超人は、存在するのか・・・
超人が、存在するかどうかは、わからないな。
でも、たぶん、きっと、僕は、超人なのかもしれない。
三週間前、確かに僕は、死にかけ人形みたいになっていた。
それは、自分でもそう想ったし、他人から見てもそうだったんだと想う。
最低でも二ヶ月くらいの入院と言われていた。
ベッドに磔にされた寝たきりの僕は、その言葉でさえも、希望的観測の数字だと想ったくらいだ。
日々は過ぎる。
入院から一週間後に、全身麻酔をかけて開胸観血手術。手術を終えた時は、あまりの苦しさに悶絶した。
また、日々は過ぎる。
リハビリが始まる。
この頃から、僕のココロは完全に前を向き始めたのだと想う。
蚊の鳴くような声しか出なかったのが、普通の声に変わってきた。
車椅子に乗せられて、階下へ運ばれるだけでもヘトヘトヘロヘロになっていたのが、自力で歩けるようになって来た。
歩くスピードが、歩き始めの赤ちゃんくらいのスピードだったのが、生まれたてのカピバラくらいのスピードになった。生まれたてのカピバラって歩けるの?知らないけど。
歩いて行ける場所がトイレだけだったのが、階段を使って下の階まで行けるようになった。
売店に行って、アイスクリームを買えるようになった。売店のおばちゃんは、僕を見てとても驚いていたけどね。
内緒で、病院の外の喫煙所に、タバコを一口吸いに行けるようになった。肺が壊れてるから、お医者さんに絶対ダメって言われてたけどね。
赤く染まった白眼は白く戻って来て、破れた鼓膜は塞がって来て、まっすぐ歩けるようになって来て、病院の隣にある川沿いの公園のベンチが、暇な時の僕の居場所になってきた。
病院の規則で、公園に行く土手を越えるのは絶対禁止ってなっていたんだけどね。
つづく。