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白猫夜話

フィギュアスケートっていいな

徒然に猫は語る~ニースワールド白猫考③~

2012-04-18 11:19:36 | 2011-12世界選手権(ニース)

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③は数字はまったく出てこないよ(^.^) だらだら~っとくっちゃべりますです。

ちなみにこれはみんなド素人白猫がつらつら考えたことっていうだけで何の立証もされてません。また、ニースワールドの採点の是非に言及するものでもありませんので、その点よろしく。

長いしだらだらしてるし・・・なので、お暇と根気のある方だけお付き合いいただければ嬉しいですm(__)m

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人の感動には実は「脳」がえらく関わっているんだそうな。特に脳の中の扁桃体とか即座核なるものが・・・え~と淡白脳の白猫にはよくわかんないけどね(^。^;)。

さて、いろんな刺激・情報が入ってくると、脳でそれを分類する・・・シンプルに「快」と「不快」に分けるらしいけど・・・分類するとそれに適した反応を起こさせる。動悸が激しくなるというような自律神経の反応と、思わず笑っちゃったりするような身体的反応・・・その反応を更に大脳皮質が感知し、判別して自覚する。そこまでやってやっと人は「嬉しい」とか「悲しい」とか「すごい」とか、まぁいわゆる感情とか感動というものを実感するらしい。なんともややこしいことだ。

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ニースワールド表彰台の3人のFSは、「感動」を生み出す手法の違いが明らかで面白かった。

羽生のロミオは例えるならば超面白いアニメ。はっきりくっきり、観た者を間違いのない感情の放流に巻き込む。主人公に強烈に感情移入出来るという点で出色だ。作り方もはっきりしていて、最初に劇的な音楽と大技で引込み、その後静かに繊細に表現し、最後は怒涛のコリオで爆発させる。ある意味定番の感動曲線だが定番であればあるほど老若男女問わず、人はシンプルに感動出来る。もちろんそこへストレスなく引き込める羽生の能力(技術的にも表現的にも)があればこそ可能な手法だ。

チャンのアランフェスは例えるならば自然界の営みを綴る映像。彼自身に感情移入することはないが、氷河の崩落や海のうねりや、落日の燃える色が砂漠を染めていくさまのような・・・壮大さがある。高難度ジャンプをこともなげに決め、常に大きく身体を使って、素晴らしいスピードなのにゆったりたゆとうように感じさせるスケートは、それ自体が楽曲表現だ。

高橋のブルースは・・・う~ん、あんまり例えられない(^。^;)。素人の手撮りビデオに出てくる名も知らぬ老人の人生でもあるようで、あるいは遠い国の昼下がりの景色でもあるようだ。時間と空間が自由に行き来する・・・不思議な4分半。これを競技の枠で切り取るのは至難の業だろうなぁ・・・正直、ジャッジに同情するよ(^^ゞ

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思うに、「観客(視聴者)」と「ジャッジ」の感動曲線は違うんじゃなかろうか。

感動的な映画を見ているとして、それにどっぷり浸かれるのが「観客(視聴者)」だとしたら、「ジャッジ」は同じ場で映画を見ながら時代考証や衣裳・照明をチェックし、最後に総評を書かなければならないようなもんだ。

もちろん今のルールを、細部を見て全部を見ていない、欠陥だと結論づける価値観もあっていい。でもさぁ、細部には技術を伴うでしょう?ひとつひとつのジャンプの難度・精度・・・そこにも感動は存在する。高橋大輔のサーキュラーステップだけを取り出してみても「凄い!」って白猫は思う。その評価も競技である以上必要だと思うのだよね。

つまり、細部と全部、感情曲線の違う「観客(視聴者)」と「ジャッジ」・・・その全てをつかむ演技こそ最高!・・・だからこそ、このスポーツは面白いのだとわたしは思う。

そしてルールは、よりジャッジが感情曲線に入り込みやすい形に変わってきた。「コリオ」の採用だ。わたしは、「観客(視聴者)」と「ジャッジ」の感動曲線が最も接近するのがこの「コリオ」だと思っている。技術面ではなく表現面を主に評価されるわけだしね(技術チェックが皆無というわけではないけど)。

そういえば、ステップを特集した動画を見たとき、羽生のコリオに「あれ?」と思ったことがあった。二度見して「ああ、コリオ前の雄叫びがないからか」と妙に納得。つまりそこも含めてコリオなんだろう、あのロミオは。

