普及に係る既往研究(文末参考文献参照)をもとに、地球温暖化防止に係る普及啓発に関して、得られる示唆を整理する。
①イノベーション自体の普及しやすさを高める
普及を図るイノベーションには、普及しやすいものと普及しにくいものがある。Rogersが示すように、有用であり、環境面の効果だけでなく、経済面のメリットもあり、わかりやすいもの、試してみれるもの、効果が目に見えるものなどが、普及しやすい。
このため、イノベーション自体に普及しやすさを持たせるだけでなく、普及させたい環境配慮商品・設備等の仕組みや効果をわかりやすく解説するパンフレットをつくり、広く説明したりなど、行政施策において、イノベーションの普及しやすさを高める工夫を行うことが必要となる。
②初期採用者の採用を促す
今後、地球温暖化防止対策においては、太陽光発電、エコカー等のイノベーションの普及を進める必要がある。こうした新しいもの(イノベーション)の採用においては、Rogersが示すように、採用者を革新者、初期採用者、多数採用者といったタイプに分けることができる。
初期段階の採用者は新しいもの好きの革新者であるが、本格的な普及においては周囲の信頼がある初期採用者が重要だとされる。
では、初期採用者とはどのような人達か、初期採用者の採用を得るためにはどのようにしたらいいか等を、具体的に検討して、普及施策を戦略的に実施することが必要である。
③キャズムをなくすように、環境配慮以外のインセンティブを設ける
「キャズム理論」により指摘されるように、環境配慮に熱心な市民には普及するが、メインストリームの市民には普及しないという現象も生じる可能性がある。
この場合、環境配慮に熱心な市民とメインストリームの市民とは、購入基準や行動様式等が異なり、各々に対する異なる施策を検討する必要がある。
このメインストリームの市民は、一般的に、環境配慮よりも、他の側面も重視する傾向があるとも考えられるため、各々が重視する側面に関するインセンティブを設け、それを誘引として、環境配慮の採用を促すことが考えられる。
④意識と行動の規定構造を捉えて、効果的に啓発を行う
環境心理学の分野の環境配慮行動の説明モデルにあるように、環境問題を解決しようという目標意図は、環境問題への危機感、環境問題に対する自己の責任の認知、対処の有効性の認知等によって規定される。
さらに、行動を実施しようとする行動意図は、目標意図に規定されるとともに、行動の実行可能性、行動による効果・メリットと費用、行動することへの社会の期待等によって、規定される。
このモデルは、アンケート調査等によって、実証事例が報告されている。こうした行動モデルを念頭において、合理的、効果的に情報を発信することが必要である。
特に、行動意図を形成するためには、行動が実施しやすい、自分の得になる、多くの知り合いが実施しているなどといった情報を具体的に発信することが重要である。
⑤行動のきっかけと継続・定着のための施策を組み合わせる
既往研究では、初期的、短期的には物理的報酬による動機付けが効果的であるが、それを持続させるためには、情報提供やコミットメント、目標設定、フィードバックを効果的に組み込むことが必要であろうと考察している。
また、省エネ行動の普及において、行動の変化はつきあいのある地域リーダーの働きかけが重要という指摘もある。多くの自治体で、多くの普及啓発施策が実施され、様々な工夫がなされている。
それらの施策の成果を踏まえ、より効果的な普及啓発の方法を検討することが可能であろう。
【 参 考 文 献 】
E.M.ロジャース「イノベーション普及学」(1990)、産能大学
宇野善康「普及学講義」(1990)、有斐閣選書
広瀬幸雄「環境配慮的行動の規定因について」(1994)、社会心理学第10巻第1号、44-45
杉本徹雄「消費者理解のための心理学」(1997)、福村出版
東京都「環境に配慮した商品等の製造・流通・消費に関する実態調査」(2001)
ジェフリームーア「キャズム」(2002)、翔泳社
杉浦淳吉「環境配慮の社会心理学」(2003)、ナカンシヤ出版
本藤祐樹・馬場健司「太陽光発電技術と環境意識・行動の相互作用に関する予備的分析」(2004)、第32回環境システム研究論文発表会講演集
工藤匠・阿部晃士「環境配慮行動とその規定因の類型 -「滝沢村環境基本計画策定に関する住民意識調査」の計量分析」(2004)、総合政策第5巻第3号pp.429-444
西尾チヅル「消費者のゴミ減量行動の規定要因」(2005)、消費者行動研究、Vol11 No.1、2)
馬場健司・田頭直人「地方自治体における市民の環境配慮行動への変容促進施策」(2007)、日本都市計画学会
丸田昭輝・松橋隆治・吉田好那「市民の社会的属性・社会的信頼度が省エネ行動に及ぼす影響の分析―ソーシャル・キャピタルによる分析」(2008)、環境情報科学論文集22
