在日外国人のための法律 1日1条

留学・ビジネス・結婚・永住・帰化、日本で生活していく上で必要になる法律を1日1条づつ分かりやすく解説していく法律講座です

「留学」と「就学」

2005年02月04日 | 在留資格
それでは、今日から個別の「在留資格」について解説をしていきます。
最初に取り上げるのは、「留学」と「就学」です。
どちらも日本国内にある学校で学ぶ外国人学生に与えられる在留資格ですが、その学生が通っている学校によって区別されます。

入管法別表第一の四では次のように規定されています。
「留学」・・・「本邦の大学若しくはこれに準ずる機関、専修学校の専門課程、外国において十二年の学校教育を修了した者に対して本邦の大学に入学するための教育を行う機関又は高等専門学校において教育を受ける活動」
「就学」・・・「本邦の高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)若しくは盲学校、聾学校若しくは養護学校の高等部、専修学校の高等課程若しくは一般課程又は各種学校(この表の留学の項の下欄に規定する機関を除く。)若しくは設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関において教育を受ける活動」

簡単に言うと、大学・専門学校は「留学」、それ以外の学校は「就学」です。
で、実際には「就学」のほとんどはいわゆる日本語学校で学ぶ外国人学生に与えられています。
日本語学校の多くは株式会社、有限会社、個人が運営していますので、各種学校になるわけです。
同じように日本語を勉強していても、専門学校の日本語科、大学の留学生別科で学んでいる学生は大学・専門学校の学生ですので、在留資格は「留学」です。

在留資格の違いにより、次のような違いが出てきます。

1.日本語を勉強したあと、大学学部・大学院・専門学校などに進学する場合
「就学」の学生は在留資格が「留学」に変わります。そこで在留資格変更許可申請が必要になります。
これに対して「留学」の学生の場合は、進学しても「留学」のままなので在留期間更新許可申請を行うことになります。

2.在留期間
「就学」の在留期間は1年または6ヶ月ですが、「留学」の在留期間は2年または1年です。

3.資格外活動
「留学」も「就学」も就労を認められない在留資格ですが、資格外活動の許可を受けることによって、ある一定の範囲内・時間内で働くことができます。
「就学」の場合は、1日4時間以内ですが、「留学」の場合は1週28時間以内(学校の長期休業中は1日8時間以内)です。
「留学」の場合も「就学」の場合も風俗営業店で働くことはできません。
ここで言う「風俗営業」はいわゆる性風俗店だけではなく、パチンコ店・マージャン店なども含まれますので注意が必要です。
店内で働いているだけでなく、ティッシュを配ったりしてる場合も該当します。

最後に、話が変わりますが、もう一度上に書いた「入管法別表第一の四」の「就学」の規定をご覧ください。
この在留資格を取得できるのは高校生以上なのです。
つまり、小学生・中学生が単独で日本へ来て、日本の学校で勉強するという在留資格はないことになります。
もちろん、「家族滞在」等の在留資格で学校に通うことは何の問題もありません。

上陸審査基準の適用・不適用による分類

2005年02月03日 | 在留資格
在留資格を分類するもう一つの分類基準として、「上陸審査基準の適用を受けるか否か」という点があります。

上陸審査基準の適用がない在留資格
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、文化活動、短期滞在、特定活動、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者

上陸審査基準の適用がある在留資格
投資・経営、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術、人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、留学、就学、研修、家族滞在


上陸審査基準の適用がない在留資格の場合
例えば、「外交」の在留資格なら、自分が外交官であることを証明すればよく、それ以外の基準はない、ということです。
「日本人の配偶者等」の場合も、本当に結婚していること、偽装結婚ではないことを証明すれば、在留資格が認められます。

上陸審査基準の適用がある場合
例えば、「投資・経営」の在留資格を取得するには、ただ「会社を作った」というだけではダメで、会社の規模がある一定水準以上でなければなりませんし、本人にもそれなりの経歴がなければなりません。

