気候変動による気温上昇(夏の高温化、あるいは暖冬化)より、生物の生息限界や農作物の栽培適域が北上する。この北上という意味は、現在の生息地や生産地が適域からはずれ、生息あるいは生産が困難になるというマイナス面の意味と、これまで生息あるいは生産されていなかったものが生息あるいは生産できるようになるというプラス面の意味がある。
先日、富山に出張した際、偶然、温州みかんの北限が富山県内にあるという話を聞いた。氷見というところで、漁師が静岡から持ちこんだ苗を庭に植えていたところ、実が着きだしたとのこと。生産者もけっこうの数がいるとので、りんごとみかんの観光農園を同時にやるなど、地域おこしになるのではないかと注目を集めているらしい。
氷見の場合は、もともと暖流と寒流がぶつかる暖かい地域であり、近年の気候変動に対する適応だとアピールされているわけではないが、1980年代後半以降の気温上昇がみかんの実りを促しているのだろう。
こうした北上の例が他にもないか、WEBで検索をしてみた。結構ある。
● グンバイヒルガオの北上
宮崎、大分、高知などで越冬するが、その北上の可能性が書かれている。
http://www.museum.tokushima-ec.ed.jp/ogawa/gunbai/default.htm
● 天草のサンゴの北上
1963年(昭和38年)2月の大寒波によって、牛深市周辺の造礁サンゴは壊滅的な打撃を受けたといわれているが、その後、徐々に回復してきた。サンゴは北上を続け、逆に海藻藻場はさらに減少するであろう。
http://www.kumamoto-kankyo.jp/cate_04/k_40.pdf
● 昆虫の北上 (桐谷圭治・湯川淳一編「地球温暖化と昆虫)
チョウやカメムシ、セミから虫えいを形成するタマバエ、侵入害虫であるミバエ、ゾウムシ、アザミウマ、さらには世界的に問題になっているマラリアを媒介する蚊まで多様な昆虫が温暖化にどのように反応しているのかを解説した本。
http://www.zennokyo.co.jp/book/kagak/toncn.html
● 果物・野菜の産地北上 温暖化逆手、新品種開発競う(47都道府県を日経産地研調査
温暖化を逆手に取って栽培研究中の農作物
北海道 サツマイモ(露地)、岩手県 モモ(晩生品種)、秋田県 甘柿、イチジク、山形県 モモ(晩生品種)、
群馬県 温州ミカン・かんきつ類、千葉県 パッションフルーツ・アテモヤ(果樹)、東京都 温州ミカン、
長野県 ワイン用ブドウ(栽培適地が拡大)、三重県 アテモヤ(果樹)、
大阪府 トルコギキョウ・ユリなど(年末出荷期の無暖房栽培)、鳥取県 かんきつ類
徳島県 モモ(早生系新品種)、ブロッコリー(露地、4月収穫タイプ)
香川県 ブドウ(青系シャインマスカット)、佐賀県 温州ミカン(越冬して完熟させるタイプ)
長崎県 温州ミカン(越冬して完熟させるタイプ)、宮崎県 ライチ、インドナツメなど
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDN2800P_Y3A220C1000000/?dg=1
● サクランボやモモの産地北上
北海道のサクランボは出荷時期がじょじょに早まり、ピークが7月中旬のお中元時期にズレこんで商業効果が最高の時期にぶつかるようになった。
http://noumin.seesaa.net/article/101527684.html
● お茶の北限 新潟県村上市
近年地球温暖化の影響もあり、以前は村上では育てられなかった品種も育てることができるようになってきた。 九重園では少しずつ、新しい品種の改植を行っている。
等々。