歴史を未来へ、国史跡「土塔」の活用について
前田秀一 プロフィール
堺が誇る人物・行基が民衆の力を結集して築造した「土塔」は、仏教思想を背景としたものではありますが、民衆が各自の力量に応じて参画し、自発的に利他行(他人に対する善行)の目的意識をもって参加した作善行(善行を積む)の「塔」です。
このように歴史的背景を有する堺市固有の文化財「土塔」は、国史跡として立派に再生され、現代社会においては、ボランティア精神や第3の公共として市民の社会的貢献の意義を形にした貴重な文化財として輝いています。
「誰一人取り残さない」ことを理念としてSDGs(持続可能な開発目標)未来都市の実現に取り組む「堺」の市民の立場で、堺の歴史を未来に活かすシンボル・モニュメントとして「土塔」を顕彰し活用すべくブログを通して提案活動を行い賛同の輪を広げたいと考えております。
堺市より「SDGs未来都市・堺」ロゴマーク使用承認済(令和元年度第001号)
行基の仏教思想の背景をなすものは、衆生に対する慈悲の社会的実践であり、「福田(ふくでん)思想」といわれています。
「行基の思想は福田思想とよばれ、これは善い行為の種子をまいて功徳の収穫を得る田地の意味で、仏教社会福祉の理念を知る語である。大乗仏教では菩薩(求道者)の智恵と慈悲に基づく利他行が重視されたので、福田思想は仏教徒の社会的実践の基本となったのである。行基の行った社会事業はまさに、自ら事業に参加することで民衆のために力を尽くす福田そのもので、これにより多くの知識たちは仏教の功徳を得ることを希求したのであろう。ひいては、この行基の知識の原理は、聖武天皇の東大寺盧舎那仏建立の際にも引用され、行基にとっては、知識活動の集大成といっても過言ではなかろう。」
「福田(ふくでん)思想」について、近藤康司氏(堺市文化財課学芸員)の記述(「中外日報」2018.9.5 7頁)より
福田思想においては、塔の建立が第一義であり、庶民が労働力を提供し、瓦一枚一枚を寄進し、土を盛って仏教信仰の真髄である塔を建立しました。それは天空に聳える木造の大塔ではなく、民衆の力によってできる土塔を築き、瓦に氏名を刻し、仏縁に連なった法悦を感じました。
そのほか、1.仏図(塔)・僧坊・堂閣を興立す、2.園化・浴地・樹木・清涼、3.常に医薬を施して衆病を療救す、4.牢堅なる船を造りて人民を済度す、5.橋梁を安施して羸弱を過渡す、6.道を近くし、井を造りて渇望に飲を得さしむ、7.厩を造作して便利の処を施すことなどが挙げられ、具体的な事業実績として以下の業績が挙げられています。
<引用文献>
1.近藤康司2018「土塔発掘調査からみる行基の活動」 『中外日報』2018年9月5日号 7頁
2.網干善教(関西大学名誉教授)「行基の仏教と土塔の建立」
3.堺市教育委員会2004『史蹟 土塔-文字瓦聚成-』121頁
<関連情報>
1.国指定史跡「土塔」に関する堺市のホームページ
国指定史跡「土塔」のページはこちらから
「土塔について」のページへはこちらから
「土塔の文字瓦」のページへはこちらから
2.行基に関る情報
「現代に生きる僧・行基の伝承伝説」のページはこちらから
行基生誕1350年記念講演会「堺から仏教を変えた行基さん」のページはこちらから
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