他の場所じゃない、モナコGPだ!
中嶋悟がはじめてロータスに乗ってから、24年。栄光のモナコで、日本人として初めて入賞を果たした小林可夢偉。
モナコはドライバーズサーキットだと言われている。あんな小さな国の市街地を、最高速度300キロオーバーのモンスターマシンが疾走する…いったい誰が考えたんだか、無茶なレースだ。フォーミュラーカーは車高が低い。ドライバーはほとんど横たわるような状態でマシンを操る。彼らの視線に近いオンボードカメラで見ると、ガードレールが威圧的に取り囲んでいるのがわかる。モナコのコースは狭い上に、意外に高低差もあり、トンネルまである。トンネルを抜けると、いきなりフラッシュのようなまばゆい陽光が目を刺す(オンボードカメラで見るとまるで眼つぶしだ)。真っ白な中に放り出される感じだ。その上すぐにシケインが迫る。クラッシュの名所である。
かつては抜けないと言われたモナコだが、今年新しく採用されたルール(DRSとカーズ)によって、なんと、抜けるサーキットに姿を変えた。しかし抜けるとは言っても超リスキー。最終盤のクラッシュ多発は、リスキーだが抜けるがゆえに起こったと言っても過言ではないかもしれない。
ドンピシャのピットストップ作戦で4位を走っていた可夢偉にとって、クラッシュによるセーフティーカー先導、残り5周のリスタートは、厳しいものだった。もともと車の性能が違うのだから。しかし、シケインショートカットがらみで5位に後退するも、見事、モナコ日本人初入賞の快挙を達成した。
すごいよ、可夢偉。だって、なんてったってモナコなんだ。モナコの1勝は他のサーキットの3勝分の価値があるなんて言われるほど特別な場所だ。攻めて攻めて攻めきって、同時にとても冷静にマシンをコントロールしていた、侍・可夢偉に、乾杯!