サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

2015年度の「気候変動の地元学」の感想

2016年03月05日 | 気候変動適応

 2015年度は、「気候変動の地元学」を、全国各地で実施させていただいた。地球温暖化防止活動推進センターの職員研修としては、宮崎県を皮切りに、愛知県、沖縄県、鳥取県、川崎市で実施した。また、近畿地方環境事務所の予算により、大津市、宝塚市、丹波地域(丹波市と篠山市)で実施した。

 

 今年度は、2回に分けて実施する方法とした。1回目は気候変動の影響や適応策に関する知見や政策動向、考え方等の講義を行う。さらに、地域への気候変動の影響事例を記入する調査票の説明を行う。その後、1月くらいで調査票に記入してもらい、2回目に集計結果の報告とそれを基にした話し合いを行った。

 

 さらに、各回の前後に、気候変動への意識を把握する調査票に記入してもらい、研修前後の意識変化をみることにした。全地域の詳細分析はこれから実施していくが、大よそ、この方法により、気候変動の影響認知や緩和策と適応策の意識の向上が図られるといえる。特に、適応策のことを中心テーマにした研修でありながら、緩和策への意識向上を図ることができることが重要な点である。

 

 雑駁ながら、印象に残った点をまとめておく。

 

(1)地域固有の影響がある

 気候変動の地域への影響事例では、水土砂災害、熱中症等の増加は全地域に共通する影響として回答されるが、その一方で地域に密着した固有の事例が多く回答された。特に、陸及び海の生物、農産物はそもそも地域にあるものが異なるのであるから、影響事例は地域によって様々である。地域毎に影響評価を行うことが必要である。

 

(2)話し合って見えてくる実態

 気候変動の影響事例はそうそう簡単には集まってこない。このため、各地域ともに事例収集には苦労をされた。しかし、集まった影響事例が少なくとも、それは影響がないわけでなく、今のところ影響への適応ができている場合、あるいは地域との関わりが弱く、地域への変化が見えていない場合等がある。このため、ワークショップで丁寧に話し合っていると、さらに多くの影響事例が出てくる。影響事例集めは一過的に行わず、コミュニケーションをとりながら集めることが必要である。

 

(3)自然とつきあう地域づくりの優先

 ワークショップでは、グループ毎に重要だと思う適応策を3つ、あげてもらった。この結果は多様であったが、都市緑化を進めること、農林業をしっかりと行うこと、コミュニティづくりを行うこと等があげられた。適応策というと、個人ができることとして、水災害時に早く逃げること、熱中症対策として水を飲むこと等があげられるが、そうした対症療法でなく、踏み込んだ適応策があげられたことが印象的であった。これらの適応策は適応であり、緩和にもなる。

 

(4)適応と緩和の重視度は様々

 ワークショップでは、適応と緩和のどちらを重視するかを考えてもらうため、行政予算を10億円として、それを何対何に配分するかというテーマでも話し合ってもらった。この結果も多様であり、何が正解ということではないが、配分の理由を考えることで、理解を深めることが狙いであった。現在、水災害や熱中症対策として実施している対策を適応策予算として位置づけるかどうか、あるいは国と地方自治体で緩和と適応のウエイトづけが異なるのではないか、来年度の予算か10年後・30年後で配分が異なるのではないかなど、様々な観点が抽出された。

 

 

 以上、「気候変動の地元学」は、2013年度・2014年度に長野県飯田市で試行し、2015年度に全国での展開を始めたばかりである。2016年度は、全国各地でできれば自主的に地元学が実施されるとともに、その成果を共有する仕組みをつくっていきたいと考えている。

 

 また、影響事例調べの結果をもとに、専門家と一緒に影響事例の精査を行ったり、住民による行動計画を策定したり、行政による適応策の検討と連動したり、一般住民向けの普及啓発ツールを作成したりと、地域の状況に応じた様々な展開ができればと考えている。さらに、協働ができれば幸いである。

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