在留資格ごとの詳しい基準は、それぞれの在留資格を解説する際に説明します。

なお、この上陸審査基準は在留資格の変更のときにも準用されます。

働くことができる在留資格とできない在留資格

2005年02月02日 | 在留資格
昨日は在留資格の根拠として「活動」に基づくものか「身分関係」に基づくものか、で二つに区分しました。
今日は「就労可」か「就労不可」かで区分してみたいと思います。

就労可能な在留資格
指定された範囲内で就労できる在留資格
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、投資・経営、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術、人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、特定活動(指定された活動による)
今、問題になっているフィリピンパブなどのように、「興行」の在留資格で「接客」を行うことは違法です。

就労活動に制限のない在留資格
永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者
単純労働も認められています。

就労不可能な在留資格
文化活動、短期滞在、留学、就学、研修、家族滞在、特定活動(指定された活動による)

「文化活動」「留学」「就学」「家族滞在」は資格外活動許可をとることによって、一定の制限時間、一定の範囲の業種で就労することが可能です。

活動に基づく在留資格と身分関係に基づく在留資格

2005年02月01日 | 在留資格
日本に滞在する外国人の方には必ず一人に一つの在留資格が付与されています。
在留資格が無い外国人はすなわち不法滞在であり、また二つの在留資格を持っている方もいません。

現在、27の在留資格があります。
そして、それぞれの在留資格によって許可される活動内容が法律によって決められています。

これらの27の在留資格はさまざまな基準でいくつかのグループに分類することができます。
今日は在留資格の根拠によって分類してみます。

在留資格は大きく「活動に基づく在留資格」と「身分関係に基づく在留資格」に分類できます。

活動に基づく在留資格
規定された範囲の活動を行うことによって与えられる在留資格で、活動内容に制限があります。
例えば、「留学」の在留資格は「大学等の学生」としての活動を行う、つまりは大学等で勉強する者に与えられる在留資格で、それ以外の報酬を得る活動をしてはいけません。

よく「就労ビザ」などという言い方をしますが、「就労ビザ」があればどんな仕事でも働いて良いというわけではありません。
いわゆる「就労ビザ」の中には様々な「在留資格」があり、例えば、中華料理店の料理人として「技能」の在留資格を与えられている人が、「接客」等の料理人以外の仕事をすることは禁じられています。
ご注意ください。

「活動に基づく在留資格」は下記の通りです。
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、投資・経営、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術、人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、文化活動、短期滞在、留学、就学、研修、特定活動

身分関係に基づく在留資格
婚姻関係・親子関係に基づく在留資格です。
日本人と結婚した人に「日本人の配偶者等」が与えられます。
活動内容に制限はありません。(ただし、「家族滞在」は基本的に就労活動を行うことはできません。)

「身分関係に基づく在留資格」は下記の通りです。
家族滞在、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者

在留資格と査証(ビザ)

2005年01月31日 | 在留資格
よく「ビザの更新」とか「ビザの変更」という言い方をします。
厳密に言うとこれは間違いです。
「ビザ(査証)」は通常1回きりのもので、日本に上陸した時点で「USED」のスタンプを押され、それで終わりになるからです。
「更新」や「変更」は存在しません。
「ビザ(査証)」は在外日本公館が与える推薦状のようなものなので、上陸審査が終われば無用のものとなるのです。
上陸審査を経て、上陸許可を与えられると、同時に「在留資格」を与えられるわけです。

例えると、大学の入学試験の時に高校の先生が書く「推薦状」が「ビザ(査証)」で、
大学入学後の「学生証」が「在留資格」です。

じゃ、なぜそんな「推薦状」=「ビザ(査証)」が必要なのか。
一番大切なのはパスポートが本物かどうかの証明です。
世界には何百と言う国があります。
日本で上陸審査をする人が、それら全てのパスポートの様式を覚えておくことは不可能です。
そこで、現地の日本大使館員がそのパスポートの有効性を証明するわけです。
他にも例えば、その人の住所なんかも、日本にいるとそもそもそんな住所があるのかどうか、大学だってそんな大学が存在するのかどうか、全く分からないので、それを現地で証明するわけです。

