おめでとう、君の優勝に文句を言える人間は誰もいないよ。
今までだって十分鼻高々だった君だが、もっともっと胸をはっても、ここしばらくは顔をしかめられることもそうないだろう。オフリンクでは大口叩いて顰蹙を買うことも多かったよね。あれほど「いらない!」って叫んでた4回転が跳べるようになった途端自慢し始めちゃったから、どうしてもファイナルで決める必要があったんだよね。GPSでは何度もすっ転びながら高得点を出すというアクロバティックな戦いを重ね、いつも得点がおかしいと言われ続けてきたんだから、そろそろ誰もなんにも言えねぇって勝利をつかみ取る必要があったよね。それをちゃんと実行したのだから(完璧ではないけど)、大いに自惚れたってかまわない。
だけどね、GPFの演技はまとまってはいたけど、わたしは物足りなかったよ。だって、あの、スケカナの、リンクから飛び出していってしまうようなスケートを見てしまったからね。でもあれをやっちゃうと制御できなくて転倒してしまうんだよね、きっと。だからその後はちと抑え目にしてまとめてくるようになったんだろうし、それが成長ってもんかもしれない。それでも他選手とはレベルの違う滑りなんだからSSが高くても当然だと思うよ(高橋はいつもの滑りではなかったしね)。
君が「最大のライバル」と呼んだ高橋大輔は、残念ながら思うような演技ができなかった。理由はどうあれ、それは彼の責任だ。もっとハイレベルな戦いを期待していたわたしはかなりがっかりしたんだけどね。君のスケートがフィギュアの基本にのっとったもので、当然ジャッジたちが高得点をつけるだろうことは予想できたし、それが間違ってるなんて思わない。これからソチまでの間、ひょっとすると君の独裁時代が到来するのかもしれないし、このファイナルがその幕開けなのかもしれない。君はそれができるくらい多くのものを持っている。情緒的ではないから好き嫌いは分かれるだろうし、常に君を嫌いな人もいっぱいいるとは思うけれど、少なくとも技術面においていままでにないくらい高い次元で、スケーティングスキルとエレメンツを揃えることができる選手だって認めざるを得ないよ。
ここしばらく、高橋と争っていることは、君の今後に良い影響を与えると思う。彼は、表現・演技そして外へ放つパワーという面において、君がかなわないものをいっぱい持っている選手だ。彼と戦うことでそういった面も取り込んでいけたら、4年後には、君は不世出のスケーターになっている可能性がある。
高橋が持っていなくて、君が持っているいちばん大きな武器は…「時間」だ。くやしいけどね。
さて、わたしは君のスケートを素晴らしいと思うし高いPCSにも感情はともかく理性では不満はないが(GPFの君のPCSの高騰の原因を作ったのは高橋だとも思うから)、正直に言うと君のスケートを愛しているわけではないし涙が出るほど感動したこともない。今後も高橋のスケートほど心を揺さぶられることはないと思う。けれど、それは単なる好みの問題だ。
おめでとう、パトリック、素晴らしい戦い方だった。
けれど、おぼえておいてほしい。まだ、戦いは終わってはいない。
3月の東京、世界フィギュア。
わたしは、高橋大輔が、怪我後失っていたジャンプの安定性を取り戻し、プログラムの重要性とスピンのレベル取りの折り合いをつけ、強くなって戻ってくると信じている。
その彼を倒した時こそ、君が、次の時代の扉をあける時だ。
けれど、簡単に扉が開くほど、我らがチャンピオンは弱い男ではないと、わたしは思う。彼が真価を発揮すれば君の独裁政権は到来しないとさえ思っている。
東京で待ってるよ。
結局のところ、憎みきれない、憎ったらしい19歳の天才へ…。