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サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

環境と林業

2008年03月15日 | 環境と経済・ビジネス
1.環境と林業の関係
 
 農地と同様に、森林は人間社会に多面的な機能を提供してくれる。本来、森林の持つ多面的機能を、人間の側から便宜的に測ることは避けるべきであるが、費用負担をしていない森林の恩恵(外部経済性)があることは事実である。

 林業は、特に人工林の手入れや伐採・再造林といった持続可能な森林経営を通じて、森林の持つ公益機能の維持・向上に寄与する。

 森林の持つ公益機能は、主に大気や水の循環の中で発揮されるものである。循環する物質に着目すれば、農業が窒素や燐の循環における役割が大きく、林業は炭素の循環に果たす役割が大きい。

 地球温暖化の主原因となっている二酸化炭素の収支を考えると、森林は大気中の二酸化炭素を、光合成により吸収とし、生物量とする(吸収効果)。

 林業によって伐採された木材は、二酸化炭素を固定したまま、住宅等に使用される(固定効果)。

 解体された住宅の廃材や、木材の加工過程で発生するは材は、バイオマスエネルギーとして利用されると、大気中に放出されるが、もともと大気中にあった二酸化炭素を再び元に返すのであるから、収支上はカーボンニュートラルである。バイオマスエネルギーによって、化石燃料を代替すること考えると、代替する化石燃料由来の二酸化炭素排出量を削減することになる(代替エネルギー効果)。

 また、木造住宅と鉄骨住宅等を比較すると、住宅の素材製造・建設過程で発生する二酸化炭素排出量は木造の方が小さいことから、鉄骨住宅の代わりに木造住宅をつくるほどに二酸化炭素の排出することになる(省エネルギー効果)。


2.林業における環境への取り組み

1)持続可能な森林経営

 平成4年にリオ・デ・ジャネイロで開催された「環境と開発に関する国連会議」における「森林原則声明」を踏まえて、持続可能な森林経営が国際的に議論されている。持続可能な森林経営とは、1に示した公益機能を継続的な享受と木材供給のための森林利用を両立させることである。
 
 持続可能な森林経営を促す民間の動きとして、FSC(Forest Stewardship Council、森林管理協議会)による森林認証制度がある。10の原則と56の基準を遵守することが認証の条件である。森林認証のほか、木材製品の生産・加工・流通管理の認証(CoC:Chain of Custody)も行っている。

 2006年12月現在において、国内の森林認証は計24箇所 276,534ha、CoC認証は418件となっている。

2)地球温暖化防止と林業

 京都議定書において日本は、温室効果ガスの排出量を1990年比で6%削減することを約束した。そのうち、4,767万t-CO2(基準年総排出量比約3.9%)は、森林管理によって確保される二酸化炭素吸収量分である。

 現状程度の水準で森林整備、木材供給・利用等が推移した場合、確保できる吸収量は基準年総排出量比3.9%を下回るものと見込まれている。このため、環境税等による森林整備の財源確保の検討や、木材の生産・供給体制の整備が進められている。

 木材の生産・供給体制の整備のためにモデル的に進められている施策が、「新生産システム」である。これは、大手ハウスビルダーに対する安定的でロットのまとまった木材供給の体制を整備して需要を確保するとともに、経営効率の改善を図るものである。

2)木材の地産地消

 森林活用の分野でも、地産地消の動きがある。「地元の木で地元の家をつくる」活動である。全国各地で、林業及び木材加工関係者と設計事務所・工務店等が連携し、地元の木材を使った木材住宅の供給が進められている。大規模なビジネスは至らない場合も多いが、施主に森林や建築の現場を見せながら、森林と消費者の顔の見える関係づくりを進めているなど、新たなビジネスモデルとして注目される。

 また、木材の輸送に伴うエネルギー消費(二酸化炭素排出量)を削減するため、地場材の調達は地球温暖化防止対策としても意義がある。

3)森林新ビジネス

 森林を活用するビジネスの市場は、主に建材供給にある。その一方で、従来より取り組まれてきた特用林産物(きのこ、山村等)の開発に加えて、森林の持つ多面的な機能を活用した新たなビジネスが立ち上がってきている。

 いくつかのビジネス事例を紹介する。

●木の葉でビジネス

 徳島県上勝町の彩事業は、木の葉等の料亭等で出す刺身のツマとして商品化している。山村におけるありきたりの資源であっても、マーケティング次第では大きなビジネスとなることを証明した。高齢化が進む山村にあって、高齢者を活用するビジネスとしても注目されている。

●間伐材利用へのこだわり

 協同組合ウッドワーク(新潟県上越市)は、地元産間伐材で家具類を生産している。木工、建具職人6社約45人による組合であり、間伐材利用というコンセプトを強く打ち出している。利用者に「産地証明シール」を購入してもらい、収益を森林整備に活用するという仕組みを導入している。
 
●森の中での新しい遊び方の提案
 
 2006年8月、富士山麓の標高1100mの森に、フォレストアドベンチャーがオープンした。樹木の間にワイヤーを渡し、ハーネスで安全確保をしたうえで、木の間を移動したり、滑降したりする遊びでが体験できる施設である。フランスで普及している技術を日本に始めて導入した。林野庁の森業山業創出支援事業に採択され、支援を受けている。

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