女子を観る上で興味があったのは以下のとおり
①浅田真央は結果を出せるのか
②安藤美姫はGPFで未完成に終わったSPを進歩させているだろうか
③村上佳菜子のスピードや空間表現はテレビ観戦と同等なのか
④鈴木明子のFSは完成するのか
⑤今井遥は村上と同格なのか
⑥庄司理紗はどんな選手なのか
⑦村主章枝の力は落ちているのか
⑧武田奈也や澤田亜紀といったかつてGPSにも派遣された選手の今は
これも男子雑感と同じく、後ろから感じたことを書いていこうと思う。
⑧澤田は22位(SP24位・FS20位)に終わり、武田はSP(20位)後棄権した。両者とも会場はあたたかく迎えたし、ミスがあれば拍手で励ました。けれど、彼女たちの滑りに以前感じた輝きを見つけることはできなかった。シニアの世界大会に出られることの喜びでキラキラしていた選手たちが、その後伸び悩み、そのまま消えていくことも多い…勝負の世界とはいえ、悲しいことだ。
⑦SPでは5位と存在感を示した村主だったが、FSでは9位…結局、新星庄司や西野の後塵を拝することとなった。もともと全日本には滅法強いだけにこの結果は悔しかったことだろう。30代になっても現役を貫く村主に、もう若手に道を譲れという人もいる。だがわたしはそうは思わない。譲られなければ上にあがれないようならば、世界でなんて戦えない。
⑥庄司理紗…彼女の演技、特にSPの演技は衝撃的だった。14歳という年齢とは裏腹に、幼さなど微塵もない。といって無理に背伸びした演技というわけではない。ナチュラルに空間の広い選手だ。もちろんまだ14歳、身体の変化はこれからおとずれるだろうし、それをどう乗り越えるかが課題となる。けれど、国内大会に出ただけで、複数の世界トップランク選手と戦えるという今の日本の環境が、彼女の成長を促すだろう。ソチの星は彼女かもしれない。
⑤結果を見ればSP17位、FS11位の総合12位。彼女にとっては苦い苦いクリスマスだったと思う。でも実際に見て思ったのは、テレビで感じていたよりも大きく見えること。全日本の苦戦や、同時期にシニアデビューした村上の活躍を見ることは、今は辛くても将来のプラスになるかもしれない。経験を表現力として出せる資質のあるスケーターだと感じられるからだ。来季の彼女に期待したい。
④思い通りの演技ができず涙した鈴木明子。彼女の涙を見るのは2度目だ。去年の全日本、オリンピック選考試合で、わたしは彼女の歓喜の涙を見た。そんな鈴木を見て、次の演技者だったにもかかわらずもらい泣きし立ち位置を間違えてあたたかい笑いをさそったのは、村上だった。人生は皮肉だ。もしも浅田が不調でなければNHK杯で村上があれほど注目を集めることはなかっただろうし、その後の快進撃もなかったかもしれない。注目を肥やしに出来る村上の性格がなければ、GPFで表彰台になど乗っていなかったかもしれない。「運」というものはあるのだと思う。その村上が鈴木の眼前であざやかに世界フィギュアへと駆け上がっていった。
鈴木のFS…高橋ほどではないにしろ、カメレンゴ振り付けは選手に多くのものを求める。それに応えるには今季の鈴木は不安定だった。オリンピックにも2010ワールドにもGPFにも出てそれなりの結果を出してきた鈴木だが、来年3月代々木のリンクに立つ夢は…叶わなかった。結果には納得せざるを得ないが…切ない。
③今季最もテレビで放送されたのは、彼女の演技であり、笑顔だったのではないだろうか。いろんな意味で風に乗ったという印象がある。
村上というと「スピード」「3×3」という印象が強い。わたしも楽しみにしていたんだが…正直な感想を言うと…あれ?スピードは確かにあるけど他の選手と格段の差ってほどじゃないんだ~。思ったほど空間は大きくないのかなぁ…という印象で、テレビ放送よりもインパクトが小さかった。ただしわたしはSPしか現地観戦していないので、ノーミスのFSだったらどう見えたかはわからない。
②安藤美姫!SPで一番感動したのは浅田だったが、一番驚いたのは安藤の美しさだった。もう少し荒いイメージがあったんだけど…すべてが美しかった。滑りも、表情も、音楽も、そして衣裳も(すごぉく素敵な衣裳!)。GPFで消化不良だったあのSPがこんなに美しくなるなんて。優雅な中にも、持ち前のバネのあるジャンプを危なげなく決め、SP・FSを通してただ一人、エラーマークもマイナス表示もないまったくクリーンなジャッジスコアを出して見せた。彼女とてもともとはフリップジャンプにエラーがあったはず。ここまで来るのにいったいどのくらい地道な反復練習を続けたのだろう。拍手と光の中でほほ笑む柔らかな表情を見ていて、何故かうるっときてしまった。
①やっぱり真央ちゃん、なんてったって、なにがなんでも真央ちゃん!と叫びたくなった。
冷静に見れば、ルッツのエッジは治っていないし、SPの3A判定などは甘いとも言える。けれど、そんなことではなくて…滑りだした途端、空気が変わるあの感じが、彼女の凄さを伝えている。ああ、格が、レベルが違うんだ…と、否応なく思わされた。キムヨナに対抗できるのはやはりこの人をおいて他にはいない。彼女が何位であっても、だ。今回の選出に異を唱える人もいるが、実際問題、勝てる可能性のあるのは浅田と安藤だと思う。この2人だけ別のレベルの大会みたいだったよ。