①イノベーション自体の普及しやすさを高める
普及を図るイノベーションには、普及しやすいものと普及しにくいものがある。Rogersが示すように、有用であり、環境面の効果だけでなく、経済面のメリットもあり、わかりやすいもの、試してみれるもの、効果が目に見えるものなどが、普及しやすい。
このため、イノベーション自体に普及しやすさを持たせるだけでなく、普及させたい環境配慮商品・設備等の仕組みや効果をわかりやすく解説するパンフレットをつくり、広く説明したりなど、行政施策において、イノベーションの普及しやすさを高める工夫を行うことが必要となる。
②初期採用者の採用を促す
今後、地球温暖化防止対策においては、太陽光発電、エコカー等のイノベーションの普及を進める必要がある。こうした新しいもの(イノベーション)の採用においては、Rogersが示すように、採用者を革新者、初期採用者、多数採用者といったタイプに分けることができる。
初期段階の採用者は新しいもの好きの革新者であるが、本格的な普及においては周囲の信頼がある初期採用者が重要だとされる。
では、初期採用者とはどのような人達か、初期採用者の採用を得るためにはどのようにしたらいいか等を、具体的に検討して、普及施策を戦略的に実施することが必要である。
③キャズムをなくすように、環境配慮以外のインセンティブを設ける
「キャズム理論」により指摘されるように、環境配慮に熱心な市民には普及するが、メインストリームの市民には普及しないという現象も生じる可能性がある。
この場合、環境配慮に熱心な市民とメインストリームの市民とは、購入基準や行動様式等が異なり、各々に対する異なる施策を検討する必要がある。
このメインストリームの市民は、一般的に、環境配慮よりも、他の側面も重視する傾向があるとも考えられるため、各々が重視する側面に関するインセンティブを設け、それを誘引として、環境配慮の採用を促すことが考えられる。
④意識と行動の規定構造を捉えて、効果的に啓発を行う
環境心理学の分野の環境配慮行動の説明モデルにあるように、環境問題を解決しようという目標意図は、環境問題への危機感、環境問題に対する自己の責任の認知、対処の有効性の認知等によって規定される。
さらに、行動を実施しようとする行動意図は、目標意図に規定されるとともに、行動の実行可能性、行動による効果・メリットと費用、行動することへの社会の期待等によって、規定される。
このモデルは、アンケート調査等によって、実証事例が報告されている。こうした行動モデルを念頭において、合理的、効果的に情報を発信することが必要である。
特に、行動意図を形成するためには、行動が実施しやすい、自分の得になる、多くの知り合いが実施しているなどといった情報を具体的に発信することが重要である。
⑤行動のきっかけと継続・定着のための施策を組み合わせる
既往研究では、初期的、短期的には物理的報酬による動機付けが効果的であるが、それを持続させるためには、情報提供やコミットメント、目標設定、フィードバックを効果的に組み込むことが必要であろうと考察している。
また、省エネ行動の普及において、行動の変化はつきあいのある地域リーダーの働きかけが重要という指摘もある。多くの自治体で、多くの普及啓発施策が実施され、様々な工夫がなされている。
それらの施策の成果を踏まえ、より効果的な普及啓発の方法を検討することが可能であろう。
【 参 考 文 献 】
E.M.ロジャース「イノベーション普及学」(1990)、産能大学
宇野善康「普及学講義」(1990)、有斐閣選書
広瀬幸雄「環境配慮的行動の規定因について」(1994)、社会心理学第10巻第1号、44-45
杉本徹雄「消費者理解のための心理学」(1997)、福村出版
東京都「環境に配慮した商品等の製造・流通・消費に関する実態調査」(2001)
ジェフリームーア「キャズム」(2002)、翔泳社
杉浦淳吉「環境配慮の社会心理学」(2003)、ナカンシヤ出版
本藤祐樹・馬場健司「太陽光発電技術と環境意識・行動の相互作用に関する予備的分析」(2004)、第32回環境システム研究論文発表会講演集
工藤匠・阿部晃士「環境配慮行動とその規定因の類型 -「滝沢村環境基本計画策定に関する住民意識調査」の計量分析」(2004)、総合政策第5巻第3号pp.429-444
西尾チヅル「消費者のゴミ減量行動の規定要因」(2005)、消費者行動研究、Vol11 No.1、2)
馬場健司・田頭直人「地方自治体における市民の環境配慮行動への変容促進施策」(2007)、日本都市計画学会
丸田昭輝・松橋隆治・吉田好那「市民の社会的属性・社会的信頼度が省エネ行動に及ぼす影響の分析―ソーシャル・キャピタルによる分析」(2008)、環境情報科学論文集22