歴史を未来へ!「SDGsモデルとしての行基事績の再評価」
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前田秀一 プロフィール
<調査研究趣旨>
およそ1600年にわたる堺の歴史において貴重な有形・無形の文化財が多く築き上げられ、その代表例として百舌鳥・古市古墳群が世界文化遺産に登録されました(2019年7月)。
これら堺に固有の文化財は、堺市民が市民としてのアイデンティティ―を築く仕掛けであり、世に誇り、その自覚の上に異文化を受け入れ、共生の価値観を醸成する貴重な財産です。
2015年9月開催の国連サミットにおいて、2030年を年限として「誰一人取り残さない」を基本理念のもと持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現に向け17の新たな国際目標が設定されました。
私は、「持続可能な開発目標(SDGs)」17」項目の内、「4.質の高い教育をみんなに」を基盤として「5.ジェンダー平等を実現しよう」、「10.人や国の不平等をなくそう」、「11.住み続けられるまちづくりを」、「16.平和と公正をすべての人に」、「17.パートナーシップで目標達成しよう」を重点としてその達成貢献します。
今を遡る1300年前、郷土(堺市および大阪狭山市)が誇る僧・行基は、「大宝律令」制定のもと発布された「僧尼令」(701年)をきっかけとして、法興寺(現飛鳥寺)を辞して帰郷し、生家を「家原寺」と改称(704年)して郷里の人々をはじめ民衆の教化と救済に乗り出しました。
705年には郷里の人々に請われて大須恵院(現高蔵寺)を建立し斜陽化しつつあった地元の須恵器産業を再生し平安時代までの約500年間にわたり日本の代表的な須恵器生産地として繁栄へ導きました。
723年、開墾田の三世代私有が認められた「三世一身の法」が発布されると、これを契機として行基は多くの知識(*1)を集め750年までに次表に示す多くの社会的事業を成し遂げました。
727年には、民衆が特別な技術がなくても自分にできる奉仕の力で土を盛り上げ信仰の神髄としての塔「土塔」を造り上げ、福田(ふくでん)思想(*2)による利他行(*3)のシンボルとして国の史跡に指定され(1953年)、堺市の総合的な発掘調査を経て整備復元されました(2008年)。
*1:行基を通して仏縁を望む人々 *2:善い行為の種をまいて功徳を得る *3:自分の利益より他人の利益を優先する
行基の行くところ追随する民衆は後を絶たず、時には1,000人にも及んでいたと伝わり、反社会的人物と警戒もされましたが、遂には知識集団とともに利他行をなす人物として評価され聖武天皇から国家のみならず民衆社会の安寧を祈願する盧舎那仏金銅(大仏像)の建立に協力しました。
このような行基の幾多の社会的事績は、2030年に向け「誰一人取り残さない」を理念として導入されたSDGs(持続可能な開発目標)の概念に重なることが多く、SDGsの視座から可能性を考察し、市民の身近な事例としてSDGsへの理解を助けるに相応しいと考えます。
< 調査研究概要 >
1.文献・資料調査
2.テーマ「歴史を未来へ! SDGsモデルとしての行基事績の考察」に関する意見交換
関連諸団体および一般市民とプロジェクト結成のあり方を検討
3.SDGs(持続可能な開発目標)事例勉強会 相談窓口:堺市・環境政策課
4.行基事績の勉強会 相談窓口:堺市・文化財課
5.SDGs(持続可能な開発目標)モデルとしての行基事績の考察
広く市民との情報・意見交換、SDGs視座からの行基事績の考察 シンボルとして「土塔」の顕彰
6.活動成果物(「SDGs堺モデル」)のまとめ、報告
近畿ブロックユネスコ活動研究会、近畿ESDコンソーシアム発表会、堺ユネスコ協会(HP投稿,説明会開催等)
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