で、今度はその人が日本で何をするのか審査しなければなりません。
学生だったらそんな学校が本当にあるのかどうか、条件にあった学校なのか、働くのならその会社がどこにあるのか、規模や労働条件は適当かどうか。
これらは日本側が審査します。
審査の結果、条件を満たしていれば与えられるのが「在留資格」です。

うまく説明できたか自信がありませんが、とりあえず「在留資格」と「ビザ(査証)」は違うものだということは理解してもらえたでしょうか。
通常は別にそんなに区別しなくてもあまり問題はありませんが、実際の手続き上ではこれをしっかり区別して理解していないと、話が分からなくなってしまうことが多々あります。
正確には区別しなくても構いませんので、とりあえず「在留資格」と「ビザ(査証)」は別のものなのだということだけは、頭の片隅にでも入れておいてください。

在留資格

2005年01月30日 | 在留資格
さて、昨日までで「出入国管理及び難民認定法」(入管法)の解説は終わりです。
78条の後ろには「附則」として、改正法の施行日、経過措置などが書かれていますが、立法史に興味がある人でもなければ、あまり興味が無い部分だと思いますので、このブログでは省略します。
入管法については、これで終わることとし、「外国人登録法」の解説に入ろうと思ったのですが、質問も多いので、その前に在留資格についてしばらく解説してみたいと思います。
「法律 1日1条」というタイトルからはちょっと外れますが、どうか皆様しばらくお付き合いください。

タイ人少女メビサちゃんのこと

2004年12月21日 | 在留資格
タイ人少女メビサちゃんに関して次のような報道がありました。

朝日新聞
http://www.asahi.com/national/update/1221/003.html

毎日新聞
http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/12/21/20041221ddm041040094000c.html
http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/12/21/20041221dde041040045000c.html

この報道で気になったのはメビサちゃんの「安心して日本で暮らし、家族と一緒に住みたいので、特定活動ではなく定住ビザをお願いします」という発言や、
PTA会長の「彼女に定住者資格を与え、安心して暮らせるようにしてほしい」という発言。

「定住者」という在留資格は「特定活動」と比べて、特別安定した在留資格ではありません。

特に毎日新聞の
「今後、就学目的での滞在が認められるが、在留期限(最大1年間)が切れるごとに更新を申請する必要が出てくる。」
という記述は明らかに誤解に基づくものと考えます。
「定住者」の在留資格を認められたとしても、「在留期限が切れるごとに更新を申請する必要」があるのは全く同じです。

名前が似ているので、誤解されることが多いですが、「永住者」と「定住者」は全く別の在留資格です。
「永住者」の在留期間は無期限ですが、「定住者」には1年または3年の在留期間があります。
「定住者」は「日本人の配偶者等」と同じで身分に基づく在留資格で、日本人の養子とか日系人に与えられる在留資格です。
「定住者」の資格で何年か日本で品行方正に暮らしていれば、「永住者」へ変更することができます。
この点でも「定住者」は「日本人の配偶者等」「人文知識・国際業務」等の他の在留資格と変わるところはありません。
つまり、「定住者」は在留資格として特に安定したものではないのです。

また、「定住者」と「特定活動」はともに「法務大臣が特別に認める」在留資格であるという点で共通です。
先ほど述べた通り、在留期間も定められています。
違いは「定住者」が主に身分関係に基づいて日本での在留を認めるのに対し、「特定活動」は活動内容を指定して在留を認める、という点です。
従って、「定住者」には就労が認められますが、メビサちゃんの場合は「就学」による「特定活動」ですから就労が認められません。
違いはそれくらいです。

従って、メビサちゃんが中学卒業後、日本で働きたいというなら不都合が生じますが、高校等へ進学して「就学」を続けるなら何の不都合も無い、と言えます。

メビサちゃんに関しては個別の事情があるので、何とも言えませんが、「永住者」と「定住者」に関しては誤解が多いので、今日はあえてこの点について解説させて頂きました。

と、ここまで書いたところで、法相の次の発言。
「今後、居住実績を積んでもらうことで、将来的には定住、永住への道が開ける」
こういう誤解を受ける発言は止めましょう。
発言する前に、入管の現場の人にレクチャーを受けてから発言して欲しいものです。