サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

SDGsの使い方~3つのステージと必要条件

2019年03月10日 | 持続可能性

 持続可能な開発目標 (Sustainable Development Goals = SDGs) を学ぼうという講演会やシンポジウムが活発に行われている。「こくちーず」でSDGsをキーワードにしてイベントを検索すると、166件もヒットする(そのうち関東が69、近畿が43)。

 

 SDGsの17のゴールのラベルを張り付けた名刺をもらうことも多い。サステイナビリティという言葉のもつ曖昧さや難しさを解消し、具体的かつわかりやすいとして、環境活動や社会貢献活動に取り組む人々に歓迎されているようである。国のSDGs関連の助成事業が増え、その助成を得るためにSDGsを名乗る活動も増えている。

 

 一方、SDGsウオッシュを懸念する声もある。SDGsウオッシュとは、「ホワイトウォッシュ:上辺だけ取り繕う」をもじったもので、実態がなく、雰囲気だけの取組みをさしている。かつては「グリーンウオッシュ」という造語が中身のない環境への取組を揶揄する言葉として使われたが、それをSDGsに当てはめている。

 

 筆者は、とりわけSDGsを地域づくりに使う場合に注意が必要だと感じて、次のような記事を書いてきた。

 https://blog.goo.ne.jp/shirai01/e/4ed39f3e72ab75b941d7bd92ebe28abb

 https://blog.goo.ne.jp/shirai01/e/cdeb6b7fd8db31ae00f8ee2c89d737a6

 

 もっとも、SDGsはその特徴を理解したうえで、使い方を工夫することが必要だという主張であり、SDGsそのものを否定するものではない。SDGsは使い方次第、上手く使うことで、「持続可能な発展」という概念やそれを具体化する方針やアクションを検討する動きを活発化していくことができればと考えている。 

 

 しかし、SDGsの最初のゆるやかな一歩だけで終わらせてはいけない。最初の一歩のその先を共有していかないといけない。そこで、SDGsの使い方をステージ分けすることを思いついた。以下に、3つのステージを提案する。ステージ1の次は、ステージ2、ステージ3を視野にいれて、そこに踏み出すことが大切である。

 また、SDGsの活用における必要条件にも留意しなければならない。一部の管理部門だけで、SDGsの検討を行い、関係者は誰も知らない等という状況は、SDGsの使い方としては必要条件を満たしていない。一遍には無理かもしれませんが、必要条件を満たそうとする姿勢が必要である。

 

【SDGsの使い方の3つのステージ】

 

ステージ1 これまでの取組の見直しをせずに、SDGsに取り組んでいる段階 

 SDGsの17のゴールや169のターゲットと既存の取組みをひもづけ、自らの活動のポジショニングやアピールに活用する。SDGsウオッシュのおそれがある。

 

ステージ2 これまでの取組を見直し、取組の改善や新たな取組の創出に活用する段階

 このステージは4つのタイプに分けられる。

 ステージ2A 名乗るに値するかを見直す

 SDGsの17のゴールや169のターゲットについて、これまでの取組が本当にSDGsを名乗るに値するのかを科学的にも見直し、取組を精査・改善する。例:気候変動防止を名乗るとして、本当に二酸化炭素排出削減になっているのどうかを見直す。

 ステージ2B 足し算で変える

 SDGsの17のゴールや169のターゲットを用いて、これまでの取組を見直し、新たな取組を追加する。例:環境分野の活動をやっていたが、福祉分野の活動も新たに行う。

 ステージ2C 掛け算で変える  

 SDGsのゴールやターゲットの「連環」を考え、これまでの取組を見直し、新たな取組を追加する。例:気候変動対策と貧困の解消を同時に考える取組を生み出す。

 ステージ2D 必要に応じて独自の考え方で変える

 SDGsのゴールやターゲット自体を自分たちで見直し、独自のゴール等を用いて、取組を見直す。

 

ステージ3 諸問題に共通する「根幹」を見直し、構造やシステムを考える・変える段階

 SDGsのゴールやターゲットの問題の「根幹」にある構造的課題を捉え、社会経済システムやライフスタイル、土地利用等を構造的に変えることに踏み出す。

 

【SDGsの使い方の必要条件】

目標水準:SDGsの長期目標と短期目標を持つ。長期目標のバックキャスティングを行い、必要であれば短期目標のハードルをあげる。

参加範囲:一部の主体だけでなう、あらゆる主体内部の関係者、さらには関係する外部主体も巻き込んで、SDGsに取り組む。

主体関係:SDGsへの取組を通じて、新たなつながりをつくる。つながりによる変化や創造のダイナミズムをつくる。

主体学習:SDGsを通じて、持続可能な発展に係る主体の学習プロセスを設ける。学習を経た主体が自主的にSDGsに取組むように、学習と実践のサイクルをつくる。

 

 

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