チャンのニースワールドFSはジャンプミスから終盤音ズレしタイムオーバーとなった。コリオは本来の振り付けよりも全面的に遅れている。白猫は最初「音ズレしてもINは1位?」と思ったもんだ。実は全体で何位というのは絶対評価ではそれほど意味はもたないけれど・・・ジャッジ全員が高く評価したのは事実。でも、この音ズレこそチャンの怖さかもしれないと今は思う。いや、「音からズレたことを平気で受け入れて表現したこと」が、だ。あのコリオで彼が表現すべきだったことは「振り付け通り滑ること」じゃなくて、「雄大で大きな彼のスケーティングと、壮大な音楽とのコラボ」だ。だからこそあの振付はピンポイントの同調整をさほど重視していない。だってさぁ、見返してみて、おかしい?おかしくないんじゃない?その意味で、逆説的だけど、遅れを取り戻すために動きをカットするとか速くするという選択肢をまったく選ばなかったことこそ、彼のプログラムへの理解力を示していると思う。しかもチャンは最後までやった。スピン後、そのまま手を開いて終われば1点を失うことはなかったのに、だ。最後の跪いたポーズで上を見上げたかったんじゃないのかな・・・そこには表現への情動がある。

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観客あってのスポーツだからこそ、長丁場のFSは感動を喚起するものが多い。

羽生は「感動する音楽」と「感動する感情開放」で。

チャンは「感動する音楽」で。

では、高橋は?・・・白猫は、感動曲線に頼らないのが『Blues for Klook 』だと思うんだ。このプログラムの魔法を起動させるのは「感動」じゃない。それは「ゆとり」・・・とか「余白」じゃないかな。ニースワールドFSはそこにテクニカルを散りばめた・・・結果的に最もジャッジがルールの縛りから解放されて堪能できるコリオが表現としては弱くなり全体のインパクトを奪ったかもしれない。けれど技術を散りばめた上であれほど楽しげに軽やかに表現できることは驚異的だ。繰り返し見れば見るほどその素晴らしさが増してくる。・・・まぁ、採点競技としては醸造されていく魅力というのは得か損かわかんないけど(^。^;)

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のらりくらりと書いてきたけど、最後に。

フィギュアスケートは誰のためのものだろう?

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観客(視聴者)は感動を求める。そして自らが感じた感動と同じ結果を求める。

ジャッジはこの競技の進化に寄与すると信じてルールを遵守するが、それは時に観客の感動とは乖離する。

そしてスケーターは自らの理想を追い、最終的な満足を求める。

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白猫は、その全てのためにあると思う。だからフィギュアスケートはこんなに奥深く、こんなに面白いんだ。

「観客(視聴者)」・「ジャッジ」・「スケーター」、3つの異なる視点の感動曲線。その全てを手にした者こそが、真の王者なのだと思う。なかなか簡単には生まれないよね。

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・・・そしておそらく、「彼」ほどその3つの視点を無意識に持っているスケーターはいないと白猫は思ってるんだ・・・(^.^)

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徒然に猫は語る~ニースワールド白猫考②~

2012-04-18 03:51:01 | 2011-12世界選手権(ニース)

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さて、①の続きである。

何度も但書して申し訳ないが・・・この「徒然に猫は語る」はド素人白猫がぼーっと考えたってだけのことでなにも立証されていないこと、またワールドの採点や現採点方式の是非に言及するつもりがないことを明記しておきたい。

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①でニースワールド男子FSジャンプをジャッジ視点で考えてみたとき、ふと思ったことがあった。

当たり前のことだけど、GOEとは、各エレメンツの出来栄えを評価して得点化するものだ。プラス面を評価し、その後にマイナス面を引き算してGOEは決定される。残念ながらそのプラスとマイナスの中身はプロトコル上では見えないし、説明してくれるシステムもない。ただ・・・白猫が思うに・・・え~と白猫の勝手な推論だよ?・・・トップ選手の場合プロトコルに記されたプラスマイナス「0」というGOEには何らかの相殺の可能性があると思える。だから白猫はいつも+1.00以上の加点に注目している。特に+2.00以上となるとかなり大きなプラスポイントがあるということだ。

