サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

農山村らしい気候変動適応策

2014年10月06日 | 気候変動適応

 気候変動(地球温暖化)は、自然生態系に影響を与え、生物多様性を損なうだけではない。自然を借りて営まれる産業や暮らし、自然と対峙する中で形成された文化等も気候変動の影響を受ける。自然に抗する人工システムを基盤とする都市地域も、都市地域の特性ゆえに豪雨による水災害や熱中症等の被害を受けやすいが、農山村は別の意味で、気候変動の影響を受けやすく、気候変動適応が必要である。

 

 農山村における気候変動の影響特性として、4つの側面がある。

 

 1つは、農山村は自然との関係が濃密であり、自然生態系の変化の影響を受けやすい。鳥獣被害、病害虫の増加、自然資源を活かす観光への影響等々である。鳥獣被害では、気候変動との関連が科学的に解明されているわけではないが、シカの増加は暖冬による越冬率が高くなっていることが原因だとも指摘されている。

 

 2つめに、農山村地域に特徴的な農林業そのものが、太陽光や大気・水循環の力を借りており、気候変動の影響を受けやすい。米やりんご、ミカン等の果樹、野菜等ではなく、シイタケ等の特用林産物、干し柿や寒天等な伝統的な食品加工も影響を受けている。シイタケも一定の寒さにあたることで発芽するが、暖冬になると発芽が促されにくくなる。干し柿や寒天等も冬の寒さや乾燥という気象条件間で生産されるが、気候変動により干し柿はカビが生え、寒天は雪上での天日乾燥ができにくくなくなる(文献1)。

 

 3つめに、農山村地域は少子高齢化、過疎化が都市部よりも先行しており、気候変動に適応する基盤となる地域力が低下している。地域の互助力が低下していた地域では道普請や溝浚い等ができずに、水の氾濫は起こりやすくなる。行財政の逼迫により道路等の維持管理が不十分になると、それだけ気候変動の影響が発生しやすく、被害後の復旧が遅れることにもなる。

 

 4つめに、農山村地域の住民は、気候変動(地球温暖化)問題や適応策への関心が低く、取組みの必要性への理解や取組み姿勢が弱い傾向にある。これは、気候変動対策がこれまで温室効果ガスの排出削減を図る緩和策を中心に進められてきたため、都市部に比べて、温室効果ガスを排出していない農山村で、気候変動が地域で取組むべき課題にされてこなかったためである。一方、農山村地域では、自然との距離が近い住民が多く、気候変動の影響による自然の変化に敏感である。この意味では気候変動の緩和策ではなく、適応策を入口にすれば、気候変動問題への意識が向上されやすい地域であるといえる。

 

  以上のような特徴を持つため、農山村地域の適応策は都市地域とは異なる方向で検討されるべきものである。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 北九州市で開催されるエコテ... | トップ | 地方自治体の環境政策への期... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

気候変動適応」カテゴリの最新記事