エベレット・ロジャーズ(米国の研究者)が、トウモロコシの新種等の普及過程を分析し、1962年に「イノベーションの普及学」という本を著した。同書は、普及事例をもとに、イノベーションの普及における促進要因や阻害要因を分析し、普及学のバイブルのようになっている。その後も、普及事例の分析を更新し、第5版が2007年に発行された。
環境配慮商品の普及についても、同書から多くの示唆を得ることができる。例えば、同書では、イノベーションの普及の速さを、5つのイノベーション属性によって説明している。
1つめは、「導入効果の相対的有利性」で、他のイノベーションと比較した場合の効果の大きさをいう。環境配慮商品でいえば、効果とは環境負荷の削減効果である。
2つめは、「従来の価値規範やニーズ等との両立性」。環境配慮商品でいえば、従来の商品選択の規範である品質や価格等と環境改善効果が両立するか否かを示し、コベネフィット性と換言できる。
3つめに「理解や操作等の複雑性」。わかりやすさや使いやすさである。4つめに「試行の可能性」。試しに使っていることができることである。5つめに「効果の観察可能性」。省エネ機器による節電量の見える化がなされていることをいう。
平たくいえば、環境改善効果があり、ユーザーにとってもお得で、使いやすく、お試しや見える化がなされている環境配慮商品が普及しやすいということになる。
前回までのコラムでは、環境配慮商品だとアピールしつつ、どのような効果があるのか説明できない商品は普及しないため、環境性能の実証データをつくることが必要であると示した。それは、ロジャースのいうイノベーションの普及条件のうちの1つめである「導入効果の相対的有利性」を満たすことに他ならない。
次回のコラムでは、環境配慮商品の普及のために、地域の行政やユーザーとの協働で、環境配慮商品の普及条件を充たしていく方法や事例を紹介する(予定)。
注)「横浜環境ビジネスネットワーク メールマガジン【7月17日配信】のコラムを転載しています。