各エレメンツを評価したジャッジたちは最後に全体のPCSを評価しなければならないが・・・その際に改めてプログラムを見直すことはできない。つまり如何にエレメンツの成否に関わりなくPCSを採点するとしても、当然それまでの評価は印象として全体評価に影響を与えると白猫は思うのだ。・・・というか、それが脳の働きとして当然のことだと思う。

で・・・ちょっと興味があったので、チャンと高橋の今季の国際大会プロトコルを見直してみた(もちろんジャッジ陣が違う大会を比べるのはあまり意味がないんだけど、ね) ①でもやってみた、全ジャッジがつけるGOE117個を見てみる・・・というやり方だ。今回は、+2以上(+2と+3)、+1以上(+1・+2・+3)、及びマイナス評価(-1・-2・-3)を算出してみた。結果は以下のとおり。

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GPS①(2人ともスケートカナダ)

高橋:83.84(0.78:J-3.65、Sp1.72、St2.71)+2以上33、+1以上63、マイナス評価33

チャン:87.64(7.52:J1.57、Sp2.79、St3.16)+2以上53、+1以上84、マイナス評価19

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GPS②(高橋NHK杯、チャン仏杯)

高橋:90.28(6.02:J0.75、Sp2.21、St3.06)+2以上53、+1以上75、マイナス評価30

チャン:85.14(5.52:J2.54、Sp2.58、St0.40)+2以上40、+1以上76、マイナス評価26

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GPF

高橋:85.58(8.26:J3.66、Sp1.50、St3.10)+2以上39、+1以上89、マイナス評価10

チャン:87.08(3.84:J-1.56、Sp2.50、St2.90)+2以上49、+1以上84、マイナス評価28

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四大陸

高橋:84.86(5.76:J0.10、Sp2.36、St3.30)+2以上42、+1以上76、マイナス評価24

チャン:90.16(14.29:J8.26、Sp2.93、St3.10)+2以上74、+1以上103、マイナス評価8

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ニースワールド

高橋:85.78(8.25:J2.74、Sp2.21、st3.30)+2以上42、+1以上80、マイナス評価15

チャン:90.14(14.45:J7.99、Sp2.86、St3.60)+2以上71、+1以上99、マイナス評価9

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これを見て感じたのは、チャンの「+2以上の加点の多さ」だ。直接対決していないGPS②を除いて全てチャンの方が多いのだ。意外だったのは、GOEそのものでは高橋が倍以上だったGPFですら+2以上の加点だとチャンが上回るということ。

そしてもうひとつ、高橋に関してだが・・・ミスがあってジャンプGOE自体は0.75のNHK杯。しかし、+2以上の加点は53で今季最高数だったのだ。そしてジャンプそのものもミスによってトータルGOEはマイナスになっているが、実は+2以上の加点が22個ある。これも今季最高だ。

実は、GOEと簡単に言うけれど、プラス面とマイナス面では評価の仕方というか方式が違う。プラス面はガイドラインがあって・・・プラスと評価できるポイントがいくつかありそのうちの2つを満たせば+1、4つなら+2、6つ以上なら+3・・・というつけ方だ。一方マイナス面は明確な記述がある。例えば転倒は-3、ジャンプまでの長い構えは-1から-2・・・という風に。つまり、だ。ジャッジ視点で見ると、裁量の幅が大きい分、プラスの方が考える必要があるってわけだ。だからこそ+2や+3のGOEというのはジャッジの印象に強く残るのではなかろうか・・・。観客が転倒を強烈に記憶するのとは逆に、だ。プラス面を重要視して審査するからこそ、観客とは違う印象が生まれてくるのではないかと白猫は思う。

ニースワールドのチャンのプロトコルには「0」が、ない。明らかなミスであった2つのジャンプを除いて、マイナス要素もない。実はGOEだけを見れば、ほぼパーフェクトに見えた四大陸とそれほど変わらない。むしろ+3は5個増えている。

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え~と・・・2回で終わるはずだったんだけどねぇ・・・終わらなかった・・・まだ続くんだけど、長くなったのであとは次回(^。^;)

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徒然に猫は語る~ニースワールド白猫考①~

2012-04-16 18:36:01 | 2011-12世界選手権(ニース)

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今季最後の戦い、国別まであと3日。それまでにまとめてみたいと思っていた、ニースワールド男子シングルについて少し書いてみようと思います。

