もので言うと、漫画原作でドラマ化され、今でも定期的にそれをモチーフにした演奏会が開かれたりもしている『のだめカンタービレ』を思い出す人が多いだろう。
このドラマも放送開始当初は『のだめ』と比較するような意見が多く見られていたのは確かだ。
ちなみに私はもっと遡って、「とある問題で表舞台から退いた変人マエストロがひょんなことから隠遁先の信州の山奥の小さな中学校の音楽部で中学生たちにオーケストラの指導をする」というドラマ『それが答えだ!』が好きだった。さらに余談だがこの中学生の中には藤原竜也や深田恭子がいた。マエストロは三上博史。再放送がかかれば見てしまう大好きなドラマだった。
よくみるジャンルの作品ならいちいち以前あった作品と比較したりはしないのだろうが、扱われることがそう多くないジャンルで大ヒット作があるとそれと比較されるのは仕方ないのかもしれない。
いくら「変人マエストロがメイン登場人物」だからって、『のだめ』も『それが答えだ』も『リバオケ』もそれぞれ全然違う話だと思うのだが。
登場人物の職業やタイプごとに分類された性格や立ち位置、あまりにも大雑把にしかくくられていない区分で先入観を持ったまま見るなど勿体ないの極みだ。

=僕たちはオーケストラです=

突然やってきた鬼マエストロに戸惑いついていけないと感じている"凡人"の団員たち。
突然やってきてコンマスとなった"元天才少女"が自分たちとは違う世界の人間だと思ってしまう団員たち。
一方天才少女と呼ばれ注目を集めていたが故に、たった一度の"ステージ放棄"が大きな心の疵となってステージに上がることすら出来なくなったヴァイオリニスト。
個々の音はいいと感じたからこそ"自分のオケ"として完成させたいと厳しく指導するマエストロ。
世界的指揮者の父に認められたいあまり他人の評価ばかり気にしてしまうヒロインの幼なじみ。
すぐに売り言葉に買い言葉で軽率に政敵の挑発に乗って自分の作ったオケを賭けの道具にしてしまう市長。
市長の座を狙って"市長の弱み"である玉響を陥れようと執拗に画策してくる市会議員。
自分が倒れたせいで姉がステージに上がれなくなってしまったと気に病みながらも明るく姉を応援する妹。

さすがに1クールのドラマで団員全員を一人一人クローズアップするのはナンセンス(実際、大半の団員は本物の楽団員がやっている)だが、見えないところできっと他の団員とも話し合ったり交流したりし合っているのだろうなと想像できるようで『玉響』をとても魅力的なオケに描いている。中盤に入る頃にはもうこのオケのことが大好きになっていた。

凡人も、天才も、それぞれの悩みを抱えていて。
互いに叱咤激励したり慰めたり頼りあったりしてやがて天才も凡人も関係なくひとつのオケになっていく。

常葉朝陽が何度か口にした
少しでも良い演奏をするために、何か問題があるのなら一人で抱えずに他の団員も頼っていい。

「僕たちはオーケストラです」

最後の最後、解散に追い込まれそうになっていた玉響を『守るために』ひとり玉響から去ろうとした朝陽に、今度は初音が言う。

「わたしたちはオーケストラです」

この瞬間、児玉交響楽団"玉響"は、本当にひとつのオーケストラになったんだなと感じた。

=ひとびと=

団員はもちろん、玉響をめぐる人々、団員の家族、敵対する本宮議員とその一派も含めてとても魅力的な登場人物ばかりだった。
後半は恋愛要素も強くなっていたけれど、この"玉響"の物語においてはそれもいい塩梅の味付け、程度に感じるほど。

常葉朝陽。
恵まれて育ったエリートだが過去にオーケストラの団員たちに無視され一度は諦めようとしたこともある。それを"天才少女"時代の初音の演奏に救われ、音楽の道に戻ることが出来た。その谷岡初音が音楽から離れているのを発見し、今度は自分が初音を音楽の道に連れ戻す。
父には強い態度を取れるが母には弱い。
幼い頃から見守ってきた小野田には「すぐに人とのコミュニケーションを放棄してしまうのが悪い癖」だと看破されている。
滅多に笑わないが演奏(本番)が終わると最後に満足げに微笑む。
とっくに玉響を「僕のオケ」だと思って愛着を持っている。
尊敬する指揮者・三島と食事で同席した時には単純に嬉しそう。
"変人の鬼マエストロ"なんて平面的なキャラクターではない、そんな常葉朝陽を田中圭が見事に立体的な人間として演じてくれたと思う。

谷岡初音。
生来明るくて前向きで素直で屈託のない性格だっただろう初音。ただヴァイオリンの表舞台から降り、そのことだけが初音の疵だったけれど、それ以外の部分ではまるで損なわれてはいなかったのだろう。
朝陽や団員たちに支えられながらとうとうステージに再び立てた、トラウマの曲"チャイコン(チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲)"も克服できた初音はすっかり無敵モードに入っていた。
本来私は明るすぎたり自分の気持ちをがんがん前に押し出してきたり他人に押し付けたりするヒロインというのは苦手なのだが、覚醒後の初音もとにかく可愛いかった。もともと門脇麦は好きだったけど、こんなに愛らしくて可愛い人だったんだなともしかしたら初めて認識したかもしれない。

