サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

隠れた環境負荷を捉える指標

2007年12月31日 | レポート
 ライフサイクル全体の改善を図る際、表には見えない部分で発生している環境負荷を明らかにして、その改善を考えなければならない。この見えない部分を明らかにするために、「エコロジカル・フットプリント」、「エコスペース」、「地表面集約度」、「エコロジカル・リュックサック」、「隠れたフロー」、「フードマイレージ」等の指標が提起されている。
 なお、時代を少しさかのぼると、E.P.オダムが著書「基礎生態学」(1989年)の中で、「シャドウ・リージョン」を紹介している。これは、先進国に対する入力地域となる地域をさすものである。
 これらの指標は、先進国(特に国内の化石・鉱物資源に乏しい日本)の活動は、開発途上国等の他国の土地利用や、他国で発生している環境負荷に依存しており、南北の公平のためには、他国への依存を抑制すべきことを提起するものとなっている。


■土地面積で表す指標

 「エコロジカル・フットプリント」は、カナダのバンクーバーにあるブリテッシュ・コロンビア大学のW.リースらが作成したものである。これは、人間活動が「踏みつけた面積」を意味し、1人の人間、あるいは1つの都市が、自らの活動を行うために直接的・間接的に消費している土地面積として指標化される。具体的には、エネルギーや食糧、木材調達のために依存している土地、あるいは居住や産業活動のための直接的に消費している土地を、1人当たりに換算した数値が求められている。

 オランダのM.ブイテンカンプらが作成した「エコスペース」という指標や、 「ファクター10」において示されている「製品、サービス当たりの地表面集約度」の考え方も、エコロジカル・フットプリントと同様のものである。

 最近では、人間活動による地球温暖化への影響を把握するための指標として、「カーボン・フットプリント」が検討されている。米国やオーストラリアなどが国際標準化機構(ISO)に規格化を働き掛けているとされる。
 化石燃料の燃焼によって排出されるCO2を吸収するために必要な森林面積などで表すもので、CO2の"見える化”を促すものである。


■環境負荷を量として捉える指標

 「エコロジカル・リュックサック」は、ヴッパータール研究所で名付けられたもので、"製品が背負った重荷"という訳が、そのニュアンスに近い。「エコロジカル・リュックサック」の例として、化石・鉱物資源の採掘・精製の際に廃棄される物質量を計算したものがある。例えば、石油1トンのリュックサックは0.1トン、石炭は6トン、セメントは10トン、鉄は14トンという数値がある。鉄1トンを消費することは、同時に見えない部分で14トンの物質を消費していることになる。

 また、日本では、国立環境研究所が、国際共同研究に参加して、「隠れたフロー」の分析を進めている。同共同研究では、日本の物質消費量は1人1年当たりで45トンと計算されており、うち3/4が海外で間接的に消費している物資量(隠れたフロー)であるという結果になっている。


■輸送過程の距離を捉える指標

 「フードマイレージ」、「ウッドマイレージ」という指標は、それぞれ食糧、木材の移動距離を測る指標である。

 「フードマイレージ」は、1994年に英国の消費者運動家ティム・ラング氏が提唱した(元の用法は、Food Miles)。国内では「大地を守る会」がキャンペーンを展開している。これを木材に応用したのが、「ウッドマイレージ」である。

 
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