いつもながらの但書になるけれど、あくまでもド素人白猫が感じたことを綴ったものであって、何の立証もされていないことを明記しておきます。

・・・え~と、白猫は超大輔ファンだけど、この記事はその目線では書いていないので辛口かもしれない。だから「そういうのは嫌」って方は読まないでねぇ(^。^;) あ、それから滅茶苦茶長いので、「長いのが嫌」って人もスルーしてねぇ(^。^;) ついでに言うと、白猫は高橋大輔の今季のプログラムはSPもFSも凄いプログラムだと思っていますし、酔っ払うほど見続けてます。が、この記事はそういう好き嫌いにも、結果や採点の是非にも言及してません。なんとなく感じたこと、考えたことを羅列しただけです・・・お時間と忍耐力のある方はお付き合いいただければ嬉しいです(^^ゞ

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それから、いつもたくさんのコメントをありがとうございます。お返事するのがとても遅くなってしまって本当に申し訳ありません。気長に待ってていただけると嬉しいです・・・。なお白猫記事に関しては賛否両論あって当然だと思っていますし、その点に関しては大丈夫です(^。^;)

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歓喜にわき、立ち上がった観客。胸をなでおろしながらもリンクを去る際小さくガッツポーズした高橋大輔。笑顔のコーチと振付師。高得点を促す手拍子。

それがしばらく後には、ブーイングに変わり、キス&クライの表情が凍りついたことを、白猫はおぼえている。あの時のなんとも形容しがたい気持ちも、その後の長いやるせなさも・・・。

けれど、それらを全部わきに置いて、演技映像とプロトコルをながめてみた。・・・実は最初にプロトコルを見たときにちらっとひっかかっていたことがあったから。

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以下は最終順位のTOP6を、FS順で並べたもの。数字は左から、PCS、(GOE、ジャンプのGOE、スピンのGOE、ステップのGOE)。赤字はマイナス評価。

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①チャン 90.14 (14.45、J7.99、Sp2.86、St3.60)

②羽生 83.00(12.74、J8.34 、Sp2.07、St2.33)

③高橋 85.78(8.25、J2.74、Sp2.21、St3.30)

④アモディオ 81.66(9.05、J4.31、Sp2.14、St2.60)

⑤ジュベール 81.94(7.49、J3.89、Sp1.86、St1.74)

⑦ブレジナ 77.02(-2.70、J-5.83、Sp1.03、St2.10)

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★すぐに気付くのは、チャン・羽生のGOEの高さ(14.45と12.74)、そして高橋のジャンプGOEの低さだ(2.74)。上位5名中最も低い。

そこでジャンプを取り出して詳細を記してみる。ジャッジは9人、そのジャッジたちが13個のエレメンツ評価をしたものがGOEだけど、ひとつのエレメンツに対してジャッジ数分9個のGOEが付けられ上下カットの上で平均値に係数を掛けてGOEが算出される。プロトコルには+3だの-2だのという数字が全部で117個並んでるわけだ。うち、ジャンプは8回跳ぶから8×9=72個の数字があるってわけ。それを係数どおり・・・つまり+3だの-2だのをその数字通り計算してみた。当然数字が多いほうが評価が高いということになる。多い順に並べてみた。なお、( )内は内訳。例えば、+3×8回→これは+3が8個プロトコル上にあるということ。

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①羽生 84(+3×8、+2×20、+1×22、0×20、-1×2)

②チャン 78(+3×9、+2×24、+1×21、0×0、-1×1-2×7-3×1)

③アモディオ 48(+2×17、+1×28、0×16、-1×8-2×3)

④ジュベール 37(+2×12、+1×34、0×9、-1×13-2×4)

⑤高橋 30(+3×1、+2×10、+1×25、0×21、-1×12-2×3)

⑥ブレジナ -54(+3×1、+2×7、+1×8、0×18、-1×12-2×11-3×15)

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これがジャッジ視点のジャンプ評価だ。集計をして気がついた事は、

