翔殿の胡椒&故障少々blog

群馬大学医学部4年生:翔殿の、ゆるい、しょっぱい、スパイス生活が満載だゼ

ラッシュライフ

2005-10-03 00:14:21 | 文化人
 伊坂幸太郎のを読み終えたんだ。
 ストーリーは、
泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神にあこがれる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場―。
 と背表紙に書いてある。

 ここからが、俺の感想。
 表紙があんまり好きじゃない。ジャケ買いをする気分にはなれなかった。読書仲間から、この作者がおもしろいっていう話を聞いていたから手に取っただけ。

 だけど、この背表紙に惹かれた。だって歩くバラバラ死体!だよ。開いてすぐあるエッシャーの挿絵にも興味がわいた。

 前半は、テンポが遅い。だけど、独特の語り口と表現方法が惹きつける。コジャレタ言い回しなんだ。神様は蝦に喩えて、気分は胃に表現されちゃっている。くすりと笑えるシーンが積み重なる。

 後半、特にラスト20%くらいで一気に加速。バラバラだったストーリーが一つに収斂されていく。笑えるシーンや怖いシーンに共通するオフビート。頭のどこかで読者はおかしいなって気づくはず。だけどこのオフビートが思考より早く先を読みたがらせる。そして、一気に読みきってしまった。

 不満は、確かに残る。何本もミステリーを読む人なら、この作品の収斂の仕方は明らかに予想できちゃう。過去の作品や名作映画にもごろごろある話。俺も、最初の30ページの予想がばっちりあたったし。この点において、見事一つに絡まる、なんて言い方はできない。トリックらしいトリックが使われる訳じゃないし、新鮮さという点では甘い。

 だけど、それを補ってあまりあるおもしろさがこの作品にはあると思う。なんつーか、小説の醍醐味。ミステリーではなく、小説ね。ミステリーではなく、もっと大きな大衆文学という枠組みでとらえれば、傑作。ほんとーに、これを映像化したら失敗すると思う。

 全体の評価は、100点満点中の92点。非常におもしろかったと思う。ただし、なんつーか、枠を飛び越えている作品ではないから、読書革命を期待する人にはお勧めできない。よく小説を読む人が、この作品を脳を使わず読めばこれ以上ない休息になるんだと思う。それにクスリとわらいたい人にはお勧め。

 同作者で他の作品も読んでみたいと思わせる、非常に将来有望な作家だと思う。

 って、俺はいったいどのレベルでものを言っているんだってほどえらそーな書き方でごめんなさい。だけど、批評が長くなるってことはそれだけおもしろかったってことですから勘弁して下さい。

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