三島彰一郎。
天才少女として注目されていた頃の初音とともにヴァイオリンをやっていた幼なじみ。父は世界的な指揮者。
どんなジャンルでもそうだろうが、高名な親と同じ道を進んだ時、勝手に周囲が過剰な期待を寄せてプレッシャーをかけることが少なくない。本人もずっとその呪いに囚われている。
妹が倒れたことに動揺し心配のあまりステージから逃げてしまった初音。まだステージにメインで立つ人間の責任の重さを十分に理解していなかった少女にとって仕方ないことだったかもしれないけれど、『父が振る』特別なステージをだいなしにした初音を許せなかった彰一郎の憤りも理解はできる。
「お前にステージに立つ資格はない」
捨て台詞のように言い放った言葉がその後初音をずっと縛り付けることになる。
最初、彰一郎は初恋をこじらせているのだと思っていたが、ただファザコンをこじらせているだけだった(笑)。
そして父は『社交的だけど(自分の満足のいく演奏に到達しない)息子には興味のない、父親として少し欠けている人物』みたいに感じていたんだけど、確かに若干その傾向ではあるかもしれないけど、息子がより良いヴァイオリニストになるために何が欠けているのかをとっくに察知していて、それを自分自身で気づくまで口出ししなかっただけなんだなと最終回でわかる。
初音に対する蟠りが解けて以降の彰一郎は幼く見えるほど可愛かった。

父子の関係として、三島親子と常葉親子が対比になっているのも興味深かった。

団員たちのエピソードもそれぞれ暖かく愛おしいものばかりで、こうして"玉響"に対する思い入れが、まるで自分の地元のオケを応援しているような錯覚に陥るくらい深まっていくのを感じた。


最終回。
もともとこの"対決"までの契約でそれが終わればドイツに帰ることになっていた朝陽は、玉響を守るために一度は玉響から去り対戦相手である高階フィルに移籍しようとしてドイツでの仕事をキャンセルしていた。
それが結果的に玉響に戻ることになった時に"ドイツの仕事はキャンセル済だから"、対決後も玉響に残ることが出来るようになったという小憎らしい仕掛けが用意されていた。
この朝陽が寝返った疑惑、玉響を守るためだけでなくその後も残るというラストのために用意された展開だったのか。
このドラマではこの手の仕掛けなどは別にないと思って油断していたから最後の最後に唸らされた。

=音楽=

オーケストラものなので当然練習場面だけでなく演奏会(本番)の場面がその回の終盤クライマックスで流れる。しかしその配分がすごい。交響曲のとある楽章だけを抜粋したとしてもけっこうな時間を割いて流す。
特に絵替わりのしない映像を長時間見る耐性が薄い今時の視聴者が耐えきれずそこでチャンネルを変えてしまう危険も十分あるというのにだ。最終回の"チャイ5(チャイコフスキー交響曲第5番)"に至っては約8分。最終回の貴重な時間を8分割いて演奏場面を流した。ただ、このドラマを最終回まで思い入れを深めながら見てきた視聴者にとってはそれは長いとは全く感じなかったはず。
また、劇伴もそれぞれクラシック曲をアレンジしたものが殆どだと思うので詳しい人ほどニヤニヤして見られたかも。
クラシックの世界で育ち、今はそれを一般の人により親しんでもらうために活動している清塚が思う存分力を発揮できた仕事だったのではないだろうか。
(最終回あたりカメオ出演でもするかと思っていたけどしなかったな…)

YouTubeの各話ダイジェストでもけっこうな時間を割いて演奏シーンを収録している。いつかは消えてしまうのかもしれないけど、時々聴きたくなったらここで玉響に会えるのは嬉しい。良い時代だな。

=まとめ=

ここんとこ毎話レビューする余裕が無かったのでせめてざっくりまとめに入れるんではなく単体でと思ってこれを書き始めたらもう各キャラとかについてもめちゃくちゃ書きたくなってしまって困っています(笑)。いやだからといって今から各話レビュー書くわけでもないんですが。
メインキャラについてだけちょっと触れたけど、小野田さんも玲緒さんも藤谷さんも蒼くんも穂刈さんもみどりさんもヨーゼフも土井さんも最終回近くに急に存在感出てきた弓香さんも、かおりさんも三島パパも、奏奈ちゃんも谷岡パパママも、市長も朝陽ママも、イケボ議員本宮も、高階オーナーも。蒼くんのご両親や工事現場のおじちゃんたちも、みどりさんの家族も、穂刈さんの奥さんも、土井さんのこどもたちも、ヨーゼフのかわいい彼も、出てきた人みんな愛おしい人々でした。
10話見て来て、こうやってすらすら登場人物とそのエピソードが思い浮かんでくるのは良い群像劇だったんだなと思います。
また、奏奈ちゃんが中心となって玉響を知らしめるためにやっていた玉響のTwitterアカウントが実際に稼働していたり、現代らしい連動もあり楽しませてもらいました。

『常葉朝陽率いる児玉交響楽団』の存続が決まったところで終わっているので、続編がありますようにと強く願っています。いつかまた玉響に会えますように。

最後に、たまちゃんぬいぐるみが欲しいです。わりとマジで。

Comment    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2022年10月期ドラマざっくり... | TOP | WBC2023、侍優勝!  »
最新の画像もっと見る

post a comment