★羽生は-2、-3が皆無で、-1評価すら2回しかない。つまり、ジャッジ視点では、少なくともジャンプに関しては彼こそが最もパーフェクトに近かったということになる。

★チャンは明らかなミスが2回あった。ハーフLo絡みの3連と、最後のすっぽ抜け1Aだ。1Aはまったく得点化されなかったので、この合計9つのマイナス評価は全て3連へのものだ。注目すべきは、「0」評価がまったくないということ。つまり、その2回のジャンプ以外は全てのジャンプをジャッジは高評価したということになる。そして1Aはノーカウント扱いなので評価対象になっていないためプラスマイナスが微妙なジャンプよりもジャッジの脳内ではリセットしやすいと言えるかもしれない。不本意だが人の脳の働きから言うとそれは有りうる。

★高橋はプラス評価が36、「0」が21、マイナス評価が15だ。この「0」には着氷などのマイナス面と音楽表現のプラス面を相殺したものも含まれていると思う。GOE合計の30は羽生・チャンの半分にも満たない。観客・視聴者からノーミスに見えた演技は、実はジャッジには「非常にジャンプが不安定」と評価されていたことがわかる。

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今回やってみたことは、『ジャッジにはどう見えていたのか』を考えてみることだった。その限りにおいて・・・各エレメンツを採点している段階のジャッジの目には、高橋大輔はパーフェクト演技とはうつらなかっただろうと思われる。

そして、この「印象」という曲者は、意識の中に潜り込みPCSに影響を与えるのではないかと、白猫は思っている。

以下はPCSとGOEについてざっとまとめたもの。各ジャッジのGOEをその数どおりに計算した値と、PCS(ちなみに、選手ごとにシャッフルされるのでJ№は全体には意味を持たない)。たとえば、チャンの項目・・・「GOEは+10~+23」というのは全エレメンツを合計して+10のジャッジが最低値、+23のジャッジが最高値だったよってこと。「PCSは83.00~91.50」とは、平均化される前の各ジャッジの出したPCSは最低83.00から91.50までの幅があったということ。「J1+23→90.50」は、ジャッジ№1はチャンに「GOE評価として合計+23をつけた。そしてPCSは90.50をつけた」ということ。当然各エレメンツはその難度によって係数をかけるのでプロトコル上でジャッジがつけたGOEと実際に加算されるGOEは違うが、そのジャッジの演技に対する評価はわかる。順番はPCS順。

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①チャン GOEは+10~+23、PCSは83.00~91.50

J1+23→90.50、J2+23→91.00、J3+23→89.00、J4+17→91.50、J5+10→83.00、J6+20→89.50、J7+20→91.50、J8+17→90.00、J9+21→91.50

GOE最低評価のJ5はPCSもオール8点台でその全てが全体の中での最低評価。最高評価のジャッジとは8.5の差がある。

②高橋 GOEは+7~+19、PCSは82.00~88.50

J1+10→83.50、J2+10→85.00、J3+13→82.00、J4+19→88.50、J5+12→84.00、J6+7→84.00、J7+9→86.50、J8+16→88.50、J9+17→88.00

PCS88点台はGOE上位評価3名のジャッジと同じ。

③羽生 GOEは+12~+22、PCSは75.00~90.00

J1+13→76.50、J2+22→87.00、J3+16→85.00、J4+22→90.00、J5+19→81.00、J6+16→83.50、J7+12→75.00、J8+18→87.00、J9+14→81.00

GOE最低と最高のジャッジがPCSも同じく最低と最高。その差は15点。

④ジュベール GOEは+8~+16、PCSは78.50~86.50

J1+8→80.00、J2+8→78.50、J3+16→85.50、J4+9→82.00、J5+14→82.50、J6+8→82.00、J7+13→84.00、J8+11→86.50、J9+9→80.00

GOE最高評価のジャッジPCSは高いものの、最高得点ではない。最低評価のジャッジは複数いるがそのうちの一人は最低PCS。差は8点。

⑤アモディオ GOEは+11~+19、PCSは78.00~86.00

J1+12→82.50、J2+15→81.00、J3+15→82.50、J4+14→79.00、J5+19→86.00、J6+14→82.00、J7+11→78.00、J8+12→81.50、J9+15→83.00

GOE最低と最高のジャッジがPCSも同じく最低と最高。その差は8点。

⑥ブレジナ GOEは-4~+3、PCSは75.00~81.00

J1+2→76.00、J2-4→75.50、J3+3→78.50、J4-4→76.50、J5-2→79.00、J6+-0→75.00、J7+-0→75.50、J8-3→81.00、J9+3→77.00

ブレジナの場合、GOE評価とPCS評価の相関性は薄い。

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以上のことを踏まえてだが・・・。

「ジャッジ」と「観客・視聴者」は、違う。何が違うかというと、プロとアマなんてことだけではなくて、まず第一に物理的環境が大きく違うのだ。

ジャッジは各エレメンツ・・・FSならば13個のエレメンツを評価して得点化する。そしてそれらの評価を次のエレメンツに持ち越してはならない。もちろんエレメンツの入と出は評価対象だが、それ以外はひとつひとつを分断して評価すべきなのだ。・・・ほら、前のジャンプが転倒したから次のジャンプが素晴らしくても評価しない・・・なんてことにならないように、エレメンツごとに一応リセットして次のエレメンツに臨んでるわけだ。GOEの中には音楽との融合性なんて項目もあるから当然技術面と情操面を考えるわけだけど、エレメンツ終了時点でリセットするということは、見たままを受け取っている観客・視聴者に比べて感情の増幅が起こりにくいということだ。

ところが、ジャッジは最後に、全体を評価しなければならない。

で、想像するに・・・ほぼ毎回のジャンプが微妙で「着氷がマイナスだなぁ、でも音楽ともあっているし入りに工夫もあるしその点ではプラスだ・・・相殺してGOEは+-0だな」というように『プラスとマイナスを考えさせられるジャンプが続いたプログラム』と、「高さ・幅でプラス、楽曲表現でプラス、着氷の流れでプラス」という『加点方向ばかりを考えたジャンプが続いたプログラムで』は、ジャンプが8回もあれば相当印象に差が出るのではなかろうか。

つまり、高橋のジャンプGOEの低さは、プログラム完成度という点においてPCSに影響を与えたのではないかとわたしは思うのだ。・・・ちなみにそれが是か非かを論じているのではないことはご理解いただきたい(・・・でも是非もなく無意識の中に盛り込まれる印象だと思うけどね)。

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実は4/13の『徒然に猫は語る~実らなかったけれど大きな収穫・高橋大輔のTR~』は、文中の2つの箇所が批判を受けるかもしれないと思いながら書いたものだ。以下の部分だ。

苦い味をともなってだけれど今後の為に有意義だった成果は、「ジャンプの精度、特に着氷精度を上げなければ、GOEの少なさが全てを凌駕してしまう」ということ。

カメレンゴプロは体力とエレメンツ精度にまだ若干の不安を抱える高橋にとっては足枷になるかもしれない。

ここで白猫は、「FS評価が思いのほか低かった理由はジャンプ精度によるGOEの少なさからくるもの」であり、「ニースワールドの『Blues for Klook』を高評価で滑りきるには高橋にはまだ欠けているものがあったのかもしれない・・・」と書いているも同然だからだ・・・実は。(う~、物を投げられそうだが・・・ごめんなさい(;´Д`)

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わたしはこの『Blues for Klook』はそれほどに危険でかつ魅力的なプログラムだと思っている。

過去に「Bluesの魔力~カメレンゴプロに思う~」という記事を書いたが(2011/12/4)・・・この時、特徴として書いたいくつかのことがらはニースワールドではカウントできなくなった。例えばサーキュラーとコリオの明確な差、後半へいくに従って空間の使い方が変わってくる、など。

けれどこの時に感じていたことと同じことを今も思う。

楽曲が助けられない盛り上がりを「ジャンプ構成と振付」で助けている

・・・そう、だからこそジャンプの精度はこのプログラムを盛り上げるために必要不可欠なのだ。このプログラムを選び、難しい賭けをするならば、手の内に持っておかねばならない手札だと思う。そして・・・少なくともジャッジ視点から見たニースのFSは、この手札を持っていなかったということになる。

ただしその理由のかなりの部分が、振り付け修正時期と実戦数にあると思われる。どれほど追い込んだ練習をしても、実際の競技での経験に勝るとは言えない。振付そのものをほとんどいじらずに何度も大会を経てきたチャンや羽生とは、実戦数の差があったわけだ。だからこそわたしは国別のFSに非常に期待している。

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え~と、まだ続くんだがさすがに長くなりすぎたので、あとは次回。

内容は、「採点の整合性」について(^^)

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徒然に猫は語る~実らなかったけれど大きな収穫・高橋大輔のTR~

2012-04-13 13:07:22 | 2011-12世界選手権(ニース)

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振付の細かな手直しが全体の印象も大きく変えたニースワールドの 『 Blues for Klook 』 。

それは決して採点の数字に効果を表さなかったけれど、逆にPCS評価では不利に働いたかもしれないけれど・・・ソチまでの長いスパンで見れば素晴らしい挑戦であったと思う。

大きな成果は、高橋大輔自身の身体に蓄えられた「自身初というくらい豊富なTRを散りばめた上でエレメンツを決められたという自信」と、「サーキュラー、コリオの各ステップで試みた限界への挑戦」、そして「観客の反応」だ。

一方、苦い味をともなってだけれど今後の為に有意義だった成果は、「ジャンプの精度、特に着氷精度を上げなければ、GOEの少なさが全てを凌駕してしまう」ということ。

それらを含めた、『プログラムの重要性』と、『プログラム修正の重要性』がはっきりと見えたワールドだった。

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ネット上に『高橋大輔の謎の素敵ステップ』という興味深い動画が上がっていたここだよ

おそらく多くのファンが気づいただろう、コリオ終盤のステップしながら足を打つシーンだ。実は数シーズン前からパトリック・チャンのTRに頻繁に見られるフットワーク中の足打ち(技名があるかもしれないね)。しかし、ステップ中、そこだけジャンプして足打ちするというのではなく、音のリズムに合わせてタメも伴って・・・というのは初めて見た気がする。

この中毒になりそうな足技に加え、推進力をストロークに頼らない繋ぎの盛り込みは、今回に関してはジャンプの高さと精度を奪ったと思うし、勝利を遠ざけたのかもしれない。

しかし、この試みが今季出来たことは非常に大きな意味を持つと白猫は思う。

五輪まであと2シーズン4プログラム(EXは除く)・・・多くの大輔ファンの怒りをかうことを承知で書くけれど・・・カメレンゴ振付から他の振付師へとシフトする時期なのかもしれない(FSに関してだけど)。五輪シーズンにいきなり新たな振付師と組むのは危険が大きい。高橋本人も語っているように組んで2年目に最もいいプログラムが出来るという。

わたしはカメレンゴ振付が大好きだ。「道」も「ピアソラ」も、「ブルース」も。高橋大輔ならではのプログラムだったとも思う。けれど、カメレンゴはいまや超売れっ子振付師である。来季はプルシェンコ、羽生との仕事も控えているらしい。高橋大輔にさく時間も思いも今以上に大きくなりはしないのではないだろうか。そして何よりも、カメレンゴプロは体力とエレメンツ精度にまだ若干の不安を抱える高橋にとっては足枷になるかもしれない。今季SP 『 In the Garden of Souls 』 の一歩一歩の伸び、速度変化、リンクの使い方、圧巻のステップを思うとき・・・わたしはウィルソンFSの高橋を見たくなる。

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ニースワールドのFS。

細かく手を入れ、全体の速度やジャンプ精度を犠牲にしてまでこだわったTRは「8.14」。この数字は今季最低のものだ。もちろん違うジャッジの違う大会を比べる意味などほとんどない。ないが・・・この数字を見るとわたしは胸が苦しくなる・・・。

GOEもPCSもある程度ジャッジの価値観に影響を受ける。その影響を「不当だ!」と叫んでも意味はない。必要なのは影響を受けない部分を如何に安定させておくかということだ。チャンが強いのは、そして羽生が今回大躍進したのは、価値観の影響を受ける部分と受けない部分、その両方を手にしたからだと思う。その意味においてこの得点・順位は理解できる(感情面は置いておいて、だが)。

白猫が混乱したのは、そして今なお混乱から覚め切っていないのは、ほかのことなんだけど・・・それはまたいずれ・・・。

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ニースのThe Crisis ソチへ・・・

2012-04-04 12:52:32 | 2011-12世界選手権(ニース)

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こころが 百面相する

うれしい かなしい くやしい せつない

思いがいりみだれて 苦しくなるよ

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だから いまは

この調べだけを きいて

君の描く世界に こころをゆだねていよう

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最後の一音の響きが消え

君がやわらかくその手をひらいたとき

新しい時間が 